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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 国土交通省|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

集水桝(ます)の設計が適切でなかったもの[2県](224)(225)


(2件 不当と認める国庫補助金 7,844,275円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(224)
岐阜県
各務原市
防災・安全交付金(下水道)
2、3 74,824
(64,928)
32,464 13,288
(11,530)
5,765
(225)
宮崎県
宮崎県
防災・安全交付金(河川)
2~4 59,397
(59,397)
29,698 4,157
(4,157)
2,078
(224)(225)の計 134,221
(124,326)
62,163 17,445
(15,688)
7,844

宮崎県及び各務原市は、雨水を河川に排水するなどのために、日向市大字幸脇地内及び各務原市那加門前町外地内において、集水桝(ます)、側溝、管渠(きょ)等の築造等を実施している。

このうち集水桝は、道路下を横断する管渠の接続部等に設置するもので、宮崎県及び各務原市は無筋コンクリート造の集水桝17基(宮崎県6基、各務原市11基)の築造を、それぞれ実施している(参考図参照)。

これらの集水桝の設計について、宮崎県は「国土交通省制定土木構造物標準設計1 側こう類・暗きょ類」(社団法人全日本建設技術協会。以下「標準設計」という。)等に基づき、各務原市は「道路設計要領 平成27年4月」(岐阜県県土整備部道路建設課・道路維持課制定。以下「要領」という。)等に基づき、それぞれ行うこととしている。

集水桝の設計に当たり、宮崎県は、標準設計等における標準図のうち、歩道等に設置する場合に用いる集水桝として、側壁に自動車荷重が作用することを考慮した集水桝の標準図に基づいて側壁、底版等の寸法を決定するなどして、これにより施工していた。また、各務原市は、要領等における集水桝に自動車荷重の影響を考慮しない標準図に基づいて側壁、底版等の寸法を決定して、これにより施工していた。

しかし、宮崎県及び各務原市は、集水桝17基について、車両等が集水桝の上部等を通行する路肩等に設置しており、集水桝の真上等に自動車荷重が作用する状況となっていて、標準図とは異なる荷重条件となっていたことなどから、実際に作用する自動車荷重等の影響を考慮した応力計算を行うべきであったのに、これを行っていなかった。

そこで、宮崎県及び各務原市の集水桝について、実際に作用する自動車荷重を考慮するなどして応力計算を行ったところ、集水桝17基のうち14基(宮崎県6基、各務原市8基)については、側壁や底版のコンクリートに生ずる曲げ引張応力度(注)が、コンクリートの許容曲げ引張応力度(注)をそれぞれ大幅に上回るなどしていて、いずれも応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

(注)
曲げ引張応力度・許容曲げ引張応力度  「曲げ引張応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち引張側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容曲げ引張応力度」という。

したがって、宮崎県及び各務原市が設置した集水桝14基等(工事費相当額計17,445,914円、交付対象事業費計15,688,551円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これらに係る交付金相当額計7,844,275円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、宮崎県及び各務原市において、標準設計又は要領に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

各務原市は、令和2、3両年度に、側溝、無筋コンクリート造の集水桝11基(高さ0.6ⅿ~1.6ⅿ、幅0.5ⅿ~1.5ⅿ)の築造等を実施していた。

集水桝の設計に当たり、同市は、無筋コンクリート造の集水桝11基について、要領等における集水桝に自動車荷重の影響を考慮しない標準図に基づいて側壁、底版等の寸法を決定して、これにより施工していた。

しかし、同市は、集水桝11基について、車両等が集水桝の上部等を通行する路肩等に設置していたことから、自動車荷重等の影響を考慮した応力計算を行うべきであったのに、これを行っていなかった。

そこで、集水桝11基について自動車荷重を考慮するなどして応力計算を行ったところ、8基において、側壁のコンクリートに生ずる曲げ引張応力度の最大値は0.30N/ⅿから0.43N/ⅿまで、底版のコンクリートに生ずる曲げ引張応力度の最大値は1.43N/ⅿから1.61N/ⅿまでとなり、コンクリートの許容曲げ引張応力度0.23N/ⅿを大幅に上回るなどしていて、いずれも応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件集水桝8基等(工事費相当額13,288,050円(交付対象事業費11,530,687円)、交付金相当額5,765,343円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっていた。

(参考図)

集水桝の概念図

集水桝の概念図