(1件 不当と認める国庫補助金 15,782,698円)
部局等
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補助事業者等
(事業主体) |
補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(227) |
関東地方整備局
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千葉県
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社会資本整備総合交付金(港湾改修)
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3~5 | 297,251 (287,984) |
95,994 | 47,348 (47,348) |
15,782 |
千葉県は、地方港湾である館山港において、多目的桟橋(以下「桟橋」という。)の歩道部のウッドデッキを下部で支えるブラケット等の鋼製部材が腐食したことから、ウッドデッキの改修等(延長計254.3ⅿ)を実施している(参考図1及び2参照)。
同県は、ウッドデッキの設計を「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(国土交通省港湾局監修。以下「基準」という。)等に基づき行うこととしている。
基準等によれば、港湾施設の要求性能について、設計供用期間中に発生する可能性の高い波浪等の作用による損傷等が港湾施設の機能を損なわず継続して使用することに影響を及ぼさないことなどとされている。
改修前の桟橋のウッドデッキは、鋼製の枠に合成樹脂製のウッドデッキの板材を複数枚はめ込んだパネルを並べた構造となっており、ウッドデッキの下面にウッドデッキを持ち上げようとする揚圧力が作用して桟橋の安定性に影響を与えるような波浪(以下「高波浪」という。)時には、あらかじめパネルをスライドさせるなどして取り外すことができるようになっていた。
同県は、ウッドデッキの改修について、当初、既存のパネルを再利用することとしていたが、請負人から、パネルの鋼材の腐食が著しく再利用することが困難な状態であるため、パネルを並べた構造から、ウッドデッキの直下にある鋼製の桁に直接ビス等でウッドデッキの板材を固定する構造に変更したい旨の協議の申入れを受けた。そして、同県は、改修前と同様に、高波浪時にはあらかじめウッドデッキを取り外すことを前提として、申入れの内容を承諾し、請負人はこれに基づき、約3,600本のビスで約760枚の板材を固定していた。
しかし、同県は、ウッドデッキの構造変更を承諾するに当たり、取り外しが必要となる波浪の高さや発生頻度等の海象条件等について確認しておらず、ウッドデッキを取り付けた状態での波浪による揚圧力がウッドデッキに与える影響を検討していなかった。そこで、ウッドデッキに作用する揚圧力を考慮して、ウッドデッキのビスに生ずる引張応力(注1)等を確認したところ、朔(さく)望平均満潮位(注2)における桟橋付近の波浪の高さが2.0ⅿ(以下「波浪高2.0ⅿ」という。)の場合において、ウッドデッキの板材を固定するビスに生ずる引張応力がウッドデッキの側端のビスを除き1,057.5N/本となり、許容引張応力(注1)755.6N/本を大幅に上回っていた。このため、波浪高2.0ⅿ以上の波浪が予想される際にウッドデッキを取り付けたままの場合には、側端以外のビスが破断してウッドデッキが破損するおそれがある状態となることが想定された。
そして、波浪高2.0ⅿ以上の波浪の発生数は、気象庁の観測した海象データによると、過去3年間の平均で年間15回程度となっていて、波浪高2.0ⅿ以上の波浪が予測される都度、約760枚の板材を固定する約3,600本のビスを引き抜いてウッドデッキを取り外すことなどは、同県において想定されておらず、作業費用や作業体制等の面から現実的に困難であると認められた。
したがって、桟橋の歩道部のウッドデッキ延長計254.3ⅿ(工事費相当額計47,348,093円、交付対象事業費同額)は、設計が適切でなかったため、波浪高2.0ⅿ以上の波浪が予測される都度、取り外すことが現実的に困難な状況下において、波浪による揚圧力により破損するおそれがある状態となっていて、これに係る交付金相当額15,782,698円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、高波浪時にはウッドデッキを取り外すことを前提としていながら、取り外しが必要となる海象条件等を確認していなかったこと、ウッドデッキを取り付けた状態での波浪による揚圧力がウッドデッキに与える影響を検討していなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
桟橋のウッドデッキの概念図
(参考図2)
桟橋のウッドデッキの構造(断面図)