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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第13 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

昭和28年、29年発生災害復旧事業の査定額を減額させたもの


(2201)−(2207) 昭和28年、29年発生災害復旧事業の査定額を減額させたもの

 地方公共団体が施行した公共土木施設災害復旧工事の検査の結果指摘した不当事項のうち、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているもの、設計が過大なものまたは同一の被害箇所を重複して査定し国庫負担金が二重交付となっているものなど査定上の欠陥に基因するものについては、工事完成後にこれを指摘してもその是正が困難な場合が多く、むしろ工事完成前に査定の内容を検査し、早期に注意して是正を促すことが効果的であると認め、昭和28年度決算検査報告(参照) に掲記したとおり、28年発生災害の査定に対する検査を早期に実施したが、本年においても29年発生災害について右の早期検査を実施するとともに、28年発生災害復旧工事未着手の地区で前年に検査を行わなかったものについてもあわせてこれを実施した。

 29年発生災害については、同年発生災害に対する復旧費査定額10億円以上に上る静岡ほか9県を選び、30年2月から4月までの間に、総工事数18,720その査定額200億6千余万円のうち8,428工事132億8千余万円について実施した。その結果は、申請工事に対する当局の査定において、現地実査の比率が向上したことなどにより、28年発生災害の査定時に比べ相当改善の跡が見受けられたが、なお、採択された工事のうちには、前年と同様に河川の堤防、護岸および道路の復旧工事について、同一箇所の工事を建設省と農林省の双方においてまたは建設省において重複して査定しているもの、災害を受けていないのに改良工事を施行しようとしているもの、近接している工事の場合、捨土を他方の工事の盛土に利用することができるのにこれを考慮していなかったり、現地の確認が不十分で所要量を過大に見込んでいるものなどが多数あり、査定工事費を適正なものに修正する必要があると認められたので当局に注意したところ、次表のとおり580工事につき工事費において2億2千6百余万円(うち実施の際設計変更予定のもの217工事6千6百余万円)(国庫負担金相当額1億7千余万円)を減額是正する旨の回答があった。

県名 種別 建設省査定額 同上のうち本院において実地調査したもの 減額された工事費
二重査定 改良工事その他 設計過大
年災 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

静岡県

28

426
千円
902,574

61
千円
64,732

千円

6
千円
1,021

3
千円
251

9
千円
1,272
29 1,221 1,452,053 904 1,067,063

20 10,764 9 1,695 29 12,459
1,647 2,354,627 965 1,131,795

26 11,785 12 1,946 38 13,731
和歌山〃 29 1,483 1,648,942 468 961,833 3 10,191 26 16,497 37 11,669 66 38,357
島根〃 28 679 315,409 24 23,322 1 417 2 672

3 1,089
29 2,035 1,171,492 1,095 835,042 3 823 43 15,954 24 6,081 70 22,858
2,714 1,486,901 1,119 858,364 4 1,240 45 16,626 24 6,081 73 23,947
広島〃 28 929 592,321 207 246,460 4 3,457 6 3,014 5 1,882 15 8,353
29 1,629 1,302,566 919 943,380 3 681 42 13,722 11 2,080 56 16,483
2,558 1,894,887 1,126 1,189,840 7 4,138 48 16,736 16 3,962 71 24,836
山口〃 29 4,008 3,322,198 1,422 2,287,923 1 586 38 21,646 34 9,691 73 31,923
徳島〃 29 1,004 2,169,938 615 1,964,074

41 21,359 23 10,696 64 32,055
愛媛〃 28 825 729,389 270 302,576 3 1,065 17 6,877 6 817 26 8,759
29 2,619 3,211,213 897 1,459,358 10 3,102 18 3,836 22 4,165 50 11,103
3,444 3,940,602 1,167 1,761,934 13 4,167 35 10,713 28 4,982 76 19,862
高知〃 28 527 823,976 205 219,391 2 5,628 17 5,372 11 2,083 30 13,083
29 1,680 2,207,886 720 1,440,381 1 1,039 25 6,597 21 4,544 47 12,180
2,207 3,031,862 925 1,659,772 3 6,667 42 11,969 32 6,627 77 25,263
宮崎〃 29 1,835 2,356,001 722 1,546,647

29 10,320 53 13,338 82 23,658
鹿児島〃 28 724 745,507 260 449,297 1 454 10 2,898 4 2,688 15 6,040
29 1,206 1,225,901 666 774,652 3 460 23 20,083 17 4,929 43 25,472
1,930 1,971,408 926 1,223,949 4 914 33 22,981 21 7,617 58 31,512
合計 28 4,110 4,109,176 1,027 1,305,778 11 11,021 58 19,854 29 7,721 98 38,596
29 18,720 20,068,190 8,428 13,280,353 24 16,882 305 140,778 251 68,888 580 226,548
22,830 24,177,366 9,455 14,586,131 35 27,903 363 160,632 280 76,609 678 265,144

 なお、28年発生災害については、静岡ほか5県において4,110工事41億余万円のうち1,027工事13億余万円の検査をあわせて実施したところ、右に述べたと同様に98工事につき工事費において3千8百余万円(うち実施の際設計変更予定のもの39工事1千1百余万円)(国庫負担金相当額3千1百余万円)を減額是正することとなった。
 しかして、前記の是正されたものを態様別にあげると次のとおりである。

(1) 重複して査定されていたもの

(2201)−(2202)  同一箇所の工事を建設省と農林省の双方においてまたは建設省において重複して査定しており建設省において査定を取り消したものは35工事27,903,000円に上っているが、そのおもなものをあげると次のとおりである。

(2201)  和歌山県有田郡八幡村が施行する宮川谷川災害復旧は、査定額37,262,000円(国庫負担金26,344,234円)で護岸延長1,940メートルおよびえん堤1基を復旧することとしていたが、右護岸のうち右岸537メートル工事費3,451,000円(国庫負担金2,439,857円)は別途農林省が同一箇所について査定した林道宮川線延長735メートルの災害復旧その査定額5,341,000円(国庫補助金2,670,500円)の一部の路側工事537メートルと重複して査定されていた。
 また、同県日高郡川上村が施行する猪谷川災害復旧は、査定額6,631,000円(国庫負担金6,213,247円)で護岸延長612メートルを復旧することとしていたが、右は、別途農林省が28年災害復旧として同一箇所について査定した水路1,390メートル工事費4,948,000円(国庫補助金4,453,000円)の一部の護岸工事612メートルと重複して査定されていた。

(2202)  愛媛県西宇和郡伊方町(旧伊方村)が施行する中之浜海岸災害復旧は、査定額852,000円(国庫負担金781,284円)で護岸延長86メートルを復旧することとしていたが、右は、別途農林省が同一箇所について査定した堤とう復旧延長83メートル工事費716,000円(国庫補助金465,400円)と重複して査定されていた。

(2) 改良工事その他国庫負担の対象としてはならないもの

(2203)−(2205)  災害を受けていないのに施設の改良新設工事を施行しようとしたり、被害が軽微であるのに河川護岸の改良工事を施行しようとしているものなどは363工事160,632,000円に上っているが、そのおもなものをあげると次のとおりである。

(2203)  和歌山県が施行する有田郡湯浅町広川災害復旧は、査定額3,840,000円(国庫負担金2,714,880円)で護岸延長155メートルを練積石垣により復旧することとしていたが、うち下流部70メートルは全く被災の事実がなく、また、上流部85メートルも被害が軽微で、在来の石垣に法固コンクリート張程度の工事(所要工事費1,738,000円、国庫負担金1,228,766円)を施行すれば足りるものである。
 また、同県那賀郡川原村が施行する村道西川原小松原線災害復旧は、査定額1,930,000円(国庫負担金1,617,340円)で道路延長45メートルを鉄筋コンクリート桟道により復旧することとしていたが、右道路は、国庫負担の対象とはならない幅員2メートル未満の山腹の小径である。

(2204)  島根県が施行する邑智郡市木村来尾川災害復旧は、査定額1,662,000円(国庫負担金1,181,682円)で床止工2基を復旧することとしていたが、もともと床止工はなかったもので、また、河床低下の事実もない。

(2205)  徳島県が施行する鳴門市里浦町瀬戸内南海岸災害復旧は、査定額10,447,000円(国庫負担金8,378,494円)で堤防延長300メートルをコンクリート擁壁で復旧することとしていたが、被災の程度も軽微であるばかりでなく現地は天然の砂丘であるから法おおい練石張程度の工事(所要工事費6,178,000円、国庫負担金4,954,756円)を施行すれば足りるものである。

(3) 設計が過大と認められたもの

(2206)−(2207)  近接している工事の場合、捨土を他方の工事の盛土に利用することができるのにこれを考慮していないもの、現地の確認が不十分で所要量を過大に見込んでいるものなど設計が過大となっているものは280工事76,609,000円に上っているが、そのおもなものをあげると次のとおりである。

(2206)  島根県が施行する邑智郡桜江村長戸路川砂防災害復旧は、査定額1,629,000円(国庫負担金1,158,219円)で水たたきおよび副えん堤を復旧することとし、水たたきの捨玉石コンクリートブロックは500個を要することとして積算していたが、232個で足りるもので、工事費710,000円(国庫負担金504,810円)が過大となっていた。

(2207)  山口県が施行する大津郡油谷町大坊川災害復旧のうち河床整理は、査定額2,807,000円(国庫負担金1,959,286円)で左岸側延長150メートルの掘さくを行い掘さく土2,461立米を3キロメートル運搬捨土することとしているものであるが、対岸には別途査定額2,514,000円(国庫負担金1,754,772円)で延長203メートルの堤防復旧を行い、所要盛土量として2,401立米を他から運搬することとしているのであるから、この築堤盛土の土取場を右河床整理の箇所とすれば河床整理も完成し、280万円程度工事費を節減することができるものである。