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  • 昭和30年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第7 農林省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

災害融資金に対する利子補給金の交付当を得ないもの


(1632)−(1710)災害融資金に対する利子補給金の交付当を得ないもの

 (組織)農林本省(項)被害農家営農資金利子補給

 (組織)水産庁(項)漁業災害復旧資金融通利子補給及損失補償

 災害融資金に対する利子補給金は、風水害、冷害等の天災により損失を受けた農林漁業者に対し、施設の復旧に必要な資金や肥料、薬剤、薪炭原木、稚魚等の購入に要する資金を市町村長の被害認定に基いて組合系統金融機関等をして低利に貸し出させ、国がこれに対して利子の一部を補給して被害農林漁業者の生産力をすみやかに回復しようとするもので、昭和28年度以降についてみてもこれらの貸付金を累計すれば55,781,164,700円に上り、これに対する国庫利子補給として各都道府県に対し、一般会計から被害農家営農資金利子補給補助金3,500,645,431円(うち29年度以前の分1,905,093,282円)および漁業災害復旧資金利子補給補助金34,288,495円(うち29年度分4,138,750円)計3,534,933,926円(うち29年度以前の分1,909,232,032円)の多額を支出している。

 本件融資金は、農林水産業団体の系統金融機関である農林中央金庫、都道府県信用農業協同組合連合会等が融資機関となって低利資金を農業協同組合等に貸し出したり、またはこれらの組合等を経由して末端農林漁業者に貸し付ける取扱となっており、その借入資格、使途、借入限度、利率、償還方法等についてはそれぞれ関係法規により一定の条件を付しているもので、30年中、青森県ほか18府県の177団体について本制度実施の効果、融資金の貸出状況と借受人の利用状況等を調査し、その結果を昭和29年度決算検査報告(参照) に掲記したが、本年も引続き北海道ほか27府県の887団体の融資総額7,810,599,290円これに対する国庫利子補給済額471,380,269円について調査したところ、融資金を農林漁業者に貸し付けたこととして利子補給の対象としていながら、実際は信用農業協同組合連合会または農業協同組合等で資金を貸し付けず、融資の目的に反して定期貯金等にさせて団体の事業資金に使用しているもの、災害に関係のない旧債権の回収または組合の出資金、賦課金もしくは損失補てん金に充てているもの、あるいは貸付を受けた者が資金を融資の目的どおりに使用せずこれを災害と関係のない施設費や物品購入費等に充てているものなど融資金の貸付または使用当を得ないものが少なくなく、利子補給の要がなかったと認められるものは北海道ほか27府県の533団体において融資総額1,226,922,446円、これに対する国庫利子補給済額が74,800,935円に上っている状況で、その態様別内訳は次表(折込)のとおりである。

道府県名 調査団体数 調査済営農資金融資額 国庫利子補給済額 金融機関が貸し付けないで運用しているもの 災害に関係のない旧債権の回収等に充てているもの 資金を融資の目的に反して使用しているもの ※計 同上に対応する不当融資額 道府県名
金融団体数 国庫利子補給済額 金融団体数 国庫利子補給済額 金融団体数 国庫利子補給済額 金融団体数 国庫利子補給済額

北海道

152
千円
4,103,033
千円
235,214

61
千円
24,203

83
千円
15,814

1
千円
17

145
(125)
千円
40,034
千円
641,150

北海道
秋田県 22 177,916 9,012 9 321 3 61 1 6 13
(13)
389 6,478 秋田県
山形〃 30 99,821 6,866 11 365 9 216 4 101 24
(24)
683 10,684 山形〃
福島〃 53 480,635 29,210 7 330 24 1,605 1 150 32
(32)
2,086 22,952 福島〃
栃木〃 38 320,449 22,901 2 70 8 349

10
(10)
419 17,083 栃木〃
埼玉〃 26 88,480 6,103 6 678 6 234 2 299 14
(12)
1,212 15,226 埼玉〃
神奈川〃 20 63,603 4,446 2 222 10 312 8 396 20
(18)
930 12,399 神奈川〃
愛知〃 55 167,189 16,226 16 2,453 2 172 2 24 20
(20)
2,650 28,248 愛知〃
三重〃 32 83,376 6,803 9 673 1 133 9 811 19
(19)
1,618 17,986 三重〃
滋賀〃 9 4,732 358

1 13

1
(1)
13 223 滋賀〃
京都府 24 114,196 10,275 6 516 1 1 8 1,107 15
(13)
1,625 16,853 京都府
大阪〃 10 22,602 1,147 2 170



2
(2)
170 2,129 大阪〃
兵庫県 23 52,052 2,110 12 735 1 16 12 315 25
(21)
1,067 29,249 兵庫県
奈良〃 24 75,293 5,304 8 792 2 357 11 855 21
(20)
2,005 28,294 奈良〃
和歌山〃 21 428,054 39,886 7 2,104 2 15 6 1,255 15
(13)
3,375 41,088 和歌山〃
岡山〃 21 30,988 836 2 20 1 4 2 70 5
(5)
95 3,122 岡山〃
広島〃 9 14,822 600

4 21

4
(4)
21 467 広島〃
山口〃 22 48,340 2,689 6 487 3 25 2 12 11
(11)
525 8,907 山口〃
徳島〃 27 47,194 2,592 4 283 9 58 2 90 15
(14)
432 7,973 徳島〃
香川〃 15 28,066 758 3 44 9 94

12
(10)
138 5,470 香川〃
愛媛〃 26 89,174 4,087 3 93 9 371 5 553 17
(14)
1,018 19,482 愛媛〃
高知〃 15 21,973 1,246

3 5 4 803 7
(7)
809 10,181 高知〃
福岡〃 23 146,668 15,147 7 2,807 1 23

8
(8)
2,831 28,036 福岡〃
長崎〃 52 205,744 12,496 40 5,057 4 927 4 170 48
(44)
6,155 101,811 長崎〃
熊本〃 20 82,934 7,717 3 396 2 26 1 16 6
(5)
438 4,542 熊本〃
大分〃 38 231,607 10,235 6 247 5 86 4 849 15
(12)
1,184 16,499 大分〃
宮崎〃 53 459,574 13,245 13 853 22 1,182 9 378 44
(42)
2,414 105,841 宮崎〃
鹿児島〃 27 122,080 3,855 14 449



14
(14)
449 24,536 鹿児島〃
合計 887 7,810,599 471,380 259 44,379 225 22,133 98 8,287 582
(533)
74,800 1,226,922 合計

(備考) ※印「計」欄中「金融団体数」の( )内の数字は、2以上の不当経理の態様に重複して計上されたものを控除した実数を示す。

 このような結果をきたしたのは融資を受ける農林漁業者が本制度の趣旨をよく理解していないことにもよるが、一方、国または都道府県が融資金額のわくを決定するにあたり経由団体等の財政状況、地域的資金需要の大小や被害程度の調査が十分でなかったこととその後の融資実行状況の監督に欠けるところがあったことなどによるものと認められ、その取扱に特段の配慮が望ましい。
 いま、検査の結果判明した不当経理のうち、国庫利子補給済額が一団体当り20万円以上のものをあげると別表第6のとおり、北海道ほか14府県の79団体で融資額715,021,653円国庫利子補給済額48,915,102円に上っているが、これらのうち代表的な事例をあげると次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第6に掲記した番号を示す。)

(1) 営農資金の全部または一部を被害農家に貸し付けず、金融機関が運用し営農資金の目的を達していないもの

(1)  北海道虻田郡京極村農業協同組合で、28年冷害農家営農資金18,500,000円(国庫利子補給済額1,667,439円)を北海道信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は右資金の全額を同連合会に対する旧債の弁済に充て被害農家に貸し付けていない。
 また、同組合では、29年冷害農家営農資金17,140,000円(国庫利子補給済額536,407円)の貸付にあたっても、融資金から組合の損失補てんに1,307,057円、28年以前の貸付金、購買品売掛金等の回収に1,928,349円、未収賦課金、共済掛金の徴収に765,491円計4,000,897円(国庫利子補給済額125,210円)を差し引いていた。(不貸付、旧債乗替等)(1634)

(2)  北海道広尾郡大樹町農業協同組合で、28年冷害農家営農資金27,730,000円(国庫利子補給済額2,645,004円)を北海道信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際はうち25,687,561円を組合の損失補てんに充て、残額2,042,439円を被害農家名義の定期貯金とさせており営農資金の目的を達していない。
 また、同組合では、29年冷害農家営農資金63,000,000円(国庫利子補給済額2,274,767円)についても、うち21,362,376円(国庫利子補給済額771,340円)を定期貯金とさせていた。(不貸付)(1667)

(3)  愛知県海部郡八開村農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金2,787,000円(国庫利子補給済額250,526円)を愛知県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全額を同連合会に預け入れたままで被害農家に貸し付けていない。(不貸付)(1680)

(4)  福岡県三井郡宮の陣村農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金22,920,000円(国庫利子補給済額2,959,000円)を福岡県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は右融資金のうちから同連合会に定期預金したものが4,614,700円、村財政資金等に充てたものが3,565,000円計8,179,700円(国庫利子補給済額1,056,009円)ある。
 また、同組合では、28年風水害被害農家施設復旧資金3,794,000円(国庫利子補給済額186,945円)についても前記同様村財政資金に充てていた。(不貸付)(1697)

(2) 営農資金を災害に関係のない旧債権の回収または出資金、賦課金等の決済に充てているもの

(1)  北海道河東郡音更町中士幌農業協同組合で、28年冷害農家営農資金17,190,000円(国庫利子補給済額1,498,196円)を北海道信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は9,509,850円は冷害に関係のない旧債権の回収に充て、残額7,680,150円は定期貯金とさせていた。
 また、同組合では、29年冷害農家営農資金18,000,000円(国庫利子補給済額580,331円)の貸付についても前記同様目的に反し旧債権の回収に充てたものが4,080,579円、定期貯金とさせたものが3,142,720円計7,223,299円(国庫利子補給済額232,883円)ある。(旧債乗替等)(1643)

(2)  北海道上川郡清水町農業協同組合で、28年冷害農家営農資金35,960,000円(国庫利子補給済額3,210,828円)を北海道信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は7,366,760円を目的どおり貸し付けたにすぎず、残額28,593,240円(国庫利子補給済額2,552,928円)は22,248,240円を冷害に関係のない旧債権の回収に充て、6,345,000円を組合に対する出資金に充てていた。
 また、同組合では、29年冷害農家営農資金30,000,000円(国庫利子補給済額1,048,887円)の貸付についても前記同様目的に反し旧債権の回収に充てたものが9,761,915円、組合の出資金とさせたものが2,328,000円計12,089,915円(国庫利子補給済額421,652円)ある。(旧債乗替等)(1645)

(3)  長崎県南松浦郡奈良尾町奈良尾漁業協同組合で、28年風水害被害漁家施設復旧資金26,000,000円(国庫利子補給済額2,452,114円)を長崎県信用漁業協同組合連合会から借り入れ、被害漁家に施設復旧資金として貸し付けたこととしているが、実際は17,436,157円を目的どおり貸し付けたにすぎず、残額8,563,843円(国庫利子補給済額807,671円)は7,666,488円を組合賦課金および築港負担金に、897,355円を立替手数料等に充てていた。(旧債乗替等)(1706)

(3) 営農資金を融資の目的に反して使用しているもの

(1)  京都府綾部市物部農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金4,050,000円(国庫利子補給済額413,615円)を京都府信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全額を部落ごとに一括して貸し付け、これを耕地整理および農地災害復旧工事費の一部に使用させていた。(目的外使用)(1683)

(2)  高知県高岡郡日高村加茂農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金2,706,000円(国庫利子補給済額268,093円)を、また、同村日高農業協同組合(旧日下農業協同組合)で同資金3,703,000円(国庫利子補給済額359,910円)を高知県信用農業協同組合連合会から借り入れ、それぞれ被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は両組合とも全額を一括して日高村に貸し付け県営河川改修工事の用地補償費の一部に使用させていた。(目的外使用)(1693、1694)