建設省では、住宅の建設に関して総合的な計画を策定し、適正な居住水準を自らの力によって確保できない低所得階層、老人、母子、身体障害者世帯及び都市勤労者等の中所得階層に対して、公的資金による住宅(住宅建設計画法(昭和41年法律第100号)第3条の定義による。)の供給を、援助を必要とする度合いに応じて行うものとしている。これを受けて地方公共団体、住宅金融公庫、日本住宅公団等が公的資金による住宅を直接供給し、又は住宅建設資金の融資等を実施しており、これらの事業に対して、国は国庫補助金又は補給金の交付等の財政援助を行っている。そして、第2期住宅建設5箇年計画(昭和46年度から50年度まで)における公的資金による住宅の計画達成状況は、全体としては81.0%であるが、住宅難世帯が特に多い大都市を抱える都府県及びその周辺の県においては達成率が低くなっている例が多く、なかでも東京都においては49.5%、大阪府においては49.0%、神奈川県においては57.0%となっている状況である。
しかして、北海道ほか15都府県(注1) が49、50、51各年度に新たに供給した公営住宅、これら都道府県下の地方住宅供給公社等が住宅金融公庫から融資を受けて上記3箇年度に新たに供給した公社住宅等及び日本住宅公団が上記3箇年度に新たに供給した公団住宅の建設及び管理について本院が調査したところ、新築の賃貸住宅又は分譲住宅で既に入居者の募集をし入居開始日が到来しているのに入居者が確定していないもの(以下「新築空き家」という。)などが52年3月末現在、次のとおり多数見受けられた。
1 北海道ほか9県 (注2) の公営住宅において、新築空き家2,153戸(建設費105億5115万余円、うち国庫補助金相当額51億8803万余円)
2 長野県住宅供給公社ほか9公社(注3) 等の公社住宅等において、新築空き家1,322戸(建設費169億9016万余円、うち住宅金融公庫融資額66億5441万余円)
3 日本住宅公団の公団住宅において、
(1) 新築空き家14,523戸(建設費1479億4904万余円)
(2) 住宅の用に供することができないまま保守管理されている未募集の新築住宅17,532戸(建設費1438億5400万余円。51年3月末現在9,870戸あったことについては昭和50年度決算検査報告 に掲記済み。)
しかも、これら新築空き家や未募集の新築住宅は、前記のように住宅難世帯が特に多いのに公的資金による住宅建設がはかどっていない大都市を抱える都府県及びその周辺の県において多く見られる状況である。
このような事態が生じているのは、土地取得費が特に大都市を中心として高騰したこと、土地取得費の軽減が図られ、また、その取得が比較的容易であることから、都市の中心部から遠隔の地域に立地する場合が多いこと、関連公共公益施設整備のための費用の負担が増大しこれが供給価格に転嫁されることなどによって、供給される住宅は、通勤等に不便なものや、居住面積の狭いものや、家賃等の高いものが多くなっていて、立地、規模等の質的充足を求めるようになった近年の住宅需要に合致しないものとなっていることによると認められる。
上記のような状況がこのまま推移すると、公的資金による住宅の供給はなお必要であるのに、住宅建設のために投入された財政資金がその効果を発現しない事態が継続すると認められる。
更に、日本住宅公団においては、前記の新築空き家や未募集の新築住宅のほか、既に発注済みで未しゅん功の住宅が125,199戸(賃貸用特定分譲住宅(注4) を除く。)の多数あり、このような状態となっているのは、住宅建設計画の達成を急ぐあまり着工の目途も立っていないのに発注し、いまだに着工していなかったり、発注後相当期間経過した後に着工したりしたことが主な原因となっていると認められ、また、これら未しゅん功の住宅のうちには、前記の大量の新築空き家や未募集の新築住宅のある団地に建設されるものがあることなどからみて、完成しても空き家となるおそれがあるものが多数含まれていると認められる。
また、同公団が前記のように新築空き家や未募集の新築住宅を保有していることによって、これらの管理経費として51年度中に合計8億4600万余円を負担しているほか、新築空き家についての51年度分の収入減相当額は計算上66億5557万余円に達し、一方、未募集の新築住宅に係る完成後51年度末までの金利相当額は47億6000万余円に及んでいる。
(注1) | 北海道ほか15都府県 北海道、宮城、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、富山、長野、岐阜、愛知、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡各都道府県 |
(注2) | 北海道ほか9県 北海道、埼玉、千葉、富山、長野、岐阜、愛知、兵庫、岡山、広島各道県 |
(注3) | 長野県住宅供給公社ほか9公社等 長野県、東京都、神奈川県、川崎市、千葉県、愛知県、兵庫県、福岡県、福岡市各住宅供給公社及び日本勤労者住宅協会 |
(注4) | 賃貸用特定分譲住宅 既成市街地及びその周辺において貸家経営を行おうとする土地所有者等に対し、公団が住宅又は店舗等を建設し長期割賦で譲渡する住宅 |