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  • 昭和25年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項及び是正事項|
  • 第13 建設省|
  • 不当事項|
  • (一般会計)|
  • 予算経理

直轄工事の経理が著しくびん乱しているもの


(833)−(868) 直轄工事の経理が著しくびん乱しているもの

(部)公共事業費(款)一般公共事業費(項)河川事業費外5科目

建設省管下各地方建設局が直営施行する河川、道路の改修、災害復旧等の工事については、昭和26年中138工事事務所及び4工作事務所のうち47事務所の会計実地検査を実施したが、東北外4地方建設局管内最上川下流外29工事事務所及び松山工作事務所において正規の経理をすることなく工事費から架空の人夫賃、材料購入費等の名義により支払に立て又は予算外に借入金をするなどの方法により総額447,954,776円の資金をねん出し、これを工事請負代金、労力費、材料購入費、給料諸手当及び超過勤務手当等に使用したものが412,015,223円に上り、本院会計実地検査当時その残額35,939,552円をそれぞれ手元に保有していた状況である。

 しかして、各事務所においては、それぞれ資金前渡官吏が置かれ、工事に使用するため前渡資金を交付されているにかかわらず、このように架空の経理を行い、多額の手元現金を保有し自由にこれを使用したもので、その現金はおおむね国の工事の労力費、材料購入費等に還元されているが、予算外の使途又は予算以上に使用したものに給料諸手当14,675,952円、職員厚生費8,543,852円、食糧費3,144,310円、本局送金2,373,143円、河川読本代1,209,932円等がある。そのうち給料諸手当は主として定員外の職員に対するものであり、本局送金のうち2,000,000円は鬼怒川工事事務所から関東地方建設局に送付したもので、同局では23年度に株式会社松崎商会から購入した銅線を同商会に保管させたことに整理したもの(昭和23年度決算検査報告第587号参照) のうち、結局未納となつた13屯余を補うため同品を阪根産業株式会社から1,927,050円で購入し、残額を通信資材代及び食糧費に充てたものである。又、河川読本代は、各地方建設局が売さばきを依頼された河川読本54万2000部単価20円(1事務所当り最高3万8000部割当)の一部の代金支払に充てたものである。

 又、26年5月鬼怒川工事事務所氏家出張所においては宿直職員が殺害されて保管中の現金800,000円盗難にあい、信濃川工事事務所長岡出張所においては職員が4,437,044円を自宅に保管中横領容疑をもつて起訴され、又、利根川下流工事事務所においては25年度末に3,156,785円を各出張所長及び派出所主任に分割保管させ、その一部は私金と混用されていた状況である。

 いま、本件不正規経理の事務所別内訳を示せば左のとおりである。

  地方建設局 工事事務所
又は
工作事務所
ねん出 使用 手元保有高 実地検査年月
金額 方法 期間 金額 使途 期間

(833)

東北

最上川下流

263,679,176

架空労力費
架空材料費
借入金等
年月
22年度から
25年度まで

262,450,529

工事請負代
借入金返済
労力費
材料費
諸手当等
年月
22年度から
26.4まで

1,228,646
年月
26.4
(834) 阿賀川 44,163,174 架空労力費
借入金等
23.7から
26.10まで
43,882,106 工事請負代
労力費
材料費
運搬費等
23.7から
26.10まで
281,068 〃10
(835) 最上川上流 34,524,771 架空労力費
架空材料費等
22年度から
25.6まで
27,829,489 工事請負代
労力費
材料費
諸手当等
22.11から
5.6まで
6,695,281 〃4
(836)

東北

北上川下流 15,703,273 架空労力費 22.7から
25.3まで
7,372,363 材料費
労力費
機械器具修理費等
22.7から
26.1まで
8,330,909 26.4
(837) 名取川 751,167 25.8
26.3
751,167 労力費
河川読本購入代
25.8
26.4
0 〃7
(838) 岩木川 199,973 25.5 199,973 河川読本購入代 25.5 0 〃〃
(839) 江 合、鳴瀬両川 184,680 〃〃 184,680 〃6 0 〃4
(840) 湯沢 65,000 〃〃
〃6
65,000 〃5
〃6
0 〃〃
(841) 米代川 58,720 〃5 58,720 〃〃 0 〃〃
(842) 阿武隈川下流 57,620 〃7 57,620 〃8 0 〃 7
(843) 馬渕川 46,185 〃10 46,185 〃11 0 〃〃
(844) 雄物川下流 17,940 〃5 17,940 〃6 0 〃〃
  

  359,451,680     342,915,774     16,535,906  
(845)

関東

鬼怒川 31,620,170 架空労力費
県からの委託工事費受入等
25.3から
26.5まで
29,090,269 労力費
材料費
委託工事労力費
本局送金等
25.3から
26.9まで
2,529,901
(うち800,000円盗難)
〃5
〃10
(846) 信濃川 6,732,177 架空労力費
架空補償費
架空修理費等
22.9から
26.3まで
819,778 労力費
超過勤務手当等
24.4から
26.5まで
5,912,399 〃5
(847) 利根川下流 6,315,535 架空労力費 25.11から
26.4まで
3,158,750 労力費
工事請負代
26.3から
〃5まで
3,156,785 〃〃
(848) 富士川 4,176,505 26.3
〃4
4,176,505 労力費 〃3
〃4
0 〃〃
(849) 五十里 3,887,262 〃3 2,434,194 26.3から
〃6まで
1,453,068 〃9
(850) 京浜 2,546,400 〃〃
〃4
1,012,177 〃4
〃5
1,534,223 〃5
(851) 江戸川 642,154 〃3
〃4
197,342 〃4
〃5
444,812 〃〃
(852) 荒川上流 575,062 25,4から
26,2まで
575,054 借入金返済
河川読本購入代等
25.5から
26.3まで
8 〃6
(853) 利根川水系
砂防
470,960 26.1から
〃4まで
60,770 労力費 26.4
〃5
410,190 〃5
(854) 小貝町 305,577 〃3
〃4
52,322 〃4
〃5
253,255 〃〃
    57,271,803     41,577,161     15,694,642  
(855) 中部 金沢 2,992,626 架空労力費 25.10から
26.3まで
0    

2,992,626

〃4
(856) 中国
四国
渡川 7,586,260 架空労力費
自動車売払代
架空修理費等
25.1から
26.8まで
7,148,490 材料費
乗用自動車購入費
超過勤務手当等
25.2から
26.8まで
437,769 〃9
(857) 重信川 4,292,016 架空労力費
借入金
架空材料費等
23.4から
25.12まで
4,252,206 乗用自動車購入費
借入金返済等
24.4から
26.3まで
39,810 〃〃
(858) 肱川 2,642,819 架空労力費
架空材料費等
25.2から
〃12まで
2,632,533 旅費
物品費
超過勤務手当等
25.4から
26.8まで
10,286 〃〃
(859) 岡山第二 2,366,171 架空労力費 24.4から
25.8まで
2,140,360 労力費
超過勤務手当等
25.4から
〃12まで
225,810 〃1
(860)

中国
四国

吉野川 2,118,625 架空修理費
架空労力費
25.4から
〃12まで
2,118,625 機械器具修理
超過勤務手当等
25.4から
〃12まで
0 26.2
(861) 松山 1,825,118 架空材料費
架空修理費
架空労力費
25年度 1,825,118 物品費
超過勤務手当
旅費等
25年度 0 〃9
      20,831,010       20,117,333      713,676   
(862)

九州

八代 4,523,932 架空労力費等 24.5から
26.3まで
4,521,231 労力費
工事請負代
食糧費等
24.5から
26.6まで
2,701 〃7
(863) 大淀川 2,883,722 架空労力費
借入金等
25.2から
〃10まで
2,883,722 職員給料
借入金返済
物品費等
25.2から
26.5まで
0 〃〃
    7,407,655     7,404,954     2,701  
    合計 447,954,776     412,015,223     35,939,552  

(864)−(868)なお、右の外事実にそわない経理を行い、借入金により工事を施行し又は多量の帳簿外物品を保有していたものが次のとおりある。

(864) 荒川上流工事事務所で、改修工事の労力費として経理された262,000円はその実附帯工事に使用されたものて、事実にそわない経理をしたため附帯工事地元負担金8万7千余円を徴収することができなかつたものである。

(865) 高岡工事事務所で、昭和24年度中使用した労力費1,310,470円、地元からの借入金で購入した材料548,294円を25年度予算から支払い又は返済している。

(866) 天神川工事事務所で、架空の移転補償費510,165円を支払に立て借入金の利子に充てている。

(867) 松山工作事務所で、予算を無視して物品を購入したため4,050,214円が支払不能となり、翌年度予算から支払つたものがあり、又、債権者に交付すべき小切手を現金化しこれを他の支払に充てるなどしたものが4,022,163円ある。

(868) 信濃川工事事務所で、コンクリートパイル、鉄線等の工事用資材総額1,456,612円を工事に使用したこととして帳簿外に保有し、又、渡川工事事務所て、帳簿外物品丸鋼等約18万円を本院会計実地検査当時附近の農業協同組合倉庫外1箇所に移し替え保管していたものがある。