(1件 不当と認める国庫補助金 2,514,668円)
部局等
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補助事業者等
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間接補助事業者等
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補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(201) |
東北農政局
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宮城県
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栗原市
(事業主体) |
農業水路等長寿命化・防災減災
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4 | 8,591 (8,591) |
3,561 | 6,065 (6,065) |
2,514 |
栗原市は、農業用ため池における水難事故の発生を防止することを目的として、栗原市に所在する築館地区において、3か所のため池に立入防止のためのネットフェンス(高さ1.2ⅿ、延長計502.0ⅿ)等を設置している。
本件工事の契約書等によれば、請負人は、事前にネットフェンスの詳細図等の資料(以下「詳細図等」という。)を提出して、監督職員の承諾を得なければならないこととされている。
本件工事の請負人は、詳細図等の作成に当たり、ネットフェンスのメーカーから「設計要領第五集交通安全施設(立入防止柵編)」(令和4年7月東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社及び西日本高速道路株式会社制定)に基づくなどして作成された設計計算書等の提供を受けていた。設計計算書等は、ネットフェンスの設置高さを1.2ⅿ、支柱の間隔を2.0ⅿとし、ネットフェンスの基礎は平たんな地盤に設置することを前提として作成されていた。そして、設計計算書等によれば、基礎の形状、基礎の根入れ長、ネットフェンスに作用する風荷重等から、最大水平地盤反力度(注1)及び受働土圧強度(注2)を算出して、ネットフェンスの基礎として直径101.6㎜の鋼管基礎を用いて515㎜以上の根入れ長を確保すれば、最大水平地盤反力度が受働土圧強度を上回らず、ネットフェンスは風荷重による転倒に対して構造上安全であるとされていた。そして、請負人は、これを踏まえて、直径101.6㎜、長さ550㎜の鋼管基礎を用いること、根入れ長を520㎜とすることとする詳細図等を作成して同市に提出し、同市はこれを審査するなどした上で承諾していた(参考図1参照)。
しかし、鋼管基礎が設置される地盤には、設計計算書等において前提とされていた平たんな地盤のほか、ため池周辺の法面が含まれていたのに、同市は、これが考慮されていない詳細図等を承諾していた。
また、請負人は、ため池の管理者等から、ネットフェンスの施工に先立ち、草刈りなどのために地盤からネットフェンスの胴縁(注3)の下端までの間隔(以下「隙間」という。)をできる限り確保してほしいとの要望を受けたことから、同市に対して詳細図等に示された長さ550㎜の鋼管基礎を50㎜長い600㎜のものに変更したい旨を口頭で申し出ており、同市は、これを承諾するとともに、隙間を確保するために、根入れ長を515㎜よりも短くすることも併せて承諾していた。
この結果、法面に設置された鋼管基礎については、平たんな地盤に設置されたものと比べて、法面下部の鋼管基礎の前面における根入れ長が短くなることにより鋼管基礎の前面に発生する受働土圧強度が減少する状況となっていた(参考図2参照)。また、平たんな地盤及び法面において、隙間を確保するために根入れ長を短くした鋼管基礎については、鋼管基礎に発生する受働土圧強度が減少するとともに、ネットフェンスの設置高さが高くなって重心の位置が高くなることにより鋼管基礎に作用する外力が増加する状況となっていた(参考図3参照)。
そこで、鋼管基礎が設置された地盤の状況及びネットフェンスの設置高さを調査した上で、最大水平地盤反力度が受働土圧強度を上回っていないか、改めて確認したところ、平たんな地盤に設置された鋼管基礎132本中83本、法面に設置された鋼管基礎129本中128本、計211本については、最大水平地盤反力度を受働土圧強度で除した値が1.01から12.04までとなり、最大水平地盤反力度が受働土圧強度を大幅に上回るなどしており、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、ネットフェンスのうち延長計450.0ⅿの区間(工事費相当額6,065,382円)は、設計が適切でなかったため、風荷重による転倒に対して所要の安全度が確保されていない状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額2,514,668円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、ネットフェンスの基礎の設計についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
詳細図等に基づくネットフェンスの概念図
(参考図2)
法面に設置された鋼管基礎の設置に係る概念図
(参考図3)
根入れ長を短くした鋼管基礎の設置に係る概念図