日本国有鉄道資材局で、昭和35年6月から36年1月までの間に、随意契約により古河電気工業株式会社ほか5会社に隅田川用品庫在庫のケーブルくず949トンを総額77,239,724円で売り渡しているが、うち520トン39,563,313円については、その予定価格の積算にあたり品形の適用を誤り銅、鉛等の目付量を過少に見積ったため、売渡価額が約900万円低額となっていると認められる。
本件ケーブルくずは、同資材局で毎年旧設備の撤去工事等により発生した古鉛被ケーブルを隅用川および安治川口両用品庫に集中し、品形別に区分した後、前記6会社ほか1会社に売り渡しているもので、その予定価格は売渡しのつど隅田川用品庫分については社団法人日本電線工業会から、安治川口用品庫分については同工業会大阪支部からそれぞれ両用品庫が通知した品形別仕訳表に対する目付表を徴し、銅、鉛等の材種別の目付量にそれぞれの時価を乗じ諸掛りを控除して算定していて、予定価格と同額で売り渡しているものであるが、予定価格算定の基礎となっている目付量を、同程度と認められるものについて両用品庫分を比較してみると、たとえば、隅田川用品庫分において通信ケーブル鉛被保安0.9×50Pとしてトン当り銅206キログラム、鉛572キログラムと計上しているものを、安治川口用品庫分では通信ケーブル鉛被市内0.9×50Pとして銅308キログラム、鉛616キログラムと計上していて、相当量の開差が生じている状況であって、現に、36年2月、会計実地検査の際、隅田川用品庫の在庫品の同一品形のものから試験片をとり、日本国有鉄道中央用品試験所で実測した結果は、銅309キログラム、鉛634キログラムとなっていて、同用品庫分は目付量が少なく、実情にそわない結果となっており、また、製造業者の通信ケーブル鉛被市内0.9×50Pの新品の目付量は銅308キログラム、鉛616キログラムとなっていることからみて、隅田川用品庫が通信ケーブル鉛被保安0.9×50Pとした品形は安治川口用品庫で適用した品形通信ケーブル鉛被市内0.9×50Pとすべきであったと認められ、他の実測を依頼した大部分の品形についてもその結果によれば隅田川用品庫分は同様の事態となっている。
このように相違を生じているのは、隅田川用品庫分について品形の適用を誤った結果によるものであるが、継続して多量に売り渡す場合、両用品庫の同程度のものについて目付量が相違しているのに現品について確認したり解体試験等の検討を行なうことなく低額に売り渡す結果となっているのは処置当を得ない。
いま、仮に本件売渡分のうち14品形520トンについて実測の結果は新品の目付量とほとんど相違がないから新品の目付量により予定価格を修正計算すると、その価額は48,654,239円となり、本件売渡価額39,563,313円はこれに比べて約900万円低額となっていると認められる。