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  • 昭和22年度|
  • 第5章 不当事項|
  • 第2節 所管別事項|
  • 第4 大蔵省|
  • (終戦処理費関係の分)|
  • 同 歳出

電力供給設備工事の施行に当り計画当を得ないもの


(208) 電力供給設備工事の施行に当り計画当を得ないもの

(昭和21年度)(歳出臨時部 第4款終戦処理費 第1項終戦処理費)

 山形県で、昭和21年7月東北配電株式会社山形支店に請け負わせた神町連合軍宿営電力供給設備工事に対する概算払として31,492,502円を支出したものがある。右は23年3月精算の結果29,420,532円となつたが、施設の一部が一般民間需要にも使用されるので、そのうち5,786,864円を同会社の負担としている。
 本件工事は、右地区における兵舎、宿舎及びその附属設備全般にわたり、電灯、電力を供給することを目的とするもので、兵舎、宿舎地域に近接して若木変電所を、又これから4粁離れて神町変電所をいずれも新設し、電源はこれを東北配電株式会社長崎変電所に求め、同所と右神町変電所との間10粁に神町送電線66KVを新設し、神町、若木両変電所間4粁に33KV送電線(以下甲送電線という。)と3.3KV送電線(以下乙送電線という。)を新設し、又神町変電所には高圧側66KV、低圧側33KV、容量6,000KVAの変圧器(以下神町A設備という。)を設備する外、高圧側33KV、低圧側3.3KV、容量1,500KVAの変圧器(以下神町B設備という。)を設備し、若木変電所には高圧側33KV、低圧側3.3KV、容量3,000KVAの変圧器(以下若木設備という。)を設備したのである。
 本件工事は最大使用電力を3,447KW、平均使用電力を2,300KWと算定し、力率を80%と見て変電所容量を2,900KVAと決定し、若木変電所に3,000KVAを設備し、これと神町A設備を甲送電線で結んだ外、容量の不足と停電の際の予備として神町変電所に前記B設備を設けて3.3KVに減圧し、この電力を若木に送るため前記乙送電線を特設したものであるが、

(1) 最大使用電力を3,447KW、平均使用電力を2,300KWと見たのは、その後実際に使用した電力が冬期でもようやく最大1,300KW、平均585KWに過ぎなかつた事実に徴し、著しく過大に見込んだものという外はない。

(2) 若木変電所設備容量の計算に当つて、負荷はおおむね電灯、電熱で、力率は100%に近いものと認められるのに、これを80%の低さに見積り、又変電設備の計画上当然考慮すべき需要率を見込んでいない状況で、いま仮に力率を90%、需要率を90%とすれば、最大使用電力を当局者計算のように3,447KWと見ても変圧器容量は2,300KVA程度となり、右に記載した最大使用電力の見込が過大であつた点を考慮すると、若木設備はいかに余裕を見ても2,000KVAでたりたものと認められる。

(3) 又神町変電所に予備として設けた前記B設備は、同変電所主設備たるA設備で33KVに減圧した電力を更に3.3KVに減圧して前記乙送電線で若木変電所まで送るものであるが、こうした低圧の変電施設をわざわざ需要地から4粁も離れた地点に設けることは一般には行われないところで、もし所要地区配電確保のため予備を設ける必要があれば、主線路たる甲送電線の外に33KVの送電線1回路を併置すれば工事費の節減をすることができたものと認められる。本件B設備と乙送電線は、完成後連合軍宿営施設には使用の必要もなく、そのうちB設備はあげてこれを神町変電所一般需要に供している状況で、当初から一般需要に供することを主たる目的として計画されたものと見る外はない。

(4) 神町A設備の容量は6,000KVAで、そのうち4,500KVAを国の負担としたのであるが、これは若木設備の3,000KVAに対応するものだけで十分であるのに、予備施設として若木設備と同時に使用されることが予想されない神町B設備の分を合わせ設備したものであつて、計画が過大である。
 いま、仮に若木設備を2,000KVA、神町A設備を余裕を見て3,000KVAとし、神町B設備を取りやめ、且つ、乙送電線に代えて33KV送電線を実施したとするときは、本件工事費29,420,532円は、概算700万円を節減し得た計算である。
 要するに本件は工事の計画に当り所要電力を過大に計算した外、必要のない施設を実施したものである。