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  • 昭和22年度|
  • 第5章 不当事項|
  • 第2節 所管別事項|
  • 第8 農林省|
  • 同 歳出

干拓工事の施行に当り措置当を得ないもの


(316) 干拓工事の施行に当り措置当を得ないもの

(第11部公共事業費 第1款公共事業費 第1項公共事業費)

 農林省で、愛媛県に委託して実施した西条干拓事業の工事費として10,440,098円(うち昭和21年度703,344円)を支出しているが、右工事費のうち約200万円は潮止工事の施行よろしきを得ないため決潰流失した潮受堤防、樋門及び潮止堤の工事費相当額である。
 本件干拓事業は、昭和21年度以降3箇年の継続事業として総工事費23,850,000円の予定をもつて実施するもので、前記10,440,098円のうち9,403,061円は、21年12月井華鉱業株式会社に請け負わせた土砂盛による高さ6米の潮受堤防及び樋門工事等に対する22年度中の支払金額であるが、23年2月20日右工事中潮止工事を実施したところ、翌朝の満潮時に土砂盛による潮受堤防と潮止堤との接着点から決潰し、潮止堤、樋門、及び潮受堤防約90米が流失し、23年5月工事費2,820,000円をもつて復旧工事を施行したものである。本件潮止工事は施行当日の最高潮位を3.7米と予定し、0.3米の余裕を見込み、潮止堤の高さを4米と設計して施行したのであるが、潮止堤の両側の潮受堤防は、サンドポンプで土砂を盛り上げて新設したものであるのに、その土砂が十分に固定するのをまたず、直ちに潮止工事を実施したため、潮受堤防と潮止堤の接着が不十分であつたのと、潮位が4米となり潮止堤上に達したため決潰したのであつて、このような潮止工事は潮受堤防の築造後相当期間を経過して土砂が固定するのをまち着手するのを適当とするものであるにかかわらず、本件は工事の完成を急ぐのあまり湖受堤防の工事完了当日直ちに潮止を実施したもので、当局者は緊急食糧増産のため23年度作付可能を目標に潮止工事を急いだのであり、又天候急変による意外な高潮のため、土砂の固定不十分な湖受堤防との接着点から決潰を始めたのであるというが、サンドポンプで築堤した潮受堤防の固定するのをまたず、接着点の補強も十分講じないで、その築堤工事の完了当日直ちに潮止を実施したのは失当の措置であり、又天候急変による意外な高潮というが、当時の風速は約8米であり、この程度の風速は冬期のことでもあるし、計画上、当然考慮しておかなければならなかつたものと認められる。