ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

ため池の機能を廃止するために設置した水路の設計が適切でなかったもの[中国四国農政局](199)


(1件 不当と認める国庫補助金 5,269,614円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(199)
中国四国農政局
香川県
高松市
(事業主体)
農業水路等長寿命化・防災減災
4 8,009
(8,009)
8,000 5,275
(5,275)
5,269

高松市は、防災減災対策として老朽化が進んだため池の機能を廃止するために、高松市塩江町青池地区において、堤体の開削、水路及び集水桝(ます)の設置等の工事を実施している。このうち水路の設置については、廃止するため池内に流入する水をため池外の既存の水路に排水するために、コルゲートフリュームを用いたU型水路(以下「U型水路」という。)を、集水桝の上流側に延長計42.4ⅿ(内空断面の幅0.35ⅿ、高さ0.35ⅿ)、下流側に延長35.5ⅿ(内空断面の幅0.60ⅿ、高さ0.60ⅿ)、延長合計77.9ⅿにわたり設置するものである(参考図1参照)。

同市は、U型水路の設計を「土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「水路工」」(平成26年3月農林水産省農村振興局整備部設計課監修。以下「基準」という。)等に基づき行うこととしていた。基準によれば、水路の安定を図るために、地下水による水路の浮上に対する検討として、水路の自重と、土圧により水路側壁の背面に作用する摩擦力とを合わせた下向きの鉛直力を、地下水による上向きの鉛直力である浮力で除して算出した安全率が、必要とされる安全率(1.1~1.2)以上となることを確認することとされている。

同市は、U型水路の設計に当たり、U型水路の設置箇所が廃止するため池の堤体に当たるため、透水性の低い土が用いられており、地下水位の上昇がないものと判断し、地下水によるU型水路の浮上に対する検討を省略していた。

しかし、U型水路の設置箇所の大部分は廃止するため池の底部に当たるため、地下水が滞留して地下水位が上昇しやすい状況となっていた。

そこで、U型水路近辺の6か所を測点として設定し、気候条件の異なる複数の調査日において実際の地下水位を調査したところ、下流側に設置されたU型水路(以下「下流側U型水路」という。)近辺に設定した4か所の測点の全てにおいて地下水が確認され、各測点で観測された最も高い地下水位はU型水路の底版の上方0.18ⅿから0.50ⅿまでの高さとなっていた(参考図2参照)。このため、上記調査の結果を踏まえて、下流側U型水路について、地下水によるU型水路の浮上に対する検討を行ったところ、安全率は0.16から0.52までとなり、必要とされる安全率を大幅に下回っていた。

したがって、下流側U型水路(延長35.5ⅿ)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、下流側U型水路、これに接続する集水桝及び上流側に設置されたU型水路(延長計42.4ⅿ)等(工事費相当額計5,275,609円)は、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額5,269,614円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、U型水路の設計に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1)

本件工事の施工平面図(概念図)

本件工事の施工平面図(概念図)

(参考図2)

下流側U型水路近辺における地下水位の概念図

下流側U型水路近辺における地下水位の概念図