近畿地方整備局(以下「整備局」という。)は、令和2年度に、「「野洲川河道掘削他工事」施工現場における労働生産性の向上を図る技術の試行業務」(以下「本件試行業務」という。)を「株式会社桑原組、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク、学校法人金沢工業大学、エアロダインジャパン株式会社 コンソーシアム」(以下「コンソーシアム」という。)に委託して実施している。
本件試行業務は、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の一環として、国土交通本省が公募により選定した技術を試行する業務(以下「試行業務」という。)の一つとして実施するものである。
そして、本件試行業務は、野洲川河道掘削他工事の施工現場において、3Dレーザースキャナを用いて実施した地形測量のデータ等をクラウド上で一元管理して、施工現場、施工業者の本店及び支店並びに発注者が共有できるようにする建設マネジメントクラウドシステムにより施工管理の効率化等を試行するものである。
本件試行業務に係る委託契約の契約書によれば、コンソーシアムは、本件試行業務を完了したときは、遅滞なく、成果品に添えて、完了報告書、精算報告書等を整備局に提出しなければならないこととされている。そして、整備局は、検査を行い、その結果、合格と認めた場合は、本件試行業務に要した経費の額と契約書に記載された委託費の限度額のいずれか低い額を委託費の額として確定して、コンソーシアムに支払うこととされている。
また、国土交通本省が定めた「2020年度建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト公募要領」等によれば、委託費として計上できる経費は、人件費、機械費等の直接経費、間接経費及び消費税等相当額とされている。このうち機械費については、試行業務に使用する機械等に要する経費を計上できることとされている。また、試行業務を実施するために必要な機械等を購入する場合には、基本的に受注者が機械等を所有することとして、試行業務に使用する期間分の減価償却費等を機械費として計上することとされている。そして、機械等の使用用途が試行業務のみである場合には、機械等の使用可能期間を試行業務に使用する期間のみと捉えて、購入代金の全額を機械費として計上できることとされている。
コンソーシアムは、本件試行業務の完了後、本件試行業務に要した経費の額が委託費の限度額36,666,000円と同額であったとする精算報告書等を整備局に提出している。そして、整備局は、精算報告書等を審査するなどした上で、同額を委託費の額として確定して、コンソーシアムに支払っている。
本院は、合規性等の観点から、委託費の算定が適切に行われているかなどに着眼して、整備局及びコンソーシアムにおいて、契約書、精算報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
コンソーシアムは、機械費のうち3Dレーザースキャナに係る経費として、コンソーシアムの構成員である株式会社桑原組(以下「桑原組」という。)が販売業者から購入した3Dレーザースキャナの購入代金9,020,000円の全額と操作説明料等560,000円とを合算して計9,580,000円を計上していた。
しかし、3Dレーザースキャナは、近年、土工、舗装工、構造物工等を施工する際の出来形管理等に用いる機械として普及してきていて汎用性が高いものであるのに、整備局は、精算報告書等の審査に当たり、コンソーシアムに対して当該3Dレーザースキャナを本件試行業務以外の用途に使用するか確認していなかった。
そこで、桑原組における3Dレーザースキャナの使用状況を確認したところ、桑原組は、本件試行業務が完了した直後から、3Dレーザースキャナを他の工事の施工現場における出来形管理等の用途に使用していた。
このため、3Dレーザースキャナについて、本件試行業務に係る機械費として計上できる経費は、購入代金の全額ではなく、本件試行業務に使用した期間分の減価償却費4,209,333円であった。また、操作説明料等560,000円は、桑原組が販売業者に対して支払った280,000円が誤って二重に計上されたものであった。
したがって、3Dレーザースキャナに係る経費として、本件試行業務に使用した期間分の減価償却費4,209,333円、操作説明料等280,000円、計4,489,333円を計上するなどして本件試行業務に要した経費の額を算定すると、適正な委託費の額は30,394,151円となり、整備局がコンソーシアムに支払った委託費の額36,666,000円との差額6,271,849円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、コンソーシアムにおいて委託費のうち機械費の算定方法についての理解が十分でなかったことにもよるが、整備局において精算報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。