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  • 昭和27年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第4節 各所管別の不当事項および是正事項|
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国庫補助金等の経理当を得ないもの


(535 )−(581 ) 国庫補助金等の経理当を得ないもの

(昭和26年度) (部)社会及労働施設費 (款)社会保険費 (項)国民健康保険費
(部)雑収入 (款)諸収入(項)弁償及返納金
(組織)厚生本省 (項)国民健康保険助成費

 厚生省所管の国庫補助金、交付金等は、昭和26年度に確立した結核予防対策を実施するため格段に増大した結核予防事業を初めその他各種の疾病予防事業、生活保護事業、上下水道事業等に対する国庫補助金ならびに国民健康保険事業に対する27年度から実施した振興奨励交付金、再建整備資金貸付金等多種多様にわたっている。

 本院において、28年中、これら国庫補助金、交付金等の交付状況および補助団体における経理状況の実態について、北海道ほか24都府県およびその管内の市町村等の一部を実地に調査した結果によると、当局者において条件を具備しない団体に対し交付金、貸付金等の指令をしたものがあるほか、補助団体における補助事業費等の経理が適確でないものがきわめて多く、厚生省に提出した事業費の精算書において補助不足分があるとしているものについても、その補助基本額中に補助対象外の事業費を含めたり、または事業に伴う収入があるときは事業費から控除することとなっているのにその収入を実際より少額に計上したりしていて、かえって補助超過となるものがあるような状況で、補助超過額があるとしているものでも、適正に計算するとその超過額が増大するなどの結果をきたしている。

 右のような不適確な経理を是正した場合生ずる国庫補助金、交付金等の差額計算を示すと、別項に記述したとおり44,581,927円に及ぶ状況である。

 このような遺憾な事態を生ずる原因を考察すると、これら国庫補助金等の交付先は広く自治団体、法人、個人にわたっていて、事業実施の箇所に至ってはその数きわめて多く、国庫補助金等を受けた者においても経理を適実に処理しないうらみがあり、たとえば、都道府県の保健所において補助対象とならない事業費との間の経費の経理区分を正確に処理することが困難な現状であったり、また、補助団体側においても、国庫補助金、交付金等がなるべく多額に交付されるようにとの意図のもとに経理上の作為をするなどの傾向があることは否定することができない事実である。しかして、他方、当局者において、多種目にわたる国庫補助金、交付金等の交付について審査の適切を期し、また、交付後の指導監督を徹底して精算の正確な処理をすることについては相当困難な事情があるとは想察するが、これらの点についての工夫改善ならびにその実施についてはみるべきものの乏しいのも前記の遺憾な事例が例年累発している一因をなすものと思料される。

 すなわち、当局においては、国庫補助金、交付金等についての国の債務を決定する支出負担行為担当官はこれを本省に置き、補助指令等に基く国庫補助金等の支出をする事務はこれを各都道府県出納長に委任し、補助申請書、精算書等の書面は都道府県を経由することに扱っているだけで、その処理すべき事務の範囲が必ずしも明確になっていない。これら国庫補助金の効果的使用および経理の適実性を確保するについて関係機関の職責遂行上更に改善の要があると認められるので主管大臣に対し28年7月25日別項(第2章第6節参照) 記載のとおり国庫補助金等の経理について改善意見を表示した。

(1) 結核、性病および伝染病予防事業等に対する国庫補助金等について

(535)−(570)  本件国庫補助金は、事業に要した経費から事業に伴う収入を控除して精算することとなっているのに、補助基本額に補助の対象とならない土地、建物、自動車購入費、人件費等を含めていたり、受診者から徴収した健康診断料、治療料金等の事業収入を控除しなかったものがあって、厚生省に提出した精算書では補助不足となっていたものがかえって補助超過となり、または補助超過額が更に多くなり、返納を要するものが27,429,035円あり、うち一事項20万円以上のものが左のとおり36件27,302,548円ある。

〔1〕 結核予防費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(535 )

北海道

北海道

1,515,480

757,740
(536 ) 山形県 山形県 3,108,576 657,153
(537 ) 東京都 東京都 1,319,369 659,684
(538 ) 神奈川県 神奈川県 1,259,200 629,599
(539 ) 富山〃 富山〃 444,336 222,168
(540 ) 山梨〃 山梨〃 1,857,093 928,083
(541 ) 愛知〃 名古屋市 1,730,813 865,406
(542 ) 大阪府 大阪府 616,705 308,352
(543 ) 大阪市 9,864,574 4,882,287
(544 ) 兵庫県 姫路〃 1,356,323 678,162
(545 ) 奈良〃 奈良県 516,855 258,427
(546 ) 鳥取〃 鳥取〃 4,760,177 2,380,089
(547 ) 広島〃 広島〃 553,893 276,946
(548 ) 徳島〃 徳島〃 637,761 318,880
(549 ) 長崎〃 長崎〃 2,119,884 1,059,942
(550 ) 宮崎〃 宮崎〃 726,901 363,451
32,387,940 15,246,369

〔2〕 療養所運営費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(551 )

東京都

財団法人浄風園病院

2,371,000

1,180,000
(552 ) 財団法人日本基督教愛隣会救世軍清心療養園 2,347,340 1,140,859
(553 ) 財団法人結核予防会結核研究所附属療養所 1,718,846 858,965
(554 ) 財団法人多摩済生院 1,075,048 519,371
(555 ) 山梨県 財団法人山梨厚生会 1,045,340 308,102
8,557,574  4,007,297

〔3〕 療養所設置費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(556 )

兵庫県

神戸市

1,668,195

731,368

〔4〕 性病予防費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(557 )

北海道

北海道

4,753,537

257,941
(558 ) 山形県 山形県 1,179,704 589,852
(559 ) 富山〃 富山〃 652,016 203,728
(560 ) 大阪府 大阪市 1,456,670 728,335
(561 ) 鳥取県 鳥取県 606,211 303,106
(562 ) 山口〃 山口〃 2,241,198 1,083,650
10,889,336 3,166,612

〔5〕 法定伝染病予防補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(563 )

東京都

東京都

3,547,617

1,182,539
(564 ) 神奈川県 神奈川県 584,132 292,066
4,131,749 1,474,605

〔6〕 寄生虫病予防補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(565 )

山梨県

山梨県

1,706,004

273,553

〔7〕 保健所費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(566 )

宮崎県

宮崎県

1,634,605

629,361

〔8〕 防疫業務委託費

支出庁 委託団体 事業費から控除すべき額 委託費支出済額中返納を要する額

(567 )

神奈川県

神奈川県

324,145

308,460

〔9〕 生活保護費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(568 )

福岡県

飯塚市

492,221

393,777

〔10〕 生活保護法施行事務費補助金

支出庁 補助団体 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(569 )

千葉県

千葉県

1,431,377

473,639
(570 ) 福岡〃 福岡〃 2,713,086 597,507
4,144,463 1,071,146

(2) 国民健康保険事業に対する国庫補助金等について

(571)−(577)  国庫補助金または貸付金の返納もしくは償還を要するものが6,439,100円あり、うち1事項20万円以上のものが左のとおり7件3,681,924円ある。
 このような事態を生じたのは国民健康保険事業が保険料収納の不成績と受診率の増加等に伴う診療報酬の増大とにより収支の均衡を失し、事業の運営が困難となるに従い保険者が事実に相違する申請をして正当補助または貸付額以上の交付を受けようとする傾向に因ることも否定することができないが、本事業を遂行する意慾が減退するのをおそれ、監督官庁においてこれら国庫補助金等の交付の際の審査やその後の経理に対し指導監督が十分でなかったことがおもな原因と認められる。

〔1〕 事務費補助金

 精算書の補助基本額に補助の対象とならない直営病院職員の俸給等を含めていたりまたは事業を休止していたものに国庫補助金を交付したもの

支出庁 保険者 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(571 )

広島県

安芸郡音戸町

456,408

263,863
(572 ) 福岡〃 鞍手郡若宮町 335,500 335,500
791,908 599,363

〔2〕 直営診療所設置費補助金

 補助の対象となった建物、医療機械を設備していないのに補助基本額の精算にこれらの経費を含めていたもの

支出庁 保険者 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

(573 )

福岡県

三井郡草野町

2,446,189

574,905

〔3〕 振興奨励交付金および再建整備資金貸付金

 交付および貸付けの要件が保険料収納割合70%以上等と定められているのにこれらの要件に達していないものに交付または貸付けしたもの、または交付および貸付けの要件には適合しているが保険料調定額等および一般会計繰入金が事実と相違しているので超過交付および超過貸付けとなっているもの

支出庁 保険者 正当交付金または正当貸付金から控除すべき額 交付金交付済額中返納を要する額または貸付金貸付済額中償還を要する額
(振興奨励交付金)

(574 )

大阪府

枚方市

200,000

200,000
(575 ) 福岡県 田川市 260,656 260,656
小計 460,656 460,656
(再建整備資金貸付金)
(576 ) 大阪府 枚方市 1,775,000 1,775,000
(577 ) 福岡県 飯塚〃 272,000 272,000
小計 2,047,000 2,047,000
2,507,656 2,507,656

(3) 水道事業に対する国庫補助金について

(578)−(581)  上下水道事業は、厚生、建設両省の共管で、両省間の協定もあって工事のしゅん功認定は建設省がこれに当ることとなっているが、精算処理に関しては必要な両省間の連絡が行われていないうらみがあるばかりでなく、厚生省および補助団体は、単年度内に完成しがたい一連の全体工事計画についてはその全工事の終了を待ってその際審査して精算すれば足り、それまでは国庫補助金の交付を受けた事業費の範囲内であれば、工事箇所、内容、着工および完成時期、所要経費区分等の変更は制約を受けないものとして、当該年度分として審査決定を受けた具体的工事計画についてもみだりに工事箇所、工事計画内容、実施時期を変更していて、その実態においては補助超過となっているものが北海道ほか7県において補助超過額10,713,792円ある。

 これに対し、厚生省当局は、当該年度経過後に設計変更の名目で追認したり、また、なお追認に至っていないものもあるが、各年度ごとに補助対象工事費を決定して国庫補助金を交付し、また、当該年度分については年度末に精算すべき本件補助の経理としてはその処置適切でない。

 しかして、補助超過があるものとして事業主体から精算書が提出されているものに対し、その返納処置を執らないままにしているものがまた少なくなく、25年度に交付した上水道特別鉱害復旧事業補助金のうち、山口ほか1県での4事業主体分補助超過額1,088,160円は、26年8月までに精算書が提出されているのに28年10月末に至るもまだその返納処置を講じていない。いま、本院会計実地検査の結果、補助基本額となっている事業費に資材の購入価額を水増ししたもの、事業に必要な数量をこえて購入した資材の価額が含められているものなど国庫補助金の減額を要するものと認められた事例のおもなものを掲記すると左のとおりである。

支出庁 事業 事業主体 事業年度 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中減額を要する額

(578 )

徳島県

上水道地盤変動復旧

小松島市

26

1,500,000

750,000
(579 ) 愛媛〃 北宇和郡岩松町 25 573,276 286,638
(580 ) 越智郡波止浜町 1,307,992 653,996
(581 ) 福岡県 水道施設特別鉱害復旧 嘉穂郡山田町 23から
27まで
2,162,839 1,006,530
5,544,107 2,697,164