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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第10 建設省|
  • 不当事項|
  • 貸付金

都市開発資金の貸付けが不当と認められるもの


(79)−(81) 都市開発資金の貸付けが不当と認められるもの

会計名及び科目 都市開発資金融通特別会計 (項)都市開発資金貸付金
部局等の名称 建設省
貸付けの根拠 都市開発資金の貸付けに関する法律(昭和41年法律第20号)
貸付けの内容 地方公共団体に対する工場等敷地及び都市施設用地取得資金の貸付け
貸付先 東京都、神戸市
貸付額の合計 3,781,580,000円(うち昭和53年3月末日現在の貸付金残額 3,239,660,000円)

 上記の地方公共団体に対する工場等敷地及び都市施設用地取得資金の貸付けは、貸付後の管理が十分でなかったため貸付けの目的に適合しない結果になっていて、昭和53年3月末日現在の貸付金残額のうち319,571,911円が不当と認められる。

(説明)
 都市開発資金は、都市開発資金の貸付けに関する法律(昭和41年法律第20号)に基づき、都市の機能を維持し、増進するため計画的に整備改善を図る必要がある重要な市街地の区域内にあり、かつ、工場、住宅、店舗等が混在していたり、公害の発生源となっている工場があったりしているため、環境が著しく劣悪な区域にある一定規模以上の工場等の移転跡の敷地を買い取る場合や、人口の集中の著しい大都市の秩序ある発展を図るために主要な道路、公園等の公共施設を整備するための用地で都市計画において定められた区域内にあるものを買い取る場合に、これに必要な資金として建設省が地方公共団体に対して貸し付けるもので、昭和41年に設置された都市開発資金融通特別会計においてこの貸付けに関する経理が行われており、貸付けに要する資金には、資金運用部資金からの借入金及び一般会計からの繰入金等が充てられている。そして、貸付後において地方公共団体が貸付金を目的外に使用したり、買い取った土地を貸付けの目的以外の用に供したりなどしていて、貸付けの目的に適合していないと認めるときは、建設省は繰上償還の措置を執ることになっている。
 しかして、前記2地方公共団体に対する貸付金の使用状況を調査したところ、土地の買取り実績等に関する実態のは握が十分でなかったなどのため、貸付金が貸付けの目的に適合していないのに繰上償還の措置を執っていないものが、次表のとおり、3事項319,571,911円あった。

貸付先 貸付対象 貸付金額 53年3月末日現在の貸付金残額のうち不当と認めた額
千円 千円
(79) 東京都 都市施設用地取得 406,580 174,150
この貸付け4億0658万円は、東京都が都市計画公園である篠崎公園(江戸川区篠崎町その他地内所在)の用地のうち71,691m2 を買い取るのに要する資金として貸し付けた総額29億2082万円の一部で、9,686m2 分として44年3月、45年8月及び49年3月の3回にわたり都に貸し付けたものである。しかして、本件公園計画及び用地取得の経緯をみると、公園計画については、戦前に防空縁地として都市計画決定した1,240,000m2 を、32年12月都市計画公園に変更するとともに、その計画面積を1,638,600m2 に拡張し、用地の取得については、戦中に159,956m2 を自己資金で、その後43年3月からは前記の71,691m2 を29億2082万円で、また、46年には国有農地44,224m2 を自己資金で、計275,871m2 を取得している。しかし、地価の高騰などのため49年度以降買収を行っておらず、また、51年7月には計画面積を約895,000m2 に縮小しており、この結果、本件貸付金4億0658万円で買収した土地9,686m2 のうち6,294m2 (これに対する貸付金相当額280,900,335円)が都市計画公園の区域外となったのであるから、その時点で速やかに貸付対象面積を変更し、区域外となった土地の買収費に充てられた貸付金相当額について繰上償還の措置を執るべきであったのにこれを怠り、53年3月末日現在、同日までに定期償還された106,750,276円を差し引いた174,150,059円をそのまま放置していた。
(80) 東京都 工場等敷地取得 1,637,000 26,000
この貸付けは、東京都が市街地整備のため小規模工業団地の用地として、西製鋼株式会社(江東区新砂地内所在)の工場敷地19,029m2 を買い取るのに要する資金として都に52年2月に貸し付けたものであるが、都が同年3月の買収時点で実測したところ同敷地の面積は18,727m2 で、この代価として1,611,000,000円を支払ったにすぎないのであるから、保有したままとなっている貸付金との差額26,000,000円については繰上償還の措置を執るべきであったのに、そのまま放置していた。
(81) 神戸市 都市施設用地取得

1,738,000

119,421

この貸付けは、神戸市が都市計画公園である西神総合運動公園(神戸市垂水区名谷町地内所在)の用地(計画面積550,000m2 )のうち417,534m2 を買い取るのに要する資金として、47年3月から49年3月までに7回にわたり同市に貸し付けたものである。
しかして、同市では、本件公園用地を買収するに当たっては、都市計画公園区域(以下「区域」という。)周辺の開発が急速に進み公園用地を早期に確保する必要に迫られたこと、買収地の大部分が山林であるため境界の決定が困難であったことなどから、一筆になっている土地を分筆することなく区域外となる土地43,055m2 (これに対する貸付金相当額162,776,910円)を含めて一括して買収していた。この区域外の土地は公園用地としては使用されないのであるから、買収後速やかに現地調査などにより貸付対象面積を明確にし、区域外の土地の買収費に充当された貸付金相当額については繰上償還の措置を執るべきであったのにこれを怠り、53年3月末日現在、同日までに定期償還された43,355,058円を差し引いた119,421,852円をそのまま放置していた。
そして、この区域外の土地は、同市が施行している西神流通業務団地造成事業(46年度着手)、又は、神戸研究学園都市事業(52年度着手)の地区内にあって既に造成が進められていたり、市営地下鉄西神線(52年3月開業)の車庫用地として使用されていたりなどしている状況である。
3,781,580 319,571