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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第10 環境省|
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  • (4) 工事の施工が適切でなかったもの

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(脱フロン社会構築に向けた業務用冷凍空調機器省エネ化推進事業)事業において、冷凍空調設備の設置に係る施工が適切でなかったもの[環境本省](245)


(1件 不当と認める国庫補助金 10,128,096円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(245)
環境本省
一般財団法人日本冷媒・環境保全機構
日東アリマン株式会社
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(脱フロン社会構築に向けた業務用冷凍空調機器省エネ化推進事業)
29 81,200
(48,720)
24,360 33,760
(20,256)
10,128

日東アリマン株式会社(以下「会社」という。)は、新潟市内の自社工場の冷凍冷蔵倉庫において、フロン類を冷媒とする既設の冷凍空調設備を環境負荷の少ない二酸化炭素を冷媒とする冷凍空調設備に更新等するために、コンデンシングユニット(注1)10台、ユニットクーラー10台、電源盤2面、動力制御盤4面等(以下、これらの設備を合わせて「本件設備」という。)を事業費81,200,000円(補助対象事業費48,720,000円、補助金交付額24,360,000円、国庫補助金相当額同額)で導入している。同工場においては、電力会社から6,600Vで受電して電気を使用しており、受電設備により200Vに変圧して、本件設備の冷凍空調機能に必要な全電力を供給している。

(注1)
コンデンシングユニット  圧縮機、凝縮器、受液器等を一の金属製の外箱に納めた循環する冷媒を再液化する装置で、室内機であるユニットクーラー等と熱交換を行うことで、冷凍、冷蔵、空調等の用途に使用することが可能となる室外機

環境省は、本件補助事業の実施に当たり、事業主体から提出された交付申請書の受理、交付の決定、実績報告書等の審査、補助金の交付等の事務を公募により選定した者に行わせており、平成29年度については、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構(以下「機構」という。)が選定されている。そして、会社は、本件補助事業について、機構に実績報告書等を提出して、機構から補助金の交付を受けていた。

電気事業法(昭和39年法律第170号)、電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号)等によれば、電気の使用のために設置する機械器具等は、一般用電気工作物と事業用電気工作物に分類され、600Vを超える電圧で受電して電気を使用する機械器具等は事業用電気工作物に該当するとされている。そして、一般家庭等において冷蔵庫等の電気製品を接続する屋内配線のように電源の電圧が低い一般用電気工作物と異なり、事業用電気工作物については、同法、電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)等(以下「電気事業法等」という。)において、安全確保のために遵守する必要がある基準が規定されている。また、電気事業法等によれば、電気設備のうち必要な箇所には、漏電(注2)等の異常時の電位(注3)上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件への損傷を与えるおそれがないように接地(注4)等の適切な措置を講じなければならないこととされており、電路に施設する機械器具の金属製の外箱(以下「金属製外箱」という。)等には、漏電等の発生時に漏電遮断器(注5)を作動させる役目等を有しているとされている接地工事を施すこととされている。そして、接地等の措置が適切に講じられていない場合には、電気回路のケーブルの劣化、損傷等に伴い漏電等が発生しても、漏電遮断器が作動せず、金属製外箱の電位が上昇し、電流が流れ、過熱することなどにより、金属製外箱に納めた機械器具が損傷等するおそれがあるとされている。

(注2)
漏電  電気回路のケーブルが劣化、損傷等することにより、電気回路以外の箇所に電流が流れることをいう。ケーブルの劣化、損傷等は、寒暖差や振動等の影響により進行する。
(注3)
電位  電気的なエネルギーの強さのこと。漏電等の異常時に、金属体に現れる電位が上昇すると機械器具に損傷を与えるなどの危険が高くなる。
(注4)
接地  漏電電流等を安全に大地に放流して、漏電電流等から人体、機械器具等を守るなどのために、電気設備機器、電路等を電気伝導体の導線、電極等により電気的に大地と接続すること
(注5)
漏電遮断器  正常時において、電気回路に流れる電流の量は行きと戻りが同じだが、漏電等の発生時に、漏電電流等が接地により大地に放流され、行きと戻りの電流の量に差が生ずると、これを感知して電気回路を瞬時に遮断する機器。接地工事が施されていないなど、接地が不完全な場合、漏電遮断器が正常に作動しない。

会社は、本件設備の設置に係る設計、施工等を請負人に行わせることとしており、請負人は、本件設備が電力会社から600Vを超える電圧で受電して電気を使用する機械器具であるため、事業用電気工作物に該当することから、電気事業法等に基づき、本件設備を接地するよう設計した上で施工することとしていた。そして、請負人は、設計に当たり、コンデンシングユニットの金属製外箱と別途工事により接地が行われている電源盤とを接続する導線(以下「コンデンシングユニット用の接地線」という。)を配線することにより接地工事を施すこととする詳細設計図面を作成していた。

しかし、請負人は、本件設備の設置に係る施工に当たり、詳細設計図面において配線することとなっていたコンデンシングユニット用の接地線の配線を全く行っていなかった(参考図参照)。

したがって、本件補助事業により設置したコンデンシングユニット10台(事業費相当額33,760,321円、補助対象事業費20,256,192円)は、施工が適切でなかったため、漏電等の発生時に漏電遮断器が作動せず、コンデンシングユニットの金属製外箱が過熱することなどに起因して損傷等し、冷凍空調機能の維持が確保されないおそれがある状態となっていて、これに係る国庫補助金相当額10,128,096円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社においてコンデンシングユニット用の接地線の配線が行われていなかったのに、これに対する確認が十分でなかったこと、機構において会社への指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

本件設備の接地に係る概念図

本件設備の接地に係る概念図