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  • 昭和41年度|
  • 第1章 総論

検査の結果の概要


第2節 検査の結果の概要

 昭和41年度の歳入、歳出等に関し、国および政府関係機関等から提出された計算書22万余冊および証拠書類5814万余枚について書面検査を行ない、また、41年11月から42年10月までの間に、2千7百余の官署等について3万4千余人日をもって実地に検査を施行し、関係者に対し8千余件の質問を発した。

(不当事項)

 検査の結果、不当事項として記載するものを所管別または政府関係機関別にあげると次表のとおり合計337件である。

所管または政府関係機関 租税 工事 物件 保険 補助金 不正行為 その他
法務省
1

1
大蔵省 129              129
文部省         3     3
厚生省       2 5     7
農林省   4   14 109     127
通商産業省         7   7 14
運輸省   1     17     18
郵政省           5   5
労働省       3       3
建設省         26     26
日本国有鉄道   2           2
日本電信電話公社   1 1         2
129 8 1 19 167 6 7 337

これらの不当事項をその態様別にみると、

租税収入の徴収不足をきたしたものなど 129件 540百万円
工事施行等の計画が適切を欠いたため不経済となっていると認めたもの 2件 10百万円

工事費の積算が適切を欠いたため契約額が高価に過ぎたと認めたもの

5件 17百万円
工事の監督および検査が適切でなかったため支払が過大となっているもの 2件 4百万円

保険料の徴収不足をきたしまたは保険金等の支払が適正を欠いたものなど

19件 197百万円

補助事業の実施および経理が適切を欠いたもの

164件 133百万円

職員の不正行為により国に損害を与えたもの

6件 27百万円
その他 7件 12百万円
また、
災害復旧事業費の査定額を減額是正させたもの 3件 397百万円

となっている。

 上記のうち、おもなものの概要を述べると次のとおりである。

(租税収入について)

 税務署等において、申告書等についての調査が十分でなかったこと、法令の適用、税額の計算等を誤ったこと、課税資料の収集、活用が適確でなかったことにより、源泉所得税において配当、賞与、申告所得税において譲渡所得、資産所得の合算、雑所得等、法人税において減価償却、退職給与引当金、同族会社の留保所得等に関する処理が適切でなかったためひいて租税の徴収不足をきたしたものなどである。

(工事施行等の計画について)

 事業の着手にあたり配慮が十分でなかったため不経済な結果となっているものであって、
運輸省で、在来の突堤を除去する工事の施行にあたり他の関連工事に使用することができる多量の石材が発生するのに、これを活用しないで海中に投棄したもの
日本電信電話公社で、摩耗した部分だけを取り替えるなどして修理すれば十分再用することができる交換機用部品を廃棄することとして新品を購入したもの
である。

(工事費の積算について)

 積算は、単なる所要経費の見込計算であるにとどまらず、契約価額決定の基礎となる重要な経理処理であって、適正な積算なくしては適正な契約価額の決定は期しがたいものである。しかして、積算にあたっては、施行現場の状況等を的確には握して適切な作業の方法、作業機械の能力、資材の所要量等を検討し、また、資材についてその供給の実情を十分調査して適切な価格を適用すべきであり、さらに、これら計算の過程において計算誤りなどの誤びゅうをおかすことのないよう十分注意すべきであるのに、これらの配慮を欠いたため、結局、契約額が高価となったと認められるものであって、
農林省で、サイフォン工事に使用する普通圧管の価格を水道用鋼管の市販価格によるべきであったのに水力発電に使用する特殊な水圧鉄管の加工費の計算方式により算定したもの、道路の災害復旧工事の施行にあたり転石を必要以上に小さく破砕することとするなどして転石の破砕費を過大に見込んだもの
日本国有鉄道で、道床砕石運搬撒布工事の砕石の積込みはトラクタショベルによるのが経済的であったのにベルトコンベヤによることとしたもの、線路路盤復旧工事のコンクリート打設のため仮設するさん橋について実情にそわない架設方法を見込むなどしたもの
日本電信電話公社で、鉄塔新設の各種工事について作業の実態に即さない標準単価を適用したもの
である。

(工事の監督および検査について)

 契約は、適切な監督により適正な履行が確保され、給付の完了を確認する検査の結果に基づいて対価の支払をすることとなっているものである。しかしながら、工事現場における監督が必ずしも十分に行き届かず、施行が不良となっていて設計に比べて強度が低下しているのに、検査にあたりそれに気付かず、契約どおり給付が完了したこととしているものであって、
農林省で、取水ぜきのコンクリート工事において締固めや打継ぎが十分でなかったため内部に空げきを生じているもの、道路の舗装工事において施行条件として適当でない時に施行したためアスファルトコンクリート等の下部が固結しないでぜい弱となっており、全面的にき裂を生じ、各所が破損しているもの、道路の石垣工事において石積みの施行が粗雑なばかりでなく胴込ぐり石も少量しか施行していないもの
である。

(保険について)

 国が特別会計を設けて経営する保険事業に関するもので、
厚生省の健康保険、厚生年金保険、船員保険、労働省の労働者災害補償保険、失業保険において、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬についての調査が十分でなかったため保険料の徴収不足をきたしたもの
労働省の失業保険、農林省の漁船再保険において、保険給付の原因となる事実の調査が十分でなかったため保険金等の支払が適正を欠いたもの
農林省の農業共済再保険において、農業共済組合が共済金の全部または一部を組合員に支払わず、または補償対象外のものを含めて共済金を配分するなど共済事業の運営が適切でないもの
である。

(補助金について)

 地方公共団体等が国の補助を受けて施行している各種事業は農林、建設、運輸各省所管の公共事業関係をはじめきわめて多数に上っているが、
農林、運輸、建設各省所管の公共事業関係については、災害復旧等の事業において工事の施行が不良となっているものなど
その他の補助については、文部省の初等中等教育助成事業等、厚生省の法定伝染病予防事業、簡易水道等施設整備事業、農林省の農業構造改善事業等において精算が過大なもの、工事の施行が不良なもの、補助の対象と認められないものなど、および農林省の農業改良資金助成補助金や通商産業省の中小企業設備近代化補助金を財源とする都道府県の貸付金の運営が適切を欠きひいて補助の目的にそわない結果となっていると認められるもの
などである。

(職員の不正行為について)

 法務省で、地方法務局出張所の職員が収入印紙等を領得したもの
郵政省で、郵便局の窓口で現金受払事務に従事している内務員や局外で集金事務に従事している外務員がその取扱いにかかる現金を領得したものなど
である。

(改善の意見を表示した事項)

 検査の結果、会計検査院法第36条の規定により公社、公団の責任者に対し法令、制度または行政に関して改善の意見を表示したものが4件あり、その内訳は
日本国有鉄道の検修庫等の鉄骨工事の設計に関するもの
日本電信電話公社の保全強化工事等における屋外線、屋内線取替工事費の積算に関するもの
日本道路公団の高速自動車国道建設工事の予定価格の積算等に関するもの
首都高速道路公団の高速道路建設工事の予定価格の積算に関するもの
である。

 上記の不当事項または改善の意見を表示した事項のほか、検査の結果、今後予算の執行等にあたり留意を要すると認めたものを各所管別または機関別に掲記した。

 いま、その概要を述べると次のとおりである。

 事業の計画、設計および積算については、
防衛庁で自衛隊の未使用通信回線を活用するよう配慮の要があるもの
農林省の林道の開設について適切な計画を立てて工事を施行するよう配慮の要があるもの
日本鉄道建設公団の高架橋等の高欄工事の設計について検討の要があるもの
文部省の国立学校施設整備のための土木工事、日本国有鉄道の舗装コンクリート取りこわし工事の工事費の積算について配慮の要があるもの

 財産、物品の調達、管理については、
防衛庁の航空機部品、運輸省の航空保安施設、郵政省の郵便書簡、日本国有鉄道の電気関係工事用資材について、調達量の決定や取得後の管理等が適切を欠いているので、経済的な調達と適切な管理について配慮の要があるもの

 資金の貸付けについては、
農林漁業金融公庫の土地取得資金、年金福祉事業団の厚生年金保険施設資金貸付金について、貸付金が過大になっていたり、借受者が事業を実施しなかったり、借受申込の目的以外に使用したりしているものなどがあるので、貸付けの決定および貸付け後の管理について適正を期する要があるもの

 補助金の交付については、
文部省の補助を受けて市町村が行なう要保護及び準要保護児童生徒就学援助事業が適期に行なわれておらず補助の趣旨が十分生かされていなかったり、農林省の補助を受けて都道府県が利子補給を行なっている農業近代化資金の貸付対象事業が実施されていなかったり、畜産振興事業団の学校給食用牛乳供給事業に対する補助金が補助の本旨からみて適当でないものに交付されていたりしているなど補助の目的にかなっていないものについて適切な指導を行なうよう配慮の要があるもの
農林省の補助を受けて市町村等が施行している草地改良事業、農業構造改善事業について、計画的に事業を実施するとともに事後の管理も適切に行なって事業の効果をあげるよう配慮の要があるもの
厚生省の都道府県等に対して交付した補助金等の額の確定が遅延しているのでその事務処理の促進について配慮の要があるもの
厚生省の補助を受けて市町村等が設置したし尿処理施設について、設置後の管理を適切に行なって事業の効果が発揮されるよう配慮の要があるもの
などである。