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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第4 中日本高速道路株式会社)|
  • 不当事項|
  • 工事

舗装補修工事の施工に当たり配置する交通監視員に係る費用について、実際の工事現場の状況が設計図書に示された条件と一致していなかったのに、設計図書を変更しなかったなどのため、支払額が過大となっていたもの[中日本高速道路株式会社東京支社、中日本高速道路株式会社東京支社富士保全・サービスセンター](250)


科目
仕掛道路資産
部局等
中日本高速道路株式会社東京支社(契約部局)
中日本高速道路株式会社東京支社富士保全・サービスセンター(監督部局)
工事名
東名高速道路 富士管内舗装補修工事(平成30年度)
工事の概要
東名高速道路及び新東名高速道路において舗装の補修工事等を実施するもの
工事費
2,925,098,459円
請負人
前田道路株式会社中部支店
契約
平成30年10月 一般競争契約
支払
平成31年1月、令和2年4月、3年5月、4年3月、9月
過大となっていた支払額
28,220,623円(平成30年度~令和4年度)

1 工事の概要

中日本高速道路株式会社東京支社(以下「支社」という。)は、平成30年10月から令和4年7月までの間に、東名高速道路及び新東名高速道路の舗装を補修することなどを目的として、「東名高速道路 富士管内舗装補修工事(平成30年度)」を前田道路株式会社中部支店(以下「請負人」という。)に契約額2,925,098,459円で請け負わせて実施している。

本件工事は、支社富士保全・サービスセンター(以下「センター」という。)が管理する区間において、切削オーバーレイ工、床版防水工等を実施するものである。本件工事の施工に当たっては、工事関係者及び一般通行車両の安全を確保するために、交通規制、車両の誘導等を行う交通監視員を配置することとなっている。

そして、交通監視員は、特記仕様書等において、その配置場所、配置時間等に応じて交通監視員C―Ⅳ(以下「交通監視員A」という。)、交通監視員C―Ⅷ(以下「交通監視員B」という。)等に区分されている。このうち、交通監視員A及び交通監視員Bについては、それぞれ24時間の昼夜連続規制を行う場所に1人日当たりの拘束時間が13時間の者を2交替で配置することとなっており、1人日当たりの契約単価は、交通監視員Aについては30,240円、交通監視員Bについては31,480円(以下、これらを合わせて「既契約単価」という。)となっている。

また、契約書及び土木工事共通仕様書(中日本高速道路株式会社制定。以下「共通仕様書」という。)によれば、発注者は、工事の施工状況の検査等を行う監督員を置くこととされている。監督員は、工事の施工に当たり、実際の工事現場が図面、共通仕様書及び特記仕様書(以下、これらを合わせて「設計図書」という。)に示された条件と一致しないなどの場合には調査を行い、必要があると認められるときは設計図書の変更等を行わなければならないこととされている。そして、発注者は、監督員が受注者に指示した事項に基づき、請負代金額の変更を行わなければならないこととされている。

交通監視員に係る費用については、監督員が、契約書、設計図書等に従い施工されたと認めた人日数に対して、1人日当たりの契約単価を乗じて算出することとされており、受注者は、交通監視員の配置人数、拘束時間等を記載した交通保安要員実施報告書(以下「報告書」という。)を監督員に提出することとされている。

そして、発注者である支社は、本件工事における監督員の業務をセンターに行わせている。

2 検査の結果

本院は、合規性、経済性等の観点から、契約額の変更が実際の工事現場の状況を踏まえて適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、支社及びセンターにおいて、設計図書、報告書等を確認するなどして、会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

センターは、工事費の支払に当たり、交通監視員Aの人日数を計4,460人日、交通監視員Bの人日数を計44人日として、これらの人日数に既契約単価をそれぞれ乗じて、交通監視員Aに係る費用を134,870,400円、交通監視員Bに係る費用を1,385,120円、計136,255,520円と算出するなどしていた。そして、支社は、センターが算出した金額に諸経費等を含めた工事費計2,925,098,459円を請負人に支払っていた。

今回、交通監視員A及び交通監視員Bの配置人数、拘束時間等について報告書を確認したところ、規制時間が24時間未満となっている工事現場が見受けられ、当該現場の規制は、2交替ではなく、1人の者を13時間30分から23時間30分拘束する配置により行われていた(以下、この配置を「13時間超配置」という。)。一方、13時間超配置に係る人日数についてみると、配置された1人の者を一律に2人日として記載されているものがあった。

そして、センターは、交通監視員に係る費用について、報告書に記載されている人日数を集計して、13時間超配置となっている交通監視員Aの人日数を1,904人日、交通監視員Bの人日数を36人日とし、これらの人日数に既契約単価をそれぞれ乗じて算出していた。

この13時間超配置に係る人日数を一律に2人日として費用を算出していたことについて、センターは、13時間超配置が実際の工事現場の状況から必要な配置であったと判断した上で、13時間を超える時間帯には新たな人員を13時間拘束して配置したことと同等であると考えたためとしている(参照)。

図 交通監視員の配置等の概念図

交通監視員の配置等の概念図

しかし、実際の工事現場の規制は、特記仕様書等で示された2交替ではなく、13時間超配置により行われていたのに、センターが、設計図書の変更を行わないまま、13時間超配置となっていた1人の者を一律に2人日とした人日数に対して、拘束時間が13時間の者に適用すべき既契約単価を乗じて交通監視員A及び交通監視員Bに係る費用を算出していたことは適切とは認められない。

そこで、13時間超配置に係る人日数及び単価について、一律に2人日とするのではなく、実際の工事現場の状況に合わせて、土木工事積算要領(中日本高速道路株式会社制定)の規定に基づき算出すると、人日数は、交通監視員Aが1,551人日、交通監視員Bが26人日となり、単価は、拘束時間帯に応じて、交通監視員Aが20,026円から43,055円、交通監視員Bが22,601円から37,548円となる。

したがって、このほかの報告書に過大に計上されていた人日数も考慮して本件工事の交通監視員の適正な人日数を算出すると、交通監視員Aが計4,041人日、交通監視員Bが計34人日となり、これらの人日数に適正な単価を乗じて交通監視員に係る費用を算出すると、交通監視員Aが114,200,152円、交通監視員Bが999,074円、計115,199,226円となる。そして、諸経費等を含めた適正な工事費を算定すると、計2,896,877,836円となり、支払額2,925,098,459円との差額28,220,623円が過大となっていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、センターにおいて、実際の工事現場の状況が設計図書に示された条件と一致しない場合に設計図書を変更した上で変更後の設計図書に基づき費用を算出することの必要性についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。