ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

橋台の設計が適切でなかったもの[長野県](228)


(1件 不当と認める国庫補助金 5,961,127円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(228)
長野県
長野県
防災・安全交付金(河川)
2、3 162,910
(162,910)
81,455 11,922
(11,922)
5,961

長野県は、諏訪郡下諏訪町において、一級河川承知川の拡幅等により当該河川の流下能力を向上させるなどのために、矢板護岸工、橋りょう工等を実施している。

このうち橋りょう工は、承知川の拡幅に伴い、承知川と町道富部新道線7号が交差する箇所に架かる車両の通行を想定しない人道橋を新橋(橋長10.6ⅿ、幅員1.4ⅿ)に架け替えるために、下部構造として直接基礎の重力式橋台2基(以下、左岸側の橋台を「A1橋台」、右岸側の橋台を「A2橋台」という。)の築造、上部構造として鋼桁等の製作、架設等を実施したものである。

同県は、本件橋りょうの設計を「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)に基づいて行うこととしており、示方書によれば、地震時に支承部が破壊されたとしても上部構造が容易に落下しないように、落橋防止システムにより適切な対策を講ずることとされており、橋軸方向に対する対策は、桁かかり長(注)を確保することなどにより行うこととされている。そして、桁かかり長については、支承部が破壊したときに、上部構造が下部構造の頂部から逸脱して橋軸方向に落下するのを防止するために必要な長さ(以下、この必要な長さを「必要桁かかり長」という。)を算出し、必要桁かかり長以上の長さを確保することとされている。

同県は、本件橋りょうの設計に当たり、平成21年に道路管理者である下諏訪町と協議を行い、下部構造については、既設橋りょうと同等のものとすることとし、これにより施工していた。

しかし、同県は、本件橋りょうについて、人道橋であることなどから、示方書に基づく落橋防止システムの対策を行う必要がないとして、その検討を行っていなかった。そこで、示方書に基づいて、必要桁かかり長を算出したところ75.1㎝となり、施工された本件橋りょうの現況の桁かかり長はA1橋台では63.5㎝、A2橋台では59.5㎝となっていることから、必要桁かかり長に比べて長さが不足しており、落橋防止システムの性能が確保されていない状況となっていた(参考図参照)。

したがって、本件橋りょうは、橋台の設計が適切でなかったため、上部構造の所要の安全度が確保されていない状態となっていて、橋台及びこれに架設された鋼桁等(工事費相当額11,922,255円)は、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額5,961,127円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、示方書についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
桁かかり長  橋桁の端部から橋座部の縁端までの長さ

(参考図)

上流側から見た橋りょう概念図

上流側から見た橋りょう概念図