地方公共団体が施行した公共土木施設災害復旧工事の検査の結果指摘した不当事項のうち、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているもの、設計が過大なものまたは同一の被害箇所を重複して査定し国庫負担金が二重交付となっているものなど査定上の欠陥に基因するものについては、工事完成後にこれを指摘してもその是正が困難な場合が多く、むしろ工事完成前に査定の内容を検査し、早期に注意して是正を促すことが効果的であると認め、昭和28年度決算検査報告(参照) に掲記したとおり、28年発生災害の査定に対する検査を早期に実施したが、本年においても29年発生災害について右の早期検査を実施するとともに、28年発生災害復旧工事未着手の地区で前年に検査を行わなかったものについてもあわせてこれを実施した。
29年発生災害については、同年発生災害に対する復旧費査定額10億円以上に上る静岡ほか9県を選び、30年2月から4月までの間に、総工事数18,720その査定額200億6千余万円のうち8,428工事132億8千余万円について実施した。その結果は、申請工事に対する当局の査定において、現地実査の比率が向上したことなどにより、28年発生災害の査定時に比べ相当改善の跡が見受けられたが、なお、採択された工事のうちには、前年と同様に河川の堤防、護岸および道路の復旧工事について、同一箇所の工事を建設省と農林省の双方においてまたは建設省において重複して査定しているもの、災害を受けていないのに改良工事を施行しようとしているもの、近接している工事の場合、捨土を他方の工事の盛土に利用することができるのにこれを考慮していなかったり、現地の確認が不十分で所要量を過大に見込んでいるものなどが多数あり、査定工事費を適正なものに修正する必要があると認められたので当局に注意したところ、次表のとおり580工事につき工事費において2億2千6百余万円(うち実施の際設計変更予定のもの217工事6千6百余万円)(国庫負担金相当額1億7千余万円)を減額是正する旨の回答があった。
県名 | 種別 | 建設省査定額 | 同上のうち本院において実地調査したもの | 減額された工事費 | |||||||||
二重査定 | 改良工事その他 | 設計過大 | 計 | ||||||||||
年災 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | |
静岡県 |
28 |
426 |
千円 902,574 |
61 |
千円 64,732 |
千円 |
6 |
千円 1,021 |
3 |
千円 251 |
9 |
千円 1,272 |
|
29 | 1,221 | 1,452,053 | 904 | 1,067,063 | 20 | 10,764 | 9 | 1,695 | 29 | 12,459 | |||
計 | 1,647 | 2,354,627 | 965 | 1,131,795 | 26 | 11,785 | 12 | 1,946 | 38 | 13,731 | |||
和歌山〃 | 29 | 1,483 | 1,648,942 | 468 | 961,833 | 3 | 10,191 | 26 | 16,497 | 37 | 11,669 | 66 | 38,357 |
島根〃 | 28 | 679 | 315,409 | 24 | 23,322 | 1 | 417 | 2 | 672 | 3 | 1,089 | ||
29 | 2,035 | 1,171,492 | 1,095 | 835,042 | 3 | 823 | 43 | 15,954 | 24 | 6,081 | 70 | 22,858 | |
計 | 2,714 | 1,486,901 | 1,119 | 858,364 | 4 | 1,240 | 45 | 16,626 | 24 | 6,081 | 73 | 23,947 | |
広島〃 | 28 | 929 | 592,321 | 207 | 246,460 | 4 | 3,457 | 6 | 3,014 | 5 | 1,882 | 15 | 8,353 |
29 | 1,629 | 1,302,566 | 919 | 943,380 | 3 | 681 | 42 | 13,722 | 11 | 2,080 | 56 | 16,483 | |
計 | 2,558 | 1,894,887 | 1,126 | 1,189,840 | 7 | 4,138 | 48 | 16,736 | 16 | 3,962 | 71 | 24,836 | |
山口〃 | 29 | 4,008 | 3,322,198 | 1,422 | 2,287,923 | 1 | 586 | 38 | 21,646 | 34 | 9,691 | 73 | 31,923 |
徳島〃 | 29 | 1,004 | 2,169,938 | 615 | 1,964,074 | 41 | 21,359 | 23 | 10,696 | 64 | 32,055 | ||
愛媛〃 | 28 | 825 | 729,389 | 270 | 302,576 | 3 | 1,065 | 17 | 6,877 | 6 | 817 | 26 | 8,759 |
29 | 2,619 | 3,211,213 | 897 | 1,459,358 | 10 | 3,102 | 18 | 3,836 | 22 | 4,165 | 50 | 11,103 | |
計 | 3,444 | 3,940,602 | 1,167 | 1,761,934 | 13 | 4,167 | 35 | 10,713 | 28 | 4,982 | 76 | 19,862 | |
高知〃 | 28 | 527 | 823,976 | 205 | 219,391 | 2 | 5,628 | 17 | 5,372 | 11 | 2,083 | 30 | 13,083 |
29 | 1,680 | 2,207,886 | 720 | 1,440,381 | 1 | 1,039 | 25 | 6,597 | 21 | 4,544 | 47 | 12,180 | |
計 | 2,207 | 3,031,862 | 925 | 1,659,772 | 3 | 6,667 | 42 | 11,969 | 32 | 6,627 | 77 | 25,263 | |
宮崎〃 | 29 | 1,835 | 2,356,001 | 722 | 1,546,647 | 29 | 10,320 | 53 | 13,338 | 82 | 23,658 | ||
鹿児島〃 | 28 | 724 | 745,507 | 260 | 449,297 | 1 | 454 | 10 | 2,898 | 4 | 2,688 | 15 | 6,040 |
29 | 1,206 | 1,225,901 | 666 | 774,652 | 3 | 460 | 23 | 20,083 | 17 | 4,929 | 43 | 25,472 | |
計 | 1,930 | 1,971,408 | 926 | 1,223,949 | 4 | 914 | 33 | 22,981 | 21 | 7,617 | 58 | 31,512 | |
合計 | 28 | 4,110 | 4,109,176 | 1,027 | 1,305,778 | 11 | 11,021 | 58 | 19,854 | 29 | 7,721 | 98 | 38,596 |
29 | 18,720 | 20,068,190 | 8,428 | 13,280,353 | 24 | 16,882 | 305 | 140,778 | 251 | 68,888 | 580 | 226,548 | |
計 | 22,830 | 24,177,366 | 9,455 | 14,586,131 | 35 | 27,903 | 363 | 160,632 | 280 | 76,609 | 678 | 265,144 |
なお、28年発生災害については、静岡ほか5県において4,110工事41億余万円のうち1,027工事13億余万円の検査をあわせて実施したところ、右に述べたと同様に98工事につき工事費において3千8百余万円(うち実施の際設計変更予定のもの39工事1千1百余万円)(国庫負担金相当額3千1百余万円)を減額是正することとなった。
しかして、前記の是正されたものを態様別にあげると次のとおりである。
(1) 重複して査定されていたもの
(2201)−(2202) 同一箇所の工事を建設省と農林省の双方においてまたは建設省において重複して査定しており建設省において査定を取り消したものは35工事27,903,000円に上っているが、そのおもなものをあげると次のとおりである。
(2201)
和歌山県有田郡八幡村が施行する宮川谷川災害復旧は、査定額37,262,000円(国庫負担金26,344,234円)で護岸延長1,940メートルおよびえん堤1基を復旧することとしていたが、右護岸のうち右岸537メートル工事費3,451,000円(国庫負担金2,439,857円)は別途農林省が同一箇所について査定した林道宮川線延長735メートルの災害復旧その査定額5,341,000円(国庫補助金2,670,500円)の一部の路側工事537メートルと重複して査定されていた。
また、同県日高郡川上村が施行する猪谷川災害復旧は、査定額6,631,000円(国庫負担金6,213,247円)で護岸延長612メートルを復旧することとしていたが、右は、別途農林省が28年災害復旧として同一箇所について査定した水路1,390メートル工事費4,948,000円(国庫補助金4,453,000円)の一部の護岸工事612メートルと重複して査定されていた。
(2202) 愛媛県西宇和郡伊方町(旧伊方村)が施行する中之浜海岸災害復旧は、査定額852,000円(国庫負担金781,284円)で護岸延長86メートルを復旧することとしていたが、右は、別途農林省が同一箇所について査定した堤とう復旧延長83メートル工事費716,000円(国庫補助金465,400円)と重複して査定されていた。
(2) 改良工事その他国庫負担の対象としてはならないもの
(2203)−(2205) 災害を受けていないのに施設の改良新設工事を施行しようとしたり、被害が軽微であるのに河川護岸の改良工事を施行しようとしているものなどは363工事160,632,000円に上っているが、そのおもなものをあげると次のとおりである。
(2203)
和歌山県が施行する有田郡湯浅町広川災害復旧は、査定額3,840,000円(国庫負担金2,714,880円)で護岸延長155メートルを練積石垣により復旧することとしていたが、うち下流部70メートルは全く被災の事実がなく、また、上流部85メートルも被害が軽微で、在来の石垣に法固コンクリート張程度の工事(所要工事費1,738,000円、国庫負担金1,228,766円)を施行すれば足りるものである。
また、同県那賀郡川原村が施行する村道西川原小松原線災害復旧は、査定額1,930,000円(国庫負担金1,617,340円)で道路延長45メートルを鉄筋コンクリート桟道により復旧することとしていたが、右道路は、国庫負担の対象とはならない幅員2メートル未満の山腹の小径である。
(2204) 島根県が施行する邑智郡市木村来尾川災害復旧は、査定額1,662,000円(国庫負担金1,181,682円)で床止工2基を復旧することとしていたが、もともと床止工はなかったもので、また、河床低下の事実もない。
(2205) 徳島県が施行する鳴門市里浦町瀬戸内南海岸災害復旧は、査定額10,447,000円(国庫負担金8,378,494円)で堤防延長300メートルをコンクリート擁壁で復旧することとしていたが、被災の程度も軽微であるばかりでなく現地は天然の砂丘であるから法おおい練石張程度の工事(所要工事費6,178,000円、国庫負担金4,954,756円)を施行すれば足りるものである。
(3) 設計が過大と認められたもの
(2206)−(2207) 近接している工事の場合、捨土を他方の工事の盛土に利用することができるのにこれを考慮していないもの、現地の確認が不十分で所要量を過大に見込んでいるものなど設計が過大となっているものは280工事76,609,000円に上っているが、そのおもなものをあげると次のとおりである。
(2206) 島根県が施行する邑智郡桜江村長戸路川砂防災害復旧は、査定額1,629,000円(国庫負担金1,158,219円)で水たたきおよび副えん堤を復旧することとし、水たたきの捨玉石コンクリートブロックは500個を要することとして積算していたが、232個で足りるもので、工事費710,000円(国庫負担金504,810円)が過大となっていた。
(2207) 山口県が施行する大津郡油谷町大坊川災害復旧のうち河床整理は、査定額2,807,000円(国庫負担金1,959,286円)で左岸側延長150メートルの掘さくを行い掘さく土2,461立米を3キロメートル運搬捨土することとしているものであるが、対岸には別途査定額2,514,000円(国庫負担金1,754,772円)で延長203メートルの堤防復旧を行い、所要盛土量として2,401立米を他から運搬することとしているのであるから、この築堤盛土の土取場を右河床整理の箇所とすれば河床整理も完成し、280万円程度工事費を節減することができるものである。