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  • 令和5年度|
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  • (4) 補助の目的外に使用していたもの

国産乳製品等競争力強化対策事業費補助金により取得した浄化槽を補助の目的外に使用していたもの[農林水産本省](203)


(1件 不当と認める国庫補助金 7,789,232円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(203)
農林水産本省
株式会社牧家
(事業主体)
国産乳製品等競争力強化対策事業費補助金
30 69,660
(64,500)
31,250 16,076
(16,076)
7,789

この補助金は、チーズ工房を始めとするチーズ加工施設について、製造設備の生産性の向上を通じたコスト縮減や、付加価値の高い加工品の生産を支援することを目的として、乳製品製造を行う食品事業者等に対して、チーズ製造施設及び設備の整備等に要する経費の一部を補助するものである。

国産乳製品等競争力強化対策事業費補助金交付要綱(平成30年29生畜第1022号農林水産事務次官依命通知)等によれば、補助事業者は、補助事業により取得し又は効用の増加した財産については、補助事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従って、その効率的な運用を図らなければならないこととされている。また、1件当たりの取得価格等が50万円以上の機械及び器具(以下「補助対象財産」という。)については、農林水産大臣(以下「大臣」という。)の承認を受けないで補助金の交付の目的に反して使用、譲渡等してはならないこととされている。そして、「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分等の承認基準について」(平成20年20経第385号農林水産省大臣官房経理課長通知。以下「承認基準」という。)によれば、補助事業者は、農林畜水産業関係補助金等交付規則(昭和31年農林省令第18号)に定める処分の制限を受ける期間(以下「処分制限期間」という。)内において、補助対象財産の目的外使用、譲渡等の財産処分をしようとするときは、あらかじめ大臣に申請し、その承認を受けなければならないこととされている。申請を受けた大臣は、補助事業者が補助対象財産を補助金の目的に従った使用を継続しながら一部について目的外使用を行う場合は、補助事業者が補助対象財産の目的外使用部分に対する残存簿価等に国庫補助率を乗じた金額を国庫に納付するなど、申請された内容に対応した条件を付した上で承認を行うこととされている。

株式会社牧家(北海道伊達市所在。以下「会社」という。)は、平成31年3月にチーズを製造する際に発生する排水を専用に処理する浄化槽(以下「浄化槽」という。)の導入を事業費69,660,000円(補助対象経費64,500,000円)で実施したとして、農林水産省に実績報告書を提出して、31,250,000円の補助金の交付を受けていた。そして、会社は、令和元年10月にチーズの製造を開始し、その後、新型コロナウイルス感染症の影響等によるチーズの売上の減少を理由に、4年9月からチーズ以外にも杏仁豆腐の製造を開始していて、これらの製造過程で発生する排水を処理するために浄化槽を使用していた。

しかし、浄化槽は、製造設備の生産性向上を通じたコスト縮減等を目的として整備されたチーズ製造施設であり、また、処分制限期間(16年3月まで)内であったにもかかわらず、会社は、承認基準に基づく財産処分の申請を行っていなかった。

したがって、浄化槽は、その一部が大臣の承認を受けずに目的外に使用されており、これに係る補助対象経費相当額をチーズと杏仁豆腐の製造に係る排水量の比率を基に算出すると21,001,923円となり、この金額から目的外使用部分に対する減価償却額を差し引いた4年8月末時点の残存簿価相当額16,076,975円に係る国庫補助金相当額7,789,232円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において財産処分についての理解が十分でなかったこと、農林水産省において会社に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。