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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) Xバンド雨量計の精度を検証するなどのために使用する測定器について、調達の際に他の地方整備局等が管理している測定器の状況を踏まえて調達の必要性を検討することや、測定器を用いてXバンド雨量計の精度の向上を図るなどの精度向上業務に取り組むことについて周知することなどにより、測定器の調達を適切に実施するとともに、調達した測定器を有効に活用するよう改善させたもの


会計名
一般会計
部局等
国土交通本省、東北地方整備局
測定器の概要
実際の雨粒の形状等を直接計測して分析し、Xバンド雨量計による観測データと比較することにより、Xバンド雨量計の精度を検証するなどのために使用するもの
検査の対象とした測定器の台数及び調達価格相当額
18台 2億1220万余円(平成21年度~24年度)
調達しなくてもXバンド雨量計の精度の維持に特段の支障はないのに調達され、使用されていなかった測定器の台数及び調達価格相当額
4台2885万円

1 Xバンド雨量計及び測定器の概要等

国土交通省は、適切な河川管理、防災活動等に役立てることを目的として、平成22年度から、電波を用いて雨粒の量、形状等を把握するXバンドMPレーダ雨量計(以下「Xバンド雨量計」という。)による雨量観測を実施している。そして、令和5年度末現在、全国に39基のXバンド雨量計を設置しており、これらのXバンド雨量計による観測データ等に基づく雨量情報をウェブサイト上で公表している。

地方整備局等は、Xバンド雨量計を設置する際等に、必要に応じて雨滴粒径分布測定器(以下「測定器」という。)を調達している。測定器は、実際の雨粒の形状等を直接計測して分析し、Xバンド雨量計による観測データと比較することにより、Xバンド雨量計の精度を検証するなどのために使用する機器である。測定器は可搬型の機器であることから、地方整備局等の事務所等から搬出して任意の場所に設置することが可能であり、また、複数のXバンド雨量計の観測範囲が重なる場所に測定器を設置することにより、1台で複数基のXバンド雨量計の精度を検証することが可能なものとなっている。

そして、測定器を用いて実施される業務としては、次のようなものがある。

① Xバンド雨量計による雨量観測に関する知見等が十分に蓄積されていなかった初期に設置するなどしたXバンド雨量計について、設置する際や設置してからしばらくの間(最長で5年間)、雨滴定数(注1)等の設定を行うためにXバンド雨量計の精度を検証するなどの業務(以下「初期調整等」という。)

② 雨量観測を実施する過程でXバンド雨量計の異常が検知され、測定器による精度の検証が必要と認められた際に、Xバンド雨量計の精度を検証するなどの業務(以下「異常検知対応」という。)

③ 近年、集中豪雨や局所的な大雨による水害、土砂災害等が増加していて、雨量観測の精度の向上に取り組んでいくことの重要性が一層高まっていることなどから、設置されている現場の状況等を踏まえて、Xバンド雨量計の精度の向上を図るために精度を検証するなどの業務(以下「精度向上業務」という。)

(注1)
雨滴定数  雨粒から反射して返ってくる電波の受信電力から雨量強度を算出するために用いる定数

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性、有効性等の観点から、測定器の調達は適切に実施されているか、調達された測定器は有効に活用されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、Xバンド雨量計を設置している8地方整備局等(注2)のうち、令和6年能登半島地震により大きな被害を受けた地域を管轄する北陸地方整備局及び測定器を調達していない北海道開発局を除く6地方整備局が調達した測定器計18台(調達価格相当額(注3)計2億1220万余円)を対象とした。そして、6地方整備局において、契約台帳等を確認するとともに、測定器の使用状況等を聴取するなどして会計実地検査を行った。また、国土交通本省において、地方整備局等に対する指導等の状況を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
8地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局
(注3)
測定器と同時に調達した雨粒測定装置(Xバンド雨量計の精度を検証するなどの際に測定器とともに用いる装置)の調達価格相当額を含む。

(検査の結果)

6地方整備局におけるXバンド雨量計の基数及び測定器の台数、使用状況等についてみたところ、のとおり、東北地方整備局を除く5地方整備局は、1台の測定器で複数基のXバンド雨量計の精度を検証することが可能であることを考慮するなどして、Xバンド雨量計の基数より少ない台数の測定器を調達していた。そして、5地方整備局が調達した測定器は、いずれも初期調整等に使用されるなどしていた。

一方、東北地方整備局は、測定器を用いずに初期調整を実施していたものの、異常検知対応を実施する必要が生じた場合に備えて、Xバンド雨量計1基につき測定器1台を調達することとして、平成23年度に2台(調達価格相当額1442万余円)、24年度に4台(同2885万余円)の計6台(同4328万余円)を調達していた。しかし、結果として異常検知対応を実施する必要は生じず、調達した測定器計6台を令和5年度までの間、全く使用していなかった。

表 Xバンド雨量計の基数並びに測定器の台数及び使用状況

(単位:基、台)
地方整備局名 Xバンド雨量計の基数 測定器の調達台数 測定器の使用状況
東北地方整備局 6 6 全く使用されていなかった。
関東地方整備局 5 1 いずれの測定器も初期調整等に使用されるなどしていた。
中部地方整備局 7 3
近畿地方整備局 4 3
中国地方整備局 4 2
九州地方整備局 7 3
33 18

そこで、東北地方整備局における測定器の調達の必要性について確認したところ、同局が調達した測定器6台のうち少なくとも平成24年度に調達した4台については、次のことから、調達しなくてもXバンド雨量計の精度の維持に特段の支障はなかったと認められた。

① 異常検知対応は、異常が検知されたXバンド雨量計について精度の検証を行う業務であるため、必ずしも全てのXバンド雨量計について同時に精度を検証する必要はないこと

② 仮に全てのXバンド雨量計について同時に精度を検証する必要が生じた場合でも、複数のXバンド雨量計の観測範囲が重なる場所に測定器を設置することにより、基本的に、測定器2台で同局が設置しているXバンド雨量計全6基の精度を検証することが可能であったこと

③ 23年度に調達した測定器2台のほかに測定器が必要となったとしても、他の地方整備局の測定器を借り受けることなどができるよう調整する体制が国土交通省において整備されていれば、これに基づいて他の地方整備局の測定器を使用することが可能であったこと

また、関東、近畿両地方整備局が調達した測定器は、初期調整等のほかに、降雨と降雪を判別して観測することなどによりXバンド雨量計等の精度の向上を図る精度向上業務にも使用されていたが、東北地方整備局を含む4地方整備局が調達した測定器は、精度向上業務に使用されていなかった。

このように、一部の地方整備局において、調達しなくても特段の支障はない測定器が調達され、使用されていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、国土交通省において、次のことなどによると認められた。

ア 地方整備局が測定器を調達する際に、調達の必要性についての検討が十分でなかったこと

イ 地方整備局等が他の地方整備局等の測定器を借り受けることなどができるよう調整する体制を整備していなかったこと

ウ 地方整備局等に対して、測定器を用いて精度向上業務に取り組むよう周知していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、国土交通本省は、令和6年8月に地方整備局等に対して事務連絡を発して、測定器の調達を適切に実施するとともに、調達した測定器を有効に活用するよう、次のような処置を講じた。

ア 各地方整備局等が管理している測定器の状況を国土交通本省が適時に把握することとし、地方整備局等が測定器を調達しようとする際には、事前に国土交通本省に相談するとともに、他の地方整備局等が管理している測定器の状況を国土交通本省に確認して、その結果を踏まえて調達の必要性を検討するよう周知した。

イ 地方整備局等が他の地方整備局等の測定器を借り受けることなどができるよう調整する体制を整備した。

ウ 地方整備局等に対して、測定器を用いて精度向上業務に取り組むよう周知した。