昭和24年1月から12月までの間に、国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し利害関係人から審査の要求があり、本院においてその決定をしたものは左の1件ある。
姫路合同貨物自動車株式会社外13名が、兵庫県労働部失業保険徴収課員吾郷某のために23年11月から12月までの間に失業保険料等相当額524,123円45を詐取されたところ、24年1月に失業保険特別会計兵庫県歳入徴収官実成某から保険料を納付すべき旨督促を受けたので、さきになされた吾郷某に対する支払によつて国に対する債務は弁済されたものと認むべきであるとして、24年3月本院に対して、審査を要求したものがある。
右の事実について審理したところ、吾郷某は監査員であつて、監査員は検査の権限はこれを有するが保険料を領収する権限を有していないばかりでなく、国が失業保険料を現金で収納する場合に交付する収納の証は、正規の失業保険特別会計現金領収証書に収入官吏の官職氏名が記入なつ印されてあるものでなければならないのに、吾郷某が交付した領収証書は単に兵庫県失業保険徴収課特別会計監査員吾郷某の氏名を記入しその私印をおした書面に過ぎないものであり、更に前記審査要求者側でも吾郷某から保険料の納付方請求のあつた場合、支払上相当の注意を払えばその間の事情を察知することができたものと認められるので、結局吾郷某に対する現金等の交付はこれを国に対する有効な納付として取り扱うことはできず、歳入徴収實実成某の取扱は是正を要しないものと決定し、24年6月審査要求者及び歳入徴収官に通知した。