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  • 昭和32年度|
  • 第3章 政府関係機関の会計|
  • 第2節 各政府関係機関別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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固定財産部外使用料金の決定処置当を得ないもの


(491) 固定財産部外使用料金の決定処置当を得ないもの

(損益勘定) (項)雑収入

 日本国有鉄道においては、昭和32年度に、固定財産部外使用料金の改定を実施することとし、各貸付局所では、主として管理費、公租公課相当額、資本利子額等を積み上げ、これから使用権の不安定等による軽減、継続使用による軽減、連絡設備等に使用する場合の軽減等各種の軽減処置を行なって使用料金を算出しているが、財産価額の評定にあたり、用地時価を単純に固定資産税課税標準価格に一定倍率を乗じて評価していることなどのため、その時価が実際の時価に比べて著しく低価と認められるものがあるばかりでなく、算定料金が前年度の料金を下回る結果となったため前年度料金にすえ置いたり、また、前年度より上回るものについても前年度料金の一定倍率までの値上げにとどめていたりして各鉄道管理局が前年度から継続使用させている土地、建物および高架下の料金合計額についてみると前年度に比べて約17%程度の増加にとどまっている状況であるが、とくに貸付の実態に適合しない軽減処置を講じ、料金の決定処置が適正を欠いていると認められるものが次のとおりある。

(1) 使用権の不安定等に基く軽減処置が適切を欠くと認められるもの

 前記使用料の算定基礎となる当該財産の評価額について、日本国有鉄道の財産を使用承認によって使用させる場合は使用期間中でも当局の必要と認めたときはいつでも使用承認を取り消すことができるという制限を付するなど通常の賃貸借に比べてその使用に特別の制限を加えているから、これらの制限を参しゃくするものとして一律に時価評定額から2割の修正減を行うこととしている。
 しかし、使用承認財産のうちには当該用地に鉄骨鉄筋コンクリート造りの半永久的建造物の構築を許可していることからみて、もともと長期にわたる継続使用を前提としているばかりでなく、事実上使用に特別の制限を受けているとは認められないものがあったり、事業の用に供する見込がなく、使用者に対して売渡を予定している財産でことさら使用上特別の諸制限を付することもその必要が認められないものなどがあって、これらに対してまでこのような軽減処置を講じているのは使用承認財産の実態に適合しないもので料金の決定処置が適正を欠いていると認められる。
 いま、本院で調査したおもな事例として、名古屋、大阪両鉄道管理局で名古屋鉄道株式会社ほか5名に使用承認している8件の32年度料金算定額について、本件軽減を行わないこととして計算すれば計約450万円の開差を生ずることとなる。

(2) 連絡設備、乗入設備等貸付用地に関する資本利子額の軽減処置が適切を欠くと認められるもの

 日本国有鉄道と連絡運輸をしている運輸機関の連絡設備または乗入設備の用に供するため貸し付けた土地(駅構内のものに限る。)の使用料は、連絡運輸によって日本国有鉄道の収入が増加しまたは経費が節減されているとの事由で資本利子率を通常の場合の2分の1に軽減して使用料の算定を行うこととしている。
 しかし、連絡運輸に伴う利益は相互的なものであるから用地使用料を軽減するのは適当とは認められないもので、使用承認用地のうちには当該用地の一部をデパート敷地等に使用しているものも見受けられ、また、借受地を利用して構内営業または広告掲示を行い多額の収入をあげているものも認められる実情である。
 いま、東京、名古屋両鉄道管理局で名古屋鉄道株式会社ほか12名に連絡設備等用地として使用させている1件年額10万円以上のもの17件の32年度料金算定額について、本件軽減を行わないこととして計算すれば計約1620万円の開差を生ずることとなる。