• 国会及び内閣に対する報告(随時報告)
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書
  • 令和7年6月

国内開発された固定翼哨戒機(P-1)の運用等の状況について


検査対象
防衛省内部部局、統合幕僚監部、海上幕僚監部、海上自衛隊補給本部、同航空補給処、同鹿屋、厚木、下総各航空基地、防衛装備庁、3会社
固定翼哨戒機(P-1)の概要
海上自衛隊の固定翼哨戒機(P-3C)の減耗を補充し、固定翼哨戒機の近代化を図るために開発された作戦用航空機であり、機体、エンジン、多数の搭載電子機器、搭載武器等から構成され、飛行の制御等を目的とする機体システム、警戒監視活動等の遂行を目的とするミッション・システム等を搭載した固定翼哨戒機
P-1の開発、運用等に係る経費
1兆7766億円(平成3年度~令和5年度)
P-1の保有機数及び国有財産台帳価格
35機 1320億8304万円(令和5年度末)
令和5年度に見積もったP-1 61機の開発、運用等に係るライフサイクルコスト
4兆0907億円

1 検査の背景

(1) 海上自衛隊による警戒監視活動等の概要

我が国は、四方を海に囲まれた海洋国家であり、エネルギー資源の輸入を海上輸送に依存していることなどから、海上交通の安全確保は国家存立のために極めて重要な課題となっている。そのため、「国家防衛戦略」(令和4年12月国家安全保障会議及び閣議決定)等において、海上自衛隊は、我が国の領海等における国益や我が国の重要なシーレーンの安定的利用の確保等に取り組むとされている。そして、各種事態に迅速かつシームレスに対応するために、平素から北海道周辺や日本海、東シナ海等の我が国の周辺海域を航行する外国の水上艦艇、潜水艦、不審船等に対して常続的な警戒監視、情報収集等の活動等(以下「警戒監視活動等」という。)を行っている。

海上自衛隊の警戒監視活動等は、護衛艦、ミサイル艇、掃海艇、哨戒機等により行われており、このうち哨戒機には、固定翼哨戒機と回転翼哨戒機があり、それぞれの役割等は図表0-1のとおりである。

図表0-1 警戒監視活動等における固定翼哨戒機及び回転翼哨戒機の役割等

哨戒機の種類 固定翼哨戒機 回転翼哨戒機
機種 P-3C P-1 SH-60J、SH-60K、SH-60L
警戒監視活動等の拠点 陸上基地 主に護衛艦
役割(主な警戒監視活動等の内容) 広範な周辺海域における外国の水上艦艇、潜水艦、不審船等の監視等 護衛艦が航行する周辺海域を中心とした外国の水上艦艇、潜水艦、不審船等の監視等
最大速度 時速730km程度 時速830km程度 時速250km程度

固定翼哨戒機は、機動的に広範な周辺海域の監視を行うことができるなどの特徴を有していることから、警戒監視活動等において重要な役割を担っており、現在、海上自衛隊は、P-1(配備後に多用機UP-1に用途変更されたものを含む。以下同じ。)及びP-3Cの2機種を保有している。

(2) 装備品の可動率を向上させるための取組等

ア 装備品の可動率を向上させるための取組

政府は、近年の国際情勢の急激な変化等により、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているとして、「国家安全保障戦略」(令和4年12月国家安全保障会議及び閣議決定)等を策定しており、現有装備品を最大限有効に活用するために、可動率向上等により、防衛力の実効性を一層高めていくことを最優先課題の一つとして取り組むこととしている。そして、「防衛力整備計画」(令和4年12月国家安全保障会議及び閣議決定)によると、装備品の高度化・複雑化に対応しつつ、部品の取得に要する期間を考慮した部品費と修理費の確保により、部品不足による非可動を解消し、令和9年度までに装備品の可動数を最大化するために、需給予測の精緻化を図るなどとされている。

一方で、「令和5年版日本の防衛(防衛白書)」(以下「令和5年版防衛白書」という。)によると、装備品の高度化・高性能化に伴い、部品の調達単価と整備費用が上昇し、維持整備予算も増加させてきているが、必ずしも十分ではなかったことから、部品不足による非可動が発生しているとされており、その一例としてP-1が取り上げられている。

イ 防衛生産・技術基盤の強化

「国家安全保障戦略」によると、我が国の防衛生産・技術基盤は、自国での装備品等の研究開発・生産・調達の安定的な確保等のために不可欠な基盤であり、いわば防衛力そのものと位置付けられている。

そして、防衛省(平成13年1月5日以前は総理府防衛庁、同月6日から19年1月8日までは内閣府防衛庁)が策定した「装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する基本的な方針」(令和5年防衛省告示第216号)によると、防衛生産・技術基盤を装備品等の完成品からその部品・構成品に至るまで幅広く国内に維持して強化する必要性は一段と高くなっているとされている。また、防衛生産・技術基盤を維持して強化する方策を講ずるに当たっては、完成品としての装備品等のみならず、それに用いる部品・構成品の安定的な製造等の確保も念頭に置き、防衛省と直接の契約関係にある企業のみならず、当該企業への構成部品の納入等を担う多数の中小企業等も含めた装備品等のサプライチェーン全体を対象としていくとされている。

(3) 固定翼哨戒機(P-1)の概要

P-1は、機体、エンジン、多数の搭載電子機器、搭載武器等から構成され、飛行の制御等を目的とする機体システム、警戒監視活動等の遂行を目的とするミッション・システム等を搭載した固定翼哨戒機であり、令和6年9月現在、海上自衛隊鹿屋、厚木、下総各航空基地に計35機が配備されている。そして、ミッション・システムを構成する光波システム、音響システム、レーダシステム、武器システム等を使用することにより、高い目標捜索能力、指揮通信能力、武器管制能力等を発揮するとされている。

ア P-1の導入の経緯

防衛省は、昭和52年12月に、新しい哨戒機として、アメリカ合衆国からロッキード・マーティン社(平成7年3月14日以前はロッキード社)が製造するP-3Cを輸入した。そして、その後は、P-3Cを長期間運用するに当たり国内に製造、維持整備等の態勢を確保するなどの必要があることからライセンス生産(注1)により製造することを決定し、その製造を川崎重工業株式会社(以下「川崎重工」という。)に請け負わせて実施した。

その後、「中期防衛力整備計画(平成8年度~平成12年度)について」(平成7年12月安全保障会議及び閣議決定)において、「固定翼哨戒機(P-3C)の後継機に関し、検討の上、必要な措置を講ずる」とされたこと、また、20年度以降、P-3Cが耐用命数(注2)に到達して順次除籍され、23年度にはP-3Cの機数が警戒監視活動等に必要な固定翼哨戒機の機数を割り込む見通しであったことから、防衛省は、それまでにP-3Cの後継となる固定翼哨戒機(以下「次期固定翼哨戒機」という。)を取得することとした。

そして、海上幕僚監部(以下「海幕」という。)は、次期固定翼哨戒機に求める要求性能等を検討して、12年3月に、防衛省内部部局(以下「内部部局」という。)に検討結果を報告するとともに、防衛装備庁(27年9月30日以前は技術研究本部(注3)及び契約本部等(注4))に技術開発要求を行った。

防衛省は、海幕における検討結果を踏まえて、次期固定翼哨戒機に求める要求性能として、P-3Cと比較して約1.3倍の速度及び高度で警戒監視活動等に従事できることのほか、静粛化した潜水艦に対する探知能力の向上、より遠方の目標等を探知できることなどを求めることとした。そして、次期固定翼哨戒機の取得方法については、国内開発する案と、当時、外国で運用中又は開発中の固定翼哨戒機との要求性能の満足度、取得時期等を比較して検討を行った。その結果、外国で運用中又は開発中の固定翼哨戒機は、いずれも次期固定翼哨戒機に求める要求性能を満たしておらず、又は、次期固定翼哨戒機が必要となる時期までに取得するのが困難であることから、12年8月末に、次期固定翼哨戒機を国内開発する経費について予算要求を行った(P-1の導入の経緯については別表1参照、次期固定翼哨戒機の取得方法を判断するに当たって比較した候補機種等については別表2参照)。

(注1)
ライセンス生産  国内企業が外国企業から有償で装備品等の設計図や部品等の提供を受け、国内で製造する方式
(注2)
耐用命数  通常の条件下で、所期の性能、機能及び安全性が低下することなく、使用を継続できる使用回数等
(注3)
技術研究本部  自衛隊の装備品等についての技術的調査研究、考案、設計、試作、試験等をつかさどる組織として設置されていた特別の機関
(注4)
契約本部等  自衛隊の装備品等及び役務で防衛大臣の指定するものの調達に係る契約事務等をつかさどる組織として設置されていた特別の機関であり、平成13年1月5日以前は調達実施本部、同月6日から18年7月30日までは契約本部、同月31日から19年8月31日までは装備本部、同年9月1日から27年9月30日までは装備施設本部

イ P-1の開発の経緯

次期固定翼哨戒機の開発は、陸上、海上、航空各自衛隊(以下「各自衛隊」という。)における大型固定翼機の国内開発として初めての取組であった。また、機体、エンジン、搭載電子機器等の主要な構成品によって必要な技術が異なることなどから、次期固定翼哨戒機の開発に当たっては、試作研究請負契約、製造請負契約、役務請負契約等の多数の契約が締結され、海幕、技術研究本部、契約本部等の各組織が、これらの契約に係る業務を分担して実施した(図表0-2参照)。

図表0-2 次期固定翼哨戒機の開発における防衛省(防衛庁)内の各組織等の役割(平成14年4月1日時点)

図表0-2 次期固定翼哨戒機の開発における防衛省(防衛庁)内の各組織等の役割(平成14年4月1日時点)画像

なお、27年10月に防衛装備庁が設置され、従前、海幕、技術研究本部、契約本部等が分担して実施していた装備品等の研究開発、調達等の業務については、同月以降、防衛装備庁が実施している(以下、防衛装備庁及びその前身である技術研究本部、契約本部等を合わせて「装備庁」という。)。

(ア) 機体の開発の経緯
a 主担当企業の決定等

防衛省は、次期固定翼哨戒機を国内開発することとしたことを踏まえて、価格のみならず企画力、技術力等を総合的に評価して次期固定翼哨戒機の機体の開発に係る主担当企業を選定することとし、提案要求書(注5)の交付を希望する旨の意思表示を行った企業に対して13年5月に提案要求書を交付した。

そして、防衛省は、同年7月までに川崎重工等3者から提案書の提出を受け、同年11月に、当該3者の価格、企画力、技術力等を比較して、全体として最も高い評価を得た川崎重工を主担当企業とすることなどを決定した。

その後、装備庁は、13年度から24年度までに、次期固定翼哨戒機の機体の基本設計、細部設計、各種試験等を内容とする25契約(契約額等計2115億2813万余円)を川崎重工等と締結した。

(注5)
提案要求書  防衛省が取得する航空機の選定に当たり、企業等が提出する提案書の条件として、候補となる機種の性能、所要経費、後方支援体制その他の事項を提示して企業等に対して提案書の提出を求める文書
b 技術・実用試験の実施

川崎重工は、機体が設計上の強度を有しているかなどを確認するための次期固定翼哨戒機の試作機を18年10月に装備庁に納入し、装備庁は試作された装備品等の性能が設計に適合するか評価するための試験(以下「技術試験」という。)を実施した。

そして、川崎重工は、20年8月に飛行試験に供するための次期固定翼哨戒機の試作機(以下「XP-1」という。)の1号機を納入し、同月以降、装備庁及び海上自衛隊は、技術試験及び試作された装備品等が使用目的に適合するか評価するための試験(以下「実用試験」といい、技術試験と合わせて「技術・実用試験」という。)を共同で実施した。

c 部隊使用承認等

防衛省は、XP-1が納入される見通しとなったことを踏まえて、20年度予算に次期固定翼哨戒機の量産取得に要する費用を計上するに当たり、改めてXP-1と外国で運用中又は開発中の固定翼哨戒機を比較するなどして、次期固定翼哨戒機の取得方法を検討した結果、開発中のXP-1を「固定翼哨戒機P-1」として量産取得することとした。

そして、防衛省における検討結果を踏まえて、19年12月の安全保障会議決定及び閣議了解において「海上自衛隊の現用固定翼哨戒機の減耗を補充し、その近代化を図るための次期固定翼哨戒機については、平成20年度以降、作戦用航空機として、P-1 65機を国産により取得するものとする」とされた。

その後、25年3月までにXP-1の開発が完了したことを受け、防衛大臣は、同月にXP-1を「固定翼哨戒機P-1」として部隊使用承認を行い、同月以降、部隊における運用を開始した(図表0-3参照)。

図表0-3 XP-1の機体及びエンジンの設計・試作の流れ

図表0-3 XP-1の機体及びエンジンの設計・試作の流れ画像

d 取得予定機数の見直しなど

P-1の取得数については、令和4年12月に決定された「防衛力整備計画」において見直しが行われており、7年3月末現在の取得予定機数は61機となっている。

防衛省は、平成14年3月から令和6年9月までに川崎重工との間でP-1の製造請負契約を累次にわたり締結しているほか、XP-1を量産化に係る仕様に改修する役務請負契約を締結しており、これらによりP-1計47機の製造等について既に契約が締結されている。そして、47機のうち、2年度以降に製造請負契約が締結された計12機については、それまでに製造されたものと比較して戦闘指揮システムの改善等の能力向上が行われている。

(イ) エンジンの開発の経緯
a XF7-10エンジンの研究試作

装備庁は、海幕から将来の大型航空機用のターボファン・エンジンの技術研究要求を受けて、平成10年度から12年度までに、株式会社IHI(19年6月30日以前は石川島播磨重工業株式会社。以下「IHI」という。)と高バイパス比(注6)のファンの研究開発を行っていた。そして、別途研究開発が行われていたターボファン・エンジンXF5-1を基にして、13年度から16年度までに新たなターボファン・エンジン(以下「XF7-10エンジン」という。)の研究試作を行っていた。

防衛省は、次期固定翼哨戒機の開発に当たり、次期固定翼哨戒機の飛行性能等に適合するエンジンが国内外で製造されていなかったことから、次期固定翼哨戒機に搭載するエンジンの候補としてXF7-10エンジンの研究を継続し、その研究成果を踏まえて、16年度に、XF7-10エンジンを次期固定翼哨戒機に搭載することとした。

(注6)
バイパス比  ターボファン・エンジンにおける、燃焼に使う空気の重量とファンから吹き出す空気の重量の比であり、この比が大きいほどエンジンの燃費効率が良くなるとされる。
b 次期固定翼哨戒機に搭載するための設計等

装備庁は、15年度から19年度までにXF7-10エンジンを次期固定翼哨戒機に搭載するための設計、各種試験等を内容とする5契約(契約額等計308億4795万円)をIHIと締結した。また、装備庁は、18年度から23年度までにかけて、IHIから納入されたXF7-10エンジンについて技術試験を行い、機能、性能、構造の健全性、耐久性、安全性、耐環境性等を十分に有していることを確認したとして、23年度にP-1に搭載するためのエンジンの開発を完了した(以下、開発を完了したエンジンを「F7-10エンジン」という。エンジンの設計・試作の流れについては図表0-3参照)。

F7-10エンジンは、長距離進出・長時間滞空という哨戒機特有の運用に対応した低燃費性等を実現するための設計が行われ、また、海上での運用に対応するために、耐腐食性のある素材を採用するなどしたターボファン・エンジンであり、P-1 1機に4発ずつ搭載されている。

(ウ) 搭載電子機器等の開発の経緯
a 搭載電子機器等の研究試作等

装備庁は、3年度から11年度までに、搭載電子機器等の能力向上を図るための技術の獲得を目的として、各製造業者との間で哨戒機用搭載システム等の試作研究請負契約を締結するなどして研究試作を行っていた。

そして、次期固定翼哨戒機の国内開発決定後、海幕は、研究試作の成果を踏まえて製造した搭載電子機器等を調達して、XP-1を製造する川崎重工に官給することとし、装備庁は、海幕の調達要求を受けて、15年度から18年度までに46件の製造請負契約(契約額等計116億1870万余円)を各製造業者と締結した。当該契約に基づき製造された搭載電子機器等は、川崎重工に17年度から19年度までに官給され、20年度から24年度までに行われた次期固定翼哨戒機の技術・実用試験等において、XP-1に搭載された状態で装備庁及び海上自衛隊が作動確認等を行った。

b 搭載電子機器等に係る完成検査等

会計法(昭和22年法律第35号)等によれば、国が締結する工事又は製造その他の請負、物件の買入れなどの契約について、契約担当官等は、自ら又は補助者に命じて、給付の完了を確認するために必要な検査を行わなければならないこととされている。そして、「調達品等に係る監督及び検査に関する訓令」(昭和44年防衛庁訓令第27号)等によれば、契約の目的である調達品等が契約履行の場所に送付されるのに先立ち、必要があると認められる場合には、契約担当官等は調達品等に係る検査の一部として、その品質の確認のために完成検査を行うこととされている。

装備庁が研究試作する装備品等については、基本設計、詳細設計、試作品の組立てなどの別に試作研究請負契約が締結されており、契約ごとに完成検査が行われている。また、海幕が官給するために調達することとして装備庁に調達要求を行った機器についても、官給に先立って製造請負契約ごとに完成検査が行われている。

そして、これらの完成検査は、装備庁が海幕等からの調達要求を受けて調達したものについては防衛省の地方支分部局である地方防衛局又はその所掌事務の一部を分掌する地方防衛事務所(13年1月6日から18年7月30日までは契約本部地方支部又は地方契約管理事務所、同月31日から19年8月31日までは装備本部地方支部又は地方事務所)が、海幕又は装備庁が自ら調達したものについては海幕又は装備庁が、それぞれ行うことになっており、各契約の目的である調達品等が仕様書に記載されている要求事項を満たしているかなどの確認等を行っている。

次期固定翼哨戒機に搭載するために、海幕からの調達要求を受けて装備庁が調達した搭載電子機器等についても、完成検査を経た上で川崎重工に官給され、技術・実用試験が実施されるなどしていた。

ウ P-1の開発等に係るプロジェクト管理

装備庁は、「装備品等のプロジェクト管理に関する訓令」(平成27年防衛省訓令第36号)等に基づき、装備品等の研究開発や調達等の各種業務について、ライフサイクルを通じ、性能やコスト、期間といった要素を総合的に把握しつつ、効果的かつ効率的に実施していくための方針や計画を作成するなどのプロジェクト管理を行っている。

そして、装備庁は、P-1について重点対象装備品等としてプロジェクト管理を行っているが、同訓令が制定された時点で既にP-1の開発が完了していたため、プロジェクト管理の内容はライフサイクルコスト(注7)(以下「LCC」という。)を低減するための方策の検討が中心となっている。

(注7)
ライフサイクルコスト  構想から廃棄に至るまでの過程(ライフサイクル)における経費の総額

(4) 機体用交換部品の概要

ア 機体用交換部品の調達

P-1を構成する航空機用部品は、エンジン、搭載武器及び搭載電子機器に係る部品も合わせると多数に上っており、これらの中には、国内で製造するもののほか、海外からの輸入品がある。

装備品等が各自衛隊の部隊等に配備された後、当該装備品等の維持や修理に用いる交換用の部品等については、各自衛隊の部隊等が調達実施機関として調達を行うこととなっており、P-1の機体を構成する航空機用部品(以下「機体用交換部品」という。)の調達は、海上自衛隊補給本部(10年12月7日以前は海上自衛隊需給統制隊。以下「補給本部」という。)隷下の航空補給処(以下「空補処」という。)が行っている。

海上自衛隊が行う装備品等の調達に当たっては、在庫状況の把握、所要数量の決定、管理換等の需給統制を行うこととなっており、機体用交換部品の需給統制は空補処が行っている。

(ア) 機体用交換部品の調達所要量の算定及び需給予測

空補処は、「海上自衛隊補給実施要領について(通知)」(平成18年補本装補第2072号)等に基づき、P-1の整備を担当する部隊(以下「P-1整備部隊」という。)において各年度に調達すべき部品の数量(以下「調達所要量」という。)について、通常の使用等により損耗する数量等から、調達所要量を算定する時点でP-1整備部隊が在庫として保有している数量や入庫予定数量等を差し引くなどして算定することとなっている。

ただし、機体用交換部品については、部品によって、契約を締結してから実際に納入されるまでに要する期間(以下「調達リードタイム」という。)が1年以上となるものもあることから、部品が必要となる年度の前年度末までに確保できるように調達所要量を算定することとなっている。すなわち、各年度の調達所要量は、前年度までの調達実績等に基づいて設定した調達リードタイムを踏まえて、調達所要量を算定する時点から部品の納入が予定される年度の翌年度末までの期間(以下「所要量算定期間」という。)に消耗する数量等に基づいて算定することとなっている。そして、調達リードタイムが長くなり、部品の納入年度が当初予定されていた年度の翌年度以降になる場合等には、所要量算定期間も長くなることから、調達所要量を改めて算定するなどしている。

また、補給本部及び空補処は、P-1の可動機を継続的に確保していくために、今後必要となる部品の数量に加えて、将来的な機体用交換部品の製造中止情報や故障傾向、機体用交換部品の製造業者及び修理業者(以下、これらを合わせて「機体用交換部品業者」という。)から得た情報等に基づいて調達可能な数量等の予測(以下「需給予測」という。)を行っている。

一方、機体用交換部品が不足しているためP-1整備部隊が整備作業を完了することができずに、P-1の機体が非可動の状態等にある場合には、空補処に対して緊急請求を行うこととなっており、緊急請求を受けて、空補処は、調達所要量を満たすための計画的な調達とは別に調達等を行うこととなっている。

(イ) 機体用交換部品の納期の設定方法

空補処は、適切な納期を設定するために、調達手続に先立って機体用交換部品業者から徴取した見積書(以下「下見積書」という。)により、機体用交換部品業者の在庫状況や、下見積書の作成時点における納入の見通しなどを確認している。そして、空補処は、下見積書に記載されたこれらの情報に基づいて納期を設定して、機体用交換部品業者と製造請負契約等を締結している。

イ P-1の可動状況等を改善させるための技術維持活動

補給本部は、P-1の機体、F7-10エンジン、搭載電子機器等ごとに、可動状況及び運用上の改善を目的として技術維持活動を行うこととしており、各製造業者との間で技術維持活動に係る役務請負契約を締結している。そして、請負契約の相手方は、技術維持活動として、P-1の運用中に発生した不具合に関するP-1整備部隊からの問合せに対応するほか、あらかじめ補給本部及び空補処と協議して選定した機体用交換部品等の需給状況の確認等を行うこととなっている。