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  • 昭和30年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第7 農林省

(一般会計)


(一般会計)

 昭和30年度歳出決算額は962億2千9百余万円で、そのうち国が直轄または都道府県に委託して施行する土地改良、開拓、干拓等の事業および機械の整備等に使用したものは142億6百余万円であり、また、地方公共団体等の施行する事業に対する国庫補助147費目526億8千5百余万円のうち土地改良、地盤変動対策、林道開設、漁港修築および災害復旧等公共事業関係は49費目352億7千余万円となっている。

(直轄工事について)

 各農地事務局の施行した直轄工事については、農業水利、開拓、干拓等の工事を施行する82事業所のうち53事業所の会計実地検査を施行したところ、工事の出来高については著しく改善されたと認められるが、なお、請負工事費の積算にあたり現地の調査が十分でなかったり、機械の修理費やしゅんせつの送砂距離を過大に見込んだなどのため積算過大となっているものや、現場に適しない機械や性能が悪く使用に耐えない機械を現場に搬入するなど不経済な結果をきたしているものがある。

(代行工事について)

 国営土地改良事業の一部を都道府県に施行させている代行工事については、開墾、干拓等の全国における工事現場1,217箇所のうち400箇所(うち北海道の分については参照) を実地に検査したところ、開拓者の営農に支障がないのに既存の県道または市町村道等を拡幅したり、付近に利用することができる既存道路があるのにさらに新路線を開設したり、土地改良の補助事業で施行するのが適当と認められる既存の畑地の開田を代行工事として施行したり、耕作に不適な高冷地を開拓しようとして多額の経費を投入しているなどその計画当を得ないと認められるものが多数見受けられたほか、工事の施行が粗漏で手直しを要するもの、出来高が不足しているものまたは設計の過大なものも多数に上っている。

(公共事業に対する国庫補助の経理について)

 地方公共団体および農業協同組合等が施行した土地改良、地盤変動対策、林道開設、漁港修築および災害復旧等各種補助工事の不当事項については、既に昭和26年度以降の検査報告において連年にわたり多数指摘してきたところであるが、31年中、全国の工事現場52,113箇所のうち8%に相当する4,200箇所を実地に検査したところ、相当改善の跡が認められるが、なお不当な事例が少なくなく、国庫補助を除外すべき額1工事10万円以上のものだけでも1,032工事3億3千1百余万円に上り、しかもその大部分はいずれも事業主体が正当な自己負担をしていないものであって、そのうちには国庫補助以下で工事を施行しているものさえ多数見受けられた。
 しかして、公共事業関係補助工事の不当事項については、工事完成後においてはその是正が困難な場合が多く、むしろ工事完成前に査定の内容を検査し、早期に注意してその是正を促すことが効果的であると認め、30年発生災害について早期検査を実施するとともに28、29年発生災害の復旧工事未着手の地区等についてもあわせてこれを実施することとし、査定額がとくに多額な北海道ほか10県を選び5千9百余箇所工事費査定額37億6千8百余万円について検査した。その結果は、なお二重査定、災害便乗、設計過大等の事例が多数見受けられたので注意したところ、2千7百余箇所の工事につき工事費において6億1千3百余万円を減額是正することとなった。

(昭和28、29両年度の検査報告掲記事項の事後処理状況について)

 昭和29年度決算検査報告で指摘した不当工事のうち、国庫補助を除外すべき額1工事20万円以上のものは720件であるが、このうち当局において国庫補助を返還または減額することとしたものは307件、この処理に代えて手直しまたは補強することとしたものは307件、一部を返還または減額し、一部を手直しまたは補強することとしたものは106件である。
 右のうち国庫補助を返還または減額することとしたもの413件については、31年9月末現在321件が処理済となっている。また、昭和28年度決算検査報告に掲記したもののうち国庫補助を返還することとしたもので30年9月末現在収納にいたっていなかった134件のうち31年9月末現在まだ収納にいたっていないものが44件ある。
 また、手直しまたは補強することとしたもののうち、秋田県ほか18府県内の昭和29年度決算検査報告掲記の分283箇所、昭和28年度決算検査報告掲記の分320箇所につきその施行状況を31年2月から8月までの間に現地について検査したところ、29年度分については、工事が完成していたものは153箇所にすぎず、59箇所は工事中であり、71箇所は未着工であったが、工事中の59箇所のうちには、検査のあることを知り急きょ着工し、工事現場に資材を準備した程度にすぎないものまたは出来高が20%にもみたないものが見受けられた。また、28年度分については、秋田県ほか12府県内において実地検査当時なお未着工のものが22箇所、工事中のものが19箇所であって、工事中のもののうちには前年度の事後処理検査当時の出来高に比べほとんど工事が進ちょくしていないものもあった状況である。
 つぎに、手直し工事等が完成したもの432箇所および工事中のもの78箇所計510箇所について検査した結果は、大部分のものは設計どおりに工事を施行し、その効果があがっているものと認められたが、なお、手直しまたは補強の効果が十分あがっていないものが58箇所(うち28年度分36箇所)見受けられた。
 しかして、検査当時工事中または未着工となっていた28年度分41箇所、29年度分130箇所のうち、31年9月末現在工事を完成した旨の報告のあったものは28年度分8箇所、29年度分63箇所となっている。

(公共事業関係以外の国庫補助の経理について)

 公共事業関係以外の国庫補助については、昭和30年に引き続き主として末端の事業施行者に交付される農村振興、農産物増産助成、農作物病虫害防除等の継続的補助金および29年に発生した風水害等の災害対策費補助金72費目73億8千1百余万円ならびに30年度国庫補助のうち農村振興総合施設整備費補助金ほか26費目49億3千3百余万円を選び4百余の市町村と各種組合を実地に検査したが、その結果は一部改善の跡の認められたものもあるが、なお補助金を市町村等が使用しないで保有していたり、補助の目的外に使用していたり、事業主体が正当な自己負担をしないで事業を実施したため事業量が不足していたものなどの事例が少なくなく、これら国庫補助の経理当を得ないと認められるものが検査の結果判明したものだけでも8百余件1億1千6百余万円に上っている。

(災害融資金に対する国庫利子補給金の交付について)

 風水害、冷害等の天災により損害を受けた農林漁業者に対し、その施設の復旧その他生産力の回復のため低利で融通される災害融資金に関しては、昭和30年に引き続き887金融機関の融資総額78億1千余万円について実地に検査したところ、金融機関において当該資金を貸し付けないで事業資金等に使用していたり、災害に関係のない旧債権の回収等に充てているなどの事例が多く、融資金の貸付または使用が当を得ず、これに対する国庫利子補給の必要がなかったと認められるものが検査の結果判明したものだけでも533金融機関で融資総額12億2千6百余万円これに対する国庫利子補給済額7千4百余万円に上っている。