(組織)建設本省 (項)防衛支出金
兵庫県城崎郡香住町が、昭和32年度に全額国庫補助により施行した町道余部御崎線改良工事は、事業費18,108,000円で延長2,578メートルを完成したものであるが、計画が当を得ないため不経済工事となっている。
右工事は、香住町が、同町御崎地区に設置される予定の駐留軍関係伊笹岬通信施設の建設資材等を搬入するため同町余部港に至る町道を改良するもので、全延長3,011メートルのうち32年度に2,578メートルを施行したものである。
しかして、本件通信施設の建設にあたって、必要な資材の搬入路については駐留軍から文書による要求はなく、駐留軍は本件基地に近い御崎港から資材を揚陸し搬入することとしていたものであるが、本件の折衝に当っていた調達庁は、同港は資材の揚陸に適しないとして基地から約5キロメートル隔てた余部港を利用するよう駐留軍に説明し、この間の町道は日本政府において改良することとして同意を得、建設省が本件改良工事を施行したものである。しかし、余部港はさきに駐留軍が揚陸地点と定めた御崎港と同様の小漁港にすぎず、着岸設備も不備で御崎港に比べてとくに資材の揚陸に適しているものとは認められず、一方、御崎港は資材の揚陸には全く不適当であるとしているが、基地付近に設置されている御崎燈台(昭和26年設置)の建設資材は、すべて御崎港から揚陸されている事実もあり、駐留軍も実地踏査の結果資材は御崎港に揚陸して基地まで分解運搬する計画を立てていたのであるから、とくに余部港を揚陸地と選定し改良工事費を負担してまで2千余メートルに及ぶ搬入路を建設する要はなかったものである。
当局は、余部港の利用は過渡的なもので、将来は陸路による輸送が当然予想されるところであり、本件搬入路をさらに県道鳥取、浜坂、香住線に取り付けることによりこの場合にも対処することができるものとしているが、前記県道は車の通行は不可能で、これを改修しなければ基地まで陸路輸送することはできず、建設省の計算によっても応急の改修に千数百万円を要し、既定の道路改良計画にも含まれていないから直ちに実現するものとは思われず、また、本件搬入路の一般道路としての公共性についてみても、本件道路を利用する者は御崎部落の少数の住民に限られていて、これとても従来どおり旧道を利用すれば足り、とくに本道の完成を急ぐ理由に乏しいものである。
要するに本件は、実情を十分に調査することなく計画を立てて施行したため不経済な工事を施行した結果となったものである。