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  • (3) 工事の設計が適切でなかったもの

循環型社会形成推進交付金事業において、整備した施設のプラント設備の架台、歩廊等の落雷対策に係る設計が適切でなかったもの[徳島県](244)


(1件 不当と認める国庫補助金 13,927,706円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(244)
徳島県
那賀郡那賀町
循環型社会形成推進交付金
平成29~令和元
2,602,800
(1,980,085)
660,027 41,783
(41,783)
13,927

那賀町は、循環型社会形成の推進に必要な廃棄物処理施設の整備を実施している。

本件施設は、粗大ごみ、不燃ごみ、資源ごみなどの圧縮・梱包等を行うとともに、可燃ごみの焼却処理等を行うための施設であり、地上4階建て、最大高さ地上30ⅿの鉄骨造及び鉄筋コンクリート造の建物を築造し、その中に資源ごみ処理設備、灰出し設備等のプラント設備を設置したものである。このうち、プラント設備は、金属製の架台の上にゴム製の防振用の部材等を使用して設置されており、その架台と作業員が使用する歩廊等(以下「プラント設備の架台、歩廊等」という。)は一体となっていて、アンカーボルトでコンクリート基礎に固定されている。

建築基準法(昭和25年法律第201号)によれば、高さ20ⅿを超える建物には、避雷設備を設けなければならないこととされており、同法等によれば、避雷設備の構造は、雷電流を導線で大地に導き、接地(注1)により地中に放流させるなどの落雷対策について定めた日本工業規格(令和元年7月以降は日本産業規格)の「建築物等の避雷設備(避雷針)(JIS A 4201―1992)」(以下「避雷設備規格」という。)等に適合しなければならないなどとされている。

そして、避雷設備規格によれば、建物の避雷設備は、受雷部(注2)、避雷導線(注3)及び接地極(注4)で構成される構造とすることとされており、建物が鉄骨造、鉄筋コンクリート造等である場合には、鉄骨等を避雷導線としてもよいこととされている。

また、避雷設備規格等によれば、建物内に設置される設備等の落雷対策に係る構造基準について、雷電流が避雷導線を流れる際に、近接する金属体との間で、せん絡(注5)するなどのおそれがあることから、避雷導線からの距離が1.5ⅿ以内にある金属体は、接地することなどとされている(以下、当該金属体を接地する構造を「金属体接地構造」という。)。

(注1)
接地  雷電流等を安全に地中に放流して、雷電流等から機器等を守るなどのために、電気設備機器、電路等を電気伝導体の導線、電極等により電気的に大地と接続すること
(注2)
受雷部  雷撃を受け止めるための金属体
(注3)
避雷導線  受雷部で受け止めた雷電流を接地極に流す導線
(注4)
接地極  接地のために地中に埋設する導体
(注5)
せん絡  火花等を伴って空気中を電流が流れる危険な放電

同町は、本件施設の整備に当たり、設計及び施工を一括して請負人に請け負わせ、請負人から実施設計図面等の提出を受けて、これを確認して承諾した上で施工させるなどして実施している。

本件施設の設計に当たり、請負人は、建物の避雷設備についてだけでなく、建物内には多くの金属製のプラント設備やプラント設備の架台、歩廊等が設置されることから、これらの落雷対策のための構造等についても避雷設備規格を適用することとしている。

同町は、請負人から、プラント設備等の設計に先立って、本件施設の建物内における4本の鉄骨の柱を避雷導線とする建物の避雷設備の実施設計図面の提出を受けていた。そして、当該実施設計図面においては、避雷導線から1.5ⅿ以内に近接する金属体について、金属体接地構造とするよう明記されており、同町はこれを確認の上、承諾していた。

しかし、同町が、その後請負人から提出を受けたプラント設備等の実施設計図面においては、本件施設の避雷導線としていた4本の鉄骨の柱のうち2本からそれぞれ1.5ⅿ以内の距離にプラント設備の架台、歩廊等を配置することにしているのに、金属体接地構造とすることが示されていなかった。そして、同町はこの金属体接地構造とすることが示されていないプラント設備等の実施設計図面を確認の上、承諾しており、請負人はこれによりプラント設備等を施工していた。

このため、本件施設の建物の避雷設備は、雷電流を安全に地中に放流できる構造となっている一方で、プラント設備の架台、歩廊等については、金属体接地構造となっておらず、雷電流によって避雷導線である鉄骨からせん絡等を受けて生ずる電流を安全に地中に放流できず、コンクリート基礎が損傷等するおそれのある状態となっていた(参考図参照)。

したがって、本件プラント設備の架台、歩廊等(工事費41,783,119円、交付対象事業費同額)は、落雷対策に係る設計が適切でなかったため、落雷時にコンクリート基礎が損傷等することにより所要の安全度が確保されず、本件施設の稼働に支障が生ずるおそれがある状態となっており、これに係る交付金相当額13,927,706円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において請負人から提出されたプラント設備等の実施設計図面等の確認が十分でなかったこと、徳島県において同町に対する助言が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

本件施設の避雷設備とプラント設備の架台、歩廊等の概念図

本件施設の避雷設備とプラント設備の架台、歩廊等の概念図