(款)食糧管理収入(項)食糧売払代(項)食糧買入費
食糧庁で、昭和28年度に購入した外国食糧のうち米は151万余トン1063億6千2百余万円で、前年度輸入量に比べて60万余トン422億6千5百余万円増加している。外米の購入については、昭和27年度決算検査報告に掲記したとおりその購入処置が適切でなかったため品質粗悪なものを買い入れたり、あるいは黄変粒混入のものを多量に購入し巨額の国損を生じているが、28年度においてもこの種の事例がビルマ米において依然その跡を絶たないばかりでなく、トルコその他からの輸入米からも発生し、さらに、28年7月輸入されたコロンビア米において白色の米にも黄変米と同様の病変菌のあることが確認されたのにすみやかに適切な処置も講ぜず引続きこの種のものが多量に輸入され、結局、29年9月末現在138,374トンが主食用として売り渡すことができないで処分保留のまま滞貸となっている状況である。
主食不適米の輸入と27年度に輸入したビルマ黄変米の処分について処置が適切を欠いたと認められるものは次のとおりであるが、このほかイタリー、台湾から輸入した110,499トンも、他の外国産米に比べて高価(港着トン当り平均イタリー米78,119円、台湾米81,525円)であるのに砕米の混入が多くあるいはとう精が不良なため正常価格で売り渡すことができず多額の値引をしている状況である。
このように毎年多量の主食不適品を輸入し多額の国損を繰返し生じているのは、現在外国食糧については、買入は食糧庁が積地検査基準により契約を締結し輸入商社からの船積書類の提示により現品領収証を発行して代金を支払い、輸入港で引き取る現品の数量および品質が契約に定めたものより以下であっても積地検査の結果が契約に照らし適格とされている場合はそのまま引き取らなければならない扱いになっていること、積地検査基準により購入する場合においては、輸入商社の買付現地における現品の取得、輸送中の管理等に関して十分に指導する必要があるのに輸入商社に一任し、有効適切な処置を執らないでいることなどが主因であり、また、こうした扱いが買付、運送等についての輸入商社の責任感を稀薄にしているものとも認められる。
(1858) 食糧庁で、昭和28年4月から11月までの間に、第一物産株式会社ほか2会社からビルマ米48,373トンを輸入港本船船側渡価格トン当り平均72,865円総額3,524,768,221円で購入しているが、前年度までと同様に黄変粒が混入し、検査の結果不適格食糧と認定されたものが1,169トン購入価額80,311,850円になっており、そのほか4,580トン購入価額307,031,234円が黄変粒混入率1パ−セントをこえるため処分保留となっている。
ビルマ米は、26、27両年度の購入分127,992トンについても黄変粒の混入が多く、結局、主食用に充てられず、やむを得ず原材料用として低廉に売り渡さなければならなくなったものが22,554トンその購入価額1,464,737,631円、国損額830,383,901円(昭和27年度決算検査報告参照) に達したのであるが、前年度までの事例に徴し、すみやかに黄変粒含有米の輸入を防止するため購入について協定し、または現品の引取、運送等について適宜の処置を講じ、極力損失の防止に努めるべきであったのに、ようやく11月に至り初めて黄変粒混入率を1%以下とすることなどを協定するまで適切な処置を執らなかったため28年度も引続き黄変粒含有米が輸入され、結局、前記5,749トンが不適格食糧となりまたは処分保留のまま在庫し、著しく不経済な結果をきたしたものである。
なお、27年度に輸入したビルマ米のうち、黄変粒が混入していた13,167トン(購入価額974,073,061円)のうち13,022トンを菓子、のり、蒸りゅう酒、アルコール等の原料用として輸入価格トン当り60,290円から91,252円平均73,977円のものを左のとおり
用途 | 売渡数量 | トン当り価格 | 売渡金額(包装込) | 黄変粒混入率 | 売渡先 |
トン | 円 | 円 | |||
菓子 | 2,057 | 50,000 | 104,035,908 | 1%以内 | 大阪府粟起工業協同組合ほか22名 |
のり | 1,531 | 25,110 | 39,296,257 | 10%以上 | 東京染色糊粉工業株式会社ほか32名 |
蒸りゅう酒 | 3,279 | 26,550 | 88,868,891 | イスランヂヤ黄変粒 1%−10% |
協和醗酵工業株式会社ほか12名 |
旧式焼ちゅう | 232 | 41,150 | 9,689,400 | タイ国黄変粒 1%−10% |
福岡県酒造組合ほか3組合 |
アルコール | 5,921 | 15,570 | 95,452,786 | 10%以上 | 宝酒造株式会社および通商産業省アルコール工場 |
計 | 13,022 | 平均 25,905 | 337,343,242 |
15,570円から50,000円の低価で総額337,343,242円をもって売り渡しているが、当時厚生、農林両省においては高熱処理をすれば黄変米を使用しても害を残さないと認め、おおむねこの設備を持つ者を選定して売り渡したものであり、その用途における現品の使用価値には特に影響を与えるものではないから、これらの用途に充てている砕米等の原材料用売渡価格を基準として売り渡すのが相当と認められるのに、これを全く考慮せず製品ごとにその価格から逆算した著しく低廉な原材料用価格をもってすべて随意契約で処分し、なかには一般に原材料用として売り渡す場合には差し引かないこととしている引取経費等をも多額に差し引いているものもあるのは、本件が黄変粒を混入していたという事情を考慮してもなお低きに過ぎたものと認められる。しかして、黄変米については、従来も売渡後の処理を買受人の自由に任せた結果高価に転売され、結局、消費者に主食用として横流しされたものがあったが、28年度売渡分においても、随意契約により菓子原料用として神奈川県餅類工業協同組合ほか1組合に売り渡した399トンのうち150トン、7,579,350円が、金港商事株式会社ほか1会社に8,062,500円で転売され、配給外の主食に充てられたため起訴されている。
(1859) 食糧庁で、昭和28年5月、江商株式会社からトルコ米5,271トンを448,894,549円で購入しているが、黄変粒の混入がはなはだしく、全量を原材料用として低廉に売り渡した結果1億1千余万円の損失をきたしている。
右トルコ米は、黄変粒混入率1%以下のものを輸入港本船船側渡価格トン当り85,159円で購入契約し、10月横浜に入港したカペタン・レフテリス号により積来したもので、発地検定人の検定によれば黄変粒混入率は0.95%となっているが、横浜入港後検査したところ5.14%となり全量を不適格食糧と認定し、ぬれ損品98トンを除き29年9月までに原材料用売渡価格トン当り76,500円から22,095円値引した54,405円でみそ用として売り渡し、保険事故による賠償金として54,100,470円を徴収したものである。
本件トルコ米の黄変粒混入率が、発地検定人によって0.95%と検定されながら着地において5.14%に増加したのは、カペタン・レフテリス号が1905年建造のパナマ船で、本航海終了後直ちに堺港で解体スクラップ化された船令49年の老朽船であり、船足も遅く航程通常50日間ぐらいの航海に76日を要し、かつ、船体の老朽に加えて航海中荒天による漏水または浸水があって積荷にぬれ損を生じ、さらに、換気設備も不十分で船内の高温多湿によりかびが増殖し、黄変粒が増加したことによるものと認められている。しかし、食糧庁と輸入商社との間の本件契約料金は通常運賃を支払うものであるばかりでなく、その価格はトン当り85,159円の高価に当り、かつ、トルコ米の購入は初めてのことでもあり、品いたみを生じやすい白米を長期間海上輸送するのであるから、買付にあたっては、品質、検収、よう船、船積、運送、管理等について万全の注意をするように具体的指示を与えるべきであったのにすべて輸入商社に一任し、しかも、輸入商社はロッテルダムトレイディング会社に発地検査の立会、よう船ならびに船積等一切を委任した結果、食糧輸送には適さない船舶を使用されることとなり、結局、主食に適しない外米を購入して多額の国損をきたしたものと認められる。
(1860) 食糧庁で、昭和28年4月、新野村貿易株式会社からコロンビア米333トンを25,159,059円で購入しているが、その全量に黄変粒および白色病変粒が混入し、白色病変米は主食用として売り渡し、黄変粒混入率1%以上の分を原材料用として低廉に売り渡したため2,133,082円の損失をきたしている。
右コロンビア米は、当初27年12月同会社と砕米混入率25%以内のもの1,000トンを輸入港本船船側渡価格トン当り79,479円で購入する契約をしたのに対し、海外売渡人が倒産したため、28年7月そのうち333トンだけ輸入されたところ、砕米混入率が発地検定でも45%となっていたため、契約混入率超過分20%についてトン当り3,977円値引して75,502円で買い入れたものであるが、さらに、着地において検査を行なった結果、その全量に黄変粒と白色病変粒が混入しており、黄変粒混入率が1%以上の36トンは29年9月工業アルコール用として原材料用売渡正常価格トン当り65,000円から47,542円値引して総額641,564円で売り渡し、その他の分は白色病変米も含めて主食用として売り渡したものである。
しかし、コロンビア米は初めて輸入するものであるから、輸入業者および海外売渡人の撰択、品質、数量等について十分注意すべきであったのに、過去において食糧輸入の実績がほとんどない前記会社に取り扱わせ、契約内容においても砕米混入率を規定しただけで黄変粒混入率等品質についての具体的指示を与えず、さらに、当初契約の積期である28年2月に至っても船積することができなかったのになんらの処置も執らず、結局、同会社の選択した海外売渡人が輸出に経験もなく契約量1,000トンを買い付けることができないで、わずか333トンを船積しただけで倒産し、契約の一部が不履行となったばかりでなく、輸入されたものも契約に規定した砕米混入率をはるかに超過したものであるほか多量の黄変粒の混入した不良品になり、結局、多額の損失をきたしたものと認められる。
(1861) 食糧庁で、昭和28、29両年度において購入し、28年9月から29年7月までに到着したビルマ、タイ、加州、イタリー、仏印等の諸外米295,618トン購入価額18,541,618,776円のうち160,037トン購入価額10,037,665,624円について厚生省公衆衛生局の培養試験の結果、病変粒を含有していることが明らかとなったが、そのうち21,663トンはおおむね主食用として売り渡され、29年9月末現在138,374トン購入価額8,678,940,601円が在庫となっていて10月末までに約2億1700万円に上る多額の保管料を支払っている。
右の病変米は、従来黄変粒が有毒と認められ、かつ、ほとんどビルマ米についてだけ発見されていたものであるが、28年7月横浜港に積来した前記コロンビア米333トンについては、黄変粒に付着しているものと同種の菌が白色の米からも検出され、8月厚生省公衆衛生局から食品衛生法上不適格なものである旨食糧庁に通知され、以後同様の事例の発生することが予見されたにかかわらず、食糧庁においては、当時ビルマと29年の輸入につき黄変粒についてだけ混入の限度を交渉し、11月これを1%以下にすることに協定しただけでそのまま購入を継続し、輸入港において厚生省から不適格と指定されるままに貯蔵を継続したほか一部は厚生省の指定が遅れたことなどによりおおむね主食用として売り渡したもので、結局、28年9月から29年9月までに厚生省から不適格と指定された160,037トン購入価額10,037,665,624円のうち21,663トンを主食用に売り渡し、138,374トンが処分保留のまま在庫となっている状況である。