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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置の検査の結果

検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


検査対象
41省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
30省庁等、309件 10,234,303,857円
(検査報告 昭和21年度~令和4年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
29省庁等、302件9,628,836,406円

1 不当事項に係る是正措置の概要

本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。

省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。

検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

① 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させ、又は徴収するなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)

② 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付するなどすることによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)

③ 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)

④ 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。

そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から令和4年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する41省庁等における6年6月末現在の是正措置の状況を対象(注1)として、21省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの20省庁等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注1)
令和4年度以前の検査報告においては7月末現在の是正措置の状況を対象としていたが、今年度からは6月末現在の是正措置の状況を対象としている。

(検査の結果)

昭和21年度から令和4年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものが30省庁等における309件10,234,303,857円(注2)ある。このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが29省庁等における302件9,628,836,406円、金銭を還付する是正措置を必要とするものが1省(注3)における1件1,361,014円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが4省等(注4)における7件604,106,437円ある。これを、令和4年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、3年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(注2)
309件10,234,303,857円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがある場合は、それぞれの是正措置の件数に計上しているため、これらの件数を合計しても是正措置が必要なものの総件数と一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。上記件数及び金額の記載方法は、本文及び表(それぞれの注を含む。)において同じ。
(注3)
1省  厚生労働省
(注4)
4省等  農林水産省、国土交通省、防衛省、独立行政法人情報処理推進機構

(1) 令和4年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況

検査の結果、令和4年度決算検査報告に掲記した不当事項285件(指摘金額の合計9,763,755,951円)のうち、258件9,053,222,864円(注5)については6年6月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの27件710,533,087円については6年6月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが22件224,590,338円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが1省(注6)における1件1,361,014円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが3省等(注7)における5件484,581,735円ある。

(注5)
258件9,053,222,864円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが231件4,765,679,705円あり、このうち、不納欠損として整理したものが102,456円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが1件22,773,264円、手直し工事等による是正措置が完了したものが22件3,995,312,843円、再発防止策による是正措置が講じられたものが14件274,448,852円ある。また、一つの事態について複数の是正措置が講じられているものがあるため、それぞれの是正措置の金額を合計しても9,053,222,864円とは一致しない。
(注6)
1省  厚生労働省
(注7)
3省等  農林水産省、国土交通省、独立行政法人情報処理推進機構

表1 令和4年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名
金銭を返還させる是正措置を必要とするもの
是正措置が完了しているもの
是正措置が未済となっているもの
返還させる必要があるもの
徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為
左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(内閣府本府) 8 52,750,289 8 52,750,289
内閣府(こども家庭庁) 9 75,996,778 9 75,996,778
総務省 20 262,509,559 20 262,509,559
外務省 1 13,022,218 1 13,022,218 1 13,022,218
財務省 1 237,854,563 0 236,126,465 1 1,728,098 1 1,728,098
文部科学省 22 164,701,705 22 164,701,705
厚生労働省 141 3,702,560,102 129 3,578,896,251 12 123,663,851 10 114,453,037 2 9,210,814
農林水産省 16 97,895,842 13 85,847,601 3 12,048,241 3 12,048,241
経済産業省 5 34,813,351 5 34,813,351
国土交通省 14 196,378,647 13 187,912,351 1 8,466,296 1 8,466,296
環境省 11 134,537,154 8 72,959,076 3 61,578,078 3 61,578,078
防衛省 1 4,146,894 0 63,338 1 4,083,556 1 4,083,556
省庁計 249 4,977,167,102 227 4,752,576,764 22 224,590,338 3 25,572,070 16 188,079,356 3 10,938,912
日本私立学校振興・共済事業団
3 8,922,000 3 8,922,000
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
1 4,180,941 1 4,180,941
団体計 4 13,102,941 4 13,102,941
合計 253 4,990,270,043 231 4,765,679,705 22 224,590,338 3 25,572,070 16 188,079,356 3 10,938,912
  • (注) 令和6年6月30日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。

(2) 令和3年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

検査の結果、昭和21年度から令和3年度までの検査報告に掲記した不当事項において、5年7月末現在で是正措置が未済となっていた346件15,317,464,113円のうち、64件5,793,693,343円(注8)については6年6月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの282件9,523,770,770円については6年6月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが280件9,404,246,068円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするものが2省(注9)における2件119,524,702円ある。

(注8)
64件5,793,693,343円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが63件5,752,618,261円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが13件106,353,120円ある。このほか、手直し工事等による是正措置が完了したものが1件41,063,683円、再発防止策による是正措置が講じられたものが1件11,399円ある。
(注9)
2省  農林水産省、防衛省

表2 令和3年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名
金銭を返還させる是正措置を必要とするもの
是正措置が完了しているもの
是正措置が未済となっているもの
返還させる必要があるもの
徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為
左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
内閣府(こども家庭庁) 4 25,230,457 2 6,063,257 2 19,167,200 2 19,167,200
総務省 6 99,298,080 3 38,100,000 3 61,198,080 3 61,198,080
法務省 8 790,704,862 1 40,000,000 7 750,704,862 6 750,623,112 1 81,750
外務省 1 11,914,499 1 11,914,499 1 11,914,499
財務省 8 301,601,542 2 11,409,100 6 290,192,442 3 284,792,980 3 5,399,462
厚生労働省 150 7,852,266,012 45 5,596,670,557 105 2,255,595,455 8 117,636,300 90 2,049,241,387 7 88,717,768
農林水産省 12 32,575,328 0 1,078,667 12 31,496,661 11 27,585,623 1 3,911,038
経済産業省 8 84,029,306 2 9,828,476 6 74,200,830 1 11,799,284 4 60,944,755 1 1,456,791
国土交通省 6 90,628,001 0 67,204 6 90,560,797 5 86,648,487 1 3,912,310
環境省 2 136,431,350 2 136,431,350 1 110,692,000 1 25,739,350
防衛省 7 71,202,258 2 9,687,132 5 61,515,126 5 61,515,126
省庁計 213 9,498,095,695 57 5,712,904,393 156 3,785,191,302 30 1,327,143,788 112 2,332,741,355 14 125,306,159
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門
1 8,362,535 0 1,424,339 1 6,938,196 1 6,938,196
東日本高速道路株式会社
1 1,009,901 1 1,009,901
全国健康保険協会
3 5,221,333 0 1,259,220 3 3,962,113 3 3,962,113
独立行政法人国際交流基金
1 3,517,537 0 32,899 1 3,484,638 1 3,484,638
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
1 315,000 1 315,000 1 315,000
独立行政法人自動車事故対策機構
1 4,798,754 1 4,798,754 1 4,798,754
独立行政法人国立病院機構
3 24,133,639 0 315,000 3 23,818,639 1 235,871 1 749,657 1 22,833,111
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
1 16,875,635 1 16,875,635 1 16,875,635
国立大学法人筑波大学
1 10,266,079 0 110,000 1 10,156,079 1 10,156,079
国立大学法人京都大学
2 1,139,222,093 0 6,890,000 2 1,132,332,093 1 12,643,650 1 1,119,688,443
国立大学法人奈良国立大学機構
1 7,782,000 0 165,000 1 7,617,000 1 7,617,000
国立大学法人山口大学
1 120,179,462 1 120,179,462 1 120,179,462
日本放送協会
1 4,095,389 1 4,095,389 1 4,095,389
東日本電信電話株式会社
1 34,603,995 0 55,000 1 34,548,995 1 34,548,995
日本郵便株式会社
3 706,172,328 1 2,524,178 2 703,648,150 2 703,648,150
株式会社ゆうちょ銀行
78 2,847,875,945 3 14,300,509 75 2,833,575,436 75 2,833,575,436
株式会社かんぽ生命保険
40 723,315,109 2 11,617,822 38 711,697,287 38 711,697,287
独立行政法人農業者年金基金
1 1,021,900 0 10,000 1 1,011,900 1 1,011,900
団体計 130 5,658,768,634 6 39,713,868 124 5,619,054,766 113 4,329,954,807 10 1,266,266,848 1 22,833,111
合計 343 15,156,864,329 63 5,752,618,261 280 9,404,246,068 143 5,657,098,595 122 3,599,008,203 15 148,139,270
  • 注(1) 令和5年8月1日から6年6月30日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、6年6月30日現在の名称としている。
  • 注(2) 日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が平成19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
  • 注(3) 是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人国際交流基金、東日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険の全件に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

昭和21年度から令和3年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので6年6月末現在で是正措置が未済となっているものが、2(2)アのとおり、280件9,404,246,068円ある。これらに対する令和4年度決算検査報告に掲記した以降の11か月間(5年8月1日から6年6月30日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注10)

(注10)
債務者等が複数存在するため1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は280件と一致しない。
(ア) 債務者等が分割納付等を実施中であるもの

省庁 111件 1,456,357,616円

団体94件 3,756,880,460円

これらは、分割納付等が行われているものであるが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る11か月間の返還額(注11)は、省庁39,493,238円、団体22,986,238円となっている。

(注11)
11か月間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。
(イ) 債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの

省庁52件 2,293,198,691円

団体39件781,740,819円

これらは、是正措置の完了に向けて督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。

このうち、団体における34件648,926,819円に係る債権は、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ) 債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁3件35,634,995円

団体4件1,080,433,487円

これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でないこと、債務者等が行方不明であることなどのため、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。

本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。