(自作農創設特別措置特別会計)
自作農創設特別措置特別会計に所属する財産の管理が適切を欠いており、その根本的是正をはかる必要があることについては、昭和33年度および35年度の検査報告に掲記し、また、第8節(4) 記載のとおり37年6月是正改善の処置を要求したところであるが、37年において、同特別会計に所属する既墾地11,573町4反余、未墾地439,113町1反余のぅち、既墾地441町1反余、未墾地15,537町9反余につき、仙台ほか6農地事務局(注1) および北海道ほか26都県(注2) ならびに関係市町村農業委員会について財産管理の状況を調査したところ、管理が適切を欠いているものが次表のとおりある。
態様 | 区分 | 件数 | 面積 | 摘要 | |
農業上の用に供するため貸付けを行なっているもののうち他用途に転用されているもの | 既墾地 |
109 |
町反畝 95 |
歩 012 |
徴収すべき弁償金 18,051,607円 |
農業上の用に供しないことが明らかであるのに他用途に一時貸付けを継続しているもの | 既墾地 | 215 | 856 | 728 | |
未墾地 | 5 | 56 | 421 | ||
所在または境界が不明となっているもの | 既墾地 | 51 | 59 | 001 | |
未墾地 | 2 | 165 | 813 | ||
無断で使用されているもの | 既墾地 | 312 | 533 | 905 | 徴収すべき弁償金 36,108,625円 |
未墾地 | 81 | 1185 | 318 | 同 27,525,001円 |
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農耕または開拓不適地を長期間保有しているもの | 既墾地 | 64 | 171 | 425 | |
未墾地 | 45 | 2002 | 511 | ||
計 | 既墾地 | 751 | 1716 | 211 | 徴収すべき弁償金 54,160,232円 |
未墾地 | 133 | 3410 | 203 | 同 27,525,001円 |
いま、これら不当な事例のうちおもなもの(是正改善の処置要求において例示したものを除く。)をあげると次表のとおりである。
(注1) 仙台、東京、金沢、名古屋、京都、岡山、熊本各農地事務局
(注2) 北海道、青森、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県、東京都、神奈川、新潟、石川、岐阜、静岡、愛知、滋賀、兵庫、岡山、広島、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分各県
都道県名 | 所在 | 種目 | 台帳面積 | 台帳価格 |
円 |
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(農業上の用に供するため貸付けを行なっているもののうち他用途に転用されているもの) | ||||
既墾地の分 | ||||
東京都 |
足立区 |
田、畑 |
1反8畝21歩 |
1,809 |
23年3月大塚某から買収したものであるが、買収と同時に石川某ほか2名に農耕目的に貸し付けたところ、28年12月および34年4月愛田石材工業株式会社に転貸され、転借人はこれを工場用地として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額1,037,678円)の徴収その他適切な処置も講じていない。 | ||||
東京都 | 西多摩郡福生町 | 畑 |
2反4畝05歩 |
1,391 |
22年12月秋山某から買収したものであるが、買収と同時に磯村某ほか2名に農耕目的に貸し付けたところ、29年10月から33年6月までの間に宮川某ほか10名および福生町に転貸され、転借人はこれを住宅用地、道路敷として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額820,991円)の徴収その他適切な処置も講じていない。 | ||||
同 | 同 | 畑 |
8反05歩 |
4,616 |
22年12月および23年7月田村某ほか1名から買収したものであるが、このうち6反1畝14歩は、買収と同時に青柳某ほか12名に農耕目的に貸し付けたところ、28年4月から33年9月までの間に田村某ほか21名および福生町に転貸され、転借人はこれを未貸付地1反8畝21歩をあわせ住宅、店舗、ホテル用地、道路敷として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額2,349,353円)の徴収その他適切な処置も講じていない。 | ||||
新潟県 | 三条市 | 畑 |
2反7畝01歩 |
6,316 |
27年2月村上某ほか7名から買収したものであるが、買収と同時に佐藤某に農耕目的に貸し付けたところ、同年3月三条市に転貸され、同市はこれを大島中学校用地として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額138,563円)の徴収その他適切な処置も講じていない。 | ||||
大分〃 | 宇佐郡四日市町 | 田、畑 |
7反23歩 |
7,019 |
22年12月および23年7月清瀬某ほか3名から買収したものであるが、大分県に四日市農業高等学校の農業実習用地として貸し付けたところ、24年9月から35年12月までの間にこれを運動場、校舎用地として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額246,900円)の徴収その他適切な処置も講じていない。 | ||||
(農業上の用に供しないことが明らかであるのに他用途に一時貸付けを継続しているもの) | ||||
既墾地の分 | ||||
北海道 | 小樽市 | 畑 |
1町3反5畝27歩 |
2,738 |
23年7月右近某から買収したものであるが、24年9月小樽市に末広中学校用地として貸し付け、その施設が25年6月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに旧所有者に売り払わなければならないのに、一時貸付けを継続している。 | ||||
埼玉県 | 蕨市 | 畑 |
3町5畝11歩 |
14,642 |
23年10月木村某ほか1名から買収したものであるが、29年8月オリエンタルメタル製造株式会社に工場用地として貸し付け、その施設が30年2月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに売り払うべきであるのに、一時貸付けを継続している。 | ||||
滋賀〃 | 神崎郡能登川町 | 田 |
1町1畝23歩 |
85,120 |
27年3月辻某ほか12名から買収したものであるが、買収と同時に能登川町に能登川中学校用地として貸し付け、その施設が同年7月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに売り払うべきであるのに、一時貸付けを継続している。 | ||||
広島〃 | 福山市 | 田 |
1町5反1畝22歩 |
13,667 |
23年7月宮崎某ほか19名から買収したものであるが、25年10月福山市に公営住宅用地として貸し付け、その施設が33年3月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに旧所有者に売り払わなければならないのに、一時貸付けを継続している。 | ||||
長崎県 | 佐世保市 | 田、畑 |
1町5反4畝18歩 |
49,935 |
23年7月および27年6月日本炭鉱株式会社ほか9名から買収したものであるが、石炭鉱業用地(工場、倉庫、事務所等用地)として27年6月日興採炭株式会社に貸し付け、31年4月同会社との貸付契約を解除すると同時に製鉄原料輸送株式会社に貸し付け、その施設が同月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに売り払うべきであるのに、一時貸付けを継続している。 | ||||
大分〃 | 大分市 | 田 |
5反3畝15歩 |
28,716 |
22年12月から27年3月までの間に鈴木某ほか2名から買収したものであるが、27年3月大分タオル工業株式会社に工場用地として貸し付け、その施設が同年7月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに売り払うべきであるのに、一時貸付けを継続している。 | ||||
(所在または境界が不明となっているもの) | ||||
既墾地の分 | ||||
青森県 | 西津軽郡車力村 | 田 |
2反 |
720 |
23年3月工藤某から現地を確認しないで買収したものであるが、買収後所在不明であることが判明したのに、適切な処置を講じていない。 | ||||
群馬〃 | 吾妻郡草津町 | 畑 |
5反3畝05歩 |
1,225 |
22年12月相沢某ほか1名から現地を確認しないで買収したものであるが、30年3月にいたり境界が不明であることが判明したのに、境界の確定その他適切な処置を講じていない。 | ||||
千葉〃 | 東葛飾郡鎌ヶ谷町 | 畑 |
8反3畝09歩 |
1,557 |
22年7月から12月までの間に甲府方某ほか6名から現地を確認しないで買収したものであるが、買収後所在不明であることが判明したのに、適切な処置を講じていない。 | ||||
(無断で使用されているもの) | ||||
既墾地の分 | ||||
北海道 | 岩内郡岩内町 | 畑 |
1町8畝19歩 |
624 |
24年12月帝国繊維株式会社から買収したものであるが、34年10月ごろから北海道パルプ工業株式会社により原料置場として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額33,286円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
千葉県 | 柏市 | 畑 |
1町3反1畝20歩 |
2,656 |
22年12月日本光学工業株式会社から買収したものであるが、30年4月ごろから柏市により柏第一中学校用地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額2,710,054円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
東京都 | 調布市 | 畑 |
1反7畝12歩 |
707 |
22年10月および23年10月岩越某ほか1名から買収したものであるが、24年4月ごろから李某ほか4名により住宅、店舗用地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額1,826,557円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
同 | 北多摩郡東村山町 | 畑 |
3反8畝22歩 |
1,300 |
22年12月および23年10月桝谷某から買収したものであるが、32年4月から34年1月までの間に小平石材協同組合ほか11名により住宅用地、資材置場として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額949,107円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
同 | 北多摩郡保谷町 | 畑 |
1反4畝07歩 |
721 |
22年12月平川某から買収したものであるが、31年2月および36年2月から指宿某ほか15名により住宅用地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額820,608円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
未墾地の分 | ||||
宮城県 | 仙台市 | 開拓用地 |
4町3反2畝23歩 |
5,684 |
29年3月および7月東北不動産株式会社ほか3名から買収したものであるが、同年4月ごろから石井某ほか9名により農耕、住宅用地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額209,861円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
群馬〃 | 吾妻郡嬬恋村 | 国有存置地 |
4町9畝25歩 |
7,143 |
22年7月から24年3月までの間に大蔵省ほか7名から所管換等により取得したものであるが、28年4月ごろから国土計画興業株式会社により有料自動車道路の一部として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額813,451円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
東京都 | 昭島市 | 売渡予定地 |
1町1反1畝11歩 |
1,805 |
33年3月石井某ほか6名から買収したものであるが、買収当時から平田某により貸家住宅用地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額1,798,070円)の徴収その他適切な処置を講じていない。 | ||||
(農耕または開拓不適地を長期間保有しているもの) |
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未墾地の分 | ||||
北海道 | 虻田郡狩太町 | 開拓用地 |
17町1畝29歩 |
3,430 |
25年3月中村某から買収したものであるが、急傾斜で開墾希望者もなく開拓に適しない土地であるのに、適切な処置を講じていない。 | ||||
神奈川県 | 足柄上郡松田町 | 開拓用地 |
27町2反7畝 |
119,715 |
27年7月松田町から買収したものの一部であるが、急傾斜の雑木林地で、土質も火山砂れきで転石が多く開拓に適しない土地であって土地配分計画から除外しているものであるのに、適切な処置を講じていない。 | ||||
福岡県 | 嘉穂郡頴田町 | 開拓用地 |
25町5反9畝12歩 |
156,879 |
30年7月開墾建設事業55町歩の開田用地として頴田町ほか43名から買収したものであるが、31年にいたり予定した庄内川からの水利権が得られなくなったため事業を中止したものであり、また、畑等の開墾希望者もなく開拓に適しない土地であるのに、適切な処置を講じていない。 | ||||
佐賀〃 | 東松浦郡肥前町 | 開拓用地 |
35町1反2畝13歩 |
283,091 |
27年9月開墾建設事業55町歩の開田用地として石田某ほか230名から買収したものの一部であるが、28年11月にいたりため池予定地を買収することができなくなったため開田計画を中止したものであり、また、畑等の開墾希望者もなく開拓に適しない土地であるのに、適切な処置を講じていない。 | ||||
長崎〃 | 北松浦郡小佐々町 | 売渡予定地 |
37町5反3畝17歩 |
213,288 |
23年7月大蔵省から所管換を受けた旧佐世保海軍軍需部小佐々倉庫用地の一部であるが、急傾斜の山林で開拓に適しない土地であったため土地配分計画から除外しているものであるのに、適切な処置を講じていない。 |