ページトップ
  • 昭和22年度|
  • 第5章 不当事項|
  • 第2節 所管別事項|
  • 第5 文部省|
  • 一般会計歳出

工事の施行に当り措置当を得ないもの


(255) 工事の施行に当り措置当を得ないもの

(第14部行政共通費 第1款官庁営繕費 第2項補修費)

 大阪大学で、昭和23年2月福徳建設株式会社に請け負わせた同大学医学部附属医院屋根580坪の防水修繕工事代金として943,800円を支出したものがある。
 本件工事は、在来モルタルを取り除き、防水層の破損箇所を補修した後、新たに防水層2層を施行し、その表面をモルタルで仕上げたもので、その支払にあたつては請負人の提出した見積内訳書のとおりの金額を支払つているが、所要セメントは、官において資材割当切符を交付しないでその全量を請負人持としたため、見積内訳書においては、当時のセメントの市場取引価格と公定価格との開差をモルタルの設計数量と諸職人工の歩掛等に転嫁し、これらを著しく過大に積算している。

すなわち

(1) 見積内訳書における材料費284,043円のうちにはセメント62屯を積算しているが、本件モルタルの調合率を仕様書のとおり1対3として修繕面積580坪の所要量を推算すると、セメントは乱袋等による減量を見込むも50屯程度でたり、10屯内外その価額約27,000円は過大の見積となつている。

(2) 見積内訳書にかける労務費369,065円には夜間作業を見込み、諸職人工延2,773人の多数を積算しているが、23年6月本院会計実地検査当時は、その使役状況についての確認資料がなかつたもので、
 その後本院に提出した使役実績表によれば、工事完成後引き続き23年4月1日から18日までの間に、手直工事のため諸職人工延482人、その賃金約61,000円を要したものとして計上しているが、手直のためにこのような多数の人工を要したものとは認められない。いま東京大学が、本件工事と同時期に、三星産業株式会社に299,400円で請け負わせた農学部第1号館屋根一部防水層修繕工事(修繕面積423坪)と本件工事とを比較すると、農学部の工事が、在来の防水層を取り除いて新たに3層の防水層を施工し、砂利焼付をするに要する歩掛を258人工(坪当り0:6人工)と見積つているのに対し、本件工事について防水層2層を施行するだけに要する歩掛を推算すると、900人工(坪当り1:5人工)内外を積算していることとなり、本件の防水層工事だけについて見ても、その見積は著しく過大に失するものである。
 本件のような不利な工事を施行した原因は、本省が資材を伴わない予算を令達したことに因るものではあるが、当局者が農学部の工事と同様の工法を採用したならば、低価に所期の目的を達し得たものと認められるのに、セメントの市場取引価格の暴騰している当時多量のセメントを請負人持としたため、高価となつたものである。