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  • 昭和32年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第6 農林省|
  • (農業共済再保険特別会計)|
  • 不当事項|
  • 保険

農業共済保険事業の運営が適切でないもの


(404)−(409) 農業共済保険事業の運営が適切でないもの

 農業共済再保険特別会計農業勘定の昭和32年度決算額は、歳入89億6千8百余万円、歳出57億1千8百余万円で、事業損益においては26億8千2百余万円の利益となっている。これは主として32年産水稲において被害が少なく再保険料収入54億7千7百余万円に対し再保険金の支払が15億7千余万円にとどまったことによるものである。しかしながら、本特別会計開設以来32年度までの損益をみると、一般会計および食糧管理特別会計から累計571億3千2百余万円(うち31年度81億2千1百余万円、32年度78億2千4百余万円)の共済掛金国庫負担金を繰り入れているにもかかわらず、累計173億1千2百余万円の損失となっている。このほか、一般会計から末端農業共済組合および都道府県農業共済組合連合会に対し毎年多額の農業共済事業事務費負担金を支出しており、その額は32年度においても21億6千5百余万円となっている。

 このように多額の国費が支出されている事情にかんがみ、本院においては29年度以降事業の主体をなしている水稲、麦等の主要農作物共済に関し、掛金の徴収が適期、適切に行われているか、共済金はその全額が組合員に正当に支払われているか、保険金請求に際し被害の評価および府県農業共済組合連合会への報告は事実に即して行われているかなどについて調査を実施した。その結果は28年度以降毎年度の検査報告に掲記したとおりであるが、本年は、北海道を除く都府県においては近年概して水稲、麦の被害が少なかったので、従来実施した主要農作物共済については北海道の8農業共済組合を調査するにとどめ、調査の重点を従来未調査となっていた蚕繭共済に置くこととして31年度にとくに被害の多かった群馬ほか4県の26農業共済組合の蚕繭共済の経理につき調査を行なったところ、共済金の経理当を得ないと認められるものが、15組合で67,284,704円(国庫負担推定額5219万円)に上っており、これを不当の態様別に示すと左のとおりである。

共済種目 道県名 調査済共済組合数 調査済共済金額 共済金の一部を組合員に支払わないもの 共済金を補償対象外の組合員をも含めて配分しているもの
(うち目的外に使用した額)
組合数 共済金額 組合数 共済金額 組合数 共済金額

主要農作物

北海道

8
千円
179,197

2
千円
10,966
(627)

千円
2
千円
10,966
蚕繭 群馬県 4 39,163

1 4,756 1 4,756
埼玉〃 6 54,029 3 28,559
(225)


3 28,559
山梨〃 7 36,471 3 10,563
(7,251)
1 1,212 4 11,776
長野〃 5 18,357 5 11,226
(357)


5 11,226
岐阜〃 4 13,050





小計
26 161,073 11 50,349
(7,834)
2 5,969 13 56,318

34 340,271 13 61,315
(8461)
2 5,969 15 67,284

 しかして、蚕繭共済においては、調査26組合のうち共済金の経理当を得ないと認められるものが13組合に及び、組合において共済金の一部を支払わないものもしくはこれを正規の基準によることなく補償対象外の組合員をも含め掛金額に応じて支払ったもの、または保険金請求に際し実評価を上回る被害報告をして過大な保険金を受領し、過大分を組合員に配分しないで目的外に使用したものなど不当に経理された共済金の額は56,318,580円(国庫負担推定額4273万円)に上っている。しかして、これら不当に経理された共済金のうち正規の基準によらないで組合員に支払われたものは48,093,529円で、残額8,225,051円は390,842円を組合の未収掛金、組合経費賦課金等と相殺し、7,834,209円を目的外に使用しており、組合のうちには共済金の大部分を別途に経理して県農業共済組合連合会に対する保険料、賦課金の支払財源等とし、組合員からは掛金、賦課金を全く徴収していないなど実質的に共済事業を行なっていないと認められるものもあって、結局、蚕繭共済事業も従来指摘した主要農作物共済と同様末端農業共済組合においては法の期待する正規の運営が実施されているとは認められない状況である。
 いま、検査の結果判明した不当経理のうち、とくに不当と認められる共済金目的外使用が1組合当り20万円以上のものをあげると左のとおり6件その目的外使用額8,095,743円になっている。


組合名 共済目的 書類上の支払 実際の支払計画 共済金と実交付額との差額
被害割 均等割その他
(実交付額)
面積または卵量 共済金 面積または卵量 共済金 面積または卵量 共済金 うち相殺額 うち目的外使用
(会計実施検査当時の未使用額を含む。)

(404)

北海道
 爾志郡
 乙部村

31 水稲

1,789反

2,769,261

1,643反

2,035,723

209反

733,538

2,769,261
(1,798,736)

762,638

207,887
  31年産水稲共済金2,769,261円を損害評価書どおり被害面積178町9反に対して支払ったこととしているが、実際は組合独自の評価による被害割または面積割で配分し、うち762,638円を未収掛金、賦課金等と相殺し、207,887円を事業資金に充てるため配分額に応じて差し引き、残額1,798,736円を交付していた。
(405) 北海道
 桧山郡
 厚沢部村
31 水稲 5,560反 8,196,863 不明 7,777,560 - - 7,777,560
(4,909,452)
2,868,108 419,303
  31年産水稲共済金8,196,863円を損害評価書どおり被害面積556町に対して支払ったこととしているが、実際は組合独自の評価による被害割で7,777,560円を配分のうえ、うち2,868,108円を未収掛金、賦課金等と相殺し、残額4,909,452円を交付しただけで、配分しなかった共済金419,303円は帳簿外に経理し、うち368,907円を家畜診療所建築費、職員給与等に使用し、50,396円を保有していた。
(406) 山梨県
 山梨市
 (旧八幡)
31 春蚕 14,683グラム 2,987,120 - - 部落割 2,230,743 2,230,743
(2,230,743)
- 756,377
〃 夏秋蚕 1,255〃 296,972 - - 920,548 920,548
(920,548)
- 964,749
〃 晩秋蚕 8,232〃 1,588,325 - -
  31年産春蚕繭、夏秋蚕繭および晩秋蚕繭共済金4,872,417円を損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は部落割で3,151,291円を支払っただけで、残額1,721,126円は組合において一括して未収の掛金、賦課金に充てていた。
(407)
 中巨摩郡
 白根町
 白根
 (旧飯野)
31 春蚕 4,785グラム 1,284,296 745 グラム 18,745 - - 18,745
(18,745)
- 1,265,551
〃 夏秋蚕 882〃 212,279 282〃 11,856 - - 11,856
(11,856)
- 200,423
〃 晩秋蚕 3,390〃 792,139 690〃 20,448 - - 20,448
(20,448)
- 771,691
  31年産春蚕繭、夏秋蚕繭および晩秋蚕繭共済金2,288,714円を損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は組合独自の評価による被害割で51,049円を支払っただけで、残額2,237,665円は別途に経理して県農業共済組合連合会に対する保険料、賦課金等の支払に充てていた。
(408)
 中巨摩郡
 白根町
 白根
 (旧百田)
31 春蚕 5,880グラム 1,946,359 1,070グラム 80,885 - - 80,885
(80,885)
- 1,865,474
〃 夏秋蚕 1,260グラム 257,040 - - - - - - 257,040
〃 晩秋蚕 6,144グラム 1,198,764 380グラム 28,600 - - 28,600
(28,600)
- 1,170,164
  31年産春蚕繭、夏秋蚕繭および晩秋蚕繭共済金3,402,163円を損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は組合独自の評価による被害割で109,485円を支払っただけで、残額3,292,678円は別途に経理して県農業共済組合連合会に対する保険料、賦課金等の支払に充てていた。
(409) 長野県
 下伊那郡
 竜江村
31 春蚕 11,595グラム 1,895,597 不明 1,874,572 - - 1,874,572(1,874,572) - 21,025
〃 晩秋蚕 12,824グラム 2,027,596 12,329グラム 1,826,062 適宜 5,475 1,831,537
(1,831,537)
- 196,059
  31年産晩秋蚕繭保険金を県農業共済組合連合会に請求するにあたり、実評価を上回る被害報告をして保険金1,910,799円を受領し、付増しした共済金201,534円のうち196,059円を組合員に配分しないで帳簿外に経理し、うち149,605円を農業協同組合に交付し、46,454円を保有していた。また、31年産春蚕繭共済金1,895,597円は、組合独自の評価による被害割で1,874,572円を支払っただけで、21,025円は配分することなく一括して未収建物共済掛金等に充てていた。
 

25,452,611
13,674,451
3,890,304 17,564,755
(13,726,122)
3,630,746 8,095,743

備考 共済目的欄中、31は31年産を略したものである。