厚生省の国立病院、国立療養所、国立がんセンター及び国立循環器病センターでは、近年、医療の高度化及び疾病構造の変化に対処するため、ガンマカメラ、自動生化学分析装置等の外国製医療機器を購入しており、今後この傾向は更に増加することが見込まれている。
しかして、国立札幌病院ほか6国立病院等(注) (以下「国立病院等」という。)が昭和52年度中に随意契約により購入契約を締結し、契約後輸入される外国製医療機器(以下「輸入機器」という。)18件(契約額合計9億0163万余円)について検査したところ、次のとおり、輸入機器の予定価格の算定方法及び契約方式が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記国立病院等では、輸入機器の契約に当たり、海外メーカーの本邦内販売代理店(以下「代理店」という。)が提示している販売定価(円表示)と他の国立病院等に納入された類似機器の販売価額を参考にするなどして予定価格を決定しており、代理店から徴した見積書の価額がその予定価格の範囲内であるときはこの見積額を契約額とし、代金の支払については、外国為替相場の変動に対処することなく当初の契約額をそのまま支払うこととしたり、契約日と検収日との間の外国為替変動比率(契約日と検収日との間の外国為替相場の変動額を契約日の外国為替相場で除した比率)が契約に当たっての値引比率(代理店提示の販売定価から契約額を差し引いた差額を販売定価で除した比率)を上回った場合に限り、その上回った比率相当額を契約額から減額して支払うこととしたりなどしていた。
しかし、本件のような輸入機器は、通常、売買契約締結後に代理店が海外から輸入するもので契約から納入までは相当長期間を要すること、代理店と海外メーカーとの代金の決済は外国通貨建てで行われるのが通例となっていること及び外国為替相場の変動下における契約であることなどを考慮すると、輸入機器の購入に当たっては、予定価格の決定の際には代理店から海外メーカーのプロフォーマインボイス(試算用送り状)等の書類の提出を求めるなどして輸入原価(概算)をは握し、これに通常認められる陸揚通関等諸掛、国内輸送費等の諸経費を加えた額を算出するなど予定価格を適正に決定する必要があり、また、購入代金の支払についても、契約上外国為替相場の変動に的確に対処することができるように、輸入機器の納入後代理店からコマーシャルインボイス(商業送り状)等の証明書類の提出を求めるなどして通関日、或は検収日等の外国貨幣換算率により計算した輸入原価をは握し、この輸入原価により契約額を適正な価額に変更できる契約内容とする必要があると認められた。
いま、前記18件の契約について、仮に輸入機器購入の他省庁等の事例からみた契約額に対する輸入原価率を参考とするなどして、検収日現在(53年7月31日現在において納入未済のものは同日)の外国貨幣換算率により購入価額を修正計算したとしても、本件購入価額に比べて約8300万円程度低額となると認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、53年10月に新たに「外国製医療機器購入契約基準」を制定して国立病院等に通知を発し、適正な事務処理を確保するなど処置を講じた。
(注) 国立札幌病院ほか6国立病院等 国立札幌病院、国立東静病院、国立名古屋病院、国立福岡中央病院、国立長崎中央病院、国立療養所宇多野病院、国立循環器病センター