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  • 昭和40年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第6節 各所管別の事項

建設省


第11 建設省

 (一般会計)

 (道路整備特別会計)

 (治水特別会計)

 昭和40年度歳出決算額は、一般会計4899億2177万余円、道路整備特別会計3419億0529万余円、治水特別会計1114億3984万余円で、そのおもなものは、一般会計においては揮発油税等財源道路整備事業費2122億7900万円、治水事業費751億0181万余円、道路整備事業費512億0836万余円、河川等災害復旧事業費395億6429万余円、道路整備特別会計においては道路事業費1955億4606万余円、街路事業費422億3905万余円、首都圏道路整備事業費389億8298万余円、北海道道路事業費382億8116万余円、治水特別会計においては河川事業費447億8329万余円、砂防事業費185億4522万余円である。
 41年中、北海道開発局および各地方建設局が直轄で施行した道路改良、河川改修等の工事および地方公共団体が国から補助金等の交付を受けて施行した公共土木施設の建設、改良、災害復旧等の工事について検査を実施した結果、別項記載のとおり、直轄工事の施行が不良なもの公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの が見受けられたほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。
 なお、災害復旧事業については、事業費査定の適否につき検査したところ、別項記載のとおり、査定額を減額させたもの がある。

 (バイパス造成工事の施行について)

 道路整備事業のうちバイパス造成工事(40年度事業費約234億円)は、混雑の著しい地域の交通の迅速化を直接の目的とするものであるから、緊急度の高い路線から順次採択し、早期に完成し一般交通の用に供すべきものと思料されるのに、その採択および施行の実情をみると、毎年度多額の残事業があるのに予算規模に比べ新規に採択する路線が多いため、1路線当りの事業費が少額となり、その施行が全般的に長期化して供用の開始が遅れがちとなり、取得した用地のうちには長期にわたり遊休化しているものがあるなど投資効果が十分発揮されず不経済な事例が見受けられるので、新規路線の採択、着工後の予算の重点的使用などについて検討の要があると認められる。

不当事項

工事

(324)−(326) 直轄工事の施行が不良なもの

 (道路整備特別会計) (項)道路事業費
 (治水特別会計) (治水勘定) (項)河川事業費

 北陸、近畿両地方建設局で、工事の施行にあたり、監督および検査が当を得なかったため施行が設計と相違していて設計に比べて工事の効果が低下していると認められるものが次のとおりある。

(324)  北陸地方建設局で、昭和40年7月、指名競争契約により株式会社藤田組に104,250,000円で請け負わせ施行した茶屋ケ原第2道路工事は、41年3月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、扶壁式鉄筋コンクリート擁壁および2号海岸擁壁を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、一般国道8号線のうち新潟県直江津市茶屋ケ原地先の道路延長1,068メートルを改良するもので、うち扶壁式擁壁延長30メートル141立方メートルは、設計書および仕様書によると、立方メートル当りセメント220キログラム配合の鉄筋コンクリートで施行することとなっているのに、実際はうち延長20メートル94立方メートル(工事費1,682,278円)のコンクリートは、つき固めが不十分であったためモルタルと粗骨材とが分離した粗悪なものとなっていて空げきを生じており、扶壁式擁壁としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。また、2号海岸擁壁延長316メートルは、設計書および図面によると、基礎コンクリートの上部に法こう配1割、高さ3.28メートル、厚さ70センチメートルのコンクリート法覆工および波返工を施行しているものであるが、うち法覆工4箇所、延長200メートル(工事費5,056,314円)は、法覆工背後の盛土法面の転圧が不十分であったなどのため法覆工が傾斜し、法覆工の下部と基礎との間に1.5センチメートル程度の間げきを生じている状況で、波浪のためコンクリートの摩粍、浸食をはやめ破損のおそれがあり、海岸擁壁としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。

(325)  近畿地方建設局で、昭和40年9月、随意契約により西松建設株式会社に11,650,000円で請け負わせ施行した天理第2改良その3工事は、12月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、法面保護工を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、一般国道25号線のうち奈良県天理市福住町地先において盛土区間の法面崩落防止工事を施行するもので、うち法面保護工延長6,283メートル27,912平方メートル(工事費9,645,239円)は、設計書および仕様書によると、末口直径7.5センチメートル、長さ1.5メートルまたは2メートルの杉丸太ぐい10,503本を0.6メートル間隔に打ち込み、さく高部分0.5メートルには竹しがらを組んで法面保護をすることとなっているのに、実際はくいは末口直径が6.0センチメートルに満たないもの、長さが1.4メートルまたは1.9メートルに満たないものなどが約44%使用されており、なかには末口直径が5.0センチメートル、長さが0.8メートル程度のものもあり、法面保護工としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。

(326)  近畿地方建設局で、昭和40年12月、指名競争契約により株式会社木村組に12,700,000円で請け負わせ施行した田辺法覆工事は、41年3月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、護岸法わくの中詰コンクリートを設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、京都府綴喜郡田辺町大字田辺地先の淀川水系木津川左岸の護岸延長258メートルを改修するもので、うちコンクリート法わく工3,103平方メートルは、設計書および仕様書によると、鉄筋コンクリート格子わくに立方メートル当りセメント220キログラム配合の中詰コンクリートを厚さ10センチメートルで施行することとなっているのに、実際はうち1,615平方メートルの中詰コンクリート総量119立方メートル(工事費574,123円)は、練混ぜが不十分であったため粗悪なものとなっており、また、つき固めが不十分であったため空げきが多く、容易に破砕される状況で、中詰コンクリートとしての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。

補助金 (327)−(366)

(327)−(365) 公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの

(一般会計) (組織)建設本省 (項)都市計画事業費 (項)河川等災害関連事業費 (項)河川等災害復旧事業費 (項)昭和40年発生河川等災害復旧事業費 (項)国土総合開発事業調整費 (項)昭和40年発生河川等災害関連事業費
(道路整備特別会計) (項)道路事業費 (項)北海道道路事業費 (項)首都圏道路整備事業費
(治水特別会計) (治水勘定) (項)河川事業費 (項)砂防事業費

 地方公共団体が施行した公共土木施設の建設、改良および災害復旧等の工事に対する国庫補助金または国庫負担金(以下「国庫補助金」という。)は、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)等に基づいて交付されるものである。昭和41年中、全国の工事現場84,418箇所のうち北海道ほか31都府県につきその9.4%に相当する8,007箇所(事業費157,000,839,311円、国庫補助金88,530,235,827円)を実地に検査したところ、国庫補助金の経理当を得ないと認められ国庫補助金を除外すべきことの判明したものが、北海道ほか23都県において、除外すべき額1工事10万円以上のもので53工事33,181,149円あり、このうち国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第3 のとおり39件31,017,278円である。

 公共事業関係国庫補助金の経理については、不当と認めた事例を毎年度の検査報告に掲記して注意を促し、また、40年、これら不当な事態の発生を防止するため適切な処置を講ずるよう改善の意見を表示したところ、建設省においては、事業主体に対し、工事の施行については業者の選定、工事の早期発注、監督、検査の徹底および適正な工事費の積算に留意するよう通達を発するなど指導の強化に努力の跡が見受けられる。しかしながら、なお上記のように不当な事例が絶えないことにかんがみ、今後一層指導監督の強化徹底を図るなど工事の適正な施行について配慮の要があるものと認められる。

 いま、検査の結果不当な事項の態様について述べると、(ア)護岸および水路工事等において、練積石垣の胴込、裏込コンクリートの施行量が不足していたり、冬期間の施行であるのに養生が十分でなかったため凍結したりしているもの、締切、水替等が十分でなかったため底張コンクリートのモルタルと粗骨材とが分離しているものなどが21工事(国庫補助金9,549,798円)あり、(イ)道路の舗装工事において、路盤や基層、表層の厚さが設計に比べて不足したり、アスファルトコンクリート舗設の際温度の低下したアスファルト混合物を使用し転圧も十分でなかったなど施行管理が適切を欠いたりしたため舗装としての強度が低下しているものなどが15工事(国庫補助金15,275,722円)あり、(ウ)コンクリート擁壁工事において、根入れを全く施行していないもの、根入れが不足しているもの、配合の悪い粗悪なコンクリートで施行し、つき固めも十分でなかったものなどが9工事(国庫補助金3,073,526円)あり、(エ)鉄線じゃかご工事で詰石を規格外のもので施行しているものなどが8工事(国庫補助金5,282,103円)ある。
 しかして、これらのうち設計に比べて強度が著しく低下していると認められるもののおもな事例を示すと次のとおりである。

1 山梨県韮崎市が2,696,000円(国庫負担金2,124,448円)で施行した八幡沢川40年災害復旧工事は、護岸延長568メートルを練積石垣834平方メートルで復旧したものであるが、実際は、うち354平方メートルは、設計に比べて築石の控が不足しているものがあるばかりでなく、冬期間の施行であるにもかかわらず養生が十分でなかったため胴込コンクリートが凍結しており、練積石垣としての強度が設計に比べて著しく低下している。((338)参照)

2 熊本県が6,797,000円(国庫補助金3,398,500円)で施行した県道玉名長洲線舗装新設工事は、道路延長1,540メートル7,960平方メートルをアスファルトコンクリートで舗装するものであるが、上層路盤は、設計では砕石厚さ15センチメートルまたは10センチメートルで施行することとなっているのに、実際は、平均8.8センチメートルまたは7センチメートルを施行したにすぎないため、舗装としての強度が設計に比べて著しく低下している。((360)参照)

3 青森県が1,162,000円(国庫負担金802,942円)で施行した県道酸ガ湯高田線39年災害復旧工事は、道路延長25メートルを復旧したものであるが、土留コンクリート擁壁25メートル120立方メートルは、設計では根入れ1.1メートルから1.5メートルで施行することとなっているのに、実際は、うち13メートルは根入れを全く施行していないため、擁壁としての強度が設計に比べて著しく低下している。((331)参照)

(366) 災害復旧事業費の査定額を減額させたもの

 (一般会計)

 地方公共団体が施行する公共土木施設の昭和40年発生災害復旧工事の査定を了したもの(建設省査定額103,931,970,000円)に対する検査は、査定額の比較的多かった北海道ほか18県を選び、40年12月から41年4月までの間に、総工事数46,745箇所査定額76,724,298,000円のうち11,212工事37,440,974,000円について実施した。
 その結果は、場所打ちコンクリートで足りる護岸の天ばを練石張としたり、石積等の裏込コンクリート量を必要以上に多く見込んだりしたなど設計が過大となっているもの、または準備工の仮締切費等を必要以上に過大に見込んだり、多量の土砂掘さくは機械を使用することとすべきであるのに人力で施行することとしたり、工事費の計算を誤ったりしたなどのため積算が過大となっているものがあり、これらの査定工事費を適正なものに修正する必要があると認め当局に注意したところ、前記19道県において次表のとおり857工事172,422,000円(国庫負担金相当額135,886,000円)を減額是正する旨の回答があった。これを道県別、態様別に示すと次表のとおりである。

類別
道県名
建設省査定額 左のうち実地検査したもの 減額させた工事費
設計過大 積算過大
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

北海道

2,333
千円
6,870,403

1,198
千円
3,803,357

4
千円
416

145
千円
37,791

149
千円
38,207
新潟県 2,189 8,745,711 1,045 5,519,120 2 130 99 29,648 101 29,778
石川〃 956 1,286,296 464 764,520 1 161 25 1,947 26 2,108
福井〃 3,273 12,697,759 676 5,132,379 2 683 32 7,923 34 8,606
山梨〃 1,186 2,664,884 513 2,013,979

85 17,334 85 17,334
長野〃 2,490 4,741,220 572 2,295,710 2 87 26 4,499 28 4,586
岐阜〃 1,241 2,596,905 273 1,394,844 2 845 19 4,020 21 4,865
静岡〃 765 1,501,940 426 1,004,799 1 1,463 26 5,101 27 6,564
愛知〃 984 1,306,035 442 923,931 1 71 49 7,580 50 7,651
三重〃 2,473 2,753,491 601 1,443,329 6 808 36 11,981 42 12,789
滋賀〃 1,582 3,189,905 367 1,386,639

21 3,113 21 3,113
兵庫〃 6,846 6,527,279 820 2,360,406

21 3,369 21 3,369
奈良〃 2,461 2,949,757 613 1,285,100 4 506 28 2,910 32 3,416
和歌山〃 1,387 1,793,419 359 902,717 4 161 23 2,384 27 2,545
島根〃 4,776 4,189,271 446 1,416,500 7 1,201 40 6,763 47 7,964
岡山〃 3,239 4,172,063 347 1,838,040 8 1,208 43 8,880 51 10,088
広島〃 4,098 3,563,464 625 1,339,066 2 306 24 2,485 26 2,791
香川〃 1,363 1,550,965 455 689,114 6 601 34 2,708 40 3,309
熊本〃 3,103 3,623,531 970 1,927,424 1 107 28 3,232 29 3,339
合計 46,745 76,724,298 11,212 37,440,974 53 8,754 804 163,668 857 172,422

 以上のほか、査定の時と状況が変化したため現場から近距離の地点で所要の骨材を採取することができるようになったり、または査定と関係なく別途に工事を施行中のため災害復旧工事として施行する要がなくなったりしたものを注意して減額是正させたものが、8工事8,864,000円(国庫負担金相当額8,073,000円)ある。
 しかして、前記の是正させたもののうち、おもな事例を示すと次のとおりである。

1 設計が過大と認められるもの

 静岡県磐田郡佐久間町県道天竜水窪線40年災害復旧は、査定額9,241,000円(国庫負担金6,163,747円)で道路延長92メートルを路側コンクリートブロック練積1,014平方メートルおよび天ば練石張670平方メートルで復旧することとしていたが、うち天ば練石張はこれに代えて厚さ30センチメートル程度のコンクリートを打設すれば足りるため、工事費1,463,000円(国庫負担金975,821円)が過大となっていた。

2 積算が過大と認められるもの

(1) 新潟県両津市河崎川40年災害復旧は、査定額95,208,000円(国庫負担金76,166,400円)で護岸延長4,577メートルを練積石垣4,964平方メートル、コンクリートブロック練積7,108平方メートル、河道掘さく9,843立方メートル等で復旧するもので、河道掘さく9,843立方メートルは人力により施行することとしていたが、うち5,906立方メートルは現地の状況からみて機械施行が可能であり、また、準備工の水替は大型の木樋を使用することとしていたが、河状からみて簡易な構造の小型木樋を使用すれば足りるなどのため、工事費6,236,000円(国庫負担金4,988,800円)が過大となっていた。

(2) 三重県鳥羽市桃取東海岸40年災害復旧は、査定額12,691,000円(国庫負担金10,152,800円)で護岸延長143メートルを復旧するもので、根固めコンクリートブロックは365個であるのに計算を誤って513個としたため、工事費3,128,000円(国庫負担金2,502,400円)が過大となっていた。