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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第5 農林省(昭和53年7月5日以降は「農林水産省」)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

農業近代化資金利子補給補助金の経理について処置を要求したもの


(2) 農業近代化資金利子補給補助金の経理について処置を要求したもの

(昭和53年11月29日付け53検第428号 農林水産大臣あて)

 農林水産省では、農業近代化資金助成法(昭和36年法律第202号)に基づき、農業協同組合等の融資機関が農業者等に対して資本装備の高度化及び経営の近代化に資するため貸し付けた農業近代化資金について、その融通を円滑にするため、都道府県が当該融資機関との契約により利子補給を行うのに要する経費の2分の1相当額を農業近代化資金利子補給補助金(注1) として都道府県に交付しており、その交付額は、昭和51年度122億7032万余円、52年度141億5566万余円に上っている。

 上記の農業近代化資金の貸付けは、農業者等の借入申込みに基づき融資機関からの利子補給申請を都道府県が審査のうえ承認したものについて融資機関が貸付けの実行をすることとしているが、貸付けが実行されると資金は借入れを受けた農業者等(以下「借受者」という。)の別段貯金等に振り込まれ、その払出しは、融資機関が借受者から融資対象事業費についての支払請求書等の提示を受けるなどして資金所要額及び所要時期を確認したうえ行うことになっており、また、国の助成の対象となる利子補給の起算日は貸付けを実行した日となっている。

 しかして、北海道ほか29県(注2) 管内の3,092融資機関について、51、52両年度に本件補助金の交付対象となった農業近代化資金の貸付け328,035件貸付金額4378億8802万余円(51年度173,094件2126億9698万余円、52年度154,941件2251億9104万余円)のうち、991融資機関において、23,266件貸付金額1353億1947万余円(51年度10,535件628億3969万余円、52年度12,731件724億7977万余円)の払出状況を調査したところ、農業近代化資金の貸付けが実行されてから借受者により最初に払出しが行われるまで相当期間経過しているものが極めて多く、貸付けが実行されてから借受者の対象事業に係る支払請求書等の提出及びこれに対する融資機関における確認事務に10日程度を要するとしても、これを大きく上回る30日以上もの長期間にわたって使用されることなくいたずらに滞留しているものが7,335件353億2936万余円の多額に上っていた。

 これを滞留期間別に示すと次のとおりである。

これを滞留期間別に示すと次のとおりである。

 しかしながら、農業近代化資金に対して都道府県が行う利子補給に対する国の助成は、農業近代化資金の融通を円滑にするために行われるものであるから、上記のように、農業近代化資金が貸し付けられた後長期にわたって滞留しているものに対して国の助成が行われているのは、国庫補助金支出の効率があがっていないものであって、適切とは認められない。

 いま、前記7,335件の貸付金について、仮に、貸付けを実行した日から30日以上の滞留期間に対応する利子補給金を計算してみると111,466,336円(51年度53,893,006円、52年度57,573,330円)となり、これに対する国庫補助金相当額は55,733,168円(51年度26,946,503円、52年度28,786,665円)となる。

 このような事態を生じたのは、道、県では農業近代化資金取扱要領等(以下「取扱要領」という。)を定めていて利子補給承認後所定の期間内に融資機関が貸付けを実行することになっているが、道、県のうちには利子補給承認に当たり一定日を貸付日として指定しているものがあったり、融資機関のうちには利子補給承認後直ちに貸し付けることとしているものがあったりしていて、借受者の資金所要時期に関係なく一斉に貸付けが行われていること、道、県のうちには、工事の着工時期の遅延等により借受者の資金所要時期が遅れた場合に融資機関が貸付実行期限の延期を申請する定めが取扱要領になかったり、定めがあってもその手続が執られていなかったりしていること、融資機関のうちには、融資対象事業の実行を確保しようとするあまり、借受者が融資対象事業費に係る自己負担分を別段貯金等に預け入れるまで貸付金の払出しをしないこととしているものがあることが主な原因であると認められるが、貸付けが適期に行われることについての道、県の指導監督が十分でないことも一因となっていると認められる。

 ついては、同省においては、農業近代化資金利子補給に対する助成を今後も引き続き行うのであるから、農業近代化資金融通措置要綱等現行の諸規定を検討のうえ、道、県に対し適期に貸付けができるよう取扱要領につき所要の改正の措置を講じさせるとともに、融資機関に対して借受者の実際の資金所要時期を的確には握させ、借受者の資金所要時期が遅れる場合は貸付実行を延期させ、借受者の自己負担分の調達が確実と見込まれるものに対しては払出しを実施させるなどの指導を行わせて、適期に貸付けが行われるようにし、ひいては利子補給補助金の効率性を確保する要があると認められる。

(注1)  農業近代化資金利子補給金  農業者等が支払う利子負担の軽減を図るため、農業協同組合等の融資機関の貸付基準利率より低率に定めている貸付利率との差を国及び県が融資機関に補給するもので、貸付利率及び利子補給率は貸付金の種類等により異なるが、農業協同組合が建構築物造成資金や、農機具取得資金を農業者に貸し付ける場合を例にとると、53年3月末現在、貸付基準利率は年8.5%、貸付利率は年5.5%で、利子補給率は年3%(国はその2分の1を補助)となっている。

(注2)  北海道ほか29県  北海道及び青森、岩手、秋田、福島、茨城、栃木、群馬、神奈川、新潟、富山、福井、岐阜、静岡、三重、和歌山、島根、岡山、広島、徳島、香川、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県