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  • 昭和31年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項

日本国有鉄道


第2 日本国有鉄道

(事業損益について)

 日本国有鉄道の昭和31年度決算についてみると、営業損益は161億7千8百余万円の損失、営業外損益は8億7千4百余万円の利益で、153億3百余万円が当期純損失となっている。
 これを前年度の営業損失184億3千7百余万円、純損失183億4千9百余万円に比べると、営業損益において22億5千9百余万円、純損益において30億4千6百余万円がそれぞれ損失減少となっている。この原因は、前年度に比べ輸送量において旅客7.5%、貨物10.2%が増加し、営業収入においても旅客9.3%、貨物9.8%が増加したなどのため249億5百余万円の収入増加となったが、一方、営業経費において人件費、業務費等の支出増加が226億4千6百余万円にとどまったことによるものである。

(工事について)

 昭和31年度の修繕費および工事経費の決算額は、修繕費542億5千5百余万円、工事経費586億9千8百余万円総額1129億5千4百余万円であるが、前年の検査の結果にかんがみ、工事施行の実態、予定価格の積算等を主として検査を実施した結果、工事の施行が設計と相違しているもの、予定価格が過大でひいて工事費が高価となっていると認められるものなどが少なくない。
 また、古軌条を構造用等に使用する場合に、その部内整理価格が低廉であるなどの事情もあって、構造用鋼材を調達して使用する場合との経済比較を十分に行わなかったり、部内発生の石炭がらを盛土資料として使用する場合に、輸送費を含めた経済比較を十分に行わないで遠距離輸送をしたりし不経済となっているものがあり、また、工事の施行に伴う発生材や工事用資材として保有する古軌条について受払等の処理が適正を欠くと認められるものがあって、いずれも今後一層留意を要するものと認められる。
 つぎに、東京操機工事事務所は、現在工事局等工事施行箇所の任意な委託により工事を施行する建前となっていて、施行能力に対し受託量が不足している状況であるが、工事の実施部局として本工事事務所を設置している以上、計画的かつ効率的にこれを運営するよう改善をはかる要があるものと認められ、他方、工事局等の保有する本社運用工事用機械のか働も一般に良好とは認められないので、老朽機械等の整理もあわせ考慮し、計画的な運用によりか働率の向上をはかる要があるものと認められる。

(資材の調達管理および運用について)

 昭和31年度における貯蔵品の購入額は955億3千3百余万円、年度末貯蔵品残高は165億2千7百余万円で、前年度末の144億3千5百余万円に比べて20億9千2百余万円増加しており、その回転率を石炭および車両を除いた一般貯蔵品についてみると4.06となっていて30年度の4.03に比べわずかに向上を示している。
 本院においては、前年の検査の結果にかんがみ、資材の調達について購入規格の選定、予定価格の積算等を主として検査を実施した結果、購入規格が適切でないため不経済となっているもの、取引の実情や製作の実態の調査が十分でないなどのため予定価格が過大となりひいて購入価額が高価となっているものなどが認められるが、そのうちには、本院の検査結果に基きその後の契約分について価格の引下げ等改善をはかったものが少なくない。
 物品の購入規格についてみると、要求箇所はややもすれば使用効果等の見地から銘柄を指定して購入要求を行い、購入箇所は要求銘柄についてその経済性等を十分検討することなく購入する傾向があるなどの事情により不経済となっているものがあるが、使用効果および価格を総合考慮して適切な規格を選び、要求規格を明確にして広く競争入札等により経済購入をはかる配意が必要と認められる。
 また、現行購入品のうちには特許品、実用新案品等が少なくなく、これらについては大部分単に業者の見積価格を基準として予定価格を算定しているにすぎない結果、購入が製作価格等に比べて著しく高価となっているものがあるが、これら特許品等は大部分を日本国有鉄道が購入しているものであるから、製作の実態をよく調査するなどして妥当な価格で購入する配意が必要と認められる。

(固定財産の管理運用について)

 固定財産の管理運用については、前年に引き続き財産の部外使用料等を主として検査を実施したところ、構内営業料等財産の部外使用料がなお低廉と認められるもの、高架下について当局の使用承認を受けた者が承認条件に反して第三者に使用させているものなどが認められるが、適正料金の設定、使用関係の適正化等について、なお一層の努力が必要と認められる。
 また、現在、船舶の岸壁離接岸用として、補助汽船(えい船)23隻を室蘭ほか8港に配置しているが、配置が適切でなかったり、無償または低廉な料金で部外の用に供するなど運用が適切でないため不経済となっていると認められるものがあるので、検討、改善を要するものと認められる。

不当事項

予算経理

(1105) 予算総則に規定した職員の給与総額を超過して給与を支給しているもの

(損益勘定) (項)給与其他諸費 ほか1科目
(工事勘定) (項)総係費 ほか3科目

 日本国有鉄道で、昭和31年度において、昭和31年度政府関係機関予算総則に定めた日本国有鉄道の職員に対して支給する給与の総額を超過して給与を支出したものがある。
 右は、31年度において日本国有鉄道の職員に対して支給する給与の総額は1290億2千7百余万円で、これに対し支出決算額は1289億4千3百余万円となっていて8千3百余万円を不用額としているが、右決算額のほかに鉄道経費所属の職員が建設工事または改良工事の作業業務に従事した場合等に当該職員の右従事期間に相当する職員給、扶養手当、超過勤務手当等4億9百余万円を鉄道経費等の当該科目から建設費等の当該科目に振り替えないでその工事費に振り替えて支出しているものがあり、このため職員に対して支給する給与総額を3億2千6百余万円超過して支出した結果となっているものである。

工事 (1106)−(1114)

(1106)−(1110) 予定価格の積算が過大なためひいて工事費が高価となっているもの

(工事勘定) (項)電化設備費 ほか1科目
(損益勘定) (項)修繕費

 予定価格の積算にあたり、施行の実態や現地の実情等の調査が十分でないなどのため予定価格が過大となり、ひいて工事費が高価となっていると認められるものが少なくないが、そのおもな事例をあげると次のとおりである。

(架空送電線路鉄塔新設工事の積算が過大なため工事費が高価と認められるもの)

(1106)  日本国有鉄道東京電気工事局で、昭和31年10月、指名競争契約により日本電設工業株式会社に栗橋、久喜間架空送電線路鉄塔新設その1工事を総額13,420,518円(当初契約額11,680,000円)で請け負わせ、32年3月完成しているが、施行の実態についての調査が十分でなかったなどのため予定価格が過大となり、工事費が約390万円高価となっているものと認められる。
 右工事は、東北本線の電化に伴い施行する栗橋、久喜両変電所間の架空送電線路新設工事の一部で利根川の州に鉄塔1基を井筒型基礎によって新設するもので、その予定価格13,575,166円(設計変更分を含む。)の積算にあたり次のとおり過大と認められるものがある。

(ア) 井筒沈下工費の積算にあたり、井筒(径2.8メートル)掘りはガットメルを使用し、井筒沈下速度を1脚1日平均20センチメートル、1脚当り平均沈下深さを14.26メートルとして、この沈下に72日間を要するものとし、この間作業要員として1脚当り11.5人、4脚で総数3,312人を要するものとして掘さく労務費3,817,130円(一般経費を含む。以下同じ。)、荷重費1,588,232円(1脚当り100トン)、機械器具損料419,012円、その他305,481円計6,129,855円を積算しており、右積算によればメートル当り沈下工費は107,494円(立米当り9.43人、沈下工費17,463円)となるものであるが、他の工事局が30、31両年度に施行した同種工事の沈下工費積算は、径3.9メートルから6メートル、沈下10メートルの場合調査例中最も高い方のものをとってもメートル当り40,000円程度となっている。
 しかして、本件工事施行箇所は大部分粘土質で、前記積算例の施行箇所が大部分砂利層であること、本件井筒のメートル当りの掘さく数量が右積算例より少ないことなどからみて、本件工事は右積算例より有利な点が認められるが、沈下深さがより深いことを考慮し、仮にメートル当り45,000円程度として計算しても沈下工費は総額約257万円となり、本件積算額はこれに比べて約355万円過大となる計算である。

(イ) 工事用資材および器具等1,058トンを利根川新堤防から現場まで片道600メートルを人肩で運搬することとし、これに要する人工を1回の運搬重量30キログラム、この積込18分、取おろし12分、1時間の行動キロ数を3キロメートルとして1日9回総数3,916人1,478,099円(一般経費を含む。以下同じ。)と算定しているが、積込、取おろしはせいぜい5分程度で足りるものと認められ、1日の実働時間を7時間としても14回運搬することができることとなり、いま、仮にこれによって計算すれば所要人工は総数2,540人約96万円となり、積算額はこれに比べて約51万円過大となる計算である。
 右のほか、現場の踏荒し補償費を過大に積算したり、請負人持とした工事用材料をすべて小売価格によって積算するなど過大と認められるものが少なくないが、いま、仮に前記各項により工事費を再計算すれば総額約950万円となり、本件請負額はこれに比べて約390万円高価となる計算である。

(1107)  日本国有鉄道大阪電気工事局で、昭和32年1月、指名競争契約により日本電設工業株式会社に加古川架空送電線路新設その1工事を7,200,000円で請け負わせ施行しているが、現地の実情や施行の実態についての調査が十分でなかったなどのため予定価格が過大となり、工事費が約270万円高価となっていると認められる。
 右工事は、山陽本線の電化に伴い関西電力株式会社加古川変電所、日本国有鉄道加古川変電所間に送電線路鉄塔を井筒型基礎で1基、普通型基礎で11基計12基を新設するもので、その予定価格7,220,000円の積算にあたり次のとおり過大と認められるものがある。

(ア) 井筒沈下工費の積算にあたり、井筒(径2.3メートル)掘りはガットメルを使用し、井筒沈下速度を1脚1日平均20センチメートル、沈下深さを5.7メートルとして、この沈下に28.5日間を要するものとし、この作業要員として1脚当り11人、4脚で総数1,246人を要するものとして掘さく労務費1,009,522円(一般経費を含む。以下同じ。)、荷重費250,302円、機械器具損料1,146,919円、その他148,350円計2,555,093円を積算しているが、地表面から1.4メートルは素掘りで施行することとして別途積算しているのであるから4.3メートルについて沈下工費を計算するのが相当と認められ、また、前記積算によれば実沈下深さ4.3メートルについてメートル当り沈下工費は148,552円(立米当り17.45人、沈下工費35,796円)の計算となるが、他の工事局が30、31両年度に施行した同種工事の積算は径3.9メートルから6メートル、沈下6メートルの場合調査例中最も高い方のものをとってもメートル当り32,000円程度となっている。
 しかして、本件井筒の沈下工費は、沈下深さが右積算例より浅いこと(4.3メートル)およびメートル当りの掘さく数量が少ないことからみてより有利な点が認められるが、仮にメートル当り32,000円程度として計算しても総額約55万円となり、本件積算額はこれに比べて約200万円過大となる計算である。

(イ) 工事用資材および器具等重量389.69トンを加古川堤防の下から現場まで片道150メートル間を人肩で運搬することとしてこれに要する人夫974人456,479円(一般経費を含む。以下同じ。)を積算しているが、会計実地検査の際の調査によると、現場までトラック輸送が可能であり、実際もトラックで直接搬入している状況であって、右小運搬費は積算の要がなかったものと認められる。
 また、普通型基礎鉄塔11基の新設に要する工事用資材および器具等重量367トンの小運搬はすべて人肩によることとし、それに要する人工を1回の運搬重量30キログラム、この積込18分、取おろし12分、1時間の行動キロ数を3キロメートだとして1人1日平均約14回総数900人421,534円と算定しているが、積込、取おろしはせいぜい5分程度で足りると認められ、1日実働時間を7時間としても平均約40回運搬することができることとなり、いま、仮にこれにより計算すれば所要人工は総数305人142,910円となり、積算額はこれに比べて約27万円過大となる計算である。
 右のほか、トラック運賃を高価に計算したり、請負人持とした材料費を大部分小売価格によって積算するなど過大と認められるものが少なくないが、いま、仮に前記各項により工事費を再計算すれば総額約448万円となり、本件請負額はこれに比べて約270万円高価となる計算である。

(運搬費等を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの)

(1108)  日本国有鉄道大阪電気工事事務所で、昭和31年4月から8月までの間に、指名競争契約により日本電設工業株式会社に横大路、山科間架空送電線路新設その2工事を22,625,700円(当初契約額22,750,000円)で請け負わせ施行しているが、運搬費の積算が適切を欠いたなどのため予定価格が過大となり、工事費が約400万円高価となっているものと認められる。
 右工事は、東海道本線の電化に伴い関西電力株式会社横大路変電所から電力の供給を受けるため同変電所と日本国有鉄道山科変電所間亘長約12.5キロメートルに架空送電線および鉄塔59基を新設するもので、予定価格とほぼ同額で請け負わせたものであるが、予定価格中労務費計17,399,225円(一般経費を含む。)の積算にあたり次のとおり過大と認められるものがある。

(ア) 鉄塔基礎に使用するセメント骨材その他重量約2551トンをトラックの取おろし場所から建設現場まで平均距離254メートル人肩により運搬するものとして、トン当り2.8人計7,143人4,516,343円(一般経費を含む。以下同じ。)を積算しているが、1回の運搬所要時分を15分とみても1日28回で1,260キログラム(トン当り約0.8人)は運搬することができるものと認められ、右程度の距離の場合の人肩運搬歩掛りが一般にトン当り0.7人程度となっていることからみても本件積算は著しく過大で、仮にトン当り0.8人として計算しても総数で2,041人1,290,353円となる計算である。

(イ) 飯場から工事現場までの往復所要時間に対する損失として、全労務者について賃金額の5%相当額の作業地点割増を計算し計833,378円(一般経費を含む。)を積算しているが、当局の算定によっても右距離は片道平均1キロメートル程度で、その所要時分は片道15分程度にすぎないものと認められ、本社電気局の積算基準において作業地点割増は作業地点の関係上実働時間が著しく減少する場合に限り適用することとなっていることからみても、本件の場合とくに積算する要はないものと認められる。
 右のほか積算総人工延約2万4700人について、一律に一般職種別賃金京都甲地区各職種の最高額を適用し労務費を計算しているなど過大な積算と認められるものがあるが、いま、仮に前記各項により工事費を再計算すれば総額約1857万円となり、本件請負額はこれに比べて約400万円高価となる計算である。

(溶接ボンドの取付工事費が高価と認められるもの)

(1109)  日本国有鉄道大阪電気工事局ほか3箇所(注) で、昭和31年4月から32年6月までの間に、指名競争契約により日本電設工業株式会社ほか6会社に彦根、安土間帰線ボンド新設その他工事ほか33工事を32,121,276円(当初請負額32,495,256円)で請け負わせ施行しているが、作業の実情についての調査が十分でなかったなどのため予定価格が過大となり、工事費が約450万円高価となっていると認められる。
 右工事は、盗難防止のため既設のレールボンドを溶接ボンドに取り替え、または電化に伴う帰線路新設等のため溶接ボンドの取付を主体とする工事で、溶接ボンドの取付は取付箇所を研磨のうえ酸素アセチレンガスにより特殊ろうを使用し施行するもので、各工事とも予定価格とほぼ同額で請け負わせたものであるが、この予定価格の積算にあたり50キログラムレール用35,280本、37キログラムレール用3,612本計38、892本の取付費用をそれぞれ1本当り634円から756円90,554円から695円20(いずれも溶接ボンド支給)とし総額26,306,170円と積算しているものであるが、材料費および労務費の算定にあたり次のとおり過大と認められるものがある。

(ア) 東京鉄道管理局および東京電気工事局においては、主材料である溶接ろうの所要量についてその製造者である信号器材株式会社の30年11月発行の資料を参考とするなどし、50キログラムレール用110グラムから120グラム、269円から315円60、37キログラムレール用93グラムから93.6グラム、228円から229円32と算定し総額6,338,539円と積算しているが、同会社が鉄道関係職員の実習等にあたり使用している資料によれば、黄銅端子の場合所定の設計強度を確保するに必要なろうの量は50キログラムレール用100グラム、37キログラムレール用85グラム程度となっており、また、会計実地検査の際の調査および施行者の実績例によってもこれと同程度となっていて、本件積算は過大なものと認められる。

(イ) 取付労務費については、各局とも明確な算定基礎がないまま1本当り所要人工を0.27人から0.32人とし総額7,470,975円と積算しているが、信号器材株式会社の前記資料によれば、本件作業の実際所要時間は2人1組として1本当り研磨2分から3分、加熱溶接9.5分程度となっていて、本院において実作業について調査した結果によっても1本当り20分(研磨、加熱溶接および水洗塗装作業)、0.095人(実作業時間7時間)程度で、これに作業地点の移動時間に対する換算人工、監督、見張等の所要人工計0.071人および抵抗測定の所要人工0.014人を加算すれば0.18人程度となり、本院においてこの種工事の施行実績を調査した結果によっても0.141人から0.147人程度であって本件積算は過大と認められる。
 右のほか、運転ひん度割増等において過大と認められるものがあるが、いま、仮に1本当り溶接ろうの所要量については50キログラムレール用100グラム、37キログラムレール用85グラム、取付所要人工については天候条件等を考慮して0.2人とし、本件工事費を再計算すれば総額約2755万円となり、本件請負額はこれに比べて約450万円高価となる計算である。

(注)  東京、大阪両鉄道管理局、東京、大阪両電気工事局

(路盤工の工事費が高価と認められるもの)

(1110)  日本国有鉄道新橋工事局で、昭和32年1月から3月までの間に、随意契約により成和土木株式会社に白棚線白河磐城棚倉間路盤工その他その2工事を23,055,235円(当初契約額19,449,700円)で請け負わせ施行しているが、路盤工用切込砂利の採取地の選定が適切を欠いたため予定価格が過大となり、工事費が約470万円高価となっていると認められる。

 右工事は、旧白棚線路盤を自動車専用道路にするため延長11.59キロメートルにわたり切込砂利を搬入し転圧する路盤工を主体とする工事であって、予定価格の積算にあたり、当初切込砂利は14,020立米とし、その全量を阿武隈川筋の双石から採取するものとして平均運搬距離17.1キロメートル、立米当り806円(うち60円は福島県への納付金)総額14,125,000円(一般経費を含む。)と積算し、その他工事費を合わせ予定価格を19,490,000円と算定したが、その後工事の施行に伴い砂利の数量を18,265立米とし、その増加分4,245立米については黄金川筋から採取するものとして平均運搬距離6キロメートル、立米当り単価を637円と算定し、この工事費を増額するなどして、結局、23,055,235円で完成したものである。しかしながら、本件路盤工事は所要切込砂利が大量で工事費への影響が大きく、また、工事の施行現場が延長11.59キロメートルの長距離であることなどからみて、施行現場も寄りに砂利採取地を選定する配意が必要であったと認められるもので、現場付近の久慈川、黄金川(ともに県管理河川)についてみると、久慈川は採取運搬等の諸条件は双石と同様であり、また、黄金川は狭小ではあるが施行現場に最も近く、運搬条件が著しく有利となるものであるから、両河川についても砂利の採取を考慮するのが相当であったと認められる。

 いま、仮に運搬距離等を考慮して、施行延長11.5キロメートル区間のうち、白河方起点から3.5キロメートル間は双石、棚倉方起点から3.5キロメートル間は久慈川、中間は黄金川から採取して施行することとすれば、砂利の現場到着平均価格は立米当り515円(双石577円、久慈川637円、黄金川403円)程度で、当初契約数量14,020立米分約903万円(一般経費を含む。以下同じ。)、設計変更により増加した4,245立米分約274万円、施行総量18,265立米で約1177万円となり、その他工事費を合わせ総額約1833万円となるものであって、本件請負額はこれに比べて約470万円高価となる計算である。
 なお、本件工事の請負人は切込砂利の過半を黄金川筋から採取している。

(1111)−(1114) 工事の施行が設計と相違するもの

 日本国有鉄道各鉄道管理局等が施行した工事の実施状況をみると、鉄塔、電柱、信号鉄管等の基礎を設計と相違して施行したもの、電柱等の根入れが浅いものなど工事の出来形が設計と相違しているものがとくに電気関係土木工事において少なくなく、そのおもな事例をあげると次のとおりであるが、このような事態が多数発生しているおもな原因は、日本国有鉄道における工事の監督、検収に関する内部規定が整備されていないこと、施行にあたって関係者が指導監督を適切に行わず、検収が適正に行われないこと、任意に設計と異なる施行を指示し、または容認したことなどによるものと認められる。

(電柱の根固めコンクリートの施行が設計と相違しているもの)

(1111)  日本国有鉄道大阪鉄道管理局で、昭和31年5月、公開競争契約により日本電設工業株式会社に1,428,000円で請け負わせ施行した生瀬、武田尾間通信電柱建替工事は6月設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、根固めコンクリートの施行が設計と相違していて、設計に比べ電柱の強度が低下していると認められる。
 右工事は、老朽通信用木柱24本をコンクリート柱またはクレオソート注入木柱に取り替える工事で、契約図面によると岩盤箇所に建植する電柱18本は柱長に関係なく、その根入れを通常の場合より浅い80センチメートルとし、根固めとして電柱下部135センチメートル間をコンクリートで巻き固めることとなっているが、実際は14センチメートルから73センチメートル、平均43センチメートル程度を巻き固めているにすぎないなど施行が設計と相違していて、設計に比べ電柱の強度が低下していると認められた。
 右に対し、当局は請負人の負担において工事費約38万円で手直しを行なった旨の報告があった。

(電車線路電柱の土留の施行が設計と相違しているもの)

(1112)  日本国有鉄道仙台鉄道管理局で、昭和31年7月、指名競争契約により日本電設工業株式会社に1,010,000円で請け負わせ施行した庭坂、関根間電車線路電柱土留取替工事は9月設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、土留の施行が設計と相違していて、設計に比べ電柱土留の強度が低下していると認められる。

 右工事は、既設の電車線路電柱の土留50箇所を取り替える工事で、契約図面によると土留のく体コンクリートは、土留1基について基礎ぐい3本をく体正面の中央に並列して打ち込み、く体は高さ2メートルで天端から下方150センチメートル間は15センチメートルのこう配を付し、それより下部は底部まで50センチメートルを垂直に施行することとなっているのに、く体天端から底部まで設計より急な3センチメートルから14センチメートルのこう配で施行したり、高さが不足したりしく体が設計より小さくなっているものが半数程度あるほか、く体側面がひずんでいて出来形が粗雑なもの、基礎ぐいの打込位置が不整でく体の外側に露出しているものがあるなど施行が設計と相違していて、設計に比べ電柱土留の強度も低下していると認められた。
 右に対し、当局は請負人の負担において工事費約22万円で補強を行なった旨の報告があった。

(照明用鉄塔の基礎コンクリートの根入れが設計と相違しているもの)

(1113)  日本国有鉄道札幌鉄道管理局で、昭和31年7月、公開競争契約により新生電業株式会社に2,540,000円で請け負わせ施行した岩見沢駅構内改良電気設備その9工事は9月設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、鉄塔基礎コンクリートの根入れが不足していて、設計に比べ鉄塔の強度が低下していると認められる。

 右工事は、岩見沢駅構内に照明用鉄塔高さ31.5メートルのもの2基、25メートルのもの1基を新設する工事で、契約図面によると、基礎コンクリートの根入れはいずれも地表面から3.7メートル施行することとなっているのに、実際施行された基礎コンクリートの根入れは、31.5メートル鉄塔1号柱は3.23メートル、同2号柱は1.75メートル、25メートル鉄塔3号柱は3.25メートル程度で、設計に比べて0.45メートルから1.95メートル浅く、根入れ不足の根固めとして1号柱約35立米、2号柱約104立米、3号柱約18立米程度の盛土を施行しているものでいずれも施行が設計と相違していて、設計に比べ鉄塔の強度が低下しているものと認められた。

 また、鉄塔基礎に長さ6メートルの基礎ぐいを1基当り52本(1号柱および2号柱)または36本(3号柱)施行しており、くいの長さを6メートルと決定したのは、地表下8メートルから9メートルまではでい炭層で土壌の耐圧力がなく、8メートルから9メートルの位置に1メートルから2メートルの粘土層があるのでこの層にくいを打ち込み支持力を持たせることとして設計したものであるが、施行された基礎コンクリートは設計に比べて根入れが浅いので、基礎ぐいは設計どおり粘土層に打ち込まれていないこととなるものと認められる。
 右に対し、当局は請負人の負担において工事費約20万円で鉄塔の脚部に盛土230立米を施行し補強を行なった旨の報告があった。

(のり面防護工事の施行が設計と相違するもの)

(1114)  日本国有鉄道札幌工事事務所で、昭和31年5月から8月までの間に、公開競争契約により鉄道建設興業株式会社ほか1会社に総額27,761,787円で請け負わせ施行した遠羽線(勢滝内、初山別自14キロ300メートル至21キロ480メートル間)法面防護その他工事ほか3件の同種工事は、いずれも12月までに設計どおりしゅん功したとして検収を了しているが、編さく工の編さく高等の施行が設計と相違していて、設計に比べのり面防護の効果が低下しているものと認められる。

 右工事は、融雪等により一部くずれた既設路盤ののり面を修復するとともにのり面防護の目的で編さくを設置する工事で、設計および示方書によると編さく高は30センチメートルとなっているのに、会計実地検査の際各工事について抽出調査したところ、さく高20センチメートル以下のものが調査数の13%から53%程度あるほか、くいの長さ等が不足しているものがあり、編さくにすき間も多くさく高だけについてみても約89万円相当額が出来高不足となっており、設計に比べのり面防護の効果が低下しているものと認められた。

物件 (1115)−(1120)

(1115)−(1116) 予定価格の積算が過大なためひいて購入価額が高価となっているもの

 予定価格の積算にあたり製作の実態や取引の実情等の調査が十分でないなどのため、予定価格が過大となりひいて購入価額が高価となっていると認められるものが少なくないが、そのおもな事例をあげると次のとおりである。

(レール絶縁金物の購入価額が高価と認められるもの)

(1115)  日本国有鉄道資材局で、昭和31年3月から32年3月までの間に、公開競争契約により信号器材株式会社からレール絶縁金物L型鈑計6,384個、継目板計6,840個を単独にまたはP・L・F絶縁物等と組み合わせ、総額59,259,385円(うちL型鈑34,269,026円、継目板9,278,047円、P・L・F絶縁物等15,712,312円)で購入しているが、製作の実情についての調査が十分でなかったなどのため予定価格が過大となり、購入価額が約510万円高価となっているものと認められる。

 本件購入品のうちL型鈑、継目板は、レールの電気絶縁作用をなすP・L・F絶縁物と組み合わせてレールに取り付けるもので、購入数量の大部分については前記会社の特許品であるP・L・F絶縁物と組み合わせて購入する扱とし、同会社の古い見積価格を参考として予定価格を算定しこれとほぼ同額のL型鈑4,295円(37キログラムレール用)から7,220円(50キログラムレール用)、継目板1,080円(37キログラムレール用)から1,855円(50キログラムレール用)で購入したものであるが、本件L型鈑および継目板は同会社に製造設備がないため従来から全面的に下請させている状況からして、本院において製作業者の価格等を調査したところ、持込運賃、荷造検査費を考慮した場合継目板については右購入価格と大差ない価格となるが、L型鈑の使用軌条ごとの規格による平均価格は3,869円から4,803円程度で、本件平均購入価格5,013円から6,365円に比べて相当低価となっている。

 このような結果となったのは、本件絶縁金物が従来から前記会社以外の業者により製作されているものであるのに、製作の実情について調査するなどのこともなく予定価格を算定し、特許品と組み合わせて購入する扱とするなど価格の算定および購入に関する処置が適切を欠いたことによるものと認められる。
 いま、仮に製作の実情に即した価格で購入したとすれば、持込運賃等を考慮してもL型鈑は総額約2910万円となり、L型鈑の購入価額34,269,026円はこれに比べて約510万円高価となる計算である。

(車両用保温帯の購入価額が高価と認められるもの)

(1116)  日本国有鉄道北海道ほか6地方資材部(注) で、昭和31年2月から32年3月までの間に、公開競争契約または随意契約により三好石綿工業株式会社ほか3名から三好式車両用保温帯厚さ1.6ミリメートル、幅50ミリメートルものほか9点計188,614メートルを単価52円から190円総額18,248,870円で購入しているが、製作の実情についての調査が十分でなかったなどのため予定価格が過大となり、購入価額が約320万円高価となっているものと認められる。

 右は、蒸気機関車の配管路の保温に使用するもので、その購入にあたっては三好石綿工業株式会社の見積価格等を参考としてそれぞれ予定価格を算定し、いずれも予定価格とほぼ同額で購入しているもので、各箇所の購入価格は各寸法ともほぼ同程度の価格となっているものであるが、その予定価格の積算についてみると、主材料である石綿リボンの価格が各購入分とも実情にそわない過大なものとなっている。すなわち、一例を前記各箇所のうち一般に低い価格で購入している中部地方資材部が6月に購入した厚さ1.6ミリメートル、幅50ミリメートルものの石綿リボンの価格メートル当り52円(原価計算を実施している各箇所の積算価格はいずれも52円)の積算についてみると、リボンのメートル当り石綿糸の材料所要量を84.33グラムとし、石綿原料は全量を長繊維で高価な3K品を使用することとして原料費20円72、工賃等22円23、一般管理費および利益9円05と算定しているが、右石綿糸の材料所要量は製品重量が約66グラムにすぎず、この種製品の原料歩留りからみて著しく過大と認められ、また、石綿原料はこの種製品には3R、3T等の低価品を併用するのが通常と認められるのに、全量を高価な3Kを使用することとしているなど実情にそわない過大な積算となっており、本件リボンと同等品の大口取引価格が本件購入期間を通じてメートル当り33円程度となっていることからみても、前記積算価格は著しく高価に当り、他寸法のものについても同様相当高価と認められる。
 いま、仮に石綿リボンの価格については前記取引価格により、その他については当局の積算をそのまま採用して各寸法別の単価を算定し、購入総数量について計算すると総額約1500万円となり、本件購入価額はこれに比べて約320万円高価となる計算である。

(注)  北海道、東北、関東、中部、関西、広島、九州各地方資材部

(1117)−(1118) 資材の調達にあたり購入規格の選定が適切でないため不経済となっているもの

 資材の調達にあたり購入規格の選定が適切でないため、不経済となっていると認められるものが次のとおりあるが、資材の購入要求部門における経済性の配意がとくに必要であると認められる。

(殺虫剤の購入規格が適切でないため不経済となっていると認められるもの)

(1117)  日本国有鉄道資材局で、昭和31年3月から32年3月までの間に、公開競争契約または随意契約により信興産業株式会社から7回にわたり殺虫剤フヂサイド5ガロンかん入り669かん(1かん当り8,890円から9,160円)および500グラムびん入り41,725びん(1びん当り243円から250円)を総額16,272,215円で購入しているが、著しく高価な特定品を指定して購入したため約800万円が不経済となっているものと認められる。

 右フヂサイドは、駅舎の殺虫消毒用として使用するもので、厚生局において29年度にこの種薬品についての総合比較試験を実施した結果多数応募薬品のうちからとくに採用され、銘柄指定により前記会社が提出した見積価格とほぼ同額で購入したものであるが、本品採用の経緯をみると、総合比較試験の結果駅舎散布用剤としてはフヂサイドのほかガンマー乳剤、強力ネオヂクロン等が同等品として選ばれたが、強カネオヂクロンについてはベンゾール等の含有量が多く毒性が強いため取扱上不適当であること、ガンマー乳剤については30年9月仕様書の試験規格を作成するため試験品を再提出させたところ、総合比較試験の際提出した試験品と処方、性能が異なっていたことを理由としてそれぞれ排除し、結局、フヂサイドだけを採用したものである。

 しかしながら、当局で行なった総合比較試験の毒性試験数値によれば、強カネオヂクロンはフヂサイドに比べてむしろ毒性が少ないものとされており、また、ガンマー乳剤については試験品の再提出も容易であったと認められるもので、当局がとくにフヂサイドだけを採用した理由は認め難いところであって、総合比較試験の結果からみて少なくともこれらの薬剤をも採用して競争入札を行うなど経済的な購入をはかる処置が必要であったと認められる。
 いま、仮に本件購入にあたり前記総合比較試験において同等と認められた右薬剤等をもあわせ採用したとすれば、その稀釈倍数を考慮した価格がフヂサイドのほぼ半額程度であることからして、購入価額において約800万円低額となる計算である。
 また、本院において本件納入現品の一部についてその成分等を調査したところ、その含有水分は、前記会社が総合比較試験に試供した現品に添付されている成分表によれば5%程度となっているのに対し18%程度であり、その他の薬品成分も相違しているものと認められた。

(分岐器用タイプレートの購入規格が適切でないため不経済となっていると認められるもの)

(1118)  日本国有鉄道北海道地方資材部ほか5箇所(注) で、昭和31年3月から32年3月までの間に、公開競争契約により大和工業株式会社ほか5会社から分岐器用タイプレート(削成製品)14,497枚を総額16,854,938円で購入しているが、高価な削成製品を指定して購入したため約470万円が不経済となっているものと認められる。

 右分岐器用タイプレートは、分岐器の移動防止および衝撃緩和等のためレール分岐箇所に敷設するもので、鍛造製品および削成製品の2種類があっていずれも同一用途に使用されるものであるが、前記購入箇所においては、使用箇所から削成製品の購入要求があったことなどを理由として削成製品を1個当り660円から1,700円程度で購入したものである。
 しかし、削成製品と鍛造製品は使用上優劣がないとされているのであるから、この購入にあたっては両者の価格を検討し経済的な購入をはかる配意が必要であったと認められるもので、前記購入箇所以外の関東地方資材部等がおおむね同時期に鍛造製品を1個当り612円から1,050円程度で購入していることからみて、前記購入箇所においでも低価な鍛造製品を購入するのが適当であったと認められる。
 いま、仮に削成製品に代えて鍛造製品を購入することとし、関東地方資材部等が購入した鍛造製品の単価で計算すれば購入総額は約1210万円となり、約470万円が低額となる計算である。

(注)  北海道、東北、新潟、九州各地方資材部、関東地方資材部水戸資材事務所、中部地方資材部静岡資材事務所

(1119)  古ボイラーを解体切断したため不経済となっていると認められるもの

 日本国有鉄道鷹取工場で、昭和31年度中、機関車ボイラーの取替工事により発生した古ボイラー23基を解体切断し鋼くずとしたため、売渡価額が著しく低廉となり、有姿のまま売り渡した場合に比べ少なくとも約340万円が不経済となっていると認められる。

 右は、C−59ほか4形式の機関車ボイラーの取替により発生した古ボイラーを発生のつど逐次解体切断し普通鋼くずとしたもので、右鋼くずは別途資材局でトン当り最高29,000円で売り渡されているものであるが、古ボイラーは伸鉄材として利用することができる部分が多いためこれを切断して鋼くずとすることなく売り渡すのが著しく有利と認められるもので、現に、同年度中同種工事により各工場で発生した同種の古ボイラーは、一般に有姿のまま各地方資材部に引き継がれ、関東、関西両地方資材部においてはトン当り44,000円から50,000円程度で売り渡されている状況であって、鷹取工場が任意に解体切断したのは妥当な処置とは認められない。

 同工場が解体切断したのは構内置場が狭あいでその収容が困難であったことを理由としているが、取替工事の施行状況からみて古ボイラーの発生は各月1基から5基程度にすぎず、くず鉄置場の収容状況等からみてとくに収容が困難であったとは認め難い。
 いま、仮に本件ボイラー23基(約313トン)を切断して鋼くずとすることなく売り渡したとすれば、解体切断費が不用となるばかりでなく関西地方資材部等の売渡例からみて少なくともトン当り11,000円総量約340万円有利に処分することができたものと認められる。

(1120) 高架下使用料の料金決定が適正でないもの

(損益勘定)  (項)雑収入

 日本国有鉄道東京鉄道管理局で、昭和31年度中、鉄道弘済会ほか274名に29年度以降使用承認中の高架下48,483平米(ただし、31年度は48,006平米)の使用料について、29、30両年度分使用料額合計90,293,981円(うち29年度分45,213,605円、30年度分45,080,376円)を既往にさかのぼり17,915,298円(うち29年度分9,113,930円、30年度分8,801,368円)減額処理し、また、31年度分については減額後の30年度分使用料額と同額とし36,038,976円と決定しているが、料金決定の処置が適正を欠いたため約2600万円が低額となっていると認められる。

 土地、建物等の使用料額については、従来著しく低廉であった事情から、29年度に従来の料金を当局が時価相当と認めた料金に改定したが、その際改定料金額が従来の料金額に比べて著しい値上りとなるものについては緩和処置を講ずることとして、31年度において前記改定料金額に達するよう漸増する扱として29年度分実施料金を定め、また、30年度分については、当初予定の漸増料金によることなく29年度分実施料金にすえ置いたため、緩和処置を講じたものの両年度分使用料額はいずれも当時の改定料金に比べて著しく低廉に決定されていたものであるが(昭和30年度決算検査報告(2168)参照) 、東京鉄道管理局においては、右緩和処置によるものを含めた実施料金について、なお一部に値上りが著しいことなどを理由とする値下げ陳情、納入拒否等の抵抗があったので東京地方土地建物等評価委員会にこの取扱等について諮問したところ、継続使用者についてはある程度の補正による軽減処置を講ずることが社会慣行にも合致し国鉄の収入確保上も適当である旨の答申があったので、27年度以前から31年11月まで引続き同一名義人に使用承認している346件使用名義人鉄道弘済会ほか274名(うち料金について緩和処置を受けていたもの146件その使用料年額約2700万円)の使用料について29年度に設定した改定料金額からその3割相当額を減額した額(ただし、右による減額の結果が28年度分料金額の3割増相当額以下となるものについては28年度分料金額の3割増相当額)を29年度以降31年度までの各年分使用料額とする扱を決定したものである。

 しかしながら、本件減額処置の対象とした使用料の大半は緩和処置を講じ著しく低廉に決定されていたものであり、また、緩和処置を講じていない使用者の使用料金もとくに高額であったとは認められないもので、28年度の料金に比べて実施料金が大幅の値上りとなったのは従前の料金が著しく低廉に失したことによるものであるから、本件についてとくに減額処置を講じたことは適正な処置とは認められず、減額を受けた使用名義人の使用状況等についてみると、当局の調査によっても、減額条件となっている継続使用は名義だけで、実際は当局の使用承認条件に反して他に使用させているものが少なくなく、また、料金負担能力が十分あると認められる会社団体等が多数含まれている状況である。

不正行為

(1121) 職員の不正行為により日本国有鉄道に損害を与えたもの

 日本国有鉄道青函船舶、静岡両鉄道管理局で、昭和27年4月から32年3月までの間に、関係職員により、支払資金、銅線くず等をほしいままに領得されたものが1事項5万円以上のもので2事項現金8,040,668円、銅線くず799キログラムほか4点評価額381,537円計8,422,205円(うち32年9月末現在補てんされた額590,749円)あるが、そのうち事項50万円以上のものをあげると左のとおりである。

所名 不正行為をした職員 不正行為期間 不正行為金額 補てんされた額(32.9.30現在)
年月
日本国有鉄道
 青函船舶鉄道管理局
函館車掌区庶務掛
職員
 赤池某

27.4から
32.3まで

8,040,668 390,749

同人が給与、旅費の請求および支払事務に従事中、諸給与内訳明細書の所得税額を正当額より少額に記入し、その差額だけ現金支給額を付増ししてこれにより交付を受けた現金から右差額を領得し、また、給与および旅費として交付を受けた現金を支払う際、その一部を少なく支払うなどの方法によりその差額を領得したものである。