ページトップ
  • 昭和32年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 不当事項|
  • 工事

工事の施行が設計と相違しているもの


(483)−(486) 工事の施行が設計と相違しているもの

(工事勘定) (項)諸設備費 ほか1科目

 日本国有鉄道各鉄道管理局等が施行した工事の実施状況をみると、擁壁の厚さが足りないもの、床舗装の木れんがが不足しているもの、道床砂利に規格外のものが混入しているものなど工事の出来形が設計と相違しているものが少なくなく、そのおもな事例をあげると次のとおりであるが、このような事態は、関係者の監督指導および検収が適正に行われなかったことなどによるものと認められる。

(擁壁コンクリートの施行が設計と相違しているもの)

(483)  日本国有鉄道熊本鉄道管理局で、昭和32年11月から33年2月までの間に、指名競争契約により西田工業株式会社ほか2会社に総額8,151,200円で請け負わせ施行した木葉、田原坂間181キロ附近築堤災害復旧その3工事ほか2件の同種工事は、33年2月から3月までの間にいずれも設計どおりしゅん功したものとして検収しているが、擁壁コンクリートの施行が設計と相違していて、設計に比べて擁壁の強度が低下していると認められる。
 右工事のうち32年7月の豪雨により崩壊した築堤を応急工事で盛土したものの防護をするため高さ1.6メートルから4.8メートルの重力擁壁を新設する工事(工事費3,208,039円)は、契約図面によると擁壁厚は上部30センチメートルから50センチメートル、下部77センチメートルから159センチメートルとなっているのに、会計実地検査の際各工事についてその水抜孔の約69%に当る211箇所につき実測したところ、図面寸法より厚いもの73箇所、薄いもの134箇所で、そのうち5センチメートル以上薄いものが112箇所あり、おもに擁壁下部の厚さが不足していて設計に比べて擁壁の強度が低下していると認められた。

(排水溝の施行が設計と相違しているもの)

(484)  日本国有鉄道名古屋鉄道管理局で、昭和32年12月、随意契約により名工建設株式会社に6,444,801円で請け負わせ施行した定光寺構内380キロ800メートル附近のり改良その2(甲)工事は、33年5月施行中止した一部分を除き設計どおりしゅん功したものとして検収しているが、排水溝コンクリートの施行が設計と相違していると認められる。
 右工事のうち排水溝コンクリート造り3型から6型までの総延長300メートルを新設する工事(工事費2,065,144円)は、契約図面によると排水溝は厚さ15センチメートル、底幅1メートルおよび1.2メートルとなっているのに、会計実地検査の際各型について抽出調査したところ、厚さについては調査数41箇所のうち所定の厚さがないものが28箇所あり、最も薄いものは5センチメートルで、平均10.9センチメートルとなっていて排水溝の強度が低下していると認められ、また、底幅については4型を4箇所調査したところ、いずれも設計1メートルに対し0.9メートル以下となっていて排水効果が低下していると認められた。

(床木れんがの施行が設計と相違しているもの)

(485)  日本国有鉄道門司鉄道管理局で、昭和33年2月、随意契約により高藤建設株式会社に5,330,000円で請け負わせ施行した若松工場貨車職場改築その2(床舗装その他)工事は、3月設計どおりしゅん功したものとして検収しているが、床木れんがの施行が設計と相違していると認められる。
 右工事のうち、若松工場貨車職場改築に伴い床を木れんが舗装する工事(工事費4,385,174円)は、契約図面によると床面1,111平米を厚さ150ミリメートルのコンクリートで舗装し、その上に厚さ25ミリメートルのモルタルを敷き、防腐木れんが(90ミリメートル×150ミリメートル×90ミリメートル)を目地幅9ミリメートルに敷きならべ、目地には木れんが下面から63ミリメートルまでブロンアスファルトをてん充することとなっているが、実際に施行した面積が34平米不足しており、また、床木れんがは目地幅最大30ミリメートル、平均12ミリメートルで平米当り3. 6個総量3,854個が不足し、ブロンアスファルトてん充も不十分でいずれも施行が設計と相違していると認められた。
 右に対し、当局は請負人の負担において工事費約51万円で手直しを行なった旨の報告があった。

(道床砂利が規格と相違しているもの)

(486)  日本国有鉄道盛岡工事局で、昭和32年6月から10月までの間に、随意契約により仙建工業株式会社ほか3会社に総額10,285,855円で請け負わせ施行した津軽線蟹田、二股間道床砂利採集積込その1工事ほか6件の同種工事は、8月から11月までの間にいずれも規格どおりのものが納入されたものとして検収しているが、規格外の道床砂利が相当量混入している。
 右工事は、津軽線軌道敷設に使用する道床砂利16,035立米の採集工事で、示方書によるとふるい砂利規格70ミリメートル以下となっているのに、会計実地検査の際各工事について軌道延長1キロメートルごとに抽出調査したところ、70ミリメートル以上のものが調査数の3.2%から11.3%平均6.7%程度混入していて規格に比べて道床砂利としての効果が低下していると認められた。
 いま、仮に全量について規格外のものが平均6.7%程度混入しているものとして計算すると約68万円となる。