ページトップ
  • 昭和32年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第10 労働省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

失業対策国庫補助事業の計画が当を得ないもの


(450)−(452) 失業対策国庫補助事業の計画が当を得ないもの

(組織)労働本省 (項)失業対策事業費補助

 留萌市ほか2事業主体が国庫補助金の交付を受けて実施した失業対策事業において、事業の実施にあたり計画が当を得なかったため不経済な結果となっているものが次のとおり3件ある。

(450)  北海道留萌市が昭和31、32両年度に施行した黄金岬観光海岸道路改良事業(事業費2,557,254円、国庫補助金1,765,237円うち31年度分1,480,078円)において、道路護岸工事を事業費665,660円(国庫補助金391,658円うち31年度分319,509円)で実施しているが、工事の設計が当を得なかったため崩壊していて事業費が不経済な結果となっている。
 右は、黄金岬観光海岸道路(延長1,220メートル)の改良にあたり、道路護岸延長340メートルを31年度に事業費535,561円をもってから石積で施行したが、同年冬季の波浪によりそのうち延長32メートルが崩壊し、32年度に事業費130,099円をもって練石積で復旧したが、根入れを30センチメートル程度しか施行しなかったなどのため再び崩壊しているほか護岸上部も全延長にわたり崩壊している状況である。
 しかし、工事施行箇所は道路面が満潮位(+)40センチメートル程度の低地であり冬季の波高は5メートルに達する海岸であるから前記のようなから石積または根入れの浅い練石積では容易に崩壊のおそれのあることを予測することができたものと認められるのに、施行効果を十分に考慮することなく安易な工法で施行したのは当を得たものと認められず、これに要した事業費665,660円(国庫補助金391,658円)は不経済な結果となっている。

(451)  青森県が昭和31,32両年度に事業費20,322,235円(国庫補助金相当額12,001,699円うち31年度分6,307,152円)で玉石を購入のうえ砕石とする作業を実施しているが、事業計画が適切を欠いたため約860万円(国庫補助金約550万円)が不経済な結果となっている。
 右は、青森県青森第2土木事務所において、砂利道補修用等の敷砂利に使用するため事業費20,322,235円(うち31年度分10,779,256円)で玉石を購入し砕石15,768立米(うち31年度分9,115立米)を製造したもので、砕石の製品価格は立米当り31年度1,182円、32年度1,434円となっている。しかし、その使用目的からみて普通の砂利を購入のうえ使用してもなんら差し支えないもので、砂利を購入するとすれば青森市における失業対策事業の砂利道補修用敷砂利購入の実例によるも立米当り31年度498円、32年度495円程度で購入することができたものであり、著しく経済的と認められる。いま、仮に地域的な条件を考慮し冬期を除くとしても、それ以外の期間に製造した砕石約11,000立米の製造に要した労力費等の事業費約860万円(国庫補助金約550万円)は他の事業効果の高い失業対策事業に使用することができたものと認められる。

(452)  高知県幡多郡大方町(旧白田川村)が昭和31年1月、総工事費17,972,800円で着工した東磯埋立工事は、工事計画が当を得なかったため着工後間もなく事業の遂行が困難となり、実施済の事業費914,219円(国庫補助金537,400円)が不経済な結果となっている。
 右は、海面埋立11,608平米、防潮堤延長179メートルおよびずい道延長39メートルの掘さくを実施する計画を立て、労働省の承認を得て着工したもので、工事を遂行するには多数の労務者および相当の技能を必要とするものであるが、計画当時、白田川村の失業対策事業就労者は1日20名程度であり本件事業を実施することは困難であったと認められるのに、これらの事情を考慮することなく計画したため着工後間もなく労力を充足することができないなどの事情で実施不可能となった結果、事業主体は計画の約5%に当る海面埋立約120平米、防潮堤延長約30メートルを914,219円で施行しただけで同年6月事業を中止し、既成部分は利用価値もなく放置されていて不経済な結果となっている。