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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(3) 給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事の設計及び施工に当たり、両配管の位置関係や間隔に関する条件等を上水設計要領、下水設計要領及び特記仕様書に明記することなどにより、両配管の埋設が適切に行われるよう改善させたもの


所管、会計名及び科目
防衛省所管
一般会計 (組織)防衛本省
(項)防衛力基盤強化施設整備費(令和2年度から4年度までは(項)防衛力基盤強化推進費、元年度は(項)防衛力基盤整備費)
(項)在日米軍等駐留関連諸費
国土交通省所管
自動車安全特別会計(空港整備勘定)
(項)空港整備事業費(支出委任)
部局等
内部部局、6防衛局
給水管又は汚水排水管の埋設工事の概要
自衛隊の使用に供する施設等における給水管又は汚水排水管の埋設を行うもの
検査の対象とした給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事に係る契約数及び契約額
65契約  266億2760万余円(令和元年度~5年度)
上記のうち条件を満たした埋設が行われず、必要な給水管の保護が行われていない工事に係る契約数、箇所数及び当該箇所の直接工事費
15契約 34か所1419万円(令和元年度~5年度)

1 給水管及び汚水排水管の埋設工事の概要

防衛省は、防衛省設置法(昭和29年法律第164号)等に基づき、自衛隊の使用に供する施設を新たに取得し、又は既に取得した施設を改修するなどの施設整備を実施しており、給水管、汚水排水管又は両配管の埋設を伴う工事に係る設計、施工又はそれらを一括して行う工事を業者に請け負わせて実施している。

給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事は、上水道、下水道両施設の新設等の工事として行うほか、庁舎、隊舎の新設等に伴う附帯工事として行われている。

そして、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事の設計については、防衛省が定める建設工事設計基準(平成28年防整技第7161号)、上水道施設設計要領(平成28年防整技第7376号。以下「上水設計要領」という。)、下水道施設設計要領(平成29年防整技第13683号。以下「下水設計要領」という。)等に基づき行うこととなっている。また、上記工事の施工については、防衛省が定める土木工事共通仕様書(平成31年防整技第6007号。以下「共通仕様書」という。)等に基づき行うこととなっている。

上水設計要領、共通仕様書等によれば、給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件として、給水管と汚水排水管が平行して埋設される場合には、原則として、給水管と汚水排水管の水平間隔を500㎜以上とし、かつ、給水管は汚水排水管の上方に埋設することとされている。また、給水管と汚水排水管が交差して埋設される場合には、給水管は汚水排水管の上方に埋設し、300㎜以上の間隔を確保することとされている。そして、上水設計要領によれば、上記の条件どおりに埋設できない場合は、給水管を保護することとされている。

防衛省は、給水管と汚水排水管の位置関係に係る条件を設けている理由として、汚水排水管の下方に給水管があると汚水排水管から漏水があった場合、給水管内の上水が汚染される危険性があるためとしている。一方で、下水設計要領には、給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件は規定されていない。

また、共通仕様書において、基準類として指定している水道施設設計指針(2012)(公益社団法人日本水道協会)によれば、給水管を他の埋設物に近接して埋設すると、給水管の漏水によるサンドブラスト現象(注1)等によって、他の埋設物に損傷を与えるおそれがあり、事故を未然に防止するために、給水管は他の埋設物より最低300㎜以上の間隔を保って埋設することとされている。

地方防衛局等は、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事に当たり、設計を施工とは別に発注する場合は、請負人から提出された成果品である設計図を検査職員が検査して受領することとなっている。また、設計と施工を一括して発注する場合及び工事の施工のみを発注する場合は、請負人に設計図や工事中にやむを得ず設計を変更する場合の施工図(以下、これらを合わせて「設計図等」という。)を作成させて、監督職員が、その内容を上水設計要領、下水設計要領等に基づき確認し、承認することとなっている。そして、監督職員は、設計図等、特記仕様書、共通仕様書等の契約図書に基づき、施工状況の確認(以下「施工確認」という。)等を行うこととなっており、検査職員は、上記の契約図書に定められた出来形や品質等が確保されていて契約が適切に履行されているかの完成検査を行うこととなっている。

(注1)
サンドブラスト現象  給水管の漏水により発生した水流が周辺の土砂を巻き込み、水と土砂が混合した状態で他の埋設管に継続的に衝突して管体を減耗させ、孔を開ける現象

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事の設計及び施工は適切に行われ、給水管及び汚水排水管の安全性が確保されているかなどに着眼して、10防衛局等(注2)が令和元年度から5年度までの間に実施した給水管又は汚水排水管を埋設した工事のうち、既設のものも含め給水管と汚水排水管が平行又は交差している箇所がある65契約(契約金額計266億2760万余円)を対象として、防衛省内部部局及び10防衛局等において、契約書、特記仕様書、積算書、設計図等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
10防衛局等  北海道、東北、北関東、南関東、近畿中部、中国四国、九州、沖縄各防衛局、帯広、熊本両防衛支局

(検査の結果)

検査したところ、給水管と汚水排水管が交差して埋設されていた65契約244か所について、①汚水排水管が給水管の上方に埋設されていたものが11契約21か所、②給水管と汚水排水管の間隔が300㎜未満で埋設されていたものが21契約38か所(離隔距離21㎜から290㎜。うち、①にも該当するものが6契約11か所)あった。このうち、6防衛局(注3)の15契約34か所(これらの箇所に係る直接工事費計1419万余円)については、上水設計要領で必要とされる給水管の保護が行われておらず、汚水排水管が劣化や損傷するなどして汚水が漏れた場合に、給水管内の上水が汚染されるおそれがあり、また、給水管から漏水した場合にサンドブラスト現象等によって汚水排水管に損傷を与えるおそれがある状態となっていた。

上記契約の契約図書を確認したところ、契約の内容が設計の場合は、特記仕様書に準拠すべき基準類として上水設計要領又は下水設計要領が記載されていたが、前記のとおり、下水設計要領には給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件が規定されておらず、また、上水設計要領には同条件は規定されていたが、同条件を満たさない場合の具体的な保護の方法は規定されていなかった。そして、契約の内容が設計と施工を一括で行う場合又は工事の施工のみの場合は、特記仕様書に準拠すべき基準類として上水設計要領及び下水設計要領が記載されておらず、共通仕様書等には、給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件の規定が散在していて、同条件を満たさない場合の具体的な保護の方法は規定されていなかった。

このため、6防衛局の15契約において、設計及び施工が給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件を満たしておらず、給水管の保護を行うこととしていなかったのに、監督職員又は検査職員は、確認又は検査に当たって、同条件についての理解が十分ではなかったこと、また、給水管の保護の必要性を認識していなかったことなどのため、同条件等を踏まえた設計に係る確認又は検査や工事の施工確認又は完成検査を十分に行っていなかったと認められた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

北関東防衛局は、令和元年度に設計と施工を一括して行う「朝霞(元)公共下水整備土木工事その他工事」を一般競争入札により請負人に契約額418,000,000円で請け負わせて実施している。本件工事は、陸上自衛隊朝霞駐屯地において発生した汚水を朝霞市及び和光市の公共下水道に流すために汚水排水管を設置するものである。請負人は、下水設計要領や特記仕様書に給水管や汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件が規定されていないため、当該条件を考慮せずに設計した設計図等を同局に提出していた。そして、同局は、請負人から提出された設計図等を監督職員が内容を確認した上で承認し、これにより施工させていた。しかし、監督職員は、上水設計要領等に規定されている上記の条件についての理解が十分ではなく、設計図等の承認に当たって適切な指示を行っていなかった。また、監督職員又は検査職員は、上記の条件を踏まえた工事の施工確認又は完成検査を十分に行っていなかった。

このため、給水管と汚水排水管が交差して埋設された32か所のうち、①汚水排水管が給水管の上方に埋設されていたものが9か所、②給水管と汚水排水管の間隔が300㎜未満で埋設されていたものが8か所(離隔距離50㎜から170㎜。うち、①にも該当するものが6か所)あり、これら11か所(これらの箇所に係る直接工事費495万余円)全てにおいて、条件を満たさない場合に必要とされる給水管の保護が行われていなかった。

このように、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事について、上水設計要領、共通仕様書等で規定されている両配管の位置関係や間隔の条件を満たしておらず、同条件を満たさない場合の給水管の保護を行わないこととして設計及び施工が行われている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注3)
6防衛局  北海道、北関東、南関東、近畿中部、中国四国、九州各防衛局

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、地方防衛局等において、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事の設計及び施工に当たり、上水設計要領、共通仕様書等に対する理解が十分でなかったこと、監督職員の設計図等の確認及び施工確認並びに検査職員の設計の成果品に対する検査及び工事の完成検査が十分でなかったことなどにもよるが、防衛省内部部局において次のことなどによると認められた。

ア 上水設計要領、共通仕様書等で規定されている給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件を下水設計要領に明記する必要性を認識していなかったこと、条件を満たさない場合の給水管の具体的な保護の方法を上水設計要領及び下水設計要領に明記する必要性を認識していなかったこと、また、上記の条件等を容易に確認できるように特記仕様書に明記していなかったこと

イ 給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事に当たり、監督職員及び検査職員に対して設計及び施工の条件についての確認及び検査に係る要点を周知していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、防衛省は、前記の15契約において給水管と汚水排水管が交差している箇所のうち、前記の条件を満たしておらず、必要とされる給水管の保護が行われていない34か所について給水管を保護する補修を行うとともに、両配管の埋設が適切に行われるよう次のような処置を講じた。

ア 6年8月に、上水設計要領及び下水設計要領を改正して、下水設計要領に給水管と汚水排水管の位置関係や間隔に関する条件を、上水設計要領及び下水設計要領に条件を満たさない場合の具体的な保護の方法をそれぞれ明記した。また、同月に通知を発して、条件等を容易に確認できるように特記仕様書に明記するよう地方防衛局等に周知した。

イ 6年8月に、給水管又は汚水排水管の埋設を伴う工事に当たり、設計及び施工の条件についての監督職員の確認及び検査職員の検査に係る要点をまとめた留意事項等を作成して、地方防衛局等に周知した。