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  • 昭和41年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項

運輸省


第8 運輸省

(一般会計)

 昭和41年度歳入歳出決算額は、歳入25億4741万余円、歳出1092億5363万余円で、歳出決算額のうちおもなものは港湾整備ほか2特別会計に対する繰入金377億6563万余円、国が直轄で施行した空港整備等の事業費118億2050万余円、地方公共団体等に対する国庫補助金等206億7093万余円である。
 しかして、国庫補助金等のうち地方公共団体等が施行する海岸保全施設整備事業、港湾施設災害復旧事業等公共事業関係の国庫補助金は91億7706万余円であり、42年中、これらのうち30億6243万余円についてその経理および工事施行の状況を実地に検査したところ、別項記載のとおり、公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの がある。
 なお、港湾施設災害復旧事業費の査定の適否について検査したところ、別項記載のとおり、査定額を減額させたもの がある。
 また、国の直轄事業について、42年中、実地に検査したところ、次のとおり留意を要すると認められるものがある。

(航空保安施設の運用について)

 空港または航空路の要所に設置する航空灯火、航空保安無線等の保安施設は、航空交通の安全性を確保し、運航の能率を増進するために必要な施設として整備が進められているものであるが、昭和40、41両年度中に設置された94施設9億7119万余円についてその運用状況を調査したところ、飛行試験および電波検査が適期に行なわれなかったり、試験および検査に合格していてもその後の運用開始手続が遅延したりなどしているため、施設の運用開始が長期間にわたり遅延していたもの、施設の完成後長期間を経過しているのに地理的障害があって試験および検査に合格しないため、まだ運用開始の見込みが立っていないものが見受けられた。
 ついては、運用開始の見込みがついていない施設についてすみやかに対策を講ずるとともに今後、施設の設置にあたっては、試験および検査が適期に行なわれ早期に運用を開始することができるよう配慮の要があると認められる。

(港湾整備特別会計)

 本特別会計は、港湾整備および特定港湾施設工事の両勘定に区分して経理されており、このうちおもな勘定である港湾整備勘定の昭和41年度歳入歳出決算額は、歳入585億4930万余円、歳出563億2968万余円で、歳入決算額のうちおもなものは一般会計より受入445億4163万余円、港湾管理者の工事費負担金110億8882万余円、歳出決算額のうちおもなものは国が直轄で実施した港湾改修等の事業費330億1611万余円、地方公共団体等の施行する港湾改修事業に対する国庫補助金177億9988万余円である。
 しかして、国が直轄で実施した港湾改修等の事業費のうち82億8787万余円について、42年中、実地に検査したところ、別項記載のとおり、工事の施行にあたり発生材の活用に対する配慮を欠いたため不経済となっているもの がある。
 また、国庫補助金のうち55億6111万余円について、42年中、その経理および工事施行の状況を実地に検査したところ、別項記載のとおり、公共事業に対す国庫補助金等の経理当を得ないもの がある。

不当事項

工事

(282) 工事の施行にあたり発生材の活用に対する配慮を欠いたため不経済となっているもの

(港湾整備特別会計) (港湾整備勘定) (項)港湾事業費

 第二港湾建設局で、昭和41年8月、指名競争後の随意契約により畑中建設株式会社に八戸港突堤除去工事を10,780,000円で請け負わせ施行しているが、発生材を同港整備の他の工事の資材として活用する配慮を欠き、利用可能な石材を投棄したため約410万円が不経済となっていると認められる。
 本件工事は、八戸港白銀地区の改修にあたり、7号物揚場前面の在来突堤延長100メートルを除去するため、ケーソン15函を撤去えい航して3号内防波堤先端部付近に仮置きするほか、ケーソンの基礎に使用されていた1個当り200キログラム程度の割石6,420立方メートルのうち1,960立方メートルをケーソン仮置きの基礎に転用し、残りの4,460立方メートルおよびケーソンの中詰めに使用されていた1個当り20キログラム程度のぐり石1,234立方メートルを土運船により約3キロメートル運搬のうえ海中に投棄したものである。
 しかしながら、同港湾建設局においては、白銀地区において同種、同程度の規格の石材を使用する防波堤築造工事を施行しており、41年度においては19,505立方メートル、42年度以降においても多量の石材を必要とすることは、本件工事を計画した際に判明していたものであるから、本件工事の施行にあたっては、突堤の除去により発生する石材をこれら防波堤築造工事の資材として活用することを考慮すべきであったと認められる。
 いま、仮に前記石材を投棄することなく防波堤築造工事に活用することとし、41年度の同地区における同種石材の積算単価立方メートル当り割石1,100円、ぐり石800円により計算すると589万余円相当の石材が活用できることとなり、また、運搬投棄の費用209万余円も不要となるが、他方、この石材を使用する他の工事との工期のずれを考慮し発生材を一時付近の材料置場に仮置きするものとしてこれに要する経費約387万円を控除しても、約410万円が不経済となっていると認められる。

補助金(283)−(299)

(283)−(298) 公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの

(一般会計) (組織)運輸本省 (項)海岸等事業費 (項)港湾施設災害関連事業費 (項)港湾施設災害復旧事業費 (項)昭和41年発生港湾施設災害復旧事業費
(港湾整備特別会計) (港湾整備勘定) (項)港湾事業費

 地方公共団体等が施行した港湾等の工事に対する国庫補助金または国庫負担金(以下「国庫補助金」という。)は、港湾法(昭和25年法律第218号)等に基づいて交付されるものである。昭和42年中、全国の工事箇所3,284のうち岩手県ほか17府県につきその29.8%に相当する979箇所(工事費17,435,092,483円、国庫補助金8,623,550,265円)を実地に検査したところ、国庫補助金の経理当を得ないと認められたものが岩手ほか9県(注) において、不当と認めた工事費に対する国庫補助金相当額が1工事につき10万円以上のもので23工事9,078,974円(うち港湾整備特別会計港湾整備勘定の分6工事2,832,333円)ある。
 公共事業関係国庫補助金の経理については、不当と認めた事例を毎年度の検査報告に掲記して注意を促してきたところであるが、上記のように不当な事例が依然として跡を絶たないのは、事業主体における工事の監督および検査が行き届かないこと、関係当局における指導、検査が十分でないことなどによるものと認められるので、これらについて、なお一層の配慮が肝要と認められる。
 いま、前記23工事についてこれを不当の態様別にみると、

1 工事の施行が不良で設計に比べて強度が著しく低下していると認められるもの

(ア) コンクリート工事においては、防波堤や護岸等の工事で、コンクリートの締固めなどが十分でなかったり、型わくの施行が粗雑だったりしたため、モルタルが流失したり、モルタルと砂利とが分離したりしているもの、堤防の擁壁工事で、純コンクリートで施行することとなっているのにぐり石を積み重ねその前面に粗悪なコンクリートを施行したにすぎないもの、護岸の取付け階段工事で、土砂を混入した粗悪なコンクリートで施行しその練混ぜおよび締固めが十分でなかったためモルタルと砂利とが分離しているものなど17工事国庫補助金相当額7,375,816円

(イ) 石垣工事においては、護岸や突堤の工事で、石積みの施行が粗雑なばかりでなく、胴込コンクリートは水を多量に使用した粗悪なものできわめて少量を施行したにすぎないもの3工事国庫補助金相当額773,625円

(ウ) その他の工事においては、船揚場のブロック張り工事で、基礎ぐり石に粒径の大きい規格外のものを混入しているばかりでなく、その敷きならしが粗雑だったため、ブロック張りに不陸を生じているものなど2工事国庫補助金相当額523,133円

2 工事費の積算が過大となっているもの

 泊地のしゅんせつ工事において、土量の計算を誤ったためしゅんせつ工事費の積算が過大となっているもの1工事国庫補助金相当額406,400円となっている。

 しかして、不当と認めた工事費に対する国庫補助金相当額が1工事につき20万円以上のものをあげると次表のとおり16件8,035,802円である。

(注)  次表に掲記した県のほか徳島、宮崎両県

県名 工事 事業主体 工事費 左に対する国庫補助金 不当工事費 左に対する国庫補助金相当額 摘要

(283)

岩手県

久慈市久慈港改修

岩手県
千円
17,567
千円
7,027
千円
943
千円
377

防波堤の波返しおよび堤体のコンクリート工事の施行不良
(284) 秋田県 男鹿市戸賀港高潮対策(第1工区) 秋田県 11,261 5,630 1,936 968 防潮堤の波返しおよび護岸のコンクリート工事の施行不良
(285) 秋田県 男鹿市戸賀港高潮対策(第2工区) 秋田県 12,862 6,431 1,697 848 防潮堤の波返しおよび護岸のコンクリート工事の施行不良
(286)  同 男鹿市船川港41年災害復旧  同 710 482 686 466 護岸擁壁コンクリート工事の施行不良
(287)  同 本荘市本荘港改修  同 22,346 8,938 1,079 431 防砂堤の上部コンクリート工事の施行不良
47,181 21,483 5,398 2,714
(288) 新潟県 柏崎市柏崎港改修 新潟県 25,873 10,349 907 362 船揚場のブロック張り工事の施行不良
(289)  同 直江津市直江津港改修  同 354,682 177,341 2,612 1,306 防波堤の上部コンクリート工事の施行不良
380,555 187,690 3,519 1,668
(290) 和歌山県 有田市和歌山下津港(有田港地区)39年災害復旧 和歌山県 2,474 1,650 654 436 護岸の基礎コンクリート工事の施行不良
(291) 高知県 安芸郡奈半利町奈半利港36年災害助成 高知県 11,767 7,845 755 503 堤防基礎の保護コンクリート工事の施行不良
(292) 熊本県 天草郡苓北町富岡港39年災害復旧 熊本県 1,940 1,552 427 341 堤防練積石垣工事の施行不良
(293)  同 天草郡龍ヶ岳町大道港40年災害復旧 龍ヶ岳町 925 740 473 378 護岸擁壁コンクリート工事の施行不良
2,865 2,292 900 720
(294) 大分県 臼杵市臼杵港40年災害復旧 大分県 378 252 378 252 防波堤の側面被覆コンクリート工事の施行不良
(295)  同 津久見市日代港39年災害復旧 津久見市 759 506 475 316 護岸練積石垣工事の施行不良
1,137 758 853 568
(296) 鹿児島県 肝属郡大根占町大根占港39年災害復旧(34号) 鹿児島県 460 320 460 320 護岸の取付け階段コンクリート工事の施行不良
(297)  同 肝属郡大根占町大根占港39年災害復旧(35号)  同 460 320 460 320
(298)  同 熊毛郡屋久町安房港40年災害復旧  同 13,288 10,630 508 406 しゅんせつ費の積算過大
14,208 11,270 1,428 1,046
合計 477,755 240,017 14,450 8,035

(299) 災害復旧事業費の査定額を減額させたもの

(一般会計)

 地方公共団体等が施行する公共土木施設の昭和41年発生災害復旧工事費の査定を了したもの(運輸省査定額2,140,905,000円)に対する検査は、査定額の比較的多かった青森県ほか6都県を選び、41年12月から42年2月までの間に、総工事数111、査定額1,439,859,000円のうち48工事820,790,000円について実施した。
 その結果、国庫負担の対象とならない泊地外の区域のしゅんせつを含めたり、ケーソンの中詰めコンクリートを必要以上に富配合のものとしたり、鋼材の数量計算を誤ったりしているものなどがあり、査定工事費を適正なものに修正する必要があると認め当局に注意したところ減額是正する旨の回答があったものが、前記7都県のうち3県において次表のとおり6工事11,354,000円(国庫負担金相当額7,642,000円)ある。

 

類別
県名
運輸省査定額 左のうち実地検査したもの 減額させた工事費
改良工事 設計過大 積算過大
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

山形県

11
千円
120,552

5
千円
24,739

1
千円
2,131

千円
千円
1
千円
2,131
石川県 9 53,065 8 29,009



3 246 3 246
静岡県 40 735,456 16 589,295

1 8,801 1 176 2 8,977
合計 60 909,073 29 643,043 1 2,131 1 8,801 4 422 6 11,354