ページトップ
  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第8 農林省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの


(933)−(1652) 公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの

(組織)農林本省 (項)農業施設災害復旧事業費 ほか6科目

(組織)林野庁 (項)山林施設災害復旧事業費 ほか2科目

(組織)水産庁 (項)漁港施設災害復旧事業費 ほか2科目

 地方公共団体および農業協同組合等が施行した土地改良、地盤変動対策、林道開設、漁港修築および災害復旧等の工事に対する国庫補助金または国庫負担金(以下「国庫補助金」という。)は、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等の根拠法規に基いて各事業主体に交付されたものであるが、本院において全国の工事現場59,675箇所のうち青森県ほか31府県について7%に相当する4,159箇所を実地に検査したところ、設計に対し工事の出来高が不足しているもの、設計が過大なもの、工事の施行が粗漏で補助の目的を達していないもの、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているものなどが多く、国庫補助金を除外すべきことの判明したものが、青森県ほか31府県において、除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると1,516工事461,533,732円に上っている。これを事項別に分類して示すと次表のとおりであるが、以上の結果から考察すると、この種不当工事は全国では相当多数に上るものと認められる。

類別
府県名
改良その他国庫負担の対象としてはならない工事 工事の施工が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの 合計
類別
府県名
工事の施工が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの その他
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

青森県





2

699,000

1

188,982

2

923,000

33

5,863,534

2

500,000

1

107,250

38

7,393,784

41

8,281,766

青森県
岩手〃



7 3,791,151

1 363,350 15 2,396,525 2 432,900

18 3,192,775 25 6,983,926 岩手〃
秋田〃

1 1,840,000 3 821,000

2 881,800 53 16,154,437 51 33,946,663

106 50,982,900 110 53,643,900 秋田〃
福島〃

1 721,800 1 369,000 1 490,800

25 5,788,347 4 1,237,409 6 1,855,247 35 8,881,003 38 10,462,603 福島〃
茨城〃



5 836,352



24 5,990,216 5 1,112,212 1 143,000 30 7,245,428 35 8,081,780 茨城〃
栃木〃 1 161,200

1 150,000



58 11,021,850 2 1,170,000

60 12,191,850 62 12,503,050 栃木〃
群馬〃



5 1,332,075



9 3,742,004 2 302,000 3 565,000 14 4,609,004 19 5,941,079 群馬〃
神奈川〃



2 396,610



22 6,005,900 3 976,991

25 6,982,891 27 7,379,501 神奈川〃
新潟〃

1 640,900 3 469,700

1 425,750 28 7,195,821 20 7,607,800

49 15,229,371 53 16,339,971 新潟〃
富山〃



2 246,292 1 2,330,035 1 452,889 31 9,529,991 11 3,647,600

43 13,630,480 46 16,206,807 富山〃
福井〃 2 1,494,000

1 164,456 1 136,800 2 1,773,900 39 8,215,874 1 252,000

42 10,241,774 46 12,037,030 福井〃
山梨〃 1 390,000

1 103,773

1 247,000 21 3,632,631 3 868,750

25 4,748,381 27 5,242,154 山梨〃
長野〃

1 650,000 1 1,418,500



25 5,781,414 6 1,248,800

31 7,030,214 33 9,098,714 長野〃
岐阜〃 1 855,000



1 378,731

16 3,402,802 19 8,224,979 1 453,600 36 12,081,381 38 13,315,112 岐阜〃
静岡〃



1 223,200

3 1,430,913 7 1,314,450

1 294,125 11 3,039,488 12 3,262,688 静岡〃
愛知〃



3 708,446



36 12,682,642 7 1,004,150 5 3,956,880 48 17,643,672 51 18,352,118 愛知〃
滋賀〃 1 156,650 1 732,468



3 1,312,399 20 4,292,544 35 17,199,645 2 648,900 60 23,453,488 62 24,342,606 滋賀〃
京都府







1 1,007,280 79 21,410,687 26 7,779,828 5 811,890 111 31,009,685 111 31,009,685 京都府
大阪〃



1 500,400

3 1,390,410 16 5,169,864 13 2,457,290 7 1,458,733 39 10,476,297 40 10,976,697 大阪〃
兵庫県



2 384,390

3 4,770,000 27 5,695,395 7 1,660,250

37 12,125,645 39 12,510,035 兵庫県
奈良〃 1 1,200,000 1 859,763 17 4,304,447



23 3,838,650 11 1,847,633 1 130,000 35 5,816,283 54 12,180,493 奈良〃
和歌山〃



9 3,408,384 1 873,900 3 5,510,400 64 18,515,518 14 4,462,450 1 319,150 82 28,807,518 92 33,089,802 和歌山〃
広島〃

2 1,065,592 15 3,012,206



15 3,274,609



15 3,274,609 32 7,352,407 広島〃
山口〃



12 2,166,006

3 2,618,770 59 13,560,513 4 1,360,318 22 4,853,900 88 22,393,501 100 24,559,507 山口〃
徳島〃



6 1,019,570



24 4,677,427 2 646,400

26 5,323,827 32 6,343,397 徳島〃
香川〃

1 393,944 2 306,044

1 507,000 30 5,946,908 1 234,000 5 1,406,782 37 8,094,690 40 8,794,678 香川〃
愛媛〃 1 1,720,223

2 248,350



59 14,649,216 6 1,946,876

65 16,596,092 68 18,564,665 愛媛〃
高知〃



4 1,236,141

3 1,796,150 38 8,113,809 8 1,804,582 2 310,500 51 12,025,041 55 13,261,182 高知〃
福岡〃

3 1,879,200 4 1,708,000 2 1,145,300

17 3,714,515 7 15,706,959

24 19,421,474 33 24,153,974 福岡〃
佐賀〃



3 1,828,800

1 755,100 12 2,670,020 4 982,408

17 4,407,528 20 6,236,328 佐賀〃
熊本〃



8 2,323,494

1 687,700 25 5,875,707 5 3,162,600

31 9,726,007 39 12,049,501 熊本〃
大分〃



3 427,050

1 1,634,900 30 5,911,726 1 671,400 1 331,500 33 8,549,526 36 8,976,576 大分〃
合計 8 5,977,073 12 8,783,667 126 34,602,837 8 5,544,548 36 28,488,711 980 236,035,546 282 124,454,893 64 17,646,457 1,362 406,625,607 1,516 461,533,732 合計

 この種不当工事については、従来検査報告において多数指摘したところであるが、依然として地元負担金の軽減をはかるため査定工事費よりも少額で工事を完成した事実が多数認められているので、本年度においても、設計過大、出来高不足等の不当な結果を招いた原因をよく調査し、工事費の経理の面からも裏付けることに配慮した結果、右1,516工事のうち89.8%に相当する1,362工事406,625,607円については、いずれもその表面上の経理は査定工事費と同額で請け負わせまたは直営で施行したこととして国庫補助金の交付を受けているが、実際はこれより低額で請け負わせまたは施行し、国庫補助の対象となった工事費を下回り事業主体は正当な自己負担をせず、そのうちには国庫補助金以下で工事を完成し剰余を生じたこととなっているものさえ相当あることが明らかとなった。このように実際の工事費が不当に少額となったため工事の出来高が不足したり、工事が著しく粗漏なものが多く、そのうちには再度被災のおそれがあると認められるものあるいは完成後間もないのに再び被災したものも相当に見受けられている。

 とくに、28年発生災害の大部分は、災害復旧特別措置により国庫補助金は9割の高率が適用され事業主体の負担を軽減する処置が講ぜられているにもかかわらず、事業主体が正当な自己負担をせずかえって国庫補助金に相当の剰余を生じたこととなっているものがあり、また、なかには事業主体の負担分に対して農林漁業資金または大蔵省資金運用部資金等の融資を受けながらこれを使用することなく他に転用し、融資の目的に全く沿わないものさえあったことは遺憾である。

 なお、設計に対し工事の出来高が不足している場合に返納または減額に代えて手直しまたは補強工事をするとしているもののうちには、現地の状況からみてさらに検討すれば現在の出来形でも間に合い、ことさら手直しまたは補強工事をしないでも済むと認められるものもあるので、このような場合は、返納または減額させることが妥当と認められ、事後処理にあたっては適正を期するよう一層の配慮が望ましい。

 検査の結果明らかになった不当工事のうち国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のもの720件349,483,017円を農業施設、山林施設および漁港施設に分けてあげると別表第4のとおりであるが、このように多数発見される不当工事の発生原因およびその防止対策については、既に昭和27、28両年度決算検査報告に掲記したとおりで、原因としては、工事査定上および監督検収上の欠陥があげられ、これに事業主体が正当な自己負担を忌避する事実が相伴っていると認められ、また、防止対策としては、机上査定の減少、高率補助の活用と事業主体負担分の適時融資、改良費補助の増額、小事業主体の工事の合併施行、適正な実施設計の作成、不誠実な事業主体および請負人に対する補助取消または指名停止、工事監督機能の充実等が考慮されるのであるが、机上査定が多いことなどに関連し、査定の内容を早期に是正して不当工事の発生を防止するため、別項記載(参照) のとおり本院において前年に引続き28年および29年発生災害に対し従来どおりの事後検査にあわせ早期に検査を行なったところ、二重査定、災害便乗、設計過大等の事態となっているものが多数発見され、農林省において本院の注意により是正したものが工事費において16億円をこえる状況である。

 以上のとおり、従来から再三厳重な注意を促しておいたにもかかわらず、その是正改善が遅々として進まず、なかには26年度以降の検査において指摘を受けた事業主体がその後着工した新規工事についても再び同様の事態を繰り返しているものさえあることは、事業施行者の間に正当な自己負担を忌避する悪弊が根強くくい込んでいるためと認められ、悪性なものについては補助取消の処置を講ずるなどの要があると認められる。

(1) 農業施設

(933)−(1534)  農業施設について地方公共団体、農業協同組合および土地改良区等が施行する土地改良、地盤変動対策、災害復旧工事等に対する本院の実地検査は、全国都道府県の工事現場50,869箇所のうち青森県ほか31府県の6.5%に相当する3,338箇所その工事費9,441,953,489円(国庫補助金5,737,582,535円)について実施したが、その結果は、前年度同様水路、堤とう、農道等の石垣工事における面積、胴込量、裏込量もしくは築石の規格、頭首工工事におけるコンクリートの配合比もしくは打設量または農地復旧工事における排土量、客土量もしくはその運搬距離が設計と相違していたり、あるいは石材、コンクリート用骨材の採取場所が設計に比べて近距離となっているものがあったほか、工事の手抜きが大きく完成後間もないのに崩壊していて補助の目的を達していないものなどがあったため、国庫補助金を除外すべき額1工事10万円以上のものが検査済工事数の38.5%に相当する1,284箇所に上りその額399,068,842円に達した。
 しかも、そのうちには、事業主体において工事費の経理に関し事実に合致しない書類を作成して正当な自己負担を免かれていることの判明したものが、右のうち93.5%に相当する1,200箇所363,718,171円の多額に上っており、ことに、補助率が高率となった28年発生災害復旧についても1,024箇所を検査したところ、いまだに正当な自己負担をしないで工事を施行していたものが31.6%に相当する324箇所113,560,432円となっている状況である。
 いま、農業施設関係の不当工事のうち国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第4(1)のとおり602件303,253,103円になっており、そのうち代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第4(1)に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 岩手県が48,247,000円(国庫補助金24,123,500円)で施行した下閉伊郡小本村小本川地区土地改良は、水路4,191メートルをから石積護岸および底張コンクリートで施行したものであるが、築石の控が短く、裏込ぐり石は設計の3分の1程度施行したにすぎず積み方も粗雑であり、また、底張コンクリートの厚さは設計の3分の2程度で施行しているため5,225,000円(国庫補助金2,612,500円)が出来高不足となっている。(出来高不足)(946)

〔2〕 秋田県北秋田郡早口町農業協同組合が20,570,000円(国庫補助金12,959,100円)で施行した下畑農地26年災害復旧は、農地76町1反の排土222,132立米を施行したこととしているが、実際は排土138,856立米で足り工事費は12,959,100円にすぎず、事業主体はその負担したとしている7,610,900円を全く負担していない。
 また、同県仙北郡西仙北町大沢郷農業協同組合が工事費総額7,690,000円(国庫補助金6,122,000円)で施行した坂〆農道26年災害復旧ほか4工事は、農道、ため池および水路を復旧するもので、いずれも設計どおり完成したこととしているが、切土、盛土量が過大に見込まれているため実際の工事費は国庫補助金を下回る3,576,000円で足り、事業主体はその負担したとしている1,568,000円を全く負担していないばかりでなく2,546,000円の剰余を生ずることとなっている。
 右のほか、大沢郷農業協同組合は、26年度以降29年度までに施行した26年災害復旧農業施設60工事総額57,010,000円(国庫補助金43,742,000円)においても正当な自己負担をせず国庫補助金を下回る41,191,076円で完成しており、減額を要する国庫補助金相当額が総額12,513,139円に上っている。(設計過大、事業主体負担不足)(982、989−992)

〔3〕 栃木県那須郡小川町小川土地改良区が17,050,000円(国庫補助金6,820,000円)で施行した下河原地区土地改良は、水路2,850メートルを改修するもので玉石コンクリート擁壁および練積石垣護岸を施行したものであるが、玉石コンクリートの配合が著しく粗悪であり、また、石垣の築石は控が短かく、胴込コンクリートは設計の半量、裏込ぐり石は3分の2程度を施行したにすぎず工事費は12,220,000円で足り、事業主体はその負担したとしている10,230,000円のうち4,830,000円を負担していない。(出来高不足、事業主体負担不足)(1064)

〔4〕 新潟県北魚沼郡川口村で受益者の共同施行により1,200,000円(国庫補助金780,000円)で施行した和南津水路27年災害復旧は、水路210メートルを鉄筋入りの三面張コンクリートで復旧するものであるが、実際は鉄筋および裏型わくをほとんど使用しないばかりでなく側壁、底張とも厚さを設計の3分の2程度で施行したにすぎないため、工事費は国庫補助金を下回る387,000円にすぎず、事業主体はその負担したとしている420,000円を全く負担していないばかりでなく393,000円の剰余を生ずることとなっている。(出来高不足、事業主体負担不足)(1113)

〔5〕 岐阜県が35,109,400円(国庫補助金17,554,700円)で施行した安八郡神戸町揖西幹線土地改良は、水路5,377メートルを三面張コンクリートで改修するものでコンクリートに使用する骨材は6キロメートルまたは8キロメートルの地点から運搬し、また、型わくは1メートル当り972円から1,220円で施行したこととしているが、実際は骨材を2キロメートルから4キロメートルの地点から運搬し、また、型わくは523円から833円で施行することができたため8,845,802円が設計過大となっている。
 なお、右工事は、同県が受益者揖西用水土地改良区から負担金8,777,350円を徴収して前記金額で同土地改良区に請け負わせたこととしているが、実際は負担金を全く徴収しないで工事費支払の際、負担額を差し引く方法により国および県からの補助金26,263,598円で完成している。(設計過大、事業主体負担不足)(1165)

〔6〕 滋賀県甲賀郡信楽町土地改良区が4,447,000円(国庫補助金4,002,300円)で施行した神山農地28年災害復旧ほか1工事は、農地11町6反の排土36,052立米を施行するものであるが、実際は18,711立米を排土しただけで工事費は国庫補助金を下回る2,474,000円で足り、事業主体は正当な自己負担をしていないばかりでなく1,528,300円の剰余を生ずることとなっている。
 また、同郡信楽町多羅尾土地改良区が工事費総額21,222,000円(国庫補助金19,099,800円)で施行した釜ヶ谷農地28年災害復旧ほか5工事は、9割の国庫補助により、農地14町6反の排土39,060立米、天地返し26,091立米および水路の掘さく2,354立米を施行したこととしているが、実際は排土30,882立米、天地返し25,849立米および掘さく1,237立米を施行したにすぎないため工事費は国庫補助金を下回る17,241,000円で足り、事業主体はその負担したとしている2,122,200円を全く負担していないばかりでなく1,858,800円の剰余を生ずることとなっている。
 右のほか、同土地改良区が施行した農地、堤とう、水路、農道の28年災害復旧20工事総額11,682,000円(国庫補助金10,513,800円)においても正当な自己負担をせず国庫補助金を下回る10,210,000円で工事を完成しており、減額を要する国庫補助金が総額1,324,800円に上っている。(設計過大、事業主体負担不足)(1218−1224)

〔7〕 京都府亀岡市が2,510,000円(国庫補助金2,183,700円)で施行した南掛西尾の上堤とう26年災害復旧は、堤とう354メートルの練積石垣を施行するものであるが、築石の控がはなはだしく不足し、胴込コンクリートも設計量の3分の1程度が不足しているため工事費は国庫補助金を下回る1,533,600円で足り、同市はその負担したとしている326,300円を全く負担していないばかりでなく650,100円の剰余を生ずることとなっている。
 右のほか、同市が施行した農地、農道、水路、堤とう、頭首工等の26、27、28年災害復旧37工事44,504,100円(国庫補助金36,501,185円)においても、正当な自己負担をせず国庫補助金を下回る32,609,145円で工事を完成しており、減額を要する国庫補助金が総額9,729,010円に上っている。(出来高不足、設計過大、事業主体負担不足)(1246−1261)

〔8〕 京都府相楽郡湯船村が2,360,000円(国庫補助金2,124,000円)で施行した砂子谷水路28年災害復旧は、9割の高率国庫補助により水路延長632メートルの三面張コンクリートを施行するものであるが、現場付近のかき込砂利を使用した粗悪なコンクリートで施行し、また、基礎ぐり石をほとんど施行せず工事の施行が著しく粗漏で水路の全延長にわたってき裂を生じ、その一部は既に崩壊している状況であって災害復旧の目的が達せられていない。なお、工事は国庫補助金を下回る2,034,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている236,000円を全く負担していないばかりでなく90,000円の剰余を生じている。(粗漏工事、事業主体負担不足)(1269)

〔9〕 兵庫県尼崎市園田農業協同組合が2,150,000円(国庫補助金1,935,000円)で施行した大井頭首工28年災害復旧は、木工沈床井ぜき103メートルを復旧するものであるが、沈床の押えに使用したぐり石コンクリートブロック576個は配合が著しく粗悪であるばかりでなく設計の半量以下を施行したにすぎないため、既にその一部が流失崩壊している状況で工事が著しく粗漏である。なお、工事は国庫補助金を下回る1,255,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている215,000円を全く負担していないばかりでなく680,000円の剰余を生ずることとなっている。(粗漏工事、事業主体負担不足)(1297)

〔10〕 奈良県北葛城郡広陵町(旧瀬南村)南郷土地改良区が2,400,000円(国庫補助金1,200,000円)で土地改良事業として揚水機場を新設したこととしているが、実際は右施設は簡易水道の用に供しているものであるから農林省所管の国庫補助事業として採択すべきものではなく、現に、瀬南村は別途厚生省所管の簡易水道新設補助事業として工事費7,440,000円(国庫補助金1,860,000円)をもって施行している。(改良工事その他補助の対象としてはならないもの)(1320)

〔11〕 和歌山県有田郡保田村保田農業協同組合が9,872,000円(国庫補助金6,416,800円)で施行した千田水路25年災害復旧は、排水路60メートルを復旧するものであるが、排水路のうち導流堤の部分39メートルの基礎根固コンクリートブロックは設計の半量程度を施行したにすぎないばかりでなく、擁壁も著しく配合の粗悪な玉石コンクリートで、底厚を設計の3分の1の30センチメートル程度施行したにすぎず、工事の施行が著しく粗漏で既に30メートルが崩壊している状況であり、災害復旧の目的が達せられていない。なお、工事は国庫補助金を下回る6,360,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている3,455,200円を全く負担していないばかりでなく56,800円の剰余を生じたこととなっている。(粗漏工事、事業主体負担不足)(1343)

〔12〕 高知県安芸市新城土地改良区が1,020,000円(国庫補助金918,000円)で施行した大平農道28年災害復旧は、農道116メートルを復旧するものであるが、法留石垣は規格に合わない控の短い築石を使用し、胴込、裏込を全く施行せず、工事の施行が著しく粗漏で既にその一部が崩壊している状況である。なお、工事は国庫補助金を下回る614,000円で施行されていて事業主体はその負担したとしている102,000円を全く負担していないばかりでなく、304,000円の剰余を生じ、うち135,354円を他の工事費に充て30年9月本院会計実地検査当時168,646円を保有していた。(粗漏工事、事業主体負担不足)(1461)

〔13〕 高知県高岡郡窪川町仁井田農業協同組合が工事費総額3,499,000円(国庫補助金2,274,350円)で施行した魚の川ほか3頭首工26、27年災害復旧は、えん体および水たたきをコンクリートで施行するものであるが、いずれも設計の半量程度で施行したにすぎないばかりでなくコンクリートに玉石を混入し、また、付帯護岸の練石積も胴込コンリートが著しく不足しているものがあり、うち1箇所は既にえん体および水たたきが崩壊している状況である。なお、工事は国庫補助金を下回る2,016,000円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている1,224,650円を全く負担していないばかりでなく258,350円の剰余を生ずることとなっている。(粗漏工事、出来高不足、事業主体負担不足)(1476、1477、1479)

〔14〕 福岡県筑後市が4,914,000円(国庫補助金4,422,600円)で施行した津島農地28年災害復旧は、農地11町の排土および客土30,596立米を施行するもので、いずれも人肩で運搬したこととしているが、実際は小車で運搬することができたため工事費は国庫補助金を下回る2,345,000円で足り、同市はその負担したとしている491,400円を全く負担していないばかりでなく、2,077,600円の剰余を生ずることとなっている。(設計過大、事業主体負担不足)(1487)

〔15〕 大分県南海部郡本匠村が2,656,000円(国庫補助金1,634,900)で施行した堂の間水路26年災害復旧は、水路197メートルの石積護岸を施行するものであるが、石積の基礎根入をほとんど施行していないばかりでなく、根固木工沈床は敷成木を全く施行せず、中詰重石も設計の3分の2程度を施行したにすぎず、工事の施行が著しく粗漏で既に木工沈床の大部分および石積の一部が崩壊している。なお、工事は1,814,500円で施行されていて、同村はその負担したとしている1,021,100円のうち841,500円を負担していない。(粗漏工事、事業主体負担不足)(1534)

(2) 山林施設

(1535)−(1624)  山林施設について、地方公共団体および森林組合が施行する林道の開設および災害復旧ならびに崩壊地復旧の治山工事に対する本院の実地検査は、全国都道府県の工事現場6,889箇所のうち8.5%に相当する595箇所その工事費1,949,467,272円(国庫補助金1,135,378,621円)について実施したが、その結果は、林道工事において、硬岩、軟岩、土砂の切盛土量、石垣の面積、胴込量、裏込量が設計に比べて不足していたり、岩石等の切盛土量を必要以上に過大に見込んでいたり、治山のえん堤工事においてコンクリートの配合比あるいはその打設量が設計と相違しているなどのため、国庫補助金を除外すべき額1工事10万円以上のものが検査済工事数の30.6%に相当する182箇所に上り、その額46,978,384円に達した。しかも、事業主体において工事費の経理に関し事実に合致しない書類を作成して正当な自己負担を免かれていることの判明したものが、右のうち69.8%に相当する127箇所32,273,067円に上っている。
 いま、山林施設関係の不当工事のうち、国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第4(2)のとおり90件33,759,104円になっており、そのうち代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第4(2)に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 青森県森林組合連合会が11,470,000円(国庫補助金5,735,000円)で施行した奥地開発林道妙返沢線開設は、林道2,880メートルの岩石、土砂切取14,298立米、敷砂利892立米および玉石コンクリート護岸80メートルを施行したものであるが、実際は岩石、土砂切取は13,085立米、敷砂利は設計量の4分の1程度を施行したにすぎないばかりでなくコンクリート護岸の厚さが不足しており、1,398,000円が出来高不足となっている。
 しかして、同連合会は受益者戸来村から負担金4,588,000円を徴収して前記金額で請負により工事を施行したこととしていたものであるが、同村は請負業者からの寄付により事実上1,300,000円の負担を免かれることとなっている。(出来高不足)(1535)

〔2〕 静岡県周智郡犬居町森林組合が1,341,100円(国庫補助金1,122,490円)で施行した奥地開発林道不動川線28、29年災害復旧は、林道102メートルの擁壁を玉石コンクリートで復旧するものであるが、玉石を中詰とし粗悪なコンクリートで9センチメートル程度被覆したにすぎず、工事の施行が著しく粗漏で既にその一部が崩壊している。なお、工事は1,229,500円で施行されていて、事業主体はその負担したとしている218,610円のうち111,600円を負担していない。
 また、同組合が施行した一般林道中山線開設2,200,000円(国庫補助金660,000円)においても、その負担したとしている1,100,000円のうち427,000円を負担しないで1,773,000円で施行し前記同様工事が粗漏となっている。(粗漏工事、事業主体負担不足)(1563、1564)

〔3〕 大阪府河内長野市高向森林組合が7,057,000円(国庫補助金6,351,300円)で施行した一般林道御光滝線28年災害復旧は、林道775メートルの石垣985平米を施行するものであるが、築石の3分の2程度は規格に合わないものを使用し、また、練積部分の胴込、裏込は設計の半量程度を施行したにすぎないなどのため工事費は5,460,000円にすぎず、同組合はその負担したとしている705,700円を全く負担していないばかりでなく891,300円の剰余を生ずることとなっている。
 右のほか、同組合が6,060,010円(国庫補助金5,454,009円)で施行した一般林道梅ノ木線28年災害復旧ほか1工事においても、国庫補助金を下回る4,954,000円で工事を施行しており、減額を要する国庫補助金が995,409円に上っている。(出来高不足、事業主体負担不足)(1578−1580)

〔4〕 奈良県が工事費1,289,000円(国庫補助金859,763円)で施行した宇陀郡御杖村淀川流域名張川崩壊地復旧は、谷止えん堤を玉石コンクリートで施行するものであるが、配合の著しく粗悪なもので施行しているためその出来高は507,000円にすぎず、工事の施行が著しく粗漏である。(粗漏工事)(1586)

〔5〕 山口県が6,591,000円(国庫補助金3,954,600円)で施行した奥地開発林道高根西線開設は、林道875メートルの硬岩切取7,931立米、土留石垣480平米を施行したこととしているが、実際は硬岩切取は7,388立米、石垣は根入れ不足で347平米を施行したにすぎず694,772円が出来高不足となっている。
 なお、同県は受益者高根森林組合から負担金1,977,300円を徴収して前記金額で同組合に工事を請け負わせているが、同組合は5,695,228円で工事を施行しているため事実上694,772円の負担を免かれた結果となっている。(出来高不足)(1604)

(3) 漁港施設

(1625)−(1652)  漁港施設について、地方公共団体および漁業協同組合等が施行する災害復旧、漁港修築工事等に対する本院の実地検査は、北海道ほか38都府県の工事現場1,917箇所のうち11%に相当する226箇所その工事費821,887,612円(国庫補助金538,177,033円)について実施したが、その結果は、防波堤の張石、中詰石、捨石の規格もしくは施行量または船揚場もしくは護岸のコンクリート打設量が設計に比べて不足していたり、石材の単価を過大に見積ったり、またはその施行が粗漏で補助の目的を達していないものなどがあったため、国庫補助金を除外すべき額1工事10万円以上のものが検査済工事数の22.1%に相当する50箇所に上り、その額15,486,506円に達した。しかも、事業主体において工事費の経理に関し事実に合致しない書類を作成して正当な自己負担を免かれていることの判明したものが、右のうち70%に相当する35箇所10,718,369円になっている。
 いま、漁港施設関係の不当工事のうち、国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第4(3)のとおり28件12,470,810円になっており、そのうち代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第4(3)に掲記した番号を示す。)。

〔1〕 愛知県幡豆郡幡豆町が3,971,000円(国庫負担金2,831,000円)で施行した西幡豆漁港25年災害復旧は、防波堤130メートルを復旧するものであるが、張石および中詰石を設計に示した規格以下のものを使用して工事を国庫負担金相当額2,831,000円で施行し同町はその負担したとしている1,140,000円を全く負担していない。(出来高不足、事業主体負担不足)(1633)

〔2〕 愛媛県北宇和郡蒋淵村が1,210,000円(国庫負担金1,145,750円)で施行した蒋淵漁港26年災害復旧は、堤とう75メートルの練積石垣187平米を施行するものであるが、法長が不足しているばかりでなく、胴込コンクリートおよび中詰ぐり石はいずれも設計の半量程度で施行しているため595,000円が出来高不足となっている。なお、工事は国庫負担金を下回る800,000円で施行されていて、同村はその負担したとしている64,250円を全く負担していないばかりでなく345,750円の剰余を生じ、村の一般経費に使用している。(出来高不足、事業主体負担不足)(1644)

〔3〕 高知県幡多郡大内町が1,260,000円(国庫負担金1,174,320円)で施行した橘浦漁港29年災害復旧は、船揚場25メートルを復旧するもので玉石コンクリートブロック200個を施行するものであるが、実際は低価な場所打玉石コンクリートで施行し厚さも不足しているため486,000円が出来高不足となっている。なお、工事は国庫負担金を下回る840,420円で施行されていて、同町はその負担したとしている85,680円を全く負担していないばかりでなく333,900円の剰余を生ずることとなっている。(出来高不足、事業主体負担不足)(1650)