昭和24年1月から12月までの間に検査の結果、国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認め、本属長官に対し懲戒の処分を要求したものは左の1件である。
東京逓信局で、22年6月民間会社に用紙を交付して工務時報の印刷製本を1枚当り80銭、1部9円60で請け負わせ149,500部の代金を支払い、実際に納入された132,000部との差17,500部に相当する代価168,000円を過払したばかりでなく、単価の内訳においても製版、印刷料等が著しく高価であつて、これらを統制額に基いて算出すれば印刷製本代1部の単価は2円83程度であり、又用紙の交付に当つて損耗率を8分から1割に見込んでいるが、23年度に他の業者に対して損耗率3分で請け負わせている実情に徴しても本件損耗率の見積は高きに過ぎ、不当に用紙を交付したものと認められる事実があつた。
よつて関係者中、同局工務部調査課第二調査係長逓信技官中村某及び同係逓信技官神部某は製品検収及び用紙不当交付の責住者として、資材部用品課購買係長逓信事務官赤石某は工務時報印刷契約締結の事務担当者として、又資材部用品課長逓信事務官山村某は赤石某の契約手続に関する行為をそのまま容認して本件契約を締結させるに至つた監督責任者として、いずれも故意又は重大な過失があつたものと認め、24年5月30日逓信大臣に対し懲戒の処分を要求したところ、郵政大臣は8月25日附をもつて山村某及び赤石某をそれぞれ戒告処分に付した。
又、中村某及び神部某は目下起訴中であり、懲戒の処分は見合わせている旨電気通信大臣から通知があつた。(22年度決算検査報告参照)