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  • 昭和31年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
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  • 補助金

利子補給金の交付当を得ないもの


(816)−(856) 利子補給金の交付当を得ないもの

(組織)農林本省 (項)被害農家営農資金利子補給及損失補償 ほか1科目
(組織)水産庁 (項)漁業災害復旧資金融通利子補給及損失補償

 農林省が行う農林漁業者に対する融資事業の利子補給のうち、災害融資金に対する利子補給金については、本院において、昭和30年以来その融資機関である農業協同組合等につき実地検査を施行してきたところであり、その結果は、29年度以降の検査報告に掲記したとおり、資金の貸付および使用当を得ず利子補給の要がないと認められたものが相当数に上る状況であるのにかんがみ、本年においても前年に引き続き融資金の貸出状況と借受人の利用状況に重点を置き検査を行うとともに、有畜農家創設資金に対する利子補給金についてもあわせて資金の貸付および利子補給金の使用状況を検査したところ、資金の貸付または利子補給金の使用当を得ず利子補給の目的を達していないと認められるものが相当多数発見された。

 いま、その概要を災害融資金に対する利子補給金および有畜農家創設資金に対する利子補給金に分けて説明すると次のとおりである。

(1) 災害融資金に対する利子補給金

(816)−(855)  災害融資金に対する利子補給金は、風水害、冷害、凍霜害等の天災により損失を受けた農林漁業者に対し、その経営や施設の災害復旧に必要な資金を組合系統金融機関等をして低利に貸し出させ、国および地方公共団体がこれに対して利子の一部を補給して被害農林漁業者の生産力をすみやかに回復させ、その経営を維持安定させようとするもので、28年度以降についてみてもこれらの貸付金は累計66,267,339,700円に上り、これに対する国庫利子補給として、各都道府県に対し、一般会計から被害農家営農資金利子補給補助金4,636,117,475円(うち31年度分1,135,472,044円)および漁業災害復旧資金利子補給補助金58,727,664円(うち31年度分24,439,169円)計4,694,845,139円(うち31年度分1,159,911,213円)の多額を支出している。

 右融資金は、農林水産業団体の系統金融機関である農林中央金庫、都道府県信用農業協同組合連合会、農業協同組合等が融資機関となって末端農林漁業者等に貸し付ける取扱となっており、その借入資格、使途、借入限度、貸出実行期限、利率、償還方法等についてはそれぞれ関係法規により一定の条件を付しているもので、31年中、北海道ほか27府県の887団体について本制度実施の効果、融資金の貸出状況と借受人の利用状況等を検査し、その結果を昭和30年度決算検査報告(参照) に掲記したが、本年も引続き北海道ほか40府県の667団体の融資総額3,282,282,000円、これに対する国庫利子補給済額321,085,039円について検査したところ、30年以降は全国的に大災害の発生がなく、したがって、前記融資総額中その大部分を占める28、29両年発生災害融資金が主として検査の対象となった。その結果は、相当是正改善の跡が見受けられたが、なお、融資金を農林漁業者に貸し付けたこととして利子補給の対象としていながら、実際は農業協同組合等で資金の全部または一部を被害農林漁業者に貸し付けず、融資の目的に反して定期貯金等にさせて団体の事業資金に使用したり、これを町村や土地改良区、部落等に転貸しているもの、資金を貸し付けるにあたり災害に関係のない組合の旧債権の回収または組合の出資金、賦課金等に充てているものなど、融資金が被害農林漁業者に対する再生産資金としてではなく、むしろ組合自体の欠損補てんや資金繰りとして使用されていたり、または貸付を受けた者が資金を貯金に預け入れたまま償還以外には使用していないもの、資金を融資の目的どおり使用しないでこれを災害と関係のない施設費や物品購入費等に充てているなど前年度と同様の事態が少なくなかった。このように融資金の貸付または使用当を得ないため利子補給の要がなかったと認められるものは北海道ほか36府県の313団体において融資総額331,043,208円、これに対する国庫利子補給済額が30,750,386円に上っている状況で、その態様別内訳は次表(折込)のとおりである。

道府県名 調査済融資機関数 調査済融資額 国庫利子補給済額 融資機関が貸し付けないで運用しているもの 災害に関係のない旧債権の回収等に充てているもの 資金を使用しないで保有しているもの 資金を融資の目的に反して使用しているもの ※計 同上に対応する不当融資額 道府県名
融資機関数 国庫利子補給済額 融資機関数 国庫利子補給済額 融資機関数 国庫利子補給済額 融資機関数 国庫利子補給済額 融資機関数 国庫利子補給済額

北海道

21
千円
535,600
千円
43,779

5
千円
1,502

8
千円
1,140

千円
10
千円
1,434

23
(14)
千円
4,077
千円
58,649

北海道
青森県 27 290,819 29,168 12 963 2 393 4 595 15 1,346 33
(19)
3,299 36,475 青森県
岩手〃 37 145,910 15,053 2 221 7 483 14 808 8 447 31
(21)
1,961 19,431 岩手〃
宮城〃 11 63,148 7,678 1 152



1 45 2
(2)
197 1,612 宮城〃
秋田〃 34 76,817 5,212 4 72



6 159 10
(8)
232 3,153 秋田〃
山形〃 10 25,362 2,448





3 136 3
(3)
136 2,247 山形〃
福島〃 19 112,266 12,776

3 126

14 712 17
(17)
839 7,872 福島〃
茨城〃 41 171,457 18,969 2 128



18 620 20
(20)
749 7,022 茨城〃
群馬〃 38 201,795 20,935 1 415

1 244 8 404 10
(10)
1,063 10,480 群馬〃
埼玉〃 14 49,511 3,807 1 155



4 292 5
(5)
448 4,226 埼玉〃
千葉〃 14 58,721 4,542 2 198



2 99 4
(4)
298 3,550 千葉〃
新潟〃 20 102,251 12,242 1 142



9 947 10
(10)
1,090 9,180 新潟〃
富山〃 16 59,893 6,663

3 73

3 101 6
(6)
174 1,497 富山〃
石川〃 3 16,642 898



1 8 1 2 2
(2)
11 1,274 石川〃
福井〃 25 116,570 15,312

4 307

10 1,147 14
(14)
1,455 10,559 福井〃
山梨〃 24 89,704 7,123 6 474 2 219 1 111 5 554 14
(12)
1,358 15,347 山梨〃
長野〃 20 144,175 17,273

1 52

5 308 6
(6)
361 3,705 長野〃
岐阜〃 29 83,858 9,544 1 132 2 39

15 1,978 18
(16)
2,150 16,542 岐阜〃
静岡〃 35 201,082 22,936 1 20 4 72 4 813 4 368 13
(12)
1,275 11,450 静岡〃
愛知〃 1 3,000 254 1 138





1
(1)
138 1,120 愛知〃
三重〃 20 68,315 8,553 9 1,318 2 58 1 108 3 432 15
(12)
1,918 15,369 三重〃
京都府 1 9,320 1,416





1 1,122 1
(1)
1,122 7,378 京都府
兵庫県 8 10,033 1,065 2 92 2 89

4 328 8
(8)
510 4,989 兵庫県
和歌山〃 8 35,508 4,573





4 214 4
(3)
214 1,602 和歌山〃
鳥取〃 28 27,145 2,229 2 86 3 23

13 381 18
(15)
491 6,506 鳥取〃
島根〃 9 20,980 2,278 7 238

1 121 1 52 9
(6)
412 4,735 島根〃
岡山〃 14 72,505 7,129

1 19 2 152 5 333 8
(8)
506 4,152 岡山〃
広島〃 4 5,236 260

3 77



3
(2)
77 649 広島〃
山口〃 12 25,460 2,549

1 18

4 231 5
(4)
249 2,715 山口〃
徳島〃 21 83,853 7,498 5 184 2 31

7 258 14
(9)
475 4,349 徳島〃
香川〃 6 12,853 256 1 2





1
(1)
2 1,077 香川〃
愛媛〃 34 76,932 6,298 1 51 8 724 1 41 11 1,023 21
(18)
1,841 17,209 愛媛〃
高知〃 5 10,263 1,198 1 24





1
(1)
24 206 高知〃
熊本〃 10 42,531 4,973 1 299



3 517 4
(4)
817 8,192 熊本〃
大分〃 10 69,666 6,319 2 28 2 175 1 9 1 49 6
(6)
263 2,318 大分〃
宮崎〃 9 34,750 711 2 85

2 7 1 25 5
(5)
118 5,968 宮崎〃
鹿児島〃 16 87,500 2,143

7 369 1 13

8
(8)
382 18,221 鹿児島〃
合計 654 3,241,435 316,081 73 7,133 67 4,497 34 3,036 199 16,082 373
(313)
30,750 331,043 合計

(備考※印「計」欄中「融資機関数」の」()内の数字は、2以上の不当経理の態様に重複して計上されたものを控除した実数を示す。

 このような結果をきたしたのは、融資機関および融資を受ける農林漁業者が本制度の趣旨をよく理解していないことによるが、一方、国または都道府県が融資金額のわくを決定するにあたり経由団体等の財政状況、地域的資金需要の大小や被害程度の調査が十分でなかったことと、その後の融資実行状況の監督に欠けるところがあったことなどによるものと認められ、その取扱に特段の配慮が望ましい。

 いま、検査の結果判明した不当経理のうち、国庫利子補給済額が1団体当り20万円以上のものをあげると別表第5のとおり、北海道ほか12府県の40団体で融資額142,010,455円国庫利子補給済額14,229,616円に上っているが、これらのうち代表的な事例をあげると次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第5に掲記した番号を示す。)。

(営農資金の全部または一部を被害農家に貸し付けないで融資機関が運用し営農資金の目的を達していないもの)

〔1〕 北海道上磯郡木古内町農業協同組合で、28年冷害被害農家営農資金4,845,000円(国庫利子補給済額555,926円)を北海道信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全額を同連合会に預け入れたままで被害農家に貸し付けていない。
 また、同組合では、29年冷害被害農家営農資金6,500,000円(国庫利子補給済額362,183円)についても、被害農家に貸し付けないで貯金に留保していたものが3,202,500円、災害に関係のない旧債権の回収に充てたものが584,500円計3,787,000円(国庫利子補給済額144,014円)ある。(820)

〔2〕 青森県東津軽郡今別町農業協同組合で、28年冷害被害農家営農資金3,460,000円(国庫利子補給済額440,802円)を青森県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全く貸し付けていない。(830)

〔3〕 群馬県勢多郡北橘村北橘農業協同組合で、28年冷害被害農家営農資金4,070,000円(国庫利子補給済額415,421円)を群馬県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全額を組合の定期貯金とさせ、被害農家に貸し付けていない。(833)

(営農資金を災害に関係のない旧債権の回収に充てているもの)

〔1〕 北海道天塩郡遠別町遠別漁業協同組合で、29年北海道東南海域暴風雨漁業災害復旧資金8,500,000円(国庫利子補給済額425,060円)を農林中央金庫から借り入れ、被害漁業者に貸し付けたこととしているが、実際は右資金のうち災害に関係のない旧債権の回収に充てたものが3,779,627円、組合に対する出資金、賦課金に充てたものが1,482,202円、組合に留保していたものが300,116円計5,561,945円(国庫利子補給済額278,134円)ある。(823)

〔2〕 愛媛県北宇和郡吉田町奥南漁業協同組合で、28年風水害被害漁業者経営資金3,000,000円(国庫利子補給済額359,507円)を農林中央金庫から借り入れ、被害漁業者に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全額を災害に関係のない旧債権の回収に充てていた。(853)

(営農資金を貯金に預け入れたまま使用していないもの)

〔1〕 群馬県前橋市木瀬農業協同組合で、28年冷害被害農家営農資金4,971,900円(国庫利子補給済額541,211円)を群馬県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付け目的どおり使用させたこととしているが、実際は被害農家は2,332,348を使用しただけで、残額2,639,552円(国庫利子補給済額244,328円)を貯金に預け入れ、うち1,666,311円を償還に充てた以外は全く使用していない。(832)

〔2〕 静岡県小笠郡小笠町南山農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金7,220,000円(国庫利子補給済額849,263円)を静岡県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付け目的どおり使用させたこととしているが、実際は被害農家は4,744,099円を使用しただけで、残額2,475,901円(国庫利子補給済額212,060円)を償還準備貯金に預け入れ、うち2,107,588円を償還に充てた以外は全く使用していない。(843)

(営農資金を融資の目的に反して使用しているもの)

〔1〕 山梨県南巨摩郡南部町睦合農業協同組合で、28年冷害被害農家営農資金3,214,000円(国庫利子補給済額360,280円)を山梨県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際はうち3,200,000円を南部町陸合中学校建築のための町債の引受に使用しており、残額14,000円は貸し付けていない。(838)

〔2〕 岐阜県養老郡上石津村多良農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金2,200,000円(国庫利子補給済額279,954円)、また、同村牧田農業協同組合で同資金1,700,000円(国庫利子補給済額227,306円)を岐阜県信用農業協同組合連合会から借り入れ、それぞれ被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は両組合とも全額を一括して上石津村または村内8部落に貸し付け河川または農業用施設の災害復旧工事費の一部に使用させていた。
 また、前記2組合では、28年冷害被害農家経営資金1,000,000円(国庫利子補給済額114、723円)および700,000円(国庫利子補給済額80,305円)についても前記同様、上石津村または村内4部落に貸し付けていた。(841、842)

〔3〕 静岡県浜名郡湖西町白須賀農業協同組合で、28年風水害被害農家営農資金2,110,000円(国庫利子補給済額298,648円)を静岡県信用農業協同組合連合会から借り入れ、被害農家に経営資金として貸し付けたこととしているが、実際は全額を25部農会ごとに一括して貸し付けており、右部農会では334,000円を組合の償還準備貯金に預け入れたまま使用せず、44,000円を定期貯金とし、1,732,000円を水道建設工事費、共同浴場設備費、沢あん作業場の土地購入費等部落の共通経費に使用していた。(845)

(2) 有畜農家創設資金に対する利子補給金

(856)  有畜農家創設資金に対する利子補給金は、有畜農家創設特別措置法(昭和28年法律第260号)に基いて乳牛、役肉用牛、馬およびめん羊を新規に導入する農家に対し、その導入に要する資金を農業協同組合をして貸し出させ、国が導入農家等に対し利子の一部を補給して農家の家畜導入を容易にしようとするもので、本制度が発足した昭和27年度以降の融資額を累計すれば7,404,535,000円、これに対する国庫利子補給済額は938,097,819円(うち31年度分236,816,699円)に上っている。

 右融資金は、農業協同組合が農家に対し組合系統資金を貸し付けて家畜を導入させるために要する資金であって、購入価格の7割を限度として利率年1割2分5厘以内で貸し付け、1年すえ置の後、3年から5年までの年賦で償還させる取扱となっているものであるが、北海道ほか27府県の414組合の融資総額482,268,043円、これに対する国庫利子補給済額58,340,474円について検査したところ、融資金を家畜を導入した農家に貸し付けたこととして利子補給の対象としていながら、実際は農家が家畜を導入せず組合でも資金の貸付の全部または一部を行なっていないものが29組合で融資額6,109,797円国庫利子補給済額613,645円、貸付後農家が導入家畜を売却したまま代畜を導入していないのに依然として利子補給金を交付していたり、規定の利率を上回る利息で貸し付けたり、または規定の融資限度をこえて貸付を行なっているなど貸付方法が不当と認められるものが60組合で融資額8,662,743円国庫利子補給済額956,744円、利子補給金を農家に配分しないで組合で保有していたり、対象外の農家を含めて配分するなど利子補給金を目的どおり交付していないものが45組合で国庫利子補給済額1,768,197円あり、これを合計すると北海道ほか25府県(注) の128組合で134件、その融資額14,772,540円国庫利子補給済額3,338,568円に上っている状況である。

 このような結果をきたしたのは、組合および農家が本制度の趣旨をよく理解していないことによるが、一方、都道府県等が有畜農家創設計画を実施するにあたり、家畜導入の緊要度および資金需要に対する調査が十分でなかったことと、導入家畜の移動状況等実情は握についての指導に欠けるところがあったことなどによるものと認められる。

 いま、前記のように不当と認められた事項のうち、おもな事例をあげると次のとおりである。

〔1〕 山梨県東八代郡八代町八代農業協同組合で、27、28、30各年度に有畜農家創設資金3,192,000円を農林中央金庫から借り入れ、乳牛34頭、役肉用牛38頭、めん羊24頭を導入した農家に貸し付け、これに対する国庫利子補給金348、303円の交付を受け導入農家に交付したこととしているが、実際はうち63,996円を交付しただけで、残額284,307円は組合の収益としていた。(目的外使用)

〔2〕 広島県安佐郡安佐町小河内農業協同組合で、28年度に有畜農家創設資金210,000円をめん羊40頭を導入した農家に貸し付けたこととして、国庫利子補給金26,559円の交付を受けているが、実際は導入および貸付の事実がない。(不貸付)

〔3〕 鹿児島県薩摩郡高城村高城農業協同組合で、27、30両年度に有畜農家創設資金409,600円を農林中央金庫等から借り入れ、役肉用牛22頭を導入した農家に貸し付け、これに対する国庫利子補給金42,385円の交付を受けているが、実際は貸付にあたり規定の利率を上回る年1割4分6厘で貸し付けていた。(不当貸付)

(注)  北海道、岩手、宮城、秋田、山形、福島、群馬、新潟、富山、福井、山梨、岐阜、愛知、三重各県、京都府、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、鹿児島各県