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  • 昭和32年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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  • 工事

予定価格の積算が過大なためひいて工事費が高価となっているもの


(479)−(482) 予定価格の積算が過大なためひいて工事費が高価となっているもの

(工事勘定) (項)諸設備費

 予定価格の積算にあたり、使用材料の数量、価格等の調査が十分でないなどのため予定価格が過大となりひいて工事費が高価となっていると認められるものが少なくないが、そのおもな事例をあげると次のとおりである。

(鋼材価格を高価に積算したなどのため工事費が高価と認められるもの)

(479)  日本国有鉄道東京工事局で、昭和32年1月から9月までの間に、指名競争入札後の随意契約により三菱造船株式会社に川崎火力発電所煙突製作および建方工事を42,000,000円で請け負わせ施行しているが、鋼材価格の調査が十分でなかったなどのため予定価格が過大となり、工事費が約570万円高価となっていると認められる。
 右工事は、川崎火力発電所の煙突製作およびその建方をする工事で、予定価格と同額で請け負わせたものであるが、その積算にあたり、煙突製作用鋼板はSM41(厚さ9ミリメートから30ミリメートル)を152.8トン使用するものとして、その価格を建設物価調査会等の調査による類似品の一般市場価格を参考にしてトン当り101,000円から125,000円総額20,296,210円と算定しているが、鋼板SM41は溶接構造用圧延鋼材であって、本院の調査によれば八幡製鉄株式会社、富士製鉄株式会社、日本鋼管株式会社および株式会社尼崎製鋼所が注文により製造している特殊製品であるから、予定価格の積算にあたってはその販売価格を右各会社について調査して算定するのが相当であったと認められる。
 しかして、前記鉄鋼3社の販売価格はトン当り59,000円から61,000円、株式会社尼崎製鋼所はトン当り73,000円から79,000円(厚さ9ミリメートルから25ミリメートル)であり、本件請負人も61,000円から77,000円程度で購入している状況であって、本件積算は著しく高価であるばかりでなく、前記鋼板使用量152.8トンのうちには誤って重複計上されたものが6.03トンあり、総量は146.76トンで足りたものである。
 いま、仮に鋼板の総量を146.76トン、価格をトン当り61,000円から79,000円として計算すると鋼材費は約1,358万円となり、その他の工事費を合わせ総額約3,620万円となり、本件請負額はこれに比べて約570万円高価となる計算である。

(塗装工の積算が過大なため工事費が高価と認められるもの)

(480)  日本国有鉄道新橋工事局で、昭和33年2月から7月までの間に、指名競争契約または随意契約により鉄道塗装工業株式会社に、大井川橋りょう改良橋けた塗装その他その1工事および利根川橋りょう改良橋けた塗装その1工事をそれぞれ5,238,792円(当初契約額5,231,265円)および4,258,824円で請け負わせ施行しているが、塗装工の積算が適切を欠いたなどのため予定価格が過大となり、工事費が約160万円高価となっていると認められる。
 右工事は、大井川橋りょうおよび利根川橋りょうの改築に伴い橋りょうの構げたそれぞれ27,144平米および20,184平米計47,328平米をペイントで2回塗装する同種の工事で、いずれも予定価格とほぼ同額で請け負わせたものであるが、両契約の予定価格総額9,525,000円のうち塗装費についてみると、塗装工賃金を労働省告示賃金の最高額550円および標準額560円とし、これに高所危険手当25%を見込み、また、重人夫賃金は450円とし、歩掛りについては、塗装工を鈑けた平米当り0.034人として、これに構げた割増35%、さらに、これに宿泊費または滞在費として50%加算して0.068人とし、また、重人夫は塗装工の50%0.034人とし、これに塗装工、重人夫それぞれについて清掃0.01人を見込み、世話役をこれらの計の10%とし、合計平米当り0.134人として所要人員延6,362人、総額4,846,250円(一般経費を含む。)と算定したものである。
 したがって、平米当り工費79円93および84円72となっているが、他の工事局の施行例は53円程度となっており、また、本件積算の基本となっている鈑けたの塗装歩掛りが他の部局は平米当り0.02人となっていることからみても本件積算は過大に失するものと認められる。
 いま、仮に鈑けたの塗装歩掛りを平米当り0.02人として修正計算すれば所要人員は平米当り0.088人延4,196人、塗装工費は3,182,556円となり、その他の工事費を合わせると総額約787万円となるものであって、本件請負額はこれに比べて約160万円高価となっている計算である。

(鋼材所要量を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの)

(481)  日本国有鉄道大阪鉄道管理局で、昭和32年7月から12月までの間に、指名競争契約により日立工事株式会社に安治川口駅石炭橋型クレーン改造工事を7,180,000円で請け負わせ施行しているが、鋼材の所要量を誤って過大に計算し、ひいてその製作取付費等の工費が増加したため予定価格が過大となり、工事費が約110万円高価となっていると認められる。
 右工事は、安治川口駅所在の橋型クレーンのデリックブームが短く、荷扱に不便であるため18メートルのものを20メートルに取り換え、また、運転室その他鉄構造部分を補強する工事であるが、その主要部分を占めるデリックブームの取換および運転室の改造工事等の積算は、鋼材の所要量をデリック部は在来装置の部材寸法を測定して全重量を算出し、そのメートル当りの重量に新製デリックの長さを乗じ、運転室改造については同様部材寸法を測定して算出した在来運転室の重量の30%増しとし、その他については在来設備を参考として山形鋼は10%、鋼板は20%の損耗を見込み主要鋼材の所要量を16.19トン1,291,873円とし、材料費1,988,433円、その製作取付工費3,736,260円、その他35,997円計5,760,690円(一般経費を含む。)と積算している。しかしながら、材料費の大部分である鋼材についてみると、現地調査において在来クレーンの部材寸法を粗雑に測定したり、部材断面を推定によるなど慎重を欠いたため主要鋼材の積算重量は製品製作に必要な重量11.33トンに比べて4.85トン388,589円過大となっており、したがって、その製作取付等の工費も843,599円過大となったものである。
 いま、仮に主要鋼材の所要量を11.33トンとして、これにより材料費および工費を再計算するとその他の工事費を合わせ総額約604万円となり、本件請負額はこれに比べて約110万円高価となる計算である。

(運搬費等を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの)

(482)  日本国有鉄道下関工事局で、昭和32年10月から33年3月までの間に、指名競争契約により九鉄工業株式会社に若松駅石炭さん橋斜路改築その他工事を16,059,160円(当初契約額15,550,000円)で請け負わせ施行しているが、砂利運搬費等の積算が適切を欠いたなどのため予定価格が過大となり、工事費が約210万円高価となっていると認められる。
 右工事は、若松駅の木造石炭さん橋をコンクリートブロックさん橋に改築する工事で、予定価格とほぼ同額で請け負わせたものであるが、予定価格の積算にあたり次のとおり過大と認められるものがある。

(ア) コンクリートブロック用砂利、砂563立米、滑壁基礎工用の砂利、砂、ぐり石等387立米を若松駅から工事施行場所まで約3キロメートルを、また、コンクリートブロック4,111枚をコンクリートブロック製作箇所から工事施行場所まで約430メートルを1トン積3輪車で運搬するものとし、砂利、砂の重量を立米当り2トン、1日8回運搬するものとして1日の運搬量を4立米、滑壁基礎工用砂利、砂等は1日の運搬量を0.98立米から4.09立米とし、また、コンクリートブロックは1回2枚積みで1日8回運搬するものとして1日の運搬量を16枚とし、所要3輪車数を延561台と算定して2,021,787円(一般経費を含む。)を積算しているが、砂利、砂等の1トン車の積載量は一般に0.6立米程度であるから、運搬距離約3キロメートルを時速20キロメートルで走行するものとし、0.6立米の積おろし時分および運搬時分に多少の余裕を考慮しても1回の所要時分は42分程度であり、1日10回6立米は運搬することができるものと認められ、また、コンクリートブロックの重量は1枚当り220キログラムから240キログラム程度であるから1トン車に4枚は積載することができるもので、本件積算は過大と認められる。
 いま、仮にコンクリートブロック用の砂利、砂は1日10回6立米、コンクリートブロック滑、壁基礎工の砂利、砂等は現場の関係による多少の手待ちを勘案して1日8回32枚および4.8立米として計算しても三輪車延総数で304台1,095,585円となる計算である。

(イ) コンクリートブロックの型わくは3回使用として松角材等490石2,164,492円(一般経費を含む。)を積算しているが、現場製作の場合板材使用でも10回程度は使用することができるものと認められ、また、工事期間からみてもその程度は使用することができるもので本件積算は著しく過大と認められ、いま、仮に型わく10回使用、板材は10%程度補足するものとして計算すると172石759,967円となる計算である。

 右のほか、滑壁基礎工および鉄骨塗装工事の工事費積算額3,632,950円のうちには、石炭運搬作業は中止していて工事作業に支障がないのに手待割増を30%から50%計算しているものがあるなど過大な積算と認められるものがあるが、仮に前記各項だけについて工事費を修正し再計算すると総額約1,390万円となり、本件請負額はこれに比べて約210万円高価となる計算である。