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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第5 農林省(昭和53年7月5日以降は「農林水産省」)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

管水路等の建設に伴う地上権の設定について処置を要求したもの


(1) 管水路等の建設に伴う地上権の設定について処置を要求したもの

(昭和53年11月29日付け53検第426号 農林水産大臣あて)

 農林水産省東北農政局ほか6農政局(注1) が国の直轄事業として、また、北海道ほか13県(注2) が補助事業として、昭和51、52両年度中に、土地改良事業等の工事を施行する際に管水路等及びトンネルの設置箇所に設定した地上権(直轄事業における設定面積16万余m2 、支払われた対価の合計額2億1209万余円、補助事業における設定面積46万余m2 、支払われた対価の合計額7562万余円(これに対する国庫補助金相当額4023万余円))の設定状況について検査したところ、次のとおり、地上権の設定の取扱いが区々となっていて適切でないと認められるものが見受けられた。

 すなわち、地上権は土地改良事業等により設置した管水路等及びトンネルの施設の保全上必要がある場合に設定するもので、その取扱いについて、同省では、「一応、設定幅は施設の最大幅に両側0.5mから1mを加えたものを標準とする」と指導しているが、実際の取扱いをみると、各農政局がそれぞれに設定の基準等を定め、設定幅を施設の両側0.3mから1mとしており、また、道県においては、農政局の設定の基準等を準用したり、独自の取扱基準を設けたりなどして、設定幅を同じく0.5mから1mとしており、取扱基準を制定していない県での設定幅は同じく0mから2.55mとなっているなど、その取扱いが区々となっている。

 しかし、土地改良事業等における管水路等及びトンネルの設置箇所は主として農業振興地域内にあり、これらの土地は農地法(昭和27年法律第229号)等によって農地の転用等が制約されているから、地上権設定の範囲(設定幅、設定深度等)は施設の保全に必要な最小限に設定すべきであると認められ、同種の地下埋設物等について地上権設定の事例が多い他団体の例をみても、設定幅については、管水路等にあっては施設の最大幅、つまり基礎幅で、また、トンネルにあっては施設の外側から左右それぞれ0.5mを加えた幅で設定している状況であり、本件土地改良事業等の工事においてもこの程度の範囲で設定すれば施設保全の目的は確保されると認められる。

 いま、管水路等及びトンネルについて、仮に施設の外側から左右それぞれ0.5mを加えた幅で地上権を設定したとすると、前記の対価支払額を直轄事業分で約4190万円、補助事業分で約1670万円(これに対する国庫補助金相当額約899万円)程度節減できたと認められる。

 このような事態を生じているのは、同省において地上権の設定についてその目的に対する認識が十分でなかったこと及び統一的な基準を定めることなく各農政局においてそれぞれに設定の基準等を定める取扱いとしていること、また、道県においても、設定の目的に対する認識が十分でないまま各農政局が区々に定めた基準を安易に準用したり、独自の判断で地上権を設定したりなどしていたことによると認められる。

 ついては、同省及び都道府県においては、今後も管水路等及びトンネルの建設に伴い地上権の設定が多数見込まれるのであるから、その設定の範囲を検討し統一した基準を整備するとともに、都道府県に対しても指導、監督を行い、もって工事費又は国庫補助金支出額の節減を図る要があると認められる。

(注1)  東北農政局ほか6農政局  東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局

(注2)  北海道ほか13県  北海道及び青森、岩手、宮城、栃木、静岡、富山、岐阜、三重、島根、愛媛、長崎、熊本、大分各県