ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 独立行政法人中小企業基盤整備機構|
  • 不当事項|
  • 補助金

(2) ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金により開発等を行ったアプリにおいて、一部の機能が実装されておらず、また、残りの機能も事業の目的に沿った使用ができないものとなっていて補助の目的を達していなかったもの[独立行政法人中小企業基盤整備機構本部](292)


1件 不当と認める機構の補助金 10,000,000円

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「ものづくり補助金」という。)は、今後の制度変更等に対応するために革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の事業を実施する中小企業者等に対して、事業に要する経費の一部について、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)の補助金の交付を受けた全国中小企業団体中央会(以下「中央会」という。)が補助するものである。中央会は、中小企業者等が中央会からものづくり補助金の交付を受けて実施する事業に係る確定検査等の事務を各都道府県の中小企業団体中央会に委託している。

本院が、中央会及び8道府県の30事業主体において会計実地検査を行ったところ、1事業主体において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
補助事業者
(所在地)
間接補助事業者
(所在地)
補助事業
年度
事業費
補助対象事業費
左に対する機構の補助金交付額
不当と認める補助対象事業費
不当と認める機構の補助金相当額
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(292)
全国中小企業団体中央会
(東京都中央区)
株式会社アークス(埼玉県草加市)
〈事業主体〉
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進
2、3 15,730
(14,300)
10,000 14,300 10,000
開発等を行ったアプリにおいて、一部の機能が実装されておらず、また、残りの機能も補助の目的を達していなかったもの

株式会社アークス(以下「会社」という。)は、顧客との商談から契約、塗装工事の施工管理、請求までをオンラインで一元対応できる革新的なアプリケーション(以下「アプリ」という。)の開発及び導入を行い業務効率化を図るとともに、アプリを同業他社へ有償で提供して収益を得ることを目的とする事業計画を作成して事業を実施していた。そして、会社は、本件事業により、アプリの開発等をシステム開発業者(以下「業者」という。)に外注して事業費15,730,000円(補助対象事業費14,300,000円)で実施したとする実績報告書を令和3年5月に埼玉県中小企業団体中央会(以下「受託事業者」という。)に提出して、同年7月に、ものづくり補助金10,000,000円(機構の補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、同年4月に納品されたアプリには、実績報告書において実装されていたとしている機能のうち一部の機能(補助対象事業費計5,450,000円)が実装されていなかった。また、会社によれば、同月の納品直後に、アプリの残りの機能を使用して顧客との商談を行おうとしたところ、データの読み込みや表示に想定より大幅に時間を要するなどの不具合が生じて使用できなかったとしていた。このようなことから、会社は、事業計画に定めたアプリを活用した商談等や同業他社へのアプリの有償提供を一切行っていなかった。それにもかかわらず、会社は、実績報告書において、アプリにより業務が効率化し、同業他社にアプリを有償で提供することで新たな収入源を確保することができたなどとする事実と異なる報告を行っていた。さらに、会社が業者に対してアプリの運用に必要な保守を継続しないよう申し出たため、5年2月に、アプリは業者が契約しているサーバから削除されていた。

したがって、本件事業により開発等を行ったアプリは、一部の機能が実装されておらず、また、残りの機能も事業計画に定めた目的に沿った使用ができないものとなっていて補助の目的を達しておらず、これに係る機構の補助金相当額10,000,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において補助事業の適正な執行に対する認識が著しく欠けていたこと、受託事業者における会社に対する指導等が十分でなかったのに中央会において受託事業者に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。