ページトップ
  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第7 厚生省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

国庫補助金等の経理当を得ないもの


(788)−(840) 国庫補助金等の経理当を得ないもの

(部)雑収入 (款)諸収入 (項)弁償及返納金

(組織)厚生本省 (項)医療施設費補助 ほか2科目

(1) 結核、性病等予防事業に対する国庫補助金等の精算当を得ないもの

(788)−(807)  結核予防法(昭和26年法律第96号)に基く予防事業その他公衆衛生関係の予防事業に対する国庫補助金等の精算状況につき、本院において昭和30年中に会計実施検査を実施した北海道ほか21都県で管内関係機関2,750箇所のうち約9.1%に当る251箇所について調査した結果によると、本件国庫補助金等は事業に要した経費から事業に伴う収入を控除して精算することとなっているのに、補助基本額に補助の対象とならない経費を含めていたり、補助基本額のうち医療費および市町村に対する補助負担分を水増計上したり、事業に伴う収入を過少に算出したりしており、厚生省へ提出した精算書では補助不足となっていたものがかえって補助超過となり、または補助超過額がさらに多くなり、返納を要するものが9,519,703円ある。
 このような事態については、昭和27、28両年度決算検査報告において指摘したところであって一般に改善の跡がみられるが、一部補助団体において依然として正当交付額以上に国庫補助金等を受けようとする傾向があるのに対し関係当局の指導監督が十分とは認められないことによるものであるから、なお一層の努力が望ましい。
 これらのうち国庫補助金等の返納を要する額1事項20万円以上のものをあげると次のとおり20件9,281,002円になっている。

(1) 結核予防費補助金
県名 補助団体 事業年度 補助基本額 国庫補助金交付済額 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額 摘要
(788) 千葉県 千葉県 28 103,879,805 55,723,000 1,482,726 741,363 { 健康診断費、予防接種費のうち補助対象外のものを含めていたもの
(789) 福井〃 福井〃 42,996,092 21,504,000 2,656,710 1,328,355 { 健康診断費、予防接種費の市町村に対する負担金および医療費を水増計上したもの
(790) 兵庫〃 兵庫〃 95,268,160 49,182,000 605,034 302,517 { 健康診断費、予防接種費のうち補助対象外のものを含めていたもの
(791) 徳島〃 徳島〃 40,588,153 20,297,000 469,033 234,516 { 健康診断費、予防接種費のうち補助対象外のものを含めたり事業収入を過少に計上していたもの
(792) 宮崎〃 宮崎〃 40,008,268 20,006,000 786,756 393,378 { 健康診断費、予防接種費のうち補助対象外のものを含めていたもの
322,740,478 166,712,000 6,000,259 3,000,129
(2) 療養所運営費補助金
(793) 北海道 社会福祉法人北海道社会事業協会洞爺愛国病院 28 930,339 268,000 930,339 268,000 { 補助対象外の借入金返済、退職給与繰入越金、本部繰入越金等を含めていたもの
(794) 千葉県 財団法人日産厚生会佐倉厚生園 1,165,235 324,000 1,165,235 324,000 { 補助対象外の本部経費を含めたり、事業収入を脱漏していたもの
(795) 千葉市立療養所 1,341,347 494,000 759,171 202,912 { 補助対象外の病とう新築付帯工事費等を含めたり、病院収入を脱漏していたもの
(796) 東京都 社会福祉法人信愛報恩会信愛病院 3,696,725 1,201,000 3,066,719 885,997 { 補助対象外の借入金返済額等を含めたり、事業収入を脱漏していたもの
(797) 神奈川県 社会福祉法人聖母訪問会聖テレジア七里ヶ浜療養所 460,253 209,000 460,253 209,000 { 補助対象外の借入金返済額を含めていたもの
(798) 兵庫〃 社団法人日本赤十字社神戸療養所 1,526,673 622,000 715,559 216,443 { 補助対象外の借入金返済額を含めていたもの
(799) 良元村外2市衛生事務組合仁川病院 2,029,197 535,000 1,408,879 224,841 { 補助対象外の伝染病関係経費等を含めていたもの
(800) 広島県 財団法人安芸結核予防協会住吉浜病院 646,636 223,000 646,636 223,000 { 補助対象外の借入金返済額等を含めていたもの
11,796,405 3,876,000 9,152,791 2,554,193
(3) 性病予防費補助金
(801) 山形県 山形県 28 3,198,497 1,370,000 1,059,092 300,298 { 補助対象外の原材料費等を含めていたもの
(802) 兵庫〃 尼崎市 1,257,732 757,000 1,257,732 628,866 { 補助対象外の工事費等を含めていたもの
(803) 宮崎〃 宮崎県 1,599,051 1,100,000 1,599,051 799,526 { 補助対象外の併設性病診療所の人件費等を含めていたもの
6,055,280 3,227,000 3,915,875 1,728,690
(4) 精神衛生費補助金
(804) 山形県 山形県 28 6,150,125 3,074,707 460,000 229,645 { 補助対象外の道路改良工事県費負担金を含めていたもの
(805) 福岡〃 福岡〃 21,507,556 9,378,000 4,328,227 788,335 { 精神障害者入院措置費の計上額が過大であったもの
27,657,681 12,452,707 4,788,227 1,017,980
(5) 保健所運営費補助金
(806) 山梨県 山梨県 28 35,145,422 11,394,060 1,571,831 202,863 { 補助対象外の人件費を含めていたもの
(6) 優生手術交付金
(807) 北海道 北海道 28 1,747,258 1,724,485 799,920 777,147 { 補助対象外の道職員旅費等を含めていたもの

(2) 地方病予防施設費補助金の交付当を得ないもの

(808)  山梨県で、地方公共団体である同県が日本住血吸虫病予防のため甲府市ほか54町村の昭和29年度に施行したコンクリート溝渠築造工事費45,515,500円について交付した県費補助金に対し国庫補助金15,172,500円を支出しているが、前記各市町村の施行した工事はいずれも設計過大な部分があったため国庫補助金において超過交付となっているものが858,908円ある。
 右は、地方病である日本住血吸虫病の予防、撲滅を目的として本病の中間宿主である宮入貝を駆除するためコンクリート溝渠を構築するもので、各事業主体はいずれも設計金額で請負契約に付し、設計どおり完成したものとしているが、30年2月本院会計実地検査の際の調査によると、溝渠の切土26,963立米のうち19,085立米工事費相当額1,412,287円は既存の水路があったので積算の要がなく、また、溝渠コンクリートの配合比は1:3:6でセメントの使用量は立米当り4.8袋となっているところ、同配合の基準量は4.5袋で十分であり、それによって計算すると2,324袋工事費相当額1,162,435円が過大となっていて、これらの工事費2,574,722円は補助基本額から控除すべきものと認められ、これに相当する国庫補助金858,908円は交付の要がなかったものである。

(3) 水道関係補助金の精算にあたり処置当を得ないもの

(809)−(811)  昭和28、29両年度における簡易水道整備、特別鉱害対策等水道関係国庫補助事業につき、本院において30年中に北海道ほか17都県管内の工事箇所228を検査したところ、請負金額を付増ししたり、夫役賃金を過大に計上していたり、路面復旧の出来高不足となっていたものに対し実際の工事費を確認しないまま精算を了したりした結果、国庫補助金の返納を要するものが1,095,311円(ほかに通商産業省所管特別鉱害復旧特別会計分452,096円)ある。
 前記返納を要する額のうち1事項20万円以上のものをあげると左のとおり3件774,471円(ほかに通商産業省所管特別鉱害復旧特別会計分452,096円)ある。

県名 事業名 事業主体 補助基本額 国庫補助金交付済額 補助基本額から控除すべき額 国庫補助金交付済額中返納を要する額

摘要

(809) 愛知県 簡易水道整備 田口町 23,000,000 5,750,000 1,170,739 292,685 { 夫役賃金を過大に計上するなどしていたもの
(810) 福岡〃 特別鉱害対策 稲築町 8,300,000 4,150,000 511,603 255,802 { 請負金額を付増しし補助対象外の工事を施工したもの
ほかに通商産業省所管特別鉱害復旧特別会計分
3,735,000 230,820
(811) 大任村 4,090,000 1,963,200 470,800 225,984
1,922,300 221,276
35,390,000 11,863,200 2,153,142 774,471
5,657,300 452,096

(4) 生活保護費負担金の交付にあたり処置当を得ないもの

(812)−(826)  地方公共団体が国庫負担金の交付を受けて行う生活保護事業の支出額は、毎年増加の傾向にあるが、そのうち医療扶助費は被保護者人員の増加等により扶助額の増加がとくに著しく、これに対する国庫負担金も毎年増大している。このようなすう勢にかんがみ、昭和29年9月、医療扶助受給世帯の収入認定の適否につき東京都で抽出的に5福祉事務所の調査を行なった結果、調査対象約300件の医療扶助単給世帯のうち約1割について超過交付が見受けられた(昭和28年度決算検査報告参照) が、このような傾向は全国的にみられるものと推測されたので、30年中、北海道ほか14都県で325福祉事務所のうち53%に当る172福祉事務所において、入院者のうち継続6箇月以上の医療扶助単給世帯の常よう被用者1,373名について実地に調査したところ、収入の認定が適正を欠いたため医療扶助費国庫負担額の超過交付となっているものが前記15都道県のすべてに見受けられ、その金額は左のとおり17,749,949円に上っている。

都道県名 調査件数 不適正件数 収入認定差額 超過国庫負担金相当額

(812)

北海道

28

26

996,452

654,196
(813) 宮城県 142 73 2,187,458 1,616,209
(814) 山形〃 96 57 915,464 664,697
(815) 栃木〃 83 45 1,790,130 964,036
(816) 千葉〃 138 85 2,473,404 1,559,307
(817) 東京都 363 269 10,346,636 6,521,360
(818) 神奈川県 98 27 1,185,398 922,735
(819) 石川〃 72 31 1,370,401 963,991
(820) 福井〃 32 12 442,721 333,681
(821) 静岡〃 73 27 813,128 549,238
(822) 広島〃 154 102 2,918,183 1,856,820
(823) 徳島〃 13 8 284,566 192,676
(824) 愛媛〃 25 17 607,131 384,943
(825) 宮崎〃 26 14 304,653 191,764
(826) 鹿児島〃 30 19 627,971 374,296
1,373 812 27,263,696 17,749,949

 このような事態を生じたのは、収入認定にあたり被保護者の申告、雇主の証明に不実な点があったリ、または保護の実施機関の調査が不十分であったりすることに基因するものと認められるが、とくに、比較的収入の多い医療扶助単給世帯は、生活保護を受けることによりその収入と生活保護法(昭和25年法律第144号)の規定による最低生活費基準額との差額を自己負担分とみなされるため収入を過少に申告する傾向があり、他方、保護の実施機関において、このような事実を発見してもこれを厳重に指摘することが実際上困難な事情にあるとして申告をそのまま容認する傾向も見受けられる。しかし、生活保護費に対する国の財政負担は著しく増加しており、ことに、29年度末において負担不足額が2億6千2百余万円あり、さらに、被保護世帯に対する医療扶助費の国庫負担分を財政上の都合により翌年度に繰り延べているものが7億7千4百余万円に達している現状にかんがみ、真に保護を必要とするものに対して適正かつ公平な扶助を行う要があると認められる。

(5) 児童保護費負担金の精算当を得ないもの

(827)−(830)  児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基く児童福祉施設の児童保護に要した費用として都道府県または市町村が支弁した金額に対する国の負担額について、厚生省は国庫負担基本額の限度を定め、実支弁額がこれを上回る場合は限度額を、また、下回る場合はその実支弁額をそれぞれ国庫負担の基準額とし、その10分の8相当額を国庫負担金として交付しているが、本院において昭和28年度交付分の精算について10都道県にわたり会計実地検査を施行したところ、実支弁額が右の限度額以内であるにかかわらず、限度額をそのまま国庫負担の基準額として国庫負担金の精算を了していたなどのため、国庫負担金の超過交付となっているものが北海道ほか2県において1,528,814円あり、そのうち1件20万円以上のものをあげると左のとおり4件1,234,935円ある。

道県名 事業主体 施設種別 国庫負担基本額 国庫負担所要額 国庫負担交付済額 国庫負担金交付済額中返納を要する額

(827)

北海道

室蘭市

保育所

2,393,740

1,914,992

2,127,642

212,650
(828) 釧路〃 母子寮 351,561 281,249 551,695 270,446
(829) 静岡県 盤田〃 保育所 359,200 287,360 686,407 399,047
(830) 愛媛〃 愛媛県 肢体不自由児施設ほか1 6,803,066 5,442,453 5,795,245 352,792
9,907,567 7,926,054 9,160,989 1,234,935

(6) 国民健康保険助成交付金の交付にあたり処置当を得ないもの

(831)−(840)  国民健康保険助成交付金の交付状況につき、昭和30年中に本院で会計実地検査を施行した北海道ほか15県において28年度または29年度に助成交付金を交付した1,617保険者のうち約11%に当る182保険者について調査した結果、交付条件に適合していないのに適合しているとした申請に対し交付したもの、ならびに交付条件に適合はしているが算定の基礎となる保険料収納額、一般会計繰入金等が事実と相違した申請および一般会計繰入金その他の収入だけで事業を運営しているのに保険料を賦課しているとした申請に対し交付して超過交付となっているものが、宮城ほか9県において19事項7,670,000円ある。
 このような事態については、昭和28年度決算検査報告において指摘したところであって、その後監督官庁における交付の際の審査および保険者に対する指導監督がかなり行き届き、改善の跡がうかがわれはするが、依然として保険者において正当交付額以上に交付を受けようとする傾向があるのにかんがみ、なお一層の努力が要望される。
 前記7,670,000円のうち1事項20万円以上のものを掲記すると左のとおり12件6,631,000円である。

県名 保険者 年度 助成交付金
交付済額
正当交付額 超過交付額 摘要
(831) 宮城県 色麻村 28 2,120,000 0 2,120,000 { 保険料調定額と一般会計繰入金との合計額が療養給付費の45%で交付条件に適合しないことによるもの
(832) 吉田〃 1,078,000 566,000 512,000 { 保険料収納額および療養給付費等が相違していたことによるもの
(833) 山形県 真室川町 1,087,000 807,000 280,000 一般会計繰入金が相違していたことによるもの
(834) 福井〃 美山村 506,000 257,000 249,000 { 保険料調定額および一般会計繰入金等が相違していたことによるもの
(835) 静岡〃 東益津〃 1,597,000 1,374,000 223,000 一般会計繰入金が相違していたことによるもの
(836) 兵庫〃 米田町外2箇村国民健康保険一部事務組合 2,224,000 1,772,000 452,000 { 保険料調定額および保険料収納額が相違していたことによるもの
(837) 愛媛〃 上須戒村 317,000 0 317,000 { 保険料調定額と一般会計繰入金との合計額が療養給付費の21%で交付条件に適合しないことによるもの
(838) 来〃 28 421,000 0 421,000 { 保険料収納割合が28年度は24%、29年度は37%で交付条件に適合しないことによるもの
29 461,000 0 461,000
(839) 長崎県 深江〃 28 1,082,000 803,000 279,000 { 一般会計繰入金その他の収入だけで事業を運営していたことによるもの
29 1,720,000 728,000 992,000
(840) 宮崎〃 南方〃 28 1,034,000 709,000 325,000 { 一般会計繰入金および保険料調定額等が相違していたことによるもの
13,647,000 7,016,000 6,631,000