(4件 不当と認める国庫補助金 45,973,961円)
部局等
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補助事業者等
(事業主体) |
補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(213) |
岡山県
|
岡山県
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防災・安全交付金(河川)
|
2、3 | 352,935 (188,533) |
75,413 | 78,592 (41,982) |
16,793 |
(214) | 同 |
岡山市
|
防災・安全交付金
(下水道) |
2 | 61,710 (57,541) |
28,770 | 15,884 (15,884) |
7,942 |
(215) |
宮崎県
|
宮崎県
|
防災・安全交付金(河川)
|
2、3 | 32,828 (32,828) |
16,414 | 32,546 (32,546) |
16,273 |
(216) | 同 | 同 |
河川メンテナンス
|
4、5 | 10,535 (10,535) |
5,267 | 9,930 (9,930) |
4,965 |
(213)―(216)の計 | 458,009 (289,438) |
125,866 | 136,953 (100,344) |
45,973 |
2県及び1市は、監視制御装置等の設備機器等を更新するなどの電気通信設備工事を実施しており、その実施に当たっては、「電気通信設備工事共通仕様書」(国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室編集。以下「共通仕様書」という。)等に基づき、設備機器等の据付調整等を行うこととしている。
共通仕様書によれば、設備機器等を据え付けるに当たっては、地震時における転倒等の事故を防止できるよう、共通仕様書に規定する耐震据付設計基準(以下「設計基準」という。)等による耐震施工、耐震処置等を行うことなどとされている。
設計基準等によれば、パソコン等の卓上装置を卓上に設置する場合は、移動、転倒等を防止するために、卓の脚をコンクリート床に固定することなどとされている。また、設備機器をフリーアクセス床(注1)に固定する場合は、設備部分の床パネルを切り取り、コンクリート床に取付ボルトの締付け状態が確認できる構造の専用架台を設けてボルトで固定することなどとされている。設備機器等を据え付けるに当たっては、工事の発注者は、設計基準等を満たした適切な耐震施工を施すために必要な強度検討資料を作成し、これを請負人に提示することとされている。そして、請負人は、強度検討資料の照査を実施して、その結果を発注者に提示し、発注者はこれを確認した上で、請負人に適切に施工させることになっている。また、請負人は、発注者から強度検討資料の提示がない場合は、発注者に協議を求めることとされている。
また、設計基準等によれば、設備機器等の据付けにアンカーボルトを使用する場合には、設備機器等に作用する水平力、鉛直力等による引張力(注2)等を算出し、適切なものを選定しなければならないことなどとされている。そして、既設のアンカーボルトを流用する場合は、アンカーボルト全数に対して、上記の引張力によりアンカーボルトに抜け出しが生じないことなどを確認する試験(以下「非破壊試験」という。)を実施することなどとされている。
しかし、岡山県及び岡山市は、設備機器等をフリーアクセス床に据え付けるに当たり、強度検討資料を作成しておらず、請負人は、施工に当たり、発注者から強度検討資料の提示がない場合の協議を求めていなかった。そして、岡山県において、請負人はフリーアクセス床の床パネルに卓上装置の卓の脚を取付金具で固定するだけで、コンクリート床に固定するという設計基準等を満たした適切な耐震施工を行っていなかった。また、岡山市において、請負人はフリーアクセス床に設備機器を据え置くなどしただけで、設備部分の床パネルを切り取り、コンクリート床に専用架台を設けてボルトで設備機器を固定するという設計基準等を満たした適切な耐震施工を行っていなかった。
宮崎県は、設備機器等をアンカーボルトを使用して据え付けるに当たり、設計基準等に基づく耐震処置の検討を行っておらず、設計基準等が規定された共通仕様書等を特記仕様書に記載していなかった。このため、既設のアンカーボルトを流用して更新後の設備機器等を据え付ける場合に必要となる非破壊試験が実施されておらず、宮崎県は、既設のアンカーボルトが設計基準等を満たしているか確認していなかった。
そこで、設計基準等に基づき、流用したアンカーボルトに地震時に作用する引張力を算出し、これによりアンカーボルト全数に対して非破壊試験を実施したところ、一部のアンカーボルトに抜け出しが生じた。
したがって、監視制御装置等(工事費相当額計136,953,867円、交付等対象事業費計100,344,513円)は、設計及び施工、又は設計が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして損傷し、所定の機能が維持できないおそれがある状態となっており、これらに係る交付金等相当額計45,973,961円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、岡山県及び岡山市において設計基準等に基づく強度検討資料の作成等の必要性に対する理解が十分でなかったこと、監督及び検査に当たり共通仕様書についての理解が十分でなかったこと、宮崎県において設備機器等を据え付けるに当たって耐震処置を行うことについての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
岡山県は、岡山市北区建部町鶴田地内において、令和2、3両年度に、旭川ダムの放流操作装置、表示制御装置等(以下、これらを合わせて「放流操作装置等」という。)の更新を実施していた。
放流操作装置等は、洪水調節等を行うことを目的として、ダムの流入量、放流量等の算出、放流設備の監視制御等を行うなどするものであり、卓上に設置されていた。
しかし、同県は、強度検討資料を作成しておらず、請負人は、施工に当たり、同県から強度検討資料の提示がない場合の協議を求めることなく、フリーアクセス床の床パネルに放流操作装置等の卓の脚を取付金具で固定するだけで、コンクリート床に固定するという設計基準等を満たした適切な耐震施工を行っていなかった(参考図1参照)。
したがって、放流操作装置等(工事費相当額78,592,292円、交付対象事業費41,982,938円、交付金相当額16,793,175円)は、設計及び施工が適切でなかったため、放流操作装置等を設置している卓が地震時に転倒するなどして損傷し、所定の機能が維持できないおそれがある状態となっていた。
<事例2>
宮崎県は、宮崎市祇園地内において、令和2、3両年度に、一級河川大淀川水系小松川の小松川分流水門等管理所に設置している小松川分流水門及び小松川放水路樋門を遠方操作等する遠方手動操作卓及び表示設定操作卓の監視操作制御装置(以下「制御装置」という。)の更新を実施していた。
同県は、更新前と同等の制御装置を据え付けることとして、アンカーボルト計8本(径12㎜)でコンクリート床に固定されていた既設の鉄骨架台を、そのままの状態で再利用し、当該鉄骨架台に更新した制御装置を取付ボルトで固定するなどしていた(参考図2参照)。
しかし、同県は、制御装置等をアンカーボルトを使用して据え付けるに当たり、設計基準等に基づく耐震処置の検討を行っておらず、設計基準等が規定された共通仕様書等を特記仕様書に記載していなかった。このため、既設のアンカーボルトを流用して更新後の制御装置等を据え付ける場合に必要となる非破壊試験が実施されておらず、同県は、既設のアンカーボルトが設計基準等を満たしているか確認していなかった。
そこで、設計基準等に基づき、流用した既設のアンカーボルトに地震時に作用する引張力を算出したところ、7.95kN/本となった。そして、流用した既設のアンカーボルト全数に対してこの引張力により非破壊試験を実施したところ、全8本中5本に抜け出しが生じた。
したがって、制御装置(工事費相当額32,546,121円、交付金相当額16,273,060円)は、設計が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして損傷し、所定の機能が維持できないおそれがある状態となっていた。
(参考図1)
当局が行った施工の概念図
(参考図2)
制御装置等の概念図