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  • 令和5年度|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

側壁護岸の設計が適切でなかったもの[島根県](229)


(1件 不当と認める国庫補助金 3,659,328円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(229)
島根県
島根県
防災・安全交付金(砂防)
2、3 56,763
(55,326)
27,663 7,333
(7,318)
3,659

島根県は、出雲市佐田町一窪田地内において、土砂災害警戒区域内にある指定避難所等を保全する砂防事業として、前庭保護工、間詰工等を実施している。

このうち前庭保護工は、砂防えん堤本体からの落下水、落下砂れきによる基礎地盤の洗掘及び下流の河床低下の防止のために、砂防えん堤本体の下流部において左岸側及び右岸側にそれぞれ側壁護岸(高さ2.6ⅿ~5.0ⅿ、延長14.9ⅿ)等を築造するものである(参考図1参照)。また、間詰工は、地山を掘削して、土砂で埋め戻した後の法面を保護するために、左岸側の側壁護岸背面の上段にブロック積擁壁(高さ2.35ⅿ~5.0ⅿ、延長9.34ⅿ)を、更にこのブロック積擁壁背面の上段に二段の間知ブロック張(高さ3.71ⅿ及び5.47ⅿ、延長4.0ⅿ及び3.6ⅿ。以下、これらを合わせて「ブロック積擁壁等」という。)をそれぞれ築造するなどするものである(参考図2参照)。

同県は、本件工事の設計を「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編)、「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編)、「島根県設計・測量・調査等業務共通仕様書」(島根県土木部編。以下、これらを合わせて「基準」という。)等に基づいて行うこととしている。

基準等によれば、側壁護岸は、砂防えん堤本体からの落下水による下流部の側方浸食を防止するためのものであり、側壁護岸が受け持つ土圧に対して安全な構造とするなどとされている。また、安全な構造であるかの照査に用いる土圧については、側壁護岸背面に生ずる土圧(以下「主働土圧」という。)を用いることなどとされている。そして、側壁護岸は、計画地点の設計条件により設計計算を行い、計算結果に基づく設計を行うことなどとされている。

しかし、同県は、埋め戻した土砂やブロック積擁壁等の載荷重により主働土圧が生ずるのに、これに対して側壁護岸が安全な構造であるかについて、設計計算を行うなどの基準等に基づく照査を行っていなかった。

そこで、基準等に基づき、主働土圧を算定するなどして側壁護岸について設計計算を行ったところ、左岸側について次のとおり、設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった(参考図3参照)。

① 滑動に対する安定は、安全率が0.62となり、許容値である1.5を大幅に下回っていた。

② 転倒に対する安定は、主働土圧による水平荷重及び側壁護岸のコンクリートの自重等による鉛直荷重の合力の作用位置が、側壁護岸底面(幅1.73ⅿ)中央の位置から側壁護岸前面側に0.76ⅿの位置となり、安全とされる合力の作用位置の範囲(側壁護岸底面中央の位置から側壁護岸背面側)を大幅に逸脱していた。

③ 基礎地盤の支持力に対する安定は、地盤反力度が946.42kN/㎡となり、許容支持力度600kN/㎡を大幅に上回っていた。

したがって、本件左岸側の側壁護岸等(工事費相当額7,333,869円、交付対象事業費7,318,657円)については、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る交付金相当額3,659,328円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、基準等についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1)

前庭保護工の概念図

前庭保護工の概念図

(参考図2)

間詰工の概念図

間詰工の概念図

(参考図3)

左岸側の側壁護岸における設計計算結果の概念図

左岸側の側壁護岸における設計計算結果の概念図