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  • 昭和23年度|
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物品の購入及び管理当を得ないもの


(397)−(419) 物品の購入及び管理当を得ないもの

 特別調達庁及び各特別調達局で、昭和24年8月末現在全国に保有する連合国軍用物資は、宿舎建設用及び維持管理用資材約43万屯(約76億円)調達解除物件約25万屯(約24億円)合計約69万屯(約101億円)に上つているが、建設用及び維持管理用資材の大部分(約41万屯約71億円)は、調達解除物件の全部とともに国内向けに売渡(歳入見込額約51億円)をするのやむなきに立ち至つている。

 このように不用品を生じたのは、終戦処理費物品の特殊性によるものなどやむを得ないものもあるが、その間当局の処置当を欠くものもあると認められる。
 先ず停滞事由としては、建設工事が最も盛んであつた21、2年ごろは資材の調達に追われて、23年5月に至るまでは、購入契約の締結と配分を担当する戦災復興院及び特別調達庁において保有資材の在庫量すら、は握していなかつた状況であり、中央と現地との連絡も不十分であつたことなどがあげられるが、ひいて不急不要又は不適格品を購入し、維持管理用資材の所有見込が過大に失し又は官給材料を工事請負人持に変更した場合の処置を怠つたものなどがあり、これら物品に要した保管料、輸送費などを加えて多額の国損をきたしている。
 なお、これら物品の保管処置が当を得なかつたため滅失き損を生ぜしめ、且つ、これに対しても完全品なみの保管料を支払い、又帳簿と現品との不符合が多いなど物品の経理当を得ないものがある。
 今、不当と認める事例をあげると左のとおりである。

(1) 不急不要又は不適格品を購入し在庫となつているもの

(397)  特別調達庁及び各特別調達局で、24年4月末現在二重煙突(ガス排気筒)200,678呎(この価格93,144,240円)が在庫している。右は、21年12月戦災復興院で足利板金工業組合と250,000呎購入の契約をしたが納入が著しく遅れ、24年4月までに217,908呎納入されたものであるが、本品は23年7月に至り購入の必要がなくなり、契約を解除することができたのにかかわらず引き続き納入させたものがあるばかりでなく、その使用実績もようやく16,536呎にとどまつている。これはガス使用地区でないのに配分したり、本品の納入が遅延したため他の資材で代用した後に配分した等のためで、本品に対し支払つた保管料は24年3月までに1,705,470円となつている。
 なお、本品の検収に当り処置当を得なかつたため32,092呎の不足数量があり、これに対し22,376,967円の過払を生じたが、24年11月現在3,982,429円が返納されたに過ぎない。

(398)  各特別調達局で、24年3月末現在ウオータープルーフイング(セメント防水剤)ドラム缶41,499個の在庫がある。
 右は、戦災復興院が21年10月から22年4月までの間に、大阪府セメント防水材工事統制組合から購入した44,100缶(この価格87,497,994円、納入輸送諸掛5,330,655円)の残であるが、使用のため出庫したものは、わずかに785缶に過ぎず、需要のないままにほとんど全部が2年以上にわたつて退蔵されている。
 本品の内容を見ると約90%の水を包含するものであるが、仮りに本品が必要であつたとしても所要の主成分を購入して配分すればたりたものもあつたと認められる。
 しかして、本品保管の実地を検査するに容器検査、保管方法などが適切でないため入庫量の半ば以上に達する漏えい滅失を生じているところもあり、しかもその保管料の支払に当つては完全品として取り扱つているものが多く、24年3月分までの支払額は13,550,792円に達している。

(399)  特別調達庁及び各特別調達局(京都及び札幌を除く。)で、24年8月末現在顔料185,290封度が在庫している。
 右は、特別調達庁で、23年12月から24年3月までの間に、購入した230,473封度(この価格67,744,732円)のうちから、わずか45,183封度を出庫した残である。本品は非統制物資で従来から業者持として工事施行上何ら支障のなかつたもので、このように多量を購入する要はなかつたばかりでなく、本件は工事の進ちよく度を考慮することなく納期延伸を認めたため、大部分が工事完了後納入される結果をきたしたもので、本品の保管料は24年8月まででも2,205,706円に上つている。

(400)  特別調達庁で、24年8月末現在オイルヒーター1,298台(この価格168,740,000円)が在庫している。
 右は、朝鮮向け連合国軍家族住宅用として発注されたところ、23年7月に至り購入の必要がなくなつたのに、商工省から軍にその生産続行を申請し、引き続き納入させたものであるが、7月当時完成品はなく、仕掛歩合平均84%で、これを補償して生産を打ち切ればたりたと認められるのに、国内軍需もない本品を完成納入させた結果、その代金の外、梱包輸送などの経費17,734,890円を要し、更に保管料は24年8月末まででも9,719,751円となつている。

(401)  特別調達庁で、24年8月末現在セクシヨナルボイラー507台の在庫がある。
 右は昭和鉄工株式会社外1名から購入した514台(この価格86,318,314円)の残473台と、22年度において購入した79台の残34台との合計であるが、23年度分514台は、当初納期を23年3月末としたのに、再度にわたつてこれを延期し完納させたものである。しかし、この間本品の使用されたものは、わずか41台に過ぎなかつたものであるから、生産が遅れていたものについては適宜の処置を講ずべきであるのに、24年3月に至つてもなお133台(この価格32,900,632円)を納入させている。なお、24年8月分までの保管料は4,352,835円である。

(402)  特別調達庁で、24年8月末現在キヤビネツトヒーター6,590個(この価格24,369,877円)の在庫がある。
 右は、23年6月から24年6月までの間に納入された7,271個の残であるが、放熱効率が悪くて使用されなかつたものがあるばかりでなく、東京地区の建設工事の大部分が終了してから納入されたもので、24年8月までの保管経費は339,942円である。
 又、同庁で本品を名古屋特別調達局に2,267個(この価格8,469,582円)を配分したものがあるが(大阪からの保管転換分767個を含む。)、24年8月末までに出庫皆無で、そのまま在庫となつている。
 右は、名古屋地区の暖房がほとんどガス又は電気で、蒸気用の本品を必要としなかつたことに因るもので、8月までの保管経費は528,213円になつている。

(403)  仙台特別調達局で、24年3月末現在岩綿保温板18,334枚(この価格961,563円)の在庫がある。
 右は、特別調達庁において23年2月緊急所要の資材として互洋貿易株式会社東京支店から納入させたものであるが、同局は岩綿保温帯を要求したのに、特別調達庁が本品を購入配分したため使用されなかつたものである。
 なお、本品に要した輸送費及び24年3月までの保管料は229,630円となつている。

(404)  横浜特別調達局で、24年6月末現在コンクリートパイプ55,573米(この価格8,604,218円)の在庫がある。
 右は、本牧地区建設工事用として23年1月扶桑建材株式会社と契約し、12月までに納入させたものであるが、本件は契約当時引当工事が既に土管、鋳鉄管を代用して工事の終了を見るに至つたもので、700米を他に保管転換した以外、全量そのまま不用となつたものである。
 なお、これに要した輸送費及び24年6月までの保管経費は7,343,101円である。

(405)  横浜外4特別調達局で、24年3月末現在プラスターボード20,000坪(この価格5,000,000円)が在庫している。
 右は、特別調達庁において22年12月緊急所要の維持管理用資材として扶桑建材株式会社から23年5月までに納入させたものであるが、その後使用皆無の状況である。
 なお、本品に要した24年3月までの保管料は623,782円である。

(406)  福岡特別調達局で、24年3月末現在プラスター992,070キログラム(この価格32,627,527円)が在庫している。
 右は、同地区において工事開始後本品に替えてベニヤ板を使用することになつた等のため本品の需要が激減したのに、中央との連絡不十分のため購入配分が続けられた結果に因るもので、本品保管料として24年3月末までに2,170,648円を支払つている。

(2) 維持管理用資材の購入に当り処置当を得ないもの

 維持管理用資材は、22年度第4・四半期分から特別調達庁であらかじめ計画を定めて購入することとなつたものであるが、所要見込の予測なども十分でなく漫然と多量購入するものが多く、23年7月14日購入数量はこれを緊急少量に限るよう軍から指示された状況であるのに、7月15日以降22年度第4・四半期及び23年度第1・四半期分として購入契約をしたものだけでも5億円をこえている。その結果多量の過剰在庫を生じているが、その事例をあげると左のとおりである。

(407)  特別調達庁で、24年8月末現在セクシヨナルボイラー部品名9品目(この価格49,015,204円)の在庫がある。
 右は、23年7月から24年3月までの間に株式会社前田鉄工所外1名に納入させたものであるが、購入に当つて本品使用の対象となるセクシヨナルボイラーの施設状況を、は握せず、漫然多量に購入した結果需要がなく全部が停滞となつたものである。なお、本品の24年3月までの保管経費は2,329,674円である。

(408)  特別調達庁及び横浜外3特別調達局で、24年3月末現在セメント瓦合計561,549枚の在庫があるが、右は、23年度第1・四半期分として583,000枚(この価格12,582,482円)を購入したものの残で、見込が過大に失した結果である。

(409)  特別調達庁で、24年8月末現在都商事株式会社練馬倉庫外2箇所に木材12,482石を保管しているものがある。右は、東京地区の22年度第4・四半期分として23年4月から6月までに購入契約し、右倉庫に納入させた23,352石の残であるが、このように多量の残を生じたのは見込が過大に失した結果である。
 なお、24年3月分までの保管経費は3,621,031円になつている。

(410)  特別調達庁で、22年度第4・四半期分として粘土瓦4,251,930枚(この価格87,215,318円)を購入し、その使用が僅少であつたことは昭和22年度決算検査報告に掲記したとおりであるが、福岡特別調達局においても24年3月末現在各種粘土瓦が298,593枚在庫している。右は、23年4月西日本貿易株式会社から購入した302,700枚(この価格5,555,764円)の残で、24年3月までの保管料は830,273円になつている。

(3) 在庫と需要を勘案せずに購入したもの

(411)  特別調達庁で、23年6月以降家族住宅用資材の購入に際し、硝子、電球、タイル外10品目については在庫量が既に判明していたのに、これを勘案せず1億2000万円をこえる購入を行い、多量の在庫を生ぜしめている。そのうちの事例として硝子(厚さ3粍)について見ると、軍の要求565,000平方呎、4月調査の過剰在庫782,372平方呎であるのに、更に三菱化成工業株式会社外1名から565,000平方呎(この価格22,694,212円)を購入し、又壁タイル(4吋4分の1平方)は軍の要求877,586個、過剰在庫33,690,880個であるのに、更に伊那製陶株式会社外4名から877,586個(この価格15,971,155円)を購入している。

(4) 官給予定を工事請負人持に変更した資材を購入したもの

(412)  戦災復興院及び特別調達庁では工事所要資材を請負人に官給する建前で購入を続けたものであるが、実際の施行に当つては工事中官給を請負人持に変更したものが少くないのに、所要資材の購入に当り右変更数量を減少する等適宜の処置を怠り、ひいて多量の停滞を生ぜしめたものがある。例えば、代々木地区家族住宅建設工事(22年9月完成)中、建築工事について当初官給予定を請負人持に変更した資材は合計65,411,643円で、総建築材料費の37%に当つているが、当初官給予定の全量につき購入をしている。

(5) 物品の保管当を得ないもの

(413)  特別調達庁で、都商事株式会社練馬倉庫に24年8月末現在生石灰1,471屯(この価格3,324,527円)の在庫がある。右は、22年5月から8月までに成増地区家族住宅建設用として株式会社太陽商社外2名から購入した3,823屯の使用残であるが、設計変更によつて所要量に変更を生じたのに、当初発注量をそのまま納入させたばかりでなく、大部分は無包装で納入させ、現地に適当な倉庫がないままに野積に放置し使用不能に至らしめている。なお、本件保管料は完全品の料率により支払つているもので、その額は24年3月までに1,401,025円となつている。

(414)  横浜特別調達局で、24年7月末現在株式会社横浜商会大黒町倉庫にコンクリートパイプ類65,119本を野積保管させているものがある。右は22年9月から23年4月までに入庫したものであるが、規格別の仕訳もせず完全品と破損品が雑然としたまま長期間経過しているものであつて、保管料は一般の料率によりこれを支払い、24年3月までに7,600,527円となつている。

(6) 保管料の支払に当り処置当を得ないもの

(415)  特別調達庁で、三菱倉庫株式会社に22年8月から24年5月までの調達解除物件保管料として51,179,084円を支出したものがある。本件は、在庫量の30%以上が腐しよく品、中古品又は破損品であるから、当然保管料を割引して支払うべきであるのに、何らこれを考慮することなく完全品扱として支払つていたのでこれを注意したところ、寄託価格を再評価した結果、24年6月以降毎月約65万円を節約することができた状況である。
 なお、本件と同様の事例は他にも多いものと認められ、その是正につき注意を促している。

(7) 資材の保管転換に当り処置当を得ないもの

(416)  名古屋、京都両特別調達局で、大阪特別調達局から保管転換を受けた諸資材11,017屯のうち、24年3月末現在463品目5,204屯の出庫皆無の資材がある。右は、23年2月大阪局保有資材を大阪、名古屋、京都各局に5、4、3の割合で配分することとし、名古屋局で5,860屯、京都局で5,157屯保管転換を受けたものであるが、両局において使用したものは極めて少く、在庫は出庫皆無の品目だけについて見ても両局をあわせると前記5、204屯に上り、これに要した輸送経費は約270万円に達している。これは資材の配分に当り所要品目使用見込数量等を考慮することなく、機械的に配分をしたことに因るものである。
 なお、京都局で保管転換を受けた資材のうちには品目数量不符合のものが114品目にわたつているが、24年12月に至つてもまだ是正整理されていない。

(8) 物品の経理当を得ないもの

 戦災復興院及び特別調達庁の物品経理事務は、業務開始後既に相当の期間を経過している現在、なお適切な処理を欠いているものが多い。

(417)  特別調達庁においては、戦災復興院との引継が完全でなかつたのとその後の整理が十分でなかつたため、現品と帳簿との不符合が多いものと認められ、現に24年4月から8月に至る間に現品と帳簿との対査を行つた練馬倉庫保管品について見ても、663点にわたり不符合があつた状況である。

(418)  22年2月戦災復興院福岡特別建設出張所設置に伴い、京都特別建設出張所から保管転換を受けた資材のうち、品目数量不符合のものが56点あるが、24年12月に至つてもまだ是正整理されていない。

(419)  23年1月特別調達庁大阪支局設置に伴い、戦災復興院京都特別建設出張所保有資材の引継を受けたところ、帳簿と現品との間に不符合が多いため、10月の在庫数に基いて出納簿を設けたが、これと引継帳簿との開差は不明である。