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  • 昭和22年度|
  • 第6章 出納職員に対する検定

有責任と検定した主なものの概要


第2 有責任と検定した主なものの概要

(1) 東京逓信局管内八王子郵便局で、分任繰替払出納官吏逓信事務宮室某が貯金保険課長として勤務中、昭和21年10月から22年3月までの間に、同課勤務佐宗某を補助者として現金の出納保管を代務させていたところ、佐宗某が日締決算の結果生じた2,000円の不足を資金のうちからほしいままに補てんし、その他前後数回にわたつて資金から138,000円を横領し、結局計140,000円を亡失した事実につき審理したところ、同出納官吏は、補助者佐宗某を過信して現金の出納保管の事務を一任し、長期にわたつて1回も資金全額の検査を行うことなく、同局主幹の資金検査によつて始めてその不足を発見されたもので、本件亡失は出納官吏として善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、23年8月27日出納官吏に対し弁償の責任があると検定した。

(2) 復員庁第1復員局管下留守業務局で、資金前渡官吏復員事務官、森田某が同局経理課金銭班長として勤務中、昭和22年6月30日職員俸給の支給を野島某を補助者として取り扱わせていたところ、同人は受給者各人別の俸給袋を入れてあつた行李を事務室中央の机上に置き、俸給支給事務の分担者が各自その分担の俸給袋を取り出すのを自席から監視しながら他の事務に従事していたが、その間一束の俸給袋を何者かに窃取され、在中の14,356円を亡失した事実について審理したところ、俸給支払事務のように多額の金銭を1時に取り扱う業務は日々の恒例に属する事務とは異なるから、出納官吏自ら指揮して支給することもさして困難なことではなかつたと思われるし、又野島某をして俸給支払事務を代行させるとしても、当時出納官吏は事務室に在室し、野島某が午前8時50分頃から11時30分頃までの間、多額の俸給を入れた行李を開いたまま、放慢且つ無警戒な支払措置をしていたことを承知していたと認められるのに、これに対し何ら注意を促さなかつたことなどに照し、本件亡失は出納官吏として善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、23年9月2日資金前渡官吏に対し弁償の責任があると検定した。
 なお、本件は未処分であつたので所管大臣に対し弁償処分を要求したところ、10月大臣は同人に対し弁償を命じた。

(3) 復員庁第2復員局管下宇品上陸地連絡所で、資金前渡官吏復員事務官河本某が同所主計課長として勤務中、同所庶務課勤務復員事務宮田村某に不時入港船の復員者給与に備えるため、前渡資金299,500円を保管させていたところ、田村某は昭和22年6月4日前記保管金を拐帯逃亡し、前渡金299,500円を亡失した事実につき審理したところ、同出納官吏が復員者に対する給与支払の現場事務について田村某に援助させることは事情やむを得ないとしても、現実に支払の必要のない現金はこれを預託するか、又は完全な金庫もあつたのであるから、これに格納する等適切な措置を講ずべきであるのに、5月19日から6月4日までの間漫然田村某に多額の前渡資金を保管させて横領されるに至つたもので、本件亡失は出納官吏として善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、23年9月14日資金前渡官吏に対し弁償の責任があると検定した。
 なお、本件は未処分であつたので所管大臣に対し弁償処分を要求したところ、10月大臣は同人に対し田村某の弁償した10,830円を除き弁償を命じた。

(4) 大阪鉄道局管内天王寺駅で、出納員運輸事務官井上某、同中川某、同雇岡田某が昭和21年9月9日出札収入金7,555円を各窓口出納員から引継を受け、これを当務助役に引き渡すまでの間に亡失した事実について審理したところ、岡田出納員は出札収入金を照合確認して金のうに収納したのであるが、同出納員は金のうを持つたまま事務室を出たこともあり、又任意に施錠設備のない戸棚に蔵置したが、他の2名も金のう管守の責任を持ちながら岡田出納員の放慢な措置に対し何ら格別の措置も講ぜず、漫然3時間余を経過し、その間に何者かに窃取されたもので、本件亡失は共同の職責のもとに現金保管の事務を担当していた前記3名の出納員がいずれも善良な管理者の注意を怠つたことに因るものと認め、23年10月12日連帯して弁償の責任があると検定した。
 なお、本件は未処分であつたので所管大臣に対し弁償処分を要求したところ、11月大臣は3名に対し弁償を命じた。